| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Angel Beats! the after story

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

目覚め

遊佐衣さんのお願いは断ることができず、OKしてしまったわけだが、初音はまるで知っていたかのように『がんばってね、お兄ちゃん』と声援を送ってくれた。



普段以上に身だしなみを整え、黒スーツに黒縁メガネを着用する。今の俺は音無 結弦ではない!音無マネージャーだ!

にしても、暑い、夏なのにスーツって地獄だわ。全国の黒スーツを着ている男性を尊敬するよ。
そんなことを考えながらも歩き、待ち合わせ場所となっているスターバックスに着く。

冷房の効いた幸せ空間。そうか、天国はこんな近くに有ったのか……。

「いらっしゃいませ。お客様、お一人でしょうか?」

入るとすぐさま店員が来る。うむ、教育が行き届いているな。

「いえ、待ち合わせです」

キョロキョロと店内を見渡すと、雰囲気とは噛み合っていないウサ耳が目に入る。が、先に注文を済ませにいく。

「いらっしゃいませ。ご注文は?」

スタバはあまり行かないから、ここは無難に注文しとくか。

「シングル ベンティ キャラメル アーモンド ヘーゼルナッツ モカ ホワイトモカ ツーパーセント チョコチップ エキストラホイップ キャラメルソース チョコソース ジェリー バニラクリームフラペチーノを一つ」

「はい。かしこまりました」

やっぱり、スタバに来たならこれじゃなきゃな。

突然、袖をクイクイと引っ張られる。

「遅いです」

俺に気づいて、ここまで来たのだろう。
でもね、遊佐衣さん。さすがにその格好で話しかけられるこっちの身になってくれませんか?

「すいません」

「五分三十二秒待ちました。私の貴重な五分三十二秒を返してください」

こ、細けぇ~!!これ将来、ねぇ....なんでほかの人と話してたの?私以外とは喋っちゃいけないって言ったでしょ?ねえ、とか言っちゃうヤンデレになる娘だよ。

「まぁ、いいです。ところで、何を注文したんですか?」

「いや、普通に「お客様お待たせしました。シングル ベンティ キャラメル アーモンド ヘーゼルナッツ モカ ホワイトモカ ツーパーセント チョコチップ エキストラホイップ キャラメルソース チョコソース ジェリー バニラクリームフラペチーノ一つです」

「気持ちワルです」

ニコッと笑顔で言われてしまった。TKじゃないが、ぞくぞくさせられてしまう。



とまぁ、ようやく本題というか、今日の予定について聞く。

「予定と言っても、今から一時間後のモデルの仕事をしてから、私と同じような新人たちとの仕事があるぐらいですので、そう緊張しないでも大丈夫です」

そんなこと言われても、形だけなんだろうがマネージャーは初めてだし、なるとは思ってもなかったし。大丈夫じゃないんだがな。

「それなりにがんばるが、仕事があるってことはどこかの事務所やらに所属してるんだろ?なら、マネージャーぐらいいそうなんだが」

「名も売れてない私みたいなのにマネージャーが就くような余裕なんて事務所にはないです。事務所は大抵のことはしてくれますが、仕事は自分で得るものです」

素直に関心していると、遊佐衣さんが立ち上がる。

「では、時間ですのでスタジオへ行きましょう」

「りょ~かい」

気の抜けた返事をしてんじゃねぇぞ雑種とでも言いたげな、顔をしている遊佐衣さん。

「気の抜けた返事をしてんじゃねぇぞ雑種☆」

実際言われてしまった。




こういう一般人には無縁の場所に来るのは、やはり興奮する。

「ST事務の遊佐衣です。今日はよろしくお願いしますぴょん☆!」

ON,OFFの差が激しい遊佐衣さんである。こういう裏側見たくなかったよ。

「ッツ~~!!!」

右足に突き刺さるような痛みが走る。
原因を探るために右足を見ると、ドジっ娘遊佐衣さんが踵で踏みつぶしている。

「挨拶しろぴょん。杵で叩き潰されたいのぴょんか?」

俺にだけ聞こえる声量で笑顔を保ちながら発せられる言葉にガクブルしながら全力で挨拶をする。

「遊佐衣のマネージャーの音無です。今日は遊佐衣をよろしくお願いします」

杵は餅をつくハンマーのことだよ。これ豆知識。

お願いしま~すと、ところどころから聞こえてくる。

「じゃ、着替えてくるので待っていてください」

それだけ残し、衣装部屋へと去っていった。
どうしたもんか、と、考えていると。

「君が遊佐衣ちゃんのマネージャーか若いね~」

長く伸ばした髪を後ろで束ねて、首からカメラをぶら下げている。カメラマンか。

「えぇまぁ」

「遊佐衣ちゃん、ああいうキャラだから同年齢の娘たちによく思われてないみたいだから、その辺は君がしっかりとしてくれよ。俺、あの娘のこと気に入ってるからさ」

「分かりました。全力でサポートします」

いやいやだったこの仕事だったが、色んな人から愛されてる彼女の支えとなれるのなら、がんばるしかないよな。







「あ~疲れたぁ~」

折角決意をしたのにすぐに後悔してしまってるこの現状。

俺が運転している車の助手席でスライムみたいにぐったりではなく、グッちゃりしてる遊佐衣さん。

えっ?なんで、車に乗ってるかって?遊佐衣さんが歩くの疲れルゥ!!!と語尾が異常に発音良く駄々を捏ねられて、結果俺が事務所まで車を借りに行くことになってしまったのだ。一応免許は持ってるしな。

「次の仕事って具体的には何をするんだ?」

「そうですね。今回は新人の紹介を目的として、撮影と自己紹介動画を撮るんです」

同じ新人たちとこの仕事をするのか。こいつと同じ新人か、もしかしてネコ耳とかイヌ耳とかとかいるわけないよな………。




遊佐衣さんが例外であって、他の新人たちはみな可愛らしい娘ばかりだった。

ついでに言えば、何故かマネージャーである俺が新人たちのサポート役に半ば無理やり抜擢されてしまった。

「それもそうだ。あんなのいるわけないよな」

無事に着き、さっきのスタジオよりも広い場所での撮影。新人は話によると十数人いるんだっけかな。

撮影準備が終わったことを遊佐衣さんたちに伝えるべく、楽屋に向かっていると廊下の奥の角から声が聞こえてきた。

興味本意でそのまま曲がらずに直進すると声が大きくなってきた。気づかれないように壁に張り付き曲がり角の方に顔を出すと、五人ほどの女子が話し合っていた。

確か、あれって新人の娘だよな。

「ったくさぁ、何あの遊佐衣?っていうやつ。ほんと癇に障るんだけど」

「ほんとほんと。うさ耳付けて、語尾にぴょんとかキモすぎ」

「とりあえず、ちょっとイタズラ仕掛けといたから~」

「さすが~。これであいつも懲りるっしょ」

自然と拳に力が入る。今すぐにでも殴り込みたいが、それだと逆に遊佐にいや遊佐衣に迷惑がかかる。
頭を冷やすが、心の中は沸騰している。

「ここにいましたか。撮影準備ができたようなので準備をお願いします」

「「「「「はーい分かりましたー」」」」」

そのまま五人を連れて楽屋に入る。

「では、それぞれの衣装に着替えて下さい」

談笑の和に入れずぽつんとしていた遊佐衣の元へ行きたいが我慢し楽屋から出る。

五分ほどすると疎らにスタジオに入る娘たちが出てきたが、遊佐衣の姿がなかった。
さっきの自販機にいた女子たちもスタジオに入ってきたが、何故かクスクスと笑っていた。


『とりあえず、ちょっとイタズラ仕掛けといたから~』あの時の言葉を不意に思い出す。

「ふざけやがって!」

全力疾走で廊下を走り、楽屋のドアを勢いよく開けると……。

切り刻まれた衣装とウサ耳を持ち突っ立ている遊佐衣がそこにいた。俺に気づくと笑顔を浮かべる。

「やっぱりこの業界は厳しいですね」

ゆっくりと近づき見ていられない痛々しい笑顔を覆うべく胸にうずめる。

「訴えますよ?女子中学生に許可なく抱きしめるなんておかしいと思います」

「そうか。言っただろ?妹の親友は俺の義妹だって。なら、業界が厳しい分、俺がお前に優しくしてやるよ。だから顔をあげろ」


肩を掴み遊佐の目線に合わせるように屈む。

「それに、俺はお前のマネージャーだ。どんな無理難題だって解決してやる。遊佐、お前は俺に何をして欲しい?」

ギラギラと野望に燃える目が目線の先にある。

「奴らをあっと言わせたいです」

「任せとけ!」





監督たちにはもう五分待って欲しいと頼み込み、渋々了承してくれた。

「あんなカッコイイこといったのに間に合うんですか?」

「衣装方は問題ない。あと五秒待て」

「5、4、3、2、1!!!」

俺以上に勢いよくドアを開け放つのは……。

「お待たせな。遊佐衣ちゃん、音無よ」

「例のものは持ってきたか椎名」

投げつけられたバッグをキャッチしファスナーを俺開けると煌びやかな可愛らしい衣装がそこにあった。

「ビルの上を走りながら作っていたから細かいミスがあるだろうが許してくれ」

普通はここでツッコミをするのだが、今は感謝するしかない。
早速、衣装を手渡すと遊佐衣は目を輝かせていた。

「ありがとうございます椎名さん!!」

「何、気にするな。私もたくさんのキュートを貰ったからな。このくらいどうってことない」

あと二分。俺は間に合うことを監督たちに伝えるためにスタジオへ走った。

息を切らせながらも監督たちに伝え、遊佐衣を待つ。

「お待たせしました!!!遊佐衣です!」

ピンク色のニーソにフリルの付いた白いミニスカート。お尻にはうさぎの尻尾。スタジオの誰もが遊佐衣に目を奪われていた。

「アイドルみたいだぞ」

「アイドルですから!」

自信満々の彼女に俺から一つのプレゼントを渡す。

「大事なウサ耳忘れてるぞ」

同じく椎名に頼んどいたもの。ティアラをベースとしたウサ耳を遊佐衣に付ける。

「お礼は後で聞いてやるからさっさと行ってこい。あっと言わせたいだろ?」

「了解ぴょん!」






彼女は今日一日で本物に何歩も近づいただろう。
やれやれ、ほんと世話のかかる妹ができたもんだよ。







今日の仕事を音無さんと椎名さんのおかげでなんとか、成功した。二人には本当に感謝です。

暗い夜道を歩きながらもニヤつきが止まらなくなってしまった。初音ちゃんが羨ましいなぁ~。

「こんばんわ遊佐衣ちゃん」

突然声をかけられ、咄嗟に振り向くと男性がいた。

「どなたですか?」

「君のファンだよ」

全身が寒気に襲われる。男性からは、ねっとりとした雰囲気が滲み出ていて、すぐに逃げたいが足が地面に吸い付いてるように動かない。

「遊佐衣ちゃんもアイドルとかモデルを目指してるんなら、警戒した方がいいよ。誰かに襲われるかもしれないんだから、僕みたいなのにね」

ゆっくりと足並みで近づいてくる男性。
逃げなきゃ!!逃げなきゃ!!動いてよ!ねぇ!!

「やだ……やだ……」

近くまでやってきた男性は不気味な笑顔を浮かべる。

誰か助けてよ!!











(助けてやろうか?)

だ、誰!?

(誰って酷いな。ワタシはお前だよ。お前はワタシだよ)

意味が分からないよ!!

(分からなくていい。助けてほしいのか?ほしくないのか?)

助けて!!なんでもするから、なんでもあげるから助けて!!

(そう必死になるな。バッグに入っているハサミを持て。それだけでお前は助かる)


がむしゃらにバッグの中身を地面に落とし、ハサミを手に持つ。

「グッ!?」

長く永く深く静かに沈みこめていたモノ。

本当の私。

男を憎み、恐れ、恨み、壊し、刺し、殺し続けた私。

ハサミはワタシの狂気であり凶器。




生暖かい液体が顔や服、手、ハサミに付着している。
地面には赤く紅く朱く緋く綺麗な液体が溜まっていた。
汚物が地面に倒れていた。
ワタシが刺した。

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!」





「さて帰ろっと」




満月は紅く染まっていた。

 
 

 
後書き
どうも、騎士見習いです。

上げて落とす!ゾクゾクしますよ、まったく。
とまぁ、今回は椎名さんの忍者っぷりが、でてきましたね。そして、遊佐さん!?!?

どうするんだい音無くん!!

次回ですが、あの頃遊佐さん登場で荒れて狂う。

では、あらためまして読んでくださってありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
(感想、意見、評価お待ちしてます)

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧