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塗り壁

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2部分:第二章


第二章

「それを退治するのも武士の務め」
「そういうことじゃ。それもじゃ」
「はい、その為にも」
「行くぞ。よいな」
「わかりました」
 こうした話をしてだった。二人は。
 夜道を進んでいく。暫く進んでいると。
 二人の前にだ。何かがあった。
 それはだ。壁だった。その壁を見てだ。
 十郎はだ。五郎に尋ねた。
「何だと思う」
「この壁ですか」
「いきなり出て来たのう」
 いぶかしむ顔でだ。彼に尋ねるのだった。
「これまた急に」
「そうですな。となると」
「これが妖怪か?」
 そのだ。噂になっているそれではないかというのだ。
「まさかと思うが」
「確かに。そうした感じですな」
「この妖怪はあれじゃな」
 ここでだ。十郎は己の頭の中で考えて述べた。
「塗り壁じゃ」
「塗り壁ですか」
「そうじゃ。夜道に人の前に立って通せんぼをする妖怪じゃ」
 それがだ。今自分達の前に立っている妖怪だというのである。
「それがここに出て来る妖怪だったのか」
「妖怪はまことにいたのですな」
「そうじゃな。それでじゃが」
「それでとは?」
「この妖怪は通せんぼをするだけじゃ」
 そうした妖怪だというのだ。今自分達の目の前に立っている妖怪は。
「ただそれだけなのじゃ」
「これまた訳のわからん妖怪ですな」
「しかしじゃ」
 それでもだとだ。ここで十郎は言った。
「この妖怪が前におってはじゃ」
「前に進めませんな」
「どうしてもな。どうしたものじゃ」
「さて、どうしましょうか」
「とりあえずじゃ」
 十郎は腰の刀を抜いた。それでだ。
 その妖怪塗り壁を横に切った。しかしだ。
 感触はなくしかもだ。塗り壁は相変わらずそこにいた。
 それを見て今度は突いてみた。しかしだ。
 今度も同じだった。感触はなく塗り壁はそこに立っている。それを受けてだ。
 彼は五郎にだ。こう言うのだった。
「駄目じゃ。刀は効かん」
「効果なしですか」
「手応えがない」
「ではこの妖怪は幻ですな」
 兄の言葉を受けてだ。五郎はこう考えた。
 それでだ。彼も前に出てだ。そのうえでだ。
 塗り壁に突き進み通り抜けようとする。幻なら通り抜けられると思ってだ。しかしだった。
 それもだ。駄目だった。
 妖怪にぶち当たりそれでだ。通られなかった。それを受けてだ。
 彼はだ。いぶかしむ顔になり兄に言った。
「駄目です」
「通り抜けることもできんか」
「はい、駄目です」
「ううむ、どういったことじゃ」
 十郎もだ。いぶかしむ顔になり述べた。
「これは一体」
「それがわかりませんな」
「全くわからん」
 彼は言う。
 
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