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心霊写真

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3部分:第三章


第三章

「やっぱりこれって」
「じゃああの人はまさか」
「やっと現実を受け入れたんだね」
「あれか。その前の神主さんの」
 そのだ。空襲で死んだ。
「奥さんか」
「そうでしょ、やっぱり」
「幽霊なんだな」
 玲は自分でも驚く程冷静に述べた。
「いたんだな。本当に」
「怖がらないんだ」
「今更怖がっても仕方ないだろ」
 本当に冷静に返す玲だった。
「目の前にいるんだからな」
「じゃあいいかな」
「写真か」
「それ撮るよね」
「これに映っていたら完全に信じるからな」
「自分の目は信じないんだね」
「人間の目は一番確かだってな」
 玲はよく言われているそのことを話した。
「あれな。一概にはそう言えないからな」
「見間違いだってあるしね」
「だからこうして写真にも撮るんだよ」
 それでだというのだ。
「それで心霊写真だったらな」
「信じるんだね、幽霊のことを」
「それで完全に信じてやるよ」
 こう言ってだった。玲はカメラを出して構えてだ。
 そのうえでその血塗れの人を写真に撮る。そうしてだった。
 彼は晃にだ。静かに言った。
「じゃあ帰るか」
「そうだね。それじゃあね」
「しかし。何で神社に幽霊なんているんだろうな」
 神聖な筈の神社にどうしてかというのである。
「それは何でなんだろうな」
「別に悪い霊じゃないからじゃないかな」
「それでか」
「悪霊とかだったらお祓いするだろうし。ここ神社だし」 
 例え身内であってもだ。そうなるというのだ。
「だからね。別にね」
「いいのか」
「そう。いいんだろうね」
「そういえば俺達が今こうしても何もしてこないな」
 玲もこのことに気付いた。
「じゃあ大丈夫か」
「うん、じゃあ落ち着いて帰ろうか」
 そんなことを言いながらだ。兄弟はとりあえずその幽霊に頭を下げて帰る挨拶をしてだ。それからだった。 
 写真屋にカメラを持って行って復元してもらう。その結果だ。
 写真にだ。見事にそれが映っていたのだった。もんぺ姿の血塗れの人がだ。しかもそれに加えてだ。
 無数のだ。怪しい影が映っていた。それを見てだ。
 玲はだ。自分の家の自室で弟に対してだ。こう言ったのである。
「これは予想したか?」
「いや、流石に」
 予想していなかったとだ。晃も言う。
「あの人だけじゃなかったんだ」
「うじゃうじゃいるな」
 引いた顔で写真を観ながら言う玲だった。
「霊ってのは」
「そうだね。けれどこれで信じるよね」
「本当にいるんだな」
 目だけでなく写真でも確かめたうえでの言葉だった。
「それがよくわかったよ」
「じゃあこのことクラスの人達にも話すんだね」
「約束は約束だからな」
 そうするとだ。晃に答える。
「それじゃあな」
「うん、皆にその写真見せるんだ」
「ああ、見せる」
 それは絶対にするとも答える。
 
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