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3部分:第三章


第三章

「フォモールをな」
「わしを知っているのか」
「毒の巨人だな」
「如何にも」
 その通りだとだ。巨人も言う。
「わしは巨人だ。そしてこの全身はだ」
「毒があるな」
「この毒で全てを腐らせ爛れさせる」
「だからか」
 遠くから見ている従者はだ。巨人の今の言葉でわかった。
「村人も畑も」
 やはり巨人のせいだったのだ。巨人が暴れその毒によってだ。全てを腐らせたのだ。
 そのことがわかったのだ。そしてその巨人にだ。
 ホリンはだ。こう言うのであった。
「私は貴様を倒してだ」
「この地も人も救うのか」
「そうだ。そうする」
 こう巨人に話すのだ。
「覚悟はいいな」
「わしを倒すか。人間が」
「人間でもできる」
 実はホリンはその血の半分は神のものだ。しかしだ。
 彼は今はそれについて言わずだ。人として巨人と対峙してそのうえでだ。
 右手に持った槍を巨人の顔に突き付け。宣言した。
「貴様を倒す」
「ではやってみるがいい」
 巨人は余裕に満ちた調子で彼を見下ろし言葉を返す。
「わしを倒せるのならな」
「では行くぞ」
 こうしてだ。戦いがはじまった。
 巨人はその巨大な身体に加えて口から不気味な紫色の霧を吐き出してホリンに襲い掛かる。言うまでもなく毒の霧だ。
 ホリンが霧をかわすとその霧は砂浜に落ちる。そしてその砂浜を溶かしていく。するとそこから不気味な瘴気さえあがる。
 その瘴気を横目に見てだ。ホリンは言うのだった。
「この毒でか」
「フォモールの毒だ」
「この毒で全てを腐らせ爛れさせるか」
「貴様もそうする」
 そのだ。ホリンもだというのだ。
「今からな」
「できればな。しかしだ」
「しかしというのか」
「私は言ったことは必ず果たす」
 槍を構えながら。巨人に告げるのだった。
「そう、貴様を倒す」
「言うものだな。面白い人間だ」
「私にはそれができる力があるからだ」
 こう言いだ。身体に力を入れるとだ。
 これまで美女の様なホリンの姿が変わった。その姿は。
 右目は飛び出て左目はくぼみだ。髪は逆立ち。
 全身から血を噴き出す。そうした恐ろしい姿になったのだ。
 そしてその姿でだ。槍をだ。
 下に投げ捨てその途中でだ。端を蹴ったのだ。
 すると槍は下から上に飛びだ。巨人を突き刺したのだった。
 そして巨人の胸の中でだ。無数の針を棘を出し飛ばしたのである。
 それが終わってからだ。巨人の巨体が揺らいだ。
 傷口からドス黒いものが混じった紫の血を流しながら。巨人は言うのだった。
「この槍は」
「ゲイボルグという」
 その槍の名前を言うホリンだった。
「この槍で倒せない者はいない」
「まさか。巨人のわしを」
「そうだ。貴様でも倒せるのだ」
 そうだというのである。ホリンの姿は既に元の美麗なものになっている。
「こうしてだ」
「まさか。人間がわしを倒すとは」
「言った筈だ。倒せるとな」
「しかしだ」
 巨人は顔に死相を浮かべながらホリンに言う。
 
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