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ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
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悪夢襲来

「……これで、体勢は決したな」
ダークは静かに言い、剣を振るう。
後ろでは、魔法職の日本人プレイヤー達が、覚えたての神聖術を使い、怪我をした日本人プレイヤー達を癒していく。
『後は、コイツら殲滅すりゃ終いだな!』
ラインが近寄ってきて言う。
「慢心するな。敵がまた何処から現れるか、解った物ではない」
ダークは唯、静かに言う。
現在のダークは、ダークネスウイングではなく、シャイニング・ウイングとしての性格で動いている。
だからこそ、慎重にならざるを得ない。
『おいおい、これだけプレイヤーが集まってるんだぜ?』
「そこの半分怪人。そこの刀使いの言う通りだぜ」
ラインを半分怪人と言って現れたのは、神機を二本持ったキリトだった。その姿は、まさに神を狩るもの。
「俺の世界じゃ、慢心すると、必ずアラガミに喰われた。幾ら個々の世界で最強と呼ばれていようが、ここでは関係無い。警戒しろ」
『何だとぉ!?キリトの癖に!!』
ラインとキリトの口喧嘩を横目で見ると、リスタート・ライティングに籠められた力を解放。近付く敵を強制的にログアウトさせる。
「……このまま、終わってくれると有難いんだがな」
「うん」
いつの間にか、横に(ミヤビ)が居た。嫁と言っても、本編後の話だが。
すると、ダークは不意に、何かを感じとった。
(何だ、今の……?殺気……みたいなものが)
周りを見ると、巨大な神像の上に、誰かが立っている。黒いポンチョを着て、フードを口元まで引き下げている。
と、そこでダークがリスタート・ライティングとシャドウ・バーサークを落とした。
「翔夜?」
「馬鹿な……!俺は、亡霊を……見ているのか……?あのポンチョは……マジかよ……!!」
ダークは、先程相手をしていた相手の言葉を思い返してみる。
「PoH……貴様……貴様ァアアアアアアアアッ!!」
ダークが吼え、ミヤビが下がる。覇気に驚いて下がったのでは無い。暗黒の闇の滅殺者の闇が、ダークから溢れ出ていたのだ。
PoHは右手を生気の無い動きで振る。
途端、新たにまた、人影が出現した。
新たな集団の出現は、日本人プレイヤーにとっても、ダーク達にとっても、人界軍にとっても、悪夢でしか無かった。
しかも、今度はアメリカ人ではない。
姿形はどう見ても違う。あれらはーーーーー
「……ヤバい、ヤバいぞこれ……!」
ダークは闇を制御し続け、正気を戻し、今一度確認して焦り出した。
「……ミヤビ、全員連れて逃げろ。いや、下がってくれ!!」
「ど、どうしたの!?」
「ありゃ、アメリカじゃねぇ!あいつらは……中国と韓国の連中だ!!」
ダークが言うと、アスナも事の重大さが理解できたのか、人界軍に避難勧告を出した。
そして、次の瞬間には、像が動きだし、敵を叩き落とし、潰す。
「ミヤビ、辺りを頼む!!」
ダークはそう言うと、ライン、キリトを掴み、走る。
「何だよ刀使い!」
『ダーク、どういうつもりだ!?』
「喧嘩してる場合か馬鹿共が!!」
闇のせいで、ダークネスウイングに戻ったダークは、神力を使ってタツに念話を放つ。
『ダークさん?』
「タツ、見えてるか!!」
『確認してます。此方も、アンダーワールド人を最優先に退避させます』
「頼む!!終わったら即座に来てくれ!!」
『解りました。シャドウ・リパルサーさんと共に行きます』
タツは言うと、念話を切り、ラインとキリトを離して、神器・暗黒星雲を展開して、日本人プレイヤーの前に出る。その前には、中国と韓国のプレイヤー達。
「俺らで奴等を食い止める!!ハイレベル以外はアンダーワールド人の護衛に行け!!」
姿を見たものは、一瞬で理解したのか、ダークの指示に従って下がっていく。
と同時、中国と韓国のプレイヤー達は動き出した。
「……コレ、ヤバい展開だな」
『何しろ、日本人と折り合い悪いしな』
「ごちゃごちゃ言うな!後でライトの馬鹿が殴り込みに行くさ!!」
ダークは、相棒の復活を確信し、神器を振るう。
『タイヤコウカン!アラブール!!』
「ダァアアアアアッ!!」
そこに、ロードが漸く現れた。
「遅い!」
「ごめん!!今さっき交代してきたばかりでさ!!」
ゼンリンシューターでヘッドショットを立て続けに見舞うと、ラインが動く。
『エボリューション!マキシマムドライブ!!』
『ブレイブアブソリュートゴッテボリューション!!』
二本の剣を出し、乱舞を放つ。
中国と韓国プレイヤーは一気に吹き飛ばされては行くが、消える気配がない。
(くっ……リスタート・ライティングを使えれば……!)
向かってくる剣をいなし、ダークは心の中で悪態を付く。
元々、リスタート・ライティングはシャイニング・ウイング限定の仕様の疑似神器。シャイニング・ウイングと混合しているリベレーションモードで無いと持つことは愚か、振るう事も出来ない。ミヤビの世界に居たときは、何故か振るえたが。
「くそっ……!メテオッバスタァアアアアアアッ!!」
ロードの銃剣を出し、レーザーを見舞っていく。
だが、幾ら獅子奮迅の攻撃を放つダークらチーターズが居ても、彼らの戦力は増え、逆に此方は戦力は減っている。恐らく、差は二万と少し。
それでも、世界を見た神は、諦めていない。チーターズも、ダークの姿を見て、剣を振る。
「神様嘗めんなぁあああああっ!!」
ズババババッ!!
神速の剣技が閃き、相手していたプレイヤー達を細切れにする。
「ライトが……キリトが……救った世界を……守るんだ!!」
血を浴びながら、ダークは叫ぶ。
途端、ダークはリベレーションモードへ変化した。
「バァアアアアアアストォオオオオオオオッ!!ブレイカァアアアアアアアアアアアアアッ!!」
神技・バーストブレイカー。
ダークの神技が吹き荒れ、次々と吹き飛んでいく。
『バースト!フルスロットル!!デッドヒート!!』
『ダークネス!マキシマムドライブ!!』
ロードとラインの同時攻撃が放たれ、更に被害を拡大させる。
だが、決定打にならない。それはラインもロードも良く知ってる筈だ。
『一人で背負うな』
ラインが言う。
『お前は、もう一人じゃ無いだろ』
「そうだよ」
ロードが言うと、ダークは無言で立つ。
そこに、タツ、シャドウ・リパルサー、ミヤビ、キリト、そしてミヤビに付いてきたサナとミザールが来る。
「……」
ダークは無言のままで剣を持つと、それは闇に包まれる。
「翔夜!!」
「知ってるか?」
ダークが口を開き、左目を向けて言う。
「本当に強いものは、何かを救うって事じゃ無い。……自分の弱さを知ってる人間だって」
次々と倒れていくプレイヤー達を見て、ダークは剣を、地面に刺した。
そして、言う。
『主神ゼウスに奉る。我が神力、その全てをお返しいたします』
途端、ダークネスウイングを包んでいた装備は消え去り、SAOダークの装備だけが残った。だが、地面に残った二振りの刀ーーーーーシャドウ・バーサークとリスタート・ライティングだけは、その場に残る。
一つは、彼の城で最後まで付き合ってくれ、また今でも支えてくれる漆黒の剣。もう一つは、愛する者が想いを託して渡した、純白の剣。
そのどちらも、ダークネスウイングの神力に晒されていようと、消えることが無かった。
「さぁて……初心に帰って、ショータイムと行こうか!!」
二振りの刀を抜きながら駆けると、最初に見えた敵を斬る。
「一人!」
次に、その隣を。
「二人、三人!」
そして、襲い掛かる敵の方を向き、貫く。
「四、五、六人!!」
回し蹴りを混ぜて、周囲を散らばらせると、日本人プレイヤー達を見る。
全員、武器で磔にされている。それを見て、ダークは更に冷静になる。
「……感謝するぜ。俺に、初心に戻してくれるだけでなく、こうして、頭まで冷やしてくれるなんてな」
ブォオオオン!と甲高い音がし、蒼い風が敵を吹き飛ばす。
「フォーミュラ、トレーラー砲!」
トレーラー砲を掴むと、スライドして、フォーミュラをセットする。
『フォーミュラ砲!』
「ハッ!」
ドキュン!ドキュン!!
蒼いタイヤの弾丸が放たれ、打ち砕く。
「荒れるぜ……止められるなら止めてみろ!!」
トレーラー砲を投げ付けてぶつけると、蹴りを放つ。中国と韓国プレイヤーは驚き、そのままぶつかる。
「乱戦・豪華絢爛!!」
神技、乱戦・豪華絢爛。体術と剣術を混合したコンバットアーツ。
ダークはそれを、生身・SAOステータスだけでやってのける。
そして、その集団を跳ね退けると、
アスナに向かうPoHに狙いを定める。
「いっけぇえええええっ!!」
心意・真紅撃(スカーレットストライク)。真紅の焔は竜と化し、アスナとPoHの間に焔を巻き起こした。
「ヒュウ~……。まさか滅殺者直々のおでましとはなぁ?」
「ふざけるのは止して貰おう」
黒いコートをなびかせ、ダークは言う。
すると、PoHは言う。
「コイツらにも言ったが、武器を捨て、抵抗を止めろ。そうすれば、お前らも、後ろの捕虜も殺しはしない。閃光も言うことは聞いてくれるってよ?」
ダークはアスナを見ると、涙を流している。ダークはそれを見ると、足を一歩出し、そしてーーーーー

「天城流体術『終ノ型 無音』」

PoHを吹き飛ばした。
「ダーク君!止めて!!」
「諦めるなんてらしくねぇぞ、馬鹿」
アスナを見ないでダークは言うと、捕虜を見て、言う。
「要するに、捕虜取られたから諦めてるだけだろ」
ダークは言うと、神速を発動して、辺りを蹴散らし、解放する。
「俺のステータスは、“不可能”を“完全可能”にする!!」
そう言うと、椅子に座るキリトに言う。
「いい加減に起きろよ、キリト。嫁さん待ってんだぞ?」
「なっ……!?」
アスナが顔を赤くすると、ダークは苦笑する。
「おっと。結婚はまだ先だったな?」
「……かえったらおぼえておきなさい」
アスナは言うと、PoHが起きてくる。
「滅殺者ァアアアアアアアアッ!!」
「悪いが俺は、もう滅殺者じゃ無い!!」
吼え返し、ダークは叫ぶ。
「俺は……銀影の侍ダーク!闇と光を背負う者だ!!」
シャドウ・バーサークとリスタート・ライティングが光輝き、一つとなる。
銘は『シャドウ・リスタート』。意味は『影の再出発』。
まるで、今のダークを指している刀だった。
「殺れ、てめぇらァアアアアアアアア!!」
オオオオオオッ!!
と、プレイヤー達が叫び、一斉に襲い掛かる。
「おせぇ!!」
が、神速でそれらを回避し、PoHに接近する。
PoHはそれを見ると、中華包丁みたいなダガーを取り出す。
PoHの得物『友切包丁』だった。
「今更しゃしゃり出てきてッ!!」
「PoH、今までの言葉使いはどうしたぁっ!!」
シャドウ・リスタートを振るい、友切包丁と相対する。
白い刃と、禍々しい赤い刃がぶつかり、火花を散らす。
「あの時、テメェを殺しとけば良かったな、ダーク!!」
「テメェじゃ殺せねぇよ!!」
刃を弾き、ダークはキリトの所まで、PoHは指揮していた所まで、下がる。
「ユージオ!!」
ユージオに叫ぶと、青薔薇の剣を投げ付けられる。
それを受け取り、構えようとすると、プレイヤーが大量に押し寄せてくる。
「しゃらくせぇえええええっ!!」
心意の壁を出すと、一斉に動きを止める。それに、左右の武器を振るい、吹き飛ばす。
「あめぇんじゃねぇの?俺を倒すなら……そうだな、SAOボス五兆は連れてこいよ」
大胆不敵とはこの事か、いや、或いは無敵艦隊とでも言うべきか。
ダーク単体は、最早ステータスの域を越していた。
すると、そこに雷撃が走った。
「ロード……!」
「アハハ……と、言いたいがな」
口調を変えたロードは装備を変えると、雷を帯びた手甲で地面を殴った。
途端、地面から雷撃がほとばしり、プレイヤー達をこれでもかとばかりに殲滅する。
「あーくそ……やっぱ駄目だな。ロードの真似すんの。かったるい」
真紅の髪が翡翠色の蒼に変わり、眼も翡翠色に、装備は嘗てのSAOを救った、英雄の鎧を纏っていた。

「天城来人、現……着!」 
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