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ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
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雷撃の兆し

守備軍囮本隊と合流したロード、ユイリ、ユリア、そしてダークと漆黒騎士団は、守備軍本隊と共に奇妙な形の枝葉を伸ばした木が密に生える一体にその姿を紛れ込ませていた。
構成は、衛士が千二百、修道士が百、補給部隊が三十、そこに漆黒騎士団五十。
指示の方向は団長ジョーらに任せ、ダークは拳闘士と戦うため、破皇拳の発動準備に入っていた。
レンリの指示も在り、補給部隊の護衛も兼ねて、その馬車に乗っていた……が。
「おい、てめぇら」
ダークは、敵の前に立っていた。
「ほう、中々やるな」
オーシャンタートル襲撃チームの一人、ヴァサゴ・カルザスだ。
「何でここがわかったか知らんが……早々に現実に退場してもらうぞ!!」
「そうは行かねぇな!」
ヴァサゴ・カルザスの隠蔽は確かに誰も気が付かなかった、がダークは神力を解放して、周囲一体に捜索魔法を発動していた。
ダークだからこそ出来る芸当。ダークは素早く剣に戻すと、馬車から出て、ヴァサゴに踵落としを放つ。
「レンリに伝えろ!!百人規模で暗黒騎士団が攻めてきたって!!」
「っ、ハイ!!」
ロニエが言うと、暗黒騎士団が即座に現れる。
「行け、お前ら!!」
言うと、ダークがロニエの前に立つ。
「俺はもう……とっくの昔に考えてるのは止めてるんでな!!」
ドライブの世界にいた頃、よく言った言葉。ダークは、その言葉を口にすると共に、姿を変えた。
「俺は神である前に人だ!死にてぇ奴は掛かってこい!!この……」
銀色の髪、黒いコート、背には漆黒の太刀。
滅殺者『黒鉄翔夜』が、そこに居た。
「全てを喰らう深淵の王に掛かって来やがれ!!」
背の太刀ーーーー『死斬・鬼人刀』を抜き放つや否や、狩人剣技『鬼人大回転斬り』を放ち、ヴァサゴに突撃する。
ギィン!!
ヴァサゴは剣で受け止めると、周りの騎士団が一斉に群がる。
「ほう……一斉か、悪くないな。が」
ヴァサゴを蹴り飛ばし、もう一つの漆黒の太刀ーーーー『ZERO・WORLD』ーーーー異世界の唯一にして無二の親友がくれた太刀を抜き放ち、構える。
「軛を破壊しろ……『螺旋』!!」
滅殺剣剣技『螺旋』。
本来は剣技の無効に重点を置かれている剣技では在るが、今のダークはそれに心意を乗せて放っている。
螺旋に巻き込まれた騎士団は、そのまま跡形も無く消え去った。
「神に命を捧げますってか?って俺が神だった……っと!」
背後から襲ってきた暗黒騎士の顔面に肘うちすると、そのまま腕を取って背負い投げる。
「さぁて……エンジンも暖まって来たし……ひとっ走り付き合いな!!」
ゴッ!と地を蹴り、騎士達を吹き飛ばしていく。
滅殺剣最上位剣技が一つ『デスレイド・フレイバー』。
元を言ってしまえば、オレンジ・レッドギルドと戦う為だけに作られた最上位剣技の一つで、言うなれば、撃滅の連続剣技だ。
それに元々、ダーク自体の戦闘能力も在り、徐々に騎士達を殺していく。
「さぁ……次はどいつだ?」
睨まれた騎士達は一斉に下がる。が、ただ一人、下がらなかった者が居る。
ヴァサゴだ。
「ああ……見たこと在ると思ったら、“滅殺者”かよ」
ヴァサゴの言葉に、ダークは答える。
「そちらも相変わらず人殺しに興じているようだな、PoH?」
ダークは即座に言うと、ヴァサゴ……否、PoHは口笛を吹く。
「何処で正体を見破ったか知らんが……参考までに?」
「教える訳ねーだろ!!」
ドゴォッ!とダークの拳が地面にめり込む。PoHが回避した拳が地面に刺さったのだ。
「俺的には全てを終わらせたいんだがな……ちっ、SAOからAWまで、事件が終わって無かったとはな……!」
ダークは言うと、蹴りを放つが、往なされる。
「ハッ!がら空きだぜ?」
「何処が!!」
往なされた右腕を軸に、回転蹴りを放つ。
しかし、それも掴まれ、投げられる。
「うおっ!」
地面になんとか着地すると、突然、光が振り注いで来た。
「……あ?」
ダークは見ると、誰かがその光の中心に居る。
途端、残っていた騎士全員が巨大なクレヴァスに飲み込まれ、消滅した。
「……オイオイ、どこぞの誰が神アカウントなんてもん使って入って来やがったんだ……?」
ダークにはアカウントと言う以外分からなかったが、少なくともダークと、その後ろにいる後方部隊を守ってくれた人物と言うことは解る。少なくとも、味方だ。
と、そこにオーロラがPoHを飲み込み、真下にクレヴァスを開いた。
すると、PoHが口を開いた。
「ありゃあ…………“閃光”じゃねぇか」
その言葉の意味を理解した俺は、真上を見る。
「……アスナ!」
ダークが叫ぶと、その人物は手を振った。
閃光アスナ、キリトを救うために、危険を顧みずAWに入ってきた、後の王妃だった。
















†††
















戦闘の後、一時の休息時に、ダークとロードはアスナに会いに行った。
「よう、アスナ」
「ダーク君、ロード……君?」
「やっほー!」
陽気な声の馬鹿に頭にチョップをかましたダークは、アスナの目の前に座り、言う。
「神アカウントまで借りて入って来るか、普通?」
「そうも言ってらんなかったのよ。オーシャンタートルを襲撃してきた人がここにダークテリトリーのアカウント使ってまでいるんだもん。相応のアカウントで乗り込まないと行けないって菊岡さんが」
「ま た あ や つ か !」
ロードにアッパーを放つと、綺麗な弧を描いてノックアウトした。
「……まぁ、来ちまった物はしょうがないか」
「あ、そうそう。不思議に思ったんだけどさ」
と、アスナが笑っているようで笑ってない顔を見せて言う。
「ダーク君、君、何でいるの?」
「前に言っただろうが、俺は神だぞ。生身で入ることぐらい可能さ」
返答に驚いたのか、またはその回答に驚いたのか、アスナはポカーンとする。
「な、生身で……?それって危ないんじゃ……?」
「下手したらそのまま死亡確定だなわらわらっと」
ダークは言うと、肉を口に運んで食べる。
「ちょ、それ洒落にならないでしょう!?ミヤビ……ちゃんだって怒るよ絶対!!」
ミヤビとちゃんの間で溜めが入ったのは恐らく聞かれてないか心配だったのだろう。
「だろーなー。此処で死んだら現実には彼奴しか居なくなるし」
それでも、平然と言うダークに、アスナが詰め寄る。
「何平然と言ってるのよ!!それはつまり、ミヤビちゃんを一人で残すって事なのよ!?死んだらミヤビちゃんに怒られるよ!!」
「だろうな……。彼奴の事だから、きっと多分、ガチで切れて数日は説教かもな」
ダークは平然と言うと、アスナは呆れる。
「……何処に生き残れる自信が在るのよ」
ダークはそれに対し、こう答える。

「俺は死なねぇよ。今はまだその時じゃない。殺せるのは俺の知る限りでは一握りだ」

異世界の人物達を入れても、ダークを討伐出来る人間は少ない。勿論、この世界でも。
だが、ダークには絶対に殺される運命が見えている。神能力ならではの未来予知。唯、本当に見えない時は見えないのだが。
すると、ロードが復活して言う。
「でしょ?ダークったら僕と初めて此処で会ったときなんか暴走してさー」
「暴走してない。唯、身内が攻撃されたんだから当然の処置だろ?」
「おかんか」
ロードは突っ込むと、ダークは言う。
「ライトがこの世界を作るのに協力したんだろ?なら、この世界の人間は皆ライトの子供な訳だ。見捨てられるか」
ダークは言うと、ロードは呆れる事しか出来なかった。
「全くさー……」
と、ロードがダークを触ろうとしたとき、ダークがその手を払った。
「え?」
払われた手から雷撃がほとばしり、近くの地面を穿った。
「……ライトの、能力?」
「い、いやいや僕は発動してないよ!?と言うか気配すらしなかったし!!」
ロードが必死に言うと、ダークは頷く。
「解ってる。お前は歌と銃しか才能ねぇからな」
「何げに貶されてる……」
気のせいだと言い、ダークは見ると、一瞬何かが見えた。
(……何だ、今の)
雷撃、獣、それを従える二人の影。
一瞬にしろ、それが見えた。
(未来予知か……?しかも、気配からしてそう遠くない未来……)
ダークは思うと、ポケットから指輪を出す。
(……使って、見るか)
ダークは思うと、ロードに向き直る。
「ロード、これ付けろ」
「うわっ!」
急に投げられた指輪をキャッチすると、それを填める。
「何これ、ウィザードリング?」
「なわけあるか」
ダークは裏拳でロードを吹き飛ばすと、自分もその指輪を付ける。
(……ミザールから送られた物だが、果たしてこれは……?微力ながら神の力も在るみたいだし……)
ダークは暫く考えたが、諦めたのか考えるのを止めた。 
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