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一目瞭然

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第二章

「暴力も使うよ」
「自分達からは仕掛けなくてもね」
「仕掛けた相手には倍返しどころじゃなくて」
「暴れて大損害を出したりね」
「それじゃあね」
「圧倒的な暴力を持っている」
「権力者だよ」
 それに他ならないというのだ。
「反権力じゃないよ」
「完全に自分達も権力者だね」
「しかも我儘で独善的で反省しないね」
 その人間性も指摘される。
「腐敗した権力者だよ」
「その精神がね」
「そう、まさにね」
 堀江が読んでいる漫画、その原作も含めてそれの主人公はそう定義された。ヒーローではなくそれだとだ。
 それでだ、堀江はここではっきりとだ。こう三木谷に言った。
「この漫画も絵だけだよ」
「漫画描いている人の絵は凄いんだよね」
「うん、昔から相当に奇麗な絵を描いてくれるよ」
「けれど原作はね」
「ゴミだよ」
 堀江は三木谷にはっきりと言い切った。
「面白くない、読んでいて腹が立つだけだよ」
「あの四兄弟の作品もずっと続編出ないしね」
「十三巻のあの出来じゃ仕方ないよ」
 その出来があまりにも酷くてだ、続きが出ないというのだ。
「あれはもう小説ですらなかったよ」
「うん、主人公達の性格も主張もさらに悪化してたからね」
「面白くなかった」
「最低だったね」
 三木谷も言い切った、そして。
 三木谷はあらためてだ、こう堀江に言った。
「それに対してね」
「今三木谷氏が読んでいる漫画だね」
「昔から続いているヒーローもののコミカライズ作品だけれど」
 それこそ何十年と続いているだ、最早日本の象徴とまで言っていいシリーズだ。
「こっちはね」
「うん、主人公の能力が高くてもね」
「相手をいたぶらないし」
 それは決してしなかった。
「おかしな政治的主張もしないし」
「暴れないしね」
「特権をふりかざしもしないし」
「高飛車でも独善的でもなくてね」
「むしろ人の傲慢や独善をね」
 そうした人のマイナスの部分をというのだ。
「否定してね」
「そうしてだね」
「そう、そのうえで悪と戦う」
「人として人を害する存在に対して」
「それがこのシリーズのヒーローなんだよ」
 こう堀江に話すのだった。
「改造手術を受けても」
「そして姿形が人間でなくとも」
「心は人間なんだよ」
「そして人間として」
 まさにだ、それが故にというのだ。
「人間の心を持っているからこそ」
「人間を助けて守っているんだよ」
「守っていなくともね」
 この辺りはヒーローによる、ヒーローといえどもシリーズ化すると様々なキャラクターが登場する。さもないとファンに飽きられてしまう。
「人間として」
「戦っているね」
「自分の様々な苦しみも押し殺して」
 その心の中に封じ込めてだ、彼等は戦っているのだ。人間として。
「命を賭けてでも戦うから」
「そこに素晴らしさがあるね」
「だからだよ」
 その心の素晴らしさ、言うならば黄金の精神があるからこそとだ。堀江も言う。
「僕達はこのヒーローが好きなんだね」
「そういうことになるね」
 三木谷も堀江のその言葉に頷いて答えた。
「僕このヒーローのシリーズが好きなんだね」
「僕もだよ」
 その何の魅力もない主人公が出ているライトノベル原作の漫画を読んでいる堀江もこう三木谷に応えた。 
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