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ものがあっても

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第三章

「私にはその趣味はないのですが」
「と、いいますと」
「相手が女性である場合もあります」
「つまりそれは」
「同性愛になりますが」
「女性が女性を愛してもですか」
「恋愛になります」
 ソフィアはアンジェリーゼにこのことも話したのだ。
「恋愛は様々ですので」
「私が女性を愛してもですか」
「それもまたあるのです」
「私もそろそろ、でしたね」
 ここではだ、アンジェリーゼからソフィアに語った。
「婚約をして」
「そうです、今はそのお相手を探しています」
 ソフィアと夫であり公爵家の主である他ならぬエレオノール公爵が中心となってだ。貴族は婚姻も義務なのだ。
「その方と恋愛をしてもいいのですが」
「男性ともですね」
「ただ不義はなりません」
 ソフィアはこれは否定した。
「何があってもです」
「それはですね」
「そうです、不義は悪徳であり恋愛ではないのです」
「牧師様も仰っていますね」
 このことはアンジェリーゼも教えられている、それは裏切りであり人として最大の悪徳の一つであるとだ。
「その様に」
「ですから」
「してはなりませんね」
「何があろうとも、しかし」
「それでもですか」
「それは相手が男性だけのことで女性とのことはまた別です」
 同性愛についてはというのだ。
「ですから貴女がどなたかの妻になろうとも」
「女性は愛せるのですね」
「そうなのです」
 娘のその緑の、自分のものと同じ瞳を見ての言葉だ。
「貴女にしましても」
「どなたかの妻になろうとも」
「そうなのです」
「不思議な話ですね」
「これはあくまで私の恋愛の考えです」
 ソフィアはこうも断った。
「人それぞれの考えがあります」
「恋愛についても」
「そうです、しかしおそらく貴女がもの足りなさを感じている理由は」
「恋愛ですね」
「それがないせいではないでしょうか」
 だから近頃もの足りなさを感じているのではというのだ、母にそう言われてだ。
 そしてだ、アンジェリーゼはこの時から恋愛について考える様になった。それでモモカに母に言われたことを共に風呂に入りつつ話した。
 風呂は全てが見事に磨かれた大理石で造られている、まるでプールの様に広い風呂でサウナまで用意されている。
 その風呂の湯の中に二人で入りつつだ、アンジェリーゼは隣にいるモモカに対してこのことを話したのだ。
 そのことを話してだ、そしてだった。
 モモカにだ、アンジェリーゼはあらためて問うた。
「どう思いますか」
「そうですね、私もです」
 モモカは自分に問うたアンジェリーゼにこう答えた。
「まだです」
「そうした経験はですね」
「ありませんが」
 それでもと答えるモモカだった。
「しかしです」
「モモカはどう考えていますか?」
「確かに殿方はご夫君とだけです」
「恋愛をすべきですね」
「そう思います、しかし」
「それでもですか」
「夫婦とは別なので」
 モモカは考える顔でアンジェリーゼに話していく。 
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