| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Zero Connect Online

作者:霧崎雫
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

1・始まり
  Encounter

キリトたちが見上げた先にいたのは、深紅のローブに身を包んだ巨大なアバターだった。
それは、かつてキリトたちが閉じ込められたデスゲーム―ソードアート・オンライン―の始まりの街でキリトたちの前に現れたものと同じだった。

「どういう……ことだ……?」
キリトが呟く。
「あれって、あの時の……?」
「恐らくね」
「ですね」
アスナに、リズとシリカが頷く。
「ね、ねえ、お兄ちゃん。あれって何?」
リーファがキリトに聞いた。
キリトは、巨大なアバターを見つめたまま、リーファの問いに答えた。
「あれは、俺たちをSAOに閉じ込めた茅場晶彦が初めて、ゲーム内に出てきた姿だ」
キリトの答えに、リーファとシノンの顔が強ばる。
「そんな……だって、茅場は死んだはずでしょ!?」
リズが叫ぶ。
「そのはずだ。だけど……」
「ねぇ、キリトくん」
「なんだ、アスナ?」
「あれ、何をしてるのかな?」
アスナの言葉に、キリトたちは再び空を見上げる。
「まさか!?」
ふいに、キリトが自分のウインドウを開く。
「どうしたの?」
キリトは両眼を見開いて、アスナたちに告げた。
「ログアウトボタンが……ない……」

「え?」
アスナは、キリトの言葉を瞬時に理解しなかった。
それはアスナだけではなかった。
他のメンバーもそうだった。
「まじかよ!?」
クラインがウインドウを見つめて言った。
「本当にねえぞ!?」
それが、周囲のプレイヤーに伝わり、軽いパニックに陥る。
「どういうことだ?」
「ログアウトボタンがない?」
「本当だ!?」
このような声があちこちから聞こえてくる。
「キリトくん……これって……」
キリトはアスナに人差し指を立てた。
そして「すぐに説明してくれるさ」と上空に佇むアバターを睨んで言った。

『我が名はクロノス、この世界において唯一の神であり、最後の試練である』

「クロ……ノス……?」
「それって、ギリシャ神話の?」
クロノスはキリトたちを見下ろして言った。

『これより、デスゲームを始める。かつての事件を繰り返すのだ。そのため、ログアウトボタンを消させてもらった』

「ふざけるな!どうして、あの事件を繰り返すんだ!」
キリトが叫ぶ。
「そうよ!あれで何人もの人が悲しんだと思ってるの!?」
キリトに続いて、アスナが叫ぶ。

『我は退屈が苦手なのだ。小さき戦士たちよ、ぜひとも楽しませておくれ。くれぐれも死ぬことのないようにな』

クロノスが話しながら、右手で何かを操作する素振りを見せた。
すると、全プレイヤーのアイテムボックスにアイテムが届いた。
それは認識票(タグ)だった。

『それは汝らのことが書いてあるものじゃ。それによって、かつての戦いの記憶を取り戻すがよい』

キリトは認識票をストレージから取り出した。
そこには《黒の剣士》と書いてあった。
すると、キリトの体が不意に光に包まれた。
「うわっ!?」
「キリトくん!?」
光が収まり、キリトの姿を認識したアスナは自らの目を疑った。
アスナの視線の先にいたのは、かつてSAOで最強と謳われた黒い剣士がいた。
「キリト……くん……?」
「あ、ああ」
それから、光が多くのプレイヤーを包んだ。
「なんなの……これ?」
アスナが呟く。
彼女の認識票には《閃光の細剣》と書いてある。
そして、彼女も光に包まれる。
光が収まり、アスナは自身の装備を確認した。
それは、SAOで最強のギルド"KOB"の副団長だったころの装備だった。

『我からの手向けの品は気に入ってもらえたかな?』

クロノスが低い声で言う。
「なんの真似だ?」
キリトがクロノスに聞く。
『これは、我と汝らの戦争じゃ。それなりの装備でないと楽しめん。よって……』
「"カーネージ・アライアンス"!!」
クロノスの話の途中に、一人のプレイヤーがクロノスに向かって、攻撃した。
クロノスはその攻撃を、ゆっくりと躱した。
「ふざけんなよ。こんなことをして、許されると思っているのか!?」
『誰にも我を裁くことはできぬ』
クロノスはそう言って、背景に溶け込むように消えていった。 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧