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A型メランコリー

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第六章

「晩御飯の残りものでもいいわよね」
「おいおい、御前が作ったものじゃないのかよ」
「だって、朝は忙しいじゃない」
 誰でもだ。
「あんただってお弁当はそうでしょ」
「ああ、お袋が夜のおかずの残りと御飯を入れてな」
「足りないと売店か食堂で、でしょ」
「そう、だからね」
「それが普通か」
「私にしてもね」
「そんなものか」
 彼は残念そうな顔になった、私はその彼にさらに言った。
「お弁当に夢は持てないわよ」
「それに夢持たないと駄目だろ」
「けれど現実はそうだから」
「愛妻弁当とかはないんだな」
「誰が愛妻よ」
 愛妻という言葉には少しむっとした顔を作って返した。
「一体」
「あ、ああ。それはな」
「とにかくね、お弁当食べたいならね」
「おかずの残りか」
「夜のね」
「それが現実なんだな」
「そうよ、けれどこうした時はね」
 デートならだった。
「ちゃんとこうしてね」
「作ってくれるんだな」
「そうするから、たまには」
「たまにはかよ」
「だっていつもだったらね」
 それこそだった。
「飽きるでしょ」
「それはそうだな」
 彼はサンドイッチ、私が作ったそれを食べつつ私に答えてくれた。
「言われてみれば」
「そうでしょ、それでね」
「それで?」
「御飯食べてまた遊ぶのよね」
「ああ、ここでな」
「予定はないわよね」
「そんなのあえてな」
 考えてないとだ、彼は野菜ジュースを飲みつつ私に答えた。
「考えないでな」
「そうしてよね」
「一緒に遊んでいこうな」
「ええ、それじゃあね」
 こうしてだった、私達は一緒にだった。
 遊びそうしてだった、夕方になってプールを出た。それから。
 彼は私にだ、こう言った。
「またな」
「ええ、またね」
「デートしような」
「予定なしのそれをね」
「行く場所だけ決めてな」
 流石にそれは決めないとならなかった、けれどそれでもだった。
「そうして遊ぼうな」
「その場所で」
「ああ、そうしような」
「二人でね」
「型に決まったマニュアル通りのデートもいいけれど」 
 それでもだった。
「たまには、時々でもな」
「こうしたデートもいいわね」
「いつもマニュアル通りだと飽きるからな」
 実際に飽きるかも、と思っていたところだった。私も彼もそう思いはじめていたので丁渡いい頃だと言えた。
「それで」
「それでよね」
「ああ、またな」
「こうしたデートしましょう」
「A型じゃないデートな」
 彼は私に笑顔で言って私も応えた、そうして彼の行く方向のプラットホームまで彼を電車に乗って見えなくなるまで見送ってから私も電車に乗った。こうしたデートもいいものだと心の中で満ち足りたものを感じながら。


A型メランコリー   完


                            2014・6・30 
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