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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【東方Project】編
  059 目が覚めたら…

 
前書き

新章に入ります 

 

SIDE 升田 真人

「むぅ…。……ぅん~?」

燦々(さんさん)と降り注ぐ目蓋を焼いている陽光に、深淵へと沈没していた意識を浮上させる。……よくよく耳を澄ませば、〝ちゅんちゅん〟等と小鳥の囀りが聞こえていて、地面の青臭い──それこそ新緑を彷彿させる芳香に、数回だけ目を瞬かせて瞑目しながら思考する。

(……外…か?)

森──否、林の中だろうか。俺はそこで地に身体を投げ打っていた。……何がどうなって〝そんな事に〟なっているかは判らない。少なくとも、前に眠りに落ちる前は〝ハルケギニアが自国の屋内に居た〟と云う当たり前の事は起き抜けの、まだあまり回転してない頭脳だがそれくらいの分別は付く。……考えられる可能性は誘拐に拉致…または──転移(トリップ)か。……体に拘束具等も見られ無いし、身体には変調も無いから変なクスリを盛られた訳でも無い。……この珍事は、一種のトリップと暫定する。

そして、とりあえず自分の状況に当たりを付けた俺は──

(……あ、ヤバイ…気持ちが…良すぎて…)

〝地球〟からハルケギニアに召喚された経験も有り、割りと現状に順応してしまった俺は、そのまま──然も〝睡眠の為に用意されたであろうロケーション〟と、〝色々〟とキツくて最近は余り睡眠時間が取れて無かったのも相俟って、再び襲い掛かって来た睡魔へとその身を易々と差し出してしまったのだった。……勿論の事ながら、仙術で周囲の気配を探る事も忘れずに…。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……□き□。□ん□□□で□て□ら、□□引□ち□うよ?」

(……ん?)

俺を呼ぶ声に、意識が再度浮上する。あれから一体どれだけの時間を睡眠へと生け贄に捧げていたかは判断は付かないが、寝ている時に常時展開している〝害意センサー〟が反応を示してしていないので、少なくとも外敵の類いでは無いだろう。

……もしこれで、もし俺を害そうしてきたなら、それはもう腕が立つ暗殺者や、人を害する事に〝疑問や罪悪感を抱いていない〟殺人狂(シリアルキラー)だろう。

閑話休題。

「……ん?」

「あ、起きた? キミ、自分の名前は判る?」

返答をしようと目をしばまたかせ、俺を起こした声の主の顔を見る。するとそこには、11か12ほどの勝ち気そうではあるが顔立ちが整っていて、将来の美貌が約束されている美少女が居た。艶の有る黒髪を肩の辺りで切り揃えていてボーイッシュな顔立ちだが、〝少女〟と断定出来た理由は気の流れ方が、〝多少の違和感〟は有れど女性特有のモノだからである。……そもそも、女性的な口調だからと云うのもある。

「……名前、ね──」

(……ん?)

違和感が2つ。それは、声が数オクターブ高く──それこそ年齢が幾つか若返ったかと思うほど高くなっていると云うのが1つと、視界の端で日本人には珍しくない黒では無く、〝見馴れていた〟茶が踊っていると云うのが2つ。……それらが俺の感じ違和感の正体だった。

「名前を言うのは構わないけど…。ねぇ君、その前に俺の外見が今どうなってるか教えてくれる?」

「〝君〟じゃなくて、わたしの事はシホって呼んで? ……あぁ、キミの外見は赤色に近い茶色い髪の毛で、泣く子が見れば更に泣きそうな程度には人相の悪い顔をしてるよ。……ってキミ、うちの〝村〟じゃ見ない顔だね。多分、旅人か何か?」

「そうか…」

少女──シホが言った今の俺の外見的特徴…〝泣く子が見れば更に泣きそうな程度には人相の悪い顔〟、〝赤色に近い茶色い髪の毛〟は聞いた事が有りすぎる、数十年ぶりに耳にしたワードだった。……俺がまだ〝平賀 才人〟ではなく、前世にて聞き飽きた──〝升田 真人〟であった頃に聞き飽きた、俺を体現するキーワードだった。

「……俺の名前は升田 真人。さっきシホが言った通り、しがない旅人さ」

「やっぱり旅人だったんだね」

あえて〝平賀 才人〟ではなく、〝升田 真人〟と本来の名前を名乗る。何となく〝そう〟したいと直感的に、頭に過っただけで特に他意は無い。……そんな俺を他所に、シホは〝我が意を得たり〟と云った風情で頷くと、さながらマシンガンの如く──〝立て板に水〟の(ことわざ)を体現するかの様に弁舌を回していく。

「それにしてもびっくりしたぁ。何てたって、ガラの悪そうな男の人が林の中で死んだ様に寝てるんだから。……で、なんであんな場所で寝てたの?」

「……ちょっとした休憩…の積もりだったんだけどな。……あまりの陽射しの良さに、所謂〝気が付いたら〟…ってな感じか」

「判る判る。わたしも家の縁側とかで日向ぼっこなんかしてるとつい昼寝しちゃって、それでついつい寝過ぎちゃってお爺様に〝だらしが無い〟とか叱られちゃう事が有るんだよねぇ。……仲間が居て嬉しいよ。私も今度お爺様に内緒で草っ葉の上に寝転がってみようかな? あ、真人と一緒にね」

「あぁ、意外と新発見が有るかもな。……というより、見ず知らずの男といきなり一緒に寝ようとすんな」

「うん、気を付ける」

俺がハイテンションのシホに諫言すると、シホはニカリと嬉しそうに笑いながら頷く。……そこでシホのマシンガントークは一旦止まったが、シホはキョロキョロと辺りを見回しながら話題の種を探している様だ。……俺の一言に三倍くらいの量のレスポンスが来るあたり、シホはどうやらコミュニケーションに飢えているらしい。

「そう云えば、真人はどこから来たの? この辺じゃ見ない格好だけど」

「ヒラガ公国って場所からさ」

「〝ヒラガ公国〟…。……ううん、聞いた事無いなぁ。……あ、そうそう、もし時間が有ったらウチの村に寄って行ってよ。 今の村には〝ちょっとした事情〟で男手が無いから、村の人も歓迎してくれると思うよ?」

「まぁ、知らないのも仕方ないと思うよ」

(〝世界〟すら違う可能性すらあるし…)

〝ちょっとした事情〟の辺りでシホは苦虫を噛み締めた様な表情になるが、とりあえずは他所者の俺が首を突っ込んでいけない内容──所謂〝地雷〟と判断し、少なくともその〝地雷〟が俺に猛威を振るうまではスルーが吉としておく。

「でもシホの村にはお邪魔させてもらおうかな? 元々が往く宛ても無い旅だしな」

植生とシホの衣類──町娘風の丈の短い浴衣みたいな服を着ている事から地球の日本である事は判っているが、詳しい場所や年代は判らない。それを知る為にもシホの村に随行することにした。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「でね──」

シホは俺の〝村に往こう〟発言を聞いたら大層喜んだ。で今シホに村への案内を頼んでいる道中。やはりシホはコミュニケーションに飢えているのか、会話を流れを絶やすのを善しとしなくて次々と話を飛ばしてくる。

「……シホは何で──」

「ん…?」

「……何でシホはそんなに嬉しそうなんだ? まるで人との会話に飢えているみたいだ。シホみたいな別嬪ちゃんなら、それは周囲から持て囃されているだろうに。……いや、単に気になっただけだから深く考えなくても良いし、気に障ったの謝るよ」

「……判っちゃうんだね…。……あ~あ、上手く隠せてた思ったのにな…」

シホは図星を突かれた様な面持ちになる。そして1拍置いて(おもむろ)に話し始めた。……どうやら、シホの〝地雷〟を踏んでしまったらしい。俺自身が〝地雷〟を回避しようとしていたのに、自分から地雷源でタップダンスをしてしまい、尚且つその地雷を大爆発させてしまうとは思わなかった。

「私ね、村長に──お爺様に拾われた〝混じり子〟なんだ」

「〝混じり子〟…?」

何やら聞き慣れないワードが出て来た。〝混じり子〟、そのまま類推するならティファニア──テファみたいなハーフエルフみたいな存在で、どちらの存在──ハーフエルフの場合は〝人〟と〝エルフ〟、どちらの存在からも忌避──ないしは迫害される事が多い存在。

……俺が居たハルケギニアでは、エルフと人間の国交を盛んに〝した〟ので、ハーフエルフと云う本来なら迫害されていたであろう存在もありふれていて、迫害される事も無かったが…。

閑話休題。

「……あ、お爺様を始めとした村の皆は優しくしてくれるんだよ。……それでもやっぱり皆との間に隔たりを感じる事も有るんだ。……でもね、真人にはそんな隔たりを感じないんだ、今わたしが〝混じり子〟である事を伝えても、真人は変わってないもん」

「……見た目はそんなに、ただの人間と変わってないからなぁ…」

そもそもが、だ…ティファニア──ハーフエルフと友誼を結んでいた俺からしたら、シホのその悩みは〝今更〟感が有る。……だが〝それ〟はシホの悩みなので俺から口を出せる内容でも無い。

「ううん。村の外から来た人はやっぱりわたしが〝混じり子〟と聞いた途端から明らかにわたしから距離を置こうとするもん。……やっぱり〝妖怪〟は人間の敵なのかな…。でもね、何でかな? 真人の側に居るとポカポカするんだ。……まるでわたしを丸ごと包み込んでくれてる様にも感じるの」

(〝妖怪〟ねぇ)

シホはニコニコと笑いながら心中を吐露する。……また、聞き流してはいけない様なワード──新たなワードを溢した。察するに、どうやら妖怪の類いが居るらしい。……また〝地雷〟の香りが立ち込めてきた。

ハルケギニアの件に続き、どうやら俺はトラブルにやたらと好まれる体質になってしまっていたらしい。……俺に宿っているドライグの所為である可能性も考慮すると、ドライグを〝自ら〟宿らせた俺自身の自業自得である可能性もなきにしも非ずだが。

SIDE END 
 

 
後書き

と云うわけで、新章は【東方】編でした。……とは云っても〝幻想郷〟に転移したわけではありませんが。 
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