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とあるの世界で何をするのか

作者:神代騎龍
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第三十八話  御坂・白井組とアイテム組


『麦野とフレンダが入院している病院に介旅初矢が担ぎ込まれました』

 アイテムとの打ち合わせの翌日、早くも絹旗さんから連絡が来た。一応、暗部用の方では無く通常使用のケータイに掛けてもらっている。昨日の内にアイテム四人分の連絡先を通常使用のケータイに登録させてもらったのだ。

「分かったわ、すぐ行く」

 運良く麦野さん達と同じ病院に搬送されたようなので、俺は電話を切って出かける準備を始めた。介旅初矢が入院する病院には御坂さんと白井さんが行くはずで、そこで偶然を装って出会えばアイテムの二人を紹介できると思ったのだ。しかし、レベルアッパー使用者が搬送される病院は複数あるので、麦野さん達と別の病院だった場合には麦野さん達が搬送された病院が分からずに病院を巡ってましたという、ちょっと無理があるかもしれない方法をとるつもりだったのである。

 タクシーで病院に到着するとすぐに絹旗さんと滝壺さんがやって来た。

「超遅いです」

「常盤台の制服を着た人が二人、第三位らしき人とジャッジメントが来てる」

「うん、じゃ、打ち合わせ通りに」

 なんかもの凄く怒られたような気がしてしまう絹旗さんの言葉をスルーしつつ、滝壺さんから現在の状況説明を受ける。そして、俺が小声で二人に言うと目で頷き合って病院へと入っていった。

「超こっちです」

「急いでるのは分かるけど病院の中で走ったらだめだよ」

 御坂さんと白井さんが居る場所にさしかかると前を走る絹旗さんが大きめの声を上げ、俺がそれを注意しつつついて行く。

「あれ? 神代さん」

「どうしたんですの? こんなところで」

 俺の声に気づいた御坂さんと白井さんに声を掛けられる。

「あ、御坂さんに白井さん。そっちこそこんな所で……あっ! もしかして妊娠!?」

「ちょっ……そんなわけないでしょ!!」

 思わずいつもの調子でボケてみると御坂さんから怒鳴られた。

「お……お姉様が妊娠!? いつの間にっ!! 誰の子供なんですの? お姉様っ!!」

 あ、白井さんが暴走してる。

「だから違うって言ってるでしょ!!」

「あぐっ!」

 御坂さんのげんこつが白井さんの頭に落ちると、白井さんはうずくまって静かになった。

「病院ではお静かに」

「アンタが言うなっ!!」

「そうですの」

 一応、俺が二人に注意すると御坂さんに怒鳴られ、白井さんも立ち上がりながらそれに賛同していた。

「それで、ウチがここに来た理由だけど、知り合いが例のアレで倒れたらしくて……」

 御坂さんと白井さんに少し近寄って小声で話す。

「知り合いってどなたですの?」

「麦野さんとフレンダっていう名前なんだけど……昨日の例の施設の件ね。ウチと一緒で知らずに聞かされてた方の人達よ。あ、この二人もそう。絹旗さんと滝壺さん」

 白井さんに聞かれて倒れた二人の名前を答え、更にこの場に居る二人も紹介する。

「ど……どうも」

「初めまして」

「そうだったの。私は御坂美琴、よろしくね」

(わたくし)は白井黒子と申しますの。それで、倒れた方というのはどちらの病室ですの?」

 昨日の打ち合わせ通り、少し人見知りっぽく挨拶をする絹旗さんと滝壺さん。こうして二人が自己紹介をすると御坂さん達も自己紹介をして、白井さんからは麦野さん達の病室を聞かれた。

「あ……はい、超こっちです」

 絹旗さんの案内で俺達五人は麦野さん達の病室へと向かう。取り敢えずこれで、御坂さん達にアイテムとの面識を持たせることは成功である。





「むぎの……フレンダ……」

「何で超こんな事に……」

 病室に到着すると滝壺さんと絹旗さんは、麦野さん達のベッドの前で立ち尽くす。

「この方達がレベルアッパーを使ったというのは間違いありませんの?」

「うん、ウチと一緒にあの研究所に居たからね」

 白井さんが聞いてくるので俺は答えた。

「となると、やはりレベルアッパーが関係しているとみて間違いないようですわね」

「やはり……って事は、レベルアッパー使って倒れたって人が他にも居るの?」

 白井さんが独り言のように呟いたのを聞いて、俺は疑問に思った部分を尋ねる。

「ええ、この前のセブンスミスト爆破事件の犯人、介旅初矢が倒れてしまいまして……私達はそれでこの病院に来たんですけど、病院の先生に伺ったところ他にも同じ症状で倒れた方がいらっしゃると言うことで、カルテを見るとあの常盤台狩りの眉毛女や銀行強盗のパイロキネシストまで居ましたの。全員能力にバンクとの差異が見られましたし、同じ症状で倒れていると言うことを考えれば、レベルアッパーの使用で倒れたとみて間違いないと思いますの」

「あー、重福さんは多分そうだろうと思ってたんだけど、やっぱりあの銀行強盗もレベルアッパー使ってたのね」

 白井さんの話を聞いて俺は納得した。銀行強盗のパイロキネシストも、能力にバンクとの誤差があるという話を昨日初春さんの部屋で聞いたので、多分そいつも使っているんだろうなと思っていたのである。まぁ、アニメで見たので知ってましたと言ってしまえばそれまでなのだが……。

「それで、丁度この病院に大脳生理学者さんがいらっしゃったので、その人に話を伺おうかと待合室で待ってたんですの」

「あの脱ぎ女の人よ」

「あー、木山先生か」

 白井さんが話の流れでそのまま自分達がこの病院に居る理由を話すと、御坂さんが小声で追加説明をしてくれた。

「その先生なら麦野達を超助けられるんですか?」

 俺と白井さんの会話は当然聞こえていたようで、麦野さんのところで手を握っていた絹旗さんが白井さんの前まで来て尋ねる。

「そこまでは分かりませんの」

 まだ何も分かってない状態なので白井さんも首を横に振るしか出来ないようだ。

「参考になるかどうか分からないけど、なんかむぎの達のAIM拡散力場が異常」

 丁度良いタイミングで滝壺さんが話し出す。この話は昨日の内に打ち合わせをしておいた物である。

「それってどういうことですの?」

「あー、滝壺さんは能力でAIM拡散力場が観測できるのよ」

 白井さんの疑問には俺が説明を入れておく。滝壺さんの能力を知っていなければこの後の話に説得力が無くなるからである。

「こうじろに言われたとおりの対策をした時にはAIM拡散力場が元に戻ってたのに……」

 俺が説明を入れたので滝壺さんはそのまま話を続けた。基本的にはAIM拡散力場の異常を伝えることと、もう一つ話すことを決めてあるだけで、台詞回しなどは全部滝壺さん任せである。

「元に戻ったって?」

「レベルアッパーを聞いた後に、まず異常を感じ取ったのが滝壺さんなのよ。私達のAIM拡散力場がおかしくなったって。それで、ウチが色々対策を考えてそれを麦野さん達に教えたんだけど、うまく対策が出来てなかったらしいフレンダはともかくとして、麦野さんのほうは対策できてたはずなのよね」

 今度は御坂さんが聞いてきたので、また俺が説明する。さっき、滝壺さんの能力を説明した時は、前提条件を知っておいてもらわないと話が進まないからだったわけだが、今回は滝壺さんが答えに困っているのを気配で感じたからである。

「それがまたおかしくなったって訳ね」

「うん、そう」

 御坂さんが納得したようにまとめると、滝壺さんは一つうなずいていた。

「ところでこうじろ、あなたの仮説だとレベルアッパーで演算速度を上げるって話だったけど、それだけだとAIM拡散力場がおかしくなる理由が分からない。何か新しく分かったことは無い?」

「うん、今のところ特に何かが分かったりはしてないわね。新しく仮説を立てるにも情報が少なすぎるから、AIM拡散力場に関して何か気付いたこととか無い?」

 滝壺さんが予定通り俺に話を振って、俺は滝壺さんが話しやすくなるように聞き返す。

「最近思うようになったのは、ただおかしくなったっていうのとは違って、なんだか他人のAIM拡散力場が混じり込んでるような気がする。干渉し合ってるというよりも繋がっている感じ」

 昨日の打ち合わせ中に聞いた話では、滝壺さんも当初からAIM拡散力場の繋がりは何となく感じていたらしく、俺と遭遇したファミレスで一気にその繋がりを認識したということらしい。しかし、敢えてここでは最近になって気付いたということにしてもらっている。

「AIM拡散力場が繋がってるの?」

「うん」

「繋がってるだけ?」

「うん」

 御坂さんと白井さんにはAIM拡散力場のネットワークに気付いてもらわないといけないので、それを印象づける為に滝壺さんへ聞き返す。

「レベルアッパー対策をした私たちのAIM拡散力場も他のレベルアッパー使用者と変わらない?」

「いや、対策をした時に繋がりが薄くなってる」

 一応、御坂さん達は俺のレベルアッパー対策が過剰演算を防ぐためだということになっているので、その間違った対策を失敗してしまったために本来の対策が出来ていたという、実際に起これば何てご都合主義なんだろうと思われるような設定にしてある。打ち合わせの時点では、そういう設定についてを細かくつめたのがほとんどで、今回の会話に関しては取っ掛かり部分だけ話し合ったもののほぼアドリブによるものである。

「え……ってことは、演算速度の上昇を制限した時に、AIM拡散力場の繋がりにまで制限が掛かったのかもしれないわね。そうなると、もしかしたらレベルアッパーって演算速度を無理矢理上げる物じゃ無くて、AIM拡散力場を繋いで他人の演算能力を使用する物って可能性も考えられるわね」

「そんなこと、超出来るんですか?」

 俺がレベルアッパーについて新たな仮説を立てると、今度は絹旗さんが聞いてきた。

「そこまではウチも流石に分からないけど、今からこの二人がその関係の専門家の人に話を聞く予定だから、ついでに聞いてみれば何か分かるかもしれないわ。ウチの仮説のどっちかに可能性があるのか、両方とも全く的外れな仮説だったのかも含めてね」

 絹旗さんに答えながら今まで静かに聞いていただけの御坂さんと白井さんに目を向ける。

「神代さん、ちょっと聞きたいんだけど」

 俺が御坂さん達の方を見たこともあってか、ここに来てようやく御坂さんから声を掛けられた。

「何? 御坂さん」

「もしかして、神代さん達の取ってる対策が完全じゃ無かったとしたら、神代さん達も倒れる可能性があるんじゃないの?」

 聞き返すと真剣な表情の御坂さんから尋ねられる。

「あーうん、それはあるわね。ウチだってレベルアッパーを完全に把握してるわけじゃ無いんだから、対策自体が全然違ってたら近いうちに倒れる可能性はあると思うわよ。まぁ、今の話だとAIM拡散力場の繋がりも薄く出来てるみたいだし、演算速度の暴走もしてないみたいだから自分では可能性は低いと思ってるんだけどね」

 俺自身、倒れる可能性はほぼ無いと思っているのだが、さすがにその根拠は言えない部分なので、言える範囲での根拠を並べて可能性が低いということにしておいた。

「でも、この麦野さんって人も対策はちゃんと出来てたんでしょ? それなのに倒れてるって事はもしかしたら神代さん達も……」

「それは大丈夫だと思う」

 御坂さんは心配してくれているようで更に尋ねられたが、そこに滝壺さんが割り込む。

「どうしてよ?」

「むぎのにはAIM拡散力場が繋がってることを教えたから、こうじろの仮説が間違っていた可能性も含めて色々調べていた。もしかしたら対策を止めてしまっていた可能性がある」

 御坂さんが怪訝そうに聞くので、一応ここまではしゃべっても良いというギリギリの部分を滝壺さんがしゃべる。

「それなら麦野はデュアルスキルがどうとかって超言って調べてましたよ」

「デュアルスキル!?」

「デュアルスキルですの!?」

 そこに絹旗さんが追加情報を加えると、御坂さんと白井さんはかなり驚いたようだ。

「あー、AIM拡散力場の繋がりを利用して他人の能力を使えるように……とか、そういうことじゃ無いの?」

 麦野さんが倒れた状況に関しては、滝壺さんと絹旗さんもデュアルスキルについて調べていたと言うことぐらいしか知らないらしく、本当のところを知りようも無いのだが俺の仮説を披露しておく。

「確かに、滝壺の能力を自分が使えたら、みたいなことを超言ってたと思います」

「むぎの……」

 絹旗さんの言葉に滝壺さんが言葉を詰まらせる。今の滝壺さんの心境がどうなのかは分からないが、演技としてやっているのであればかなり迫真の演技である。一応、絹旗さんの情報も全て昨日の打ち合わせで決めておいたことなので、実際の麦野さんがどうだったのかというのは全然分からない。まぁ、絹旗さんや滝壺さんを巻き込んでいないこととか、俺がホテルで話したことや麦野さんの性格から考えても、そんなところじゃないだろうかとは思っている。

「何というか、無茶な発想ですの」

「今の所、ほとんどが仮説だからねぇ」

 白井さんが呆れたように呟いて、俺も同じように呟いていた。

「ところで、大脳なんとかだかAIM拡散力場だかの専門家って人が待合室で超待ってたりはしないんですか?」

「あっ!!」

「そうですの!」

 場が落ち着いたところで絹旗さんが言った一言に御坂さんと白井さんが声を上げたのである。





「もう帰っちゃったかしら」

「大丈夫みたい。木山先生の気配はまだ病院の中だから」

 待合室というか休憩所というか、御坂さんや白井さんと会った場所に戻ってくると、御坂さんの言葉を受けて俺は集中しながら木山先生の気配を探った。実質的な距離はそれほど離れてないと思うのだが、昨日絹旗さんや滝壺さんを見つけた時と比べて有効範囲内に人が多すぎる為、かなりの精神集中が必要になったのである。

「だめです……どの自動販売機も超動いてません」

 俺が集中している間にジュースを買いに行っていた絹旗さんが戻ってくる。病室とは違ってこの場所には冷房も入っていない。

「昨日大きな停電があったからねー。そう言えば白井さん、昨日あのファミレス行った時に御坂さんが裏の変電所壊さなかった?」

「なぁっ!」

「思い切りバレてますわね、お姉様……」

 俺が絹旗さんに説明しつつ白井さんに尋ねると、御坂さんが思いきり驚いていて白井さんから呆れられていた。
 
 

 
後書き
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