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邪剣

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3部分:第三章


第三章

「わしがこの森の長のグリーンドラゴンだ」
「そうか、やっぱり」
「この森の」
「何度も言うがそなた等に危害を加えるつもりはない」
 グリーンドラゴンはこのことをあらためて言ってきた。
「龍族の誇りにかけてな」
「だったらいいが」
「僕達も流石にドラゴンの相手はできないから」
「まずは名乗ろうか」
 彼は今度は二人にこう言ってきた。
「よいか」
「ああ、それなら」
「貴方の名前は」
「わしの名はホークムーンという」
 彼は二人の言葉を受けたうえで名乗ってきた。
「もう。一万歳になる」
 歳も名乗ってきた。こうしてこのホークムーンという古い龍と二人は話に入ったのであった。丁度二人がいたその場に降りた龍はそこで二人と向かい合いながら話をはじめたのであった。
「そなた等がここに来た理由はわかっている」
「まだ何も言っていないけれどな」
 ホークムーンの前に胡坐をかいて座っているアーノルドはホークムーンが持って来た森の果物を食べながら彼の話を聞いていた。なおこの果物は山葡萄である。それをクリスも彼と並んで食べている。
「それでもわかるのか」
「龍はある程度人の心がわかる」
「ああ、それか」
 龍の持つ能力の一つである。
「それでか」
「左様だ。赤眼のオズワルドを止める為だな」
「あとその剣が欲しいってのもある」
「そういうことだよ」
 クリスも述べた。心が読まれているのならと。二人はここに来た理由を彼に全て言ってしまうことにしたのであった。
「この森の奥深くの洞窟にあるその剣がね」
「欲しくてここまで来たのさ」
「ふむ、あれか」
 ホークムーンは二人の言葉を聞いてまずは納得したように頷いた。深い知性をたたえたその瞳が静かに光っている。
「あの剣じゃな」
「やっぱり知っているんだな」
「うむ」
 ホークムーンはアーノルドの言葉に対して頷いた。
「無論だ。わしはこの森の長だからな。あの洞窟もわしの治めるところだ」
「じゃああの剣はあんたのものか」
「いや、それは違う」
 自分のものかと問われるとそれは否定するのだった。
「それはな。違う」
「あれっ、あんたのものじゃないのか?」
「しかし洞窟は貴方の治めるところだと」
「それでもあれはわしのものではない」
 ホークムーンはこう二人に述べるのだった。
「あの剣はな。あれはわしの治めるあの洞窟に置かれているだけなのだ」
「置かれているだけって」
「それは一体」
「あれはわしの手に負えるものではない」
 二人に述べた言葉はこれであった。
「とてもな」
「あんたでもか?」
「龍でもか」
「龍とて万能ではない」
 それを知っているからこその言葉であった。
「神ではないのだからな」
「そうなのか」
「しかし」
 アーノルドはその言葉に納得したがクリスはさらに彼に問うことがあった。
「それならあの剣は一体」
「あれは神のものなのだ」
「神の!?」
「そう。モートの剣だ」
 ここでモートという名前が出て来た。
「それを奪ったアナトがあそこに置いたのだ。誰の手にも渡らないようにな」
「そうだったのか」
 モートは死の神でありアナトは戦いの女神だ。彼等は宿敵の関係にあるのだ。
「つまりだ。あの剣は」
「死と冬の神の剣なのか」
「その通りだ」
 ホークムーンは今度はクリスの言葉に頷いた。モートは死と破壊を司る神だ。悪の神々の領袖ともされておりその力は強大なものである。
「あれは世に出てはならないものだ」
「それをあんたが護っているってわけか」
「うむ」
 アーノルドの問いにも頷いてみせる。
「その通りだ」
「そうか。そんなものなのか」
「わしでも手に取ればどうなるかわからん」
 ホークムーンは剣呑な顔になって語る。
「その時はな」
「じゃあ人が手に取ればどうなるんだ?」
「さて」
 アーノルドの今の問いに首を傾げるのみだった。
「どうなるのやらな。何しろ悪の神の所有するものだ」
「わからないのか」
「そうだ。だからこそそのオズワルドに渡すわけにはいかぬ」
 真剣そのものの顔と声になっていた。
「それでだ。できればそなた達に」
「協力して欲しいと」
「そういうことだ」
「その通りだ」
 二人に対して答えた。
「頼めるだろうか」
「まあ何かな。俺達もな」
 アーノルドはホークムーンのその頼みを聞き終えたところで両手を頭の後ろで組んだ。そうしてそのうえで少しリラックスした姿勢で述べたのだった。
 
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