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僕の周りには変わり種が多い

作者:黒昼白夜
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来訪者編
  第35話 ピクシー

ロボ研の3H(人型家事手伝いロボット)に対して、6枚の札を作って簡単な封印結界を作ったまわりの表情は微妙だった。

「どうかしたか?」

「その札、本当には効くのか?」

「ああ、これね。学校の魔法言語学で習う一般的な古式の札から、ずいぶんと簡略化されているからね」

行なって見せたのは、ノートから何枚かちぎって、その紙に五芒星を上側に書き、1枚にはその下に『定着』で3Hにパラサイトを定着させて自爆などをしても、そのままロボットの残骸にくくる札。1枚には『ロボット三原則尊守』で順守でないのは色々と矛盾がでてくるのでよりやわらかくするためだが、そもそもパラサイトが自身をロボットと認識しなければ役にたたない札だ。もう1枚には『話し合いがしたい』と書いてその通り。
これらの3枚を3Hに貼り付けて、他の4枚には四角の枠と『結界』と書いただけの札を、移動させてもらった3Hの周辺に風などで動かないように重石をのせて置いただけのものだ。魔法言語学にケンカを売っているような札だからな。

「術式は違うけど、文字が金額だった封印札もあったそうだよ」

この発言に周りはあきれているというか、幹比古あたりが聞いたら卒倒するかもしれないなぁ。



先のこと以上はあまり話せないということで、結局は風紀委員会室にもどって話したのは、

「あの3H……ピクシーってあそこでは言っていたけど、それを変なところに渡さないというところが一番肝心なんだ。アルバイト先の師匠からは買い取ってもかまわないが、学校で利用されるから、面倒みさせられるのは僕かもしれないというところがネックなんだよな」

師匠には札を作る前に連絡はとってみたら、珍しく電話にでてくれた。細かい内容についてはメールを送るからって、結局普段とあまりかわらないか。

「どこが問題なんだ?」

「表面的には、僕にしたがってくれるかもしれないけれど、ぶっちぇけ言うと……」

ほのかの方に向いて

「あのピクシーの中のパラサイトが、ほのかの思念を写し取った時点での状態が人間との意識の基底になると思われるから、達也に会いたいという感情か何かを持つと思うから、達也に少なくとも会ってもらう必要がでてくるだろうって」

「えぇ、そのぅ」

「ほのかのことを攻めているとかじゃないから。あのパラサイトがほのかの思念を写し取ってしまっただけのことで、パラサイトとしての行動理念がわからないから、あのパラサイトとは話し合ってみるしかない。たぶん、視た感じだと今晩中に、ある程度まであの3Hを掌握するとは思うんだけど、人形についた例なら、対処は何種類かあるけれど、3Hについた例というのはないからなぁ」

「人の幽体や血を抜き取って、殺してしまう心配はないのか?」

「そこは話し合って、さらに観察してみないとわからない。普通の『吸血鬼』なら、人間でなくても動物の血とか、植物の精気とかだけでも問題ないみたいだからな」

「普通の『吸血鬼』か。翔は『吸血鬼』と直接見聞きしたことあるな」

どこか、話をミスしたかあ。まあ、このメンバーなら問題ないだろう。

「……オフレコでお願いしたいのだけど、『吸血鬼』にあったこともあるし、数は多くないが他の妖魔も人間と共同で生活しているとの話だよ。もっとも大部分の人間と交流できる能力のある妖魔は、特別な保護地にいるとのことだけど、その場所までは僕は知らないよ」

「そうか。それで、ほのかのアクセサリーはどうしたらいいんだ?」

「まずは、ほのかさんに持っていてもらうのが一番だよ。そのアクセサリーの水晶が、パラサイトとの直接的なプシオンのラインをできなくしてる。それを壊してしまったり、封印してしまったりすると、プシオンのラインがほのかさんとパラサイトの間で直接つながってしまうあもしれない。そうすると、ほのかさんがパラサイトにのっとられるかもしれない」

「ならば、3Hを壊したならば」

「壊したらかい。封印しないといけないだろうけど、魂だけが逃げ出したら、僕らには手を打つ手が無い。魂に記憶が残っていないことを祈るだけかな」

「輪廻転生というものか?」

「そういうものと考えていいとはずだよ」

「結局、私ってどうしたらいいんでしょうか?」

「当面はそのアクセサリーを自室とお風呂以外では外さないことかな。もし、心配なら、円明流合気術道場に泊まってもらえば問題ないから」

「えっ? そこまでしてもらうのは……」

「対処手段の選択肢だけは提示しておいただけだから、必要以上心配することはないよ。そもそもプシオンのラインをもっているのは、僕がみる限りこの学校ではほのかさんで4人目だから。プライバシーに関係するから他の3人の名前はあげられないけどね」

「以外と多いんですね」

「その水晶さえ、きちんと守っていれば最長でも1年で、あのパラサイトは3Hに定着するはずだから、それ以降ならたえず持っていなければならないという状況にはならないよ


そんな感じで、風紀委員会室での話は終わり、生徒会室で残りの仕事を終えてから、中条会長に

「皆が帰ったところで少し相談させてもらいたいことが、あるんですけどいいですか?」

「陸名くんが、私に相談事。初めてじゃないかしら」

そういって乗り気になってくれたのでよかった。幹比古からは、帰りにレオやエリカは、『達也たちとは別に帰る』というメールが入っていたので、気をきかせてやれということなんだろうということはわかっていた。達也たちが先に生徒会室から出ていったところで、中条会長から

「ところで、相談って?」

「達也と深雪さんにほのかさんと一緒に帰るのは避けようと思っただけです。いつも一緒に帰るみんながさすがに今日はさけているので、口実にさせてもらいました」

中条会長からは、なんとなくわかるわかるという雰囲気は出ていたので、結果オーライだろう。中条先輩とは少々最近の起動式のことで話して時間をつぶした。あとあ1科生と2科生ということもあり、出入り口も違うので1人で帰ることになった。中条会長に本命がいようがいまいが特に関係ないし、中条会長のと一緒に帰ったら中条会長のファンの一部に過激な行動をするものがいるとも限らないから、そこはさけさせてもらっただろう。
結局この日は帰っても、義理チョコしかなかったということだけで、あとはつつかないでいてほしい。



翌朝は普段より早めに学校へと向かった。
目的はロボ研のガレージにいるパラサイトがついている3Hと、まずはコミュニケーションがとれるかの確認だ。しかし、7時ちょっと過ぎについた時には

「達也、深雪さんにほのかさんまでいるのかよ」

「すでに中で一度、サイオンの放出があったぞ」

ほのかがいるから、エレメンタル・サイトを使っていないのね。ガレージの中の気配をさぐってみると

「中に人がいるようだね。誰かな?」

廿楽(つづら)先生たちだ。中に入るのはしばらく待つように言われている」

「うん? 1時限目の前に入れそうかな?」

「無理だろう。このまま生徒会室に行くのが一番だろうな」

結局は生徒会室で何がおこったのか、ロボ研での3Hの画像とか、3Hからアクセスされたというサーバー側の閲覧をしているところで、1時限目が始まりそうになったので、廿楽(つづら)先生宛に『プシオンに関する調査ができるようになったら、教えてください』とだけメールを入れて、授業を受けることにした。



そして席にロボ研に集まってほしいと中条会長からメールが届いたのは、昼休み直前の授業に入ったところだった。

ロボ研に行くと、中条会長はともかく五十里先輩には一緒にいるのがあたりまえのように千代田先輩だが、風紀委員会を代表としてきたのだろう。それと部活連から服部会頭に、僕の後方からは深雪とほのかがきた。生徒会役員と風紀委員長に部活連会頭といったメンバーだろうか。

「そういえばリーナはどうしたんですか?」

「学校を欠席しているそうです」

好都合と考えて3Hの方をみるが、せっかくの結界札から離れた位置にいる。まあ、これで問題が起きていないからよしとしよう。中条会長からは

「五十里くんから陸名くんに説明してあげてもらえる」

それにともなって、すでにつかんでいた情報にプラスアルファがあったので、まとめてみると、

朝7時に3Hのここでの名称ピクシーの自己診断プログラムを走らせてそれが終わったところで、ピクシーが笑顔を作って、サーバーにある生徒名簿へアクセスを開始したということだ。ピクシーに強制停止コマンドをおくったがとまらずに、サーバー側でアクセスされている無線回線を停止したことにより、アクセスが停止したとのことだ。廿楽(つづら)先生が今朝から調べていたが、ピクシーのボディから高濃度のサイオンの痕跡に、プシオンの痕跡もみられたということだった。
また、ピクシー自体からログを取り出して調べていたということなので、一応、起動はさせてしらべているわけだ。

「それで、僕はそのプシオン関係を調べてよいわけですね?」

「昨日から、そこの古式の札らしいものとかつけたりしていたのは、陸名くんだと聞いていたので、事情もある程度知っているのではないかなというのもあってよ」

「えーと、パラサイトが、このピクシーに寄生しています。それに昨日気がついたので、札とか張って、学校の職員とかには話しておいたんですけどね」

「ふーん。だから廿楽(つづら)先生が珍しく朝早くからきていたのね」

「それでは、しらべさせてもらいますけど、できたら僕より後方でみていてもらえませんか?」

「何か危険なのかい?」

「新種のパラサイトなので、本来ならICPO魔法3課のネゴシエーターあたりにおこなってもらう内容なんです。しかし、日本の警察がいれてくれないみたいなので、僕だと場合によっては、ちょっと手荒っぽくなるので」

皆が下がったところで、

「ピクシー、サスペンド解除」

ピクシーが腰かけた椅子から立ち上がって深々と一礼した。

「ご用でございますか」

「ロボットであるピクシーに寄生している、僕らがパラサイト、もしくはプシオン情報体と話がしたい。パラサイトがこちらの言葉が理解できるのなら、首を縦にふってくれないか」

首を縦にふったのでそのまま話を続ける

「首を縦に振ったということは、ロボットであるピクシーではなく、パラサイトと呼んでいる相手と意志疎通ができるとこちらでは認識した。よければ、また首を縦にふってほしい」

また首を縦にふったので

「パラサイトから、こちらへ意志疎通を図る方法は首を縦にふったりする以外にあるかな?」

『はい、あります』

それは意識に直接きたような感じだ。テレパシーというやつだろう。

「こちらから話したことは聞こえていて、そちらからの意志伝達は、今の方法、僕らの間ではテレパシーと呼ばれるものだが、それですすめていってよいかな?」

『はい、それで問題ありません』

このあとは、名前はピクシーで問題ないことと、食事はロボットへの電源供給だけで、サイオンやプシオンは自然回復するということと、今後の行いたいことを確認したところ

『司波達也様にお会いして、司波達也様に従属します』

「わかった。今日中に司波達也と合わせよう。ところで、その『ロボット三原則尊守』と『話し合いがしたい』の札は必要か?」

『必要ありません』

「わかった、あとで外そう。まずはサスペンド状態になってくれないか」

ピクシーが椅子に座って、サスペンド状態となったので、

「このあとは達也を交えて話がしたいのだけど、ここだと、やじ馬が集まりそうなので、どこかよいところはないすかね?」

中条会長がさっそく情報端末でどこかの部屋をおさえにかかっているのと、達也へ連絡をしているのだろう。それとは対照的にほのかは、居心地が悪そうだった。
 
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