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Fate / the beelzebub comes.(魔王来たりて)

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第1話 来訪

 
前書き
続いて第1話です。 

 
冬木市、市外の森上空――――――――


今にも雨がこぼれ落ちそうな空模様の中、

明らかに自然の物とは思えない――――

カカッ!!

赤黒い・・・雷(いかづち)が雲海を断ち、耳をつんざく様な破砕音と共に、冬木市内の湖へと降り注いだ――――――

そして、着水と同時に、赤く・・・・巨大な魔法陣が水面に形成された。















(シリウスサイド)

今、俺はじーさんに別の世界に転送されている最中だ。

転送されている間、俺は迂闊に動けない訳だが・・・

まだ着かないのか?


いい加減、この目に悪そうなマーブル状の景色も見飽きたんだが・・・

・・・ん?

やっと出口の様だな、前方に光が見えてき――――

俺は出口らしき光に包まれたと思った瞬間、

「た――~~!?」

水面ギリギリの空中に放り出された。

「ぬおお!?レビテー・・・」

ドッポ―――ン!!
「ガボガボボッ!?」

当然レビテーションを唱え様とするも、水面から距離が全く無かった事が災いした。

盛大な水しぶきを上げて、頭から湖に突っ込む羽目になってしまった。

ザパァ!
「・・プハッ!」

俺は急いで水面に顔を出し、周りを伺う様に見渡す。

どーやら着いた様だが・・・何で出現場所が湖の上なんだ!?

おまけに水が冷てえ!?


ヒラ・・・

ん?
・・何だ・・・・紙?

俺は頭上から落ちてきた紙を手に取り、そしてそれに文字が書いてある事に気付いた。

「何々・・・《これを読んでいる頃には目標の世界に着いているじゃろう。》」

・・・じーさんからの手紙・・・か?
しかも、律義に俺の世界の言葉で書いてあるし・・・

《・・出現箇所は絞ったつもりじゃが、多少の誤差が出る。我慢してくれい!
 ・・・後、お主には水難の相が出ておる様じゃからの、気をつける事じゃ(笑)》

・・・あんのタヌキジジイ・・・んな事言いながら、手紙はしっかり耐水性の紙に、滲まないインクを使っているじゃないか!?

おまけに笑いマークまで付けてるし・・・初めっからこの場所に転送する心算だったな!

・・・次に会った時に仕返ししてやる・・・覚えとれよ!


《――――追伸、》

ん?
続きがあるのか・・

《この世界の情報を詰め込んだ宝石をお主のポケットに放り込んでおいたから、後で読み取ると良かろう

 ・・・最後になったが、存分にその世界を満喫するんじゃな、せいぜい有意義な日々を過ごす事じゃ。

 ・・・それではな、また会える日を楽しみにしておるぞ。


                        キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ》




・・・・・・・・・何か・・・気が削がれたな。

クク・・・たいしたじーさんだよ、全く。

「・・俺も、何時かまた会える日を・・・楽しみに待っておくぞ、じーさん?」

俺の脳内に、小憎らしく笑うじーさんの顔が浮かんでくる。

だが、以外に悪い気はしないかった。



――――さて、いーかげんこのままだと冷えるからな・・・『浮遊(レビテーション) 』!

呪文によって浮力を得た俺は、岸に向かって飛翔した。

そして数分程飛行した後、手近な岸に降り立つと、


「『乾燥(ドライ)』」

今だにびしょ濡れな状態だった服を呪文で乾かした。

ちなみにこの呪文は俺の母親のオリジナルで、若い頃に何かとびしょ濡れになる時期があって、一々乾かすのが面倒で開発したらしい。

面倒の一言でこんな呪文を開発したっていうのが、あの母親らしいと言えばらしいが・・・

まぁ、今の状況にとっては非常に助かった訳だが・・・


・・・そー言えば・・あのじーさん、この世界の情報が入った宝石をくれたって言ってたな・・・
じーさんの言葉を思い出し、俺はおもむろにポケットに入っていた、不思議な光を放つ宝石を取り出す。

フ~ン・・?

これがこの世界の情報入りの宝石・・か?

一見には鈍い輝きを放つ、只の赤い宝石にしか見えない。
しかし、言語関連を一々覚え直さなくていいというのは非常に助かる。

大体の構成を把握した俺は、宝石に魔力を流し込み体内へと吸収した。

情報量としたら結構なモノだったが、この世界についての情報は大体取り込む事が出来た。

「――さてと、情報の吸収も終わったし、そろそろ周辺を探索にでも行くか・・・ん?」
これは魔力反応?・・・魔道士が近くにいるの・・か?

・・・酷く弱っている様だな、今にも魔力反応が消えてしまいそうな位に衰弱している。


・・・・・・・・・・・・・・。


「見に行ってみるか・・・ここで気付いたのも何かの縁かもしれんしな。 『翔封界(レイ・ウイング)』!」
翔封界(レイ・ウイング)によって浮力を得た俺は、僅かに感じられる魔力反応を頼りに現場に急行した。




そして、現場に到着した俺は――――――

紫色のローブを纏った女が、階段の手前で倒れているのを発見したのだった。
















(???サイド)

・・う・・・・ん・・・?
私は目の前に光を感じ、ゆっくりと開いた。

赤い・・・?

開いた瞳に最初に写った物は、宵闇の中でも映える光沢のある赤い髪だった。

「・・・ん、目が覚めたか?」

そして、自分を呼び掛ける声で、漸く目の前にいる存在が赤い髪をした男だと気付いた。

「・・・貴方は・・・誰なの?」

あの時・・・前マスターを裏切り、この手で殺した・・・その後、私は唯一の魔力の供給ラインを失い、夜の森をさ迷った揚げ句・・・消滅する筈だった・・・

・・・しかし、今こうして私は存在している。

それどころか、かつて無い程に・・力強い魔力がこの身体に溢れている・・・

――状況から判断すれば、目の前にいるこの男が私に魔力を供給したと、そう考える事が自然でしょうけど・・・

「・・・・もう一度聞くわ、貴方は何者なの?」

「・・・そう興奮するな、無断で魔力供給した事については謝る。あのままでは、意識を失ったまま消えてしまいそうだったんでな。」

赤髪の男は両手を上げて、敵意が無いといった態度を見せる。

どうやら、私の予想は当たっていた様だけど・・・

本当に何者なのかしら・・・静かに佇むその姿からは、想像出来ない程の強大な魔力を内包しているのを感じる。

でも、それはこうして間近に居るからこそ分かる事・・・目の前にいなければ、何人(なんぴと)も気付きもしないでしょうね。
それほどまでに見事な穏行・・・それはその強大な魔力を己が物にし、コントロール出来ているという証拠。

こんなとてつもない存在が、只の人間である筈が無い。

「・・・・俺が何者か・・か?・・・まぁ、説明するのは良いが―――口で説明しても信用しないだろうし・・・
 それに、長いし面倒臭いからな、手っ取り早く行くぞ?」

赤髪の男は、おもむろに赤い光が灯った指先を私の額へと向ける。

「!?・・・何をするつもり・・・!?」
私は咄嗟に距離をとり、魔術を放とうと腕を振り上げ・・・!?

「話の腰を折るなよ、まだ説明の途中だ。」

いつの間に!?

・・気付けば、私の腕は目の前の男に掴まれていた。

「クッ・・・!?」
なんて膂力・・・ビクともしない・・・!?

「そう暴れるな、お前の脳に直接俺の記憶の一部を投影するだけだ、害は無い。」

「・・・記憶の転写?」

「そうだ。」

私は首を縦に振る男の真意を計るべく、まじまじと凝視する。


・・・・・・・どうやら嘘はついていない様ね。


・・・・・・・・・。


・・・・そうね・・どうせ、あのままでは消えていた訳だし。

私は一旦精神を落ち着け、改めて男を観察する。

それに、抑えていてこの魔力量だ・・・ただの人間で有るはずが無い。
その正体を見ておくのも悪くはないわね。

「分かったわ、やってちょうだい。」

「そうか、分かった。・・・少し身体の力を抜いていてくれ。」

男は改めて、私の額に指先を翳し、煌々と輝く赤い光を触れさせた。

「・・・!?・・・これ・・は・・・?」

彼の言った通り、私の頭の中に様々な映像が流れ込んできた。

――――男の禍々しく強大な魔力を行使する姿、数多の異形共と殺し合う姿、魔王としての覚醒・・・・・そして人間達の裏切り・・・

・・・そう・・・・彼も裏切らたのね・・・信じていたモノに・・・


その後も様々な映像が脳裏を流れていく。

・・・最後にかの魔法使い――――キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグとの会話の場面が映つり、そこで映像が終了した。

「・・・ソレが俺が此処に来た理由と、俺自身の正体だ。」


・・・・・・・・・まさか、これほどの存在とは思わなかったわ・・・

存在としての格が違う・・・私が逆立ちしても敵う相手では無い・・・・・

・・・でも、信用に足る人物ではある様だ。

仮に味方に引き込めれば、聖杯戦争においてこれ以上頼もしい存在もいないだろう。

それに・・彼と契約出来れば、私は魔力制限の枷から解き放たれる・・・魔力の枯渇を気にせずに魔術を行使出来る・・・

何より、魔女のマスターが魔王なんて、洒落が効いていているじゃない。(思考時間1.03秒)

もう一度だけ人を・・・目の前の男を信じてみる気になった私は、何時になく高速思考が可能な頭の中で、
今後のシミュレートを一瞬にして完了させたのだった。
















(シリウスサイド)

記憶の投影が終了してから数秒間程、女は黙っていたかと思うと、

「今の映像からすると・・・シリウス様は今回の聖杯戦争に参加するという事で良いのでしょうか?」
ずずいとこちらに詰め寄って来た。

しかも、何故か話方が敬語の上、名前の後に様付けになっている。

名前自体は記憶の中で知ったんだろうが・・・

「あ、あぁ・・・まー、その方が動き易いだろうしな・・・しかし、何故様付けなんだ?」
俺は額に汗がタラリと流れるのを感じた。

「まぁ、私なりのけじめという物ですわ。
 ・・後、私の事はキャスターとお呼び下さいな。」

どういう意味なのか、サッパリ分からんな・・・

それにしても、唱える者(キャスター)とは・・・まぁ、格好からしてらしいといえば、らしい名前だが・・・

本当の名前を教える気は無いという事か?


・・・・・・まぁ、良いか・・・

「・・今更だが、俺の名前はシリウス・インバース・ガブリエフだ。」
記憶を見せた際に俺の名前は既に承知だろうが、俺は改めて自身の名前を名乗った。

「ではシリウス様・・・今から私と契約して下さいな。」


・・・・・・・・・・・・・・・何?

「・・・それは、俺のサーヴァントとして、聖杯戦争を戦うという事か?」

「勿論、そのつもりで申し上げましたわ。」
キャスターは全くの澱みもなく言い切った。

「・・・俺の目的は、聖杯戦争で勝ち残る事では無いんだぞ?」

俺はキャスターの真意を計りかねていた。

「勿論承知していますわ、その事も理解しての事ですわ。」

「む、むう・・・まぁ、協力してくれるのなら・・・それで良いの・・・か?」

その時は、裏切られたとしても対応出来るからと、その場で了承した。
だが・・・俺は全く気付いてなかったのだ。

キャスターが獲物を見付けた時の猛獣の様な・・・ある意味危険な視線を俺に向けていた事に・・・


















(遠坂凛サイド)

その日の夜は、今にも雨が降ってきそうな空模様だった・・・

空気に湿り気が帯びていて、汗が頬を伝う。

だが、この汗はそういう意味でかいた訳ではなかった。

先程、一瞬ながらも感じ取る事が出来た、強大なる魔力・・・
それに気付いてしまったが為に、冷や汗をかいたのだ。

アレが敵に回るかと思うと、正直勝てる気がしなかった。

たとえどんなサーヴァントを呼び寄せたとしても・・・ね。

この時ばかりは、アレに気付いてしまった自分の優秀さが恨めしかった。


・・・でも、気付いてしまった以上、勝つための対策は講じなければならない。

その為にも先ずは最良のサーヴァントを呼び寄せなければ!

私は胸元にしまっていた父親の形見である赤い宝石を握り締めた。


お父さん・・・お父さんからの遺伝したうっかりは今日は無しで、お願い!
今夜ばかりは失敗出来ないの!!

今夜サーヴァントを召喚する事を心に決めた私は、天国にいるであろう父親に、うっかりの回避を真剣に願うのだった。












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