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土蔵

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4部分:第四章


第四章

 そこにいるのはだ。子供達だった。彼等もまただ。子供になっていたのだ。
「何だ?御前子供に戻ってるじゃないか」
「御前もじゃないか」
「あんたも。どうして?」
「皆どういうことなんだ?」
「ここはこういうとことなのじゃよ」
 庄屋はこう彼等に話すのだった。
「いつも春でじゃ」
「それで子供になる場所なんだ」
「何か不思議だよな」
「土蔵の中だった筈なのに」
「どうしてなのよ」
「どうしてかはわしもわからん」
 その土蔵の持ち主であるだ。庄屋にしてもだというのだ。
「だがじゃ。それでもじゃ」
「こうして春の村に来るのかよ」
「しかも子供になって」
「それでか」
「そうなの」
「話はわかったな」
 笑顔でまた話す庄屋だった。
「では。遊ぶか」
「ここで遊べっていうのか」
「子供の姿でか」
「何か。まだよくわからないけれど」
「皆で子供として遊ぶのじゃ」
 庄屋はまだいぶかしむ顔のままの彼等に話すのだった。
「そうするとよいぞ」
「そう言うんならな」
「まあ。どうせだから」
「遊ぶか」
「そうしよう」
 何はともあれだった。彼等はだ。庄屋の言う通りだ。
 それぞれ村の野原や小川や山の麓でだ。楽しく遊ぶのだった。
 追いかけっこをしたりかくれんぼをしたり果物を取って食べてだ。そうして遊んでいた。しかもそこにはだ。
 庄屋も入る。他の大人達もだ。皆子供の姿になって遊ぶのだった。
「あれっ、まさかお父?」
「おっ母なの?」
 彼等は子供達がそれぞれ着ている服からこう察したのだった。
「ひょっとして」
「まさかと思うけれど」
「ああ、そうだ」
「そうなのよ」
 その子供達もだ。遊ぶに入りながら彼等に話してきた。
「俺達もな。こうしてな」
「子供の姿になるのよ。この中じゃね」
「まさか。子供のお父と遊ぶなんて」
「そんなの考えたこともなかったわ」
「だからここはそういう場所なのじゃよ」
 庄屋は木に登りながら首を傾げながら駆け回る彼等に話した。村で一番大きい木に登ろうとしているのだ。そうしながらの言葉だった。
「大人が子供になる場所じゃからな」
「だからこうしてか」
「子供になった自分の親とも遊べるんだ」
「何か不思議っていうか」
「有り得ないわよね」
「かなりね」
 彼等にしてはだ。また一つわからないことだった。しかしそれでもだ。彼等はその子供の姿になっている自分の親達ともだ。一緒に遊ぶのだった。
 そうしながらだ。彼等は気付いたのだった。
「何か違うよな」
「そうだよね」
 こう話していくのだった。遊びながら。
 
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