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罪を背負い

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3部分:第三章


第三章

 そしてだ。彼はだ。こう男に言った。
「私がすることはだ」
「何だというのじゃ?」
「背負う」
 彼は言い切った。
「罪をだ。背負おう」
「背負うというのか」
「そうだ。確かに私は罪を犯してきた」
 こう言うのである。
「それは否定できない」
「そこから逃れないというのじゃな」
「逃れてもそれは消えない」
 罪はだ。消えないというのだ。
 それを話してだ。彼は男にさらに言った。
「目を背けて何になる」
「言ってよいか」
 男の口調が変わった。ギルガメシュにこう言ってきたのだ。
 そのうえでだ。こう彼に言うのだった。
「そのことを」
「言ってみるのだ」
 ギルガメシュも男に対して言い返した。
「そなたがそのことについてどう思っているのかな」
「目を背ければ確かに見えなくなる」
「そうだな。見えなくなるな」
「しかしそれだけじゃ」
 見えなくなる、それに過ぎないというのだ。
「何の解決にもならん」
「そうだ。逃げても目を背けても何の解決にもならない」
 ギルガメシュは玉座から動くことなく話した。
「それではな」
「だから背負うのか」
「背負い。その罪に相応しいことをしていく」
 彼は言った。微動だにせず。
「それが私のやることだ。そして」
「そして?」
「人は罪を背負える」
 こうも言うのだった。
「私は半分は神だが。それでも人間だ」
「その人間ならばじゃな」
「そうだ、罪を背負える」
 またこう言ってみせる彼だった。
「そしてそのうえでだ。その罪に相応しいことができるのだ」
「償いだけではないのじゃな」
「償いか」
「話は先に戻るがな」
 男はこんなことも話した。
「償いは不要か」
「必要だ。しかしだ」
「しかしか」
「それ以上のことができる」
 こう言うのである。
「人はそれ以上のことがだ」
「できるのじゃな」
「そうだ。己の罪を自覚し背負いそのうえで何かをするのなら」
 それならばだとだ。彼の言葉は続く。
「人は償いよりも遥かに大きなことができるのだ」
「では御主もそうするか」
「その為に私は王でいる」
 そのだ。王にだというのだ。
「罪を背負ったうえでさらに大きなことを果たす為にな」
「言ったな。しかしじゃ」
「しかし?」
「流石じゃ」
 男の笑みが変わった、認めた笑みになった。
 
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