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罪を背負い

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1部分:第一章


第一章

                        罪を背負い
 シュメール王ギルガメシュのところにだ。一人の怪しい男が来た。
 その男は玉座に座るギルガメシュの前に来た。見ればだ。
 小柄で背は曲がり髪の毛は一本もない。黒い闇の様な服を着てそして不気味な含み笑いを浮かべている。
 目は細く瞳は小さい。唇は薄い。しかも耳はやや尖り髭もない。その男を見てだ。
 ギルガメシュは静かに言うのだった。
「人ではないな」
「ほう、わかるか」
「見ただけでわかる」
 そうだと答える彼だった。
「しかも見たところだ」
「何に気付いた」
「影がない」
 そのことも指摘するのだった。
「それで人と思う方がおかしい」
「そう言うのか」
「そうだ。貴様は人間では絶対に有り得ない」
 玉座に座りその濃い髭の顔に絶対の自信をみなぎらせてだ。ギルガメシュはその不気味な男に対して話をするのだった。
「魔物か」
「まあわしの正体はどうでもよいか」
 男は陰気な笑いと共にギルガメシュに返した。そのうえでだ。
 今度はこうだ。彼に言うのであった。
「それよりもじゃ」
「何だというのだ」
「御主はこれまで何をしてきた」
 その陰気な笑みでギルガメシュに問うのだった。
「これまでだ。王として何をしてきた」
「何をか」
「王として英雄としてじゃ」
 そのことを問うのだった。
「まず御主は多くの者を殺してきたな」
「そのことを知っているのだな」
「わしの知らぬことはない」
 男はこう返すのだった。
「何もかもを知っておるのじゃ」
「それでそのことを言うのだな」
「そうじゃ。御主は気まぐれで人も殺したな」
「気まぐれというのか」
「盗賊達を退治した」
 男が言うのはこのことだった。
「しかし命乞いをするその者達をその場で全員切り捨てたな」
「何度かあったな」
 ギルガメシュから言った言葉だった。
「そうしたこともな」
「そうじゃな。何度もあったな」
「盗賊達の征伐も王の務めだ」
 ギルガメシュは玉座から重厚な声で述べた。
「それ以外の何ものでもない」
「命乞いをしておってもか」
「あの者達は罪を犯した」
 それが切り捨てた理由だというのだ。
「盗むだけではなくだ。人も殺めてきた」
「だから御主が成敗したというのだな」
「それだけのことだ」
「確かにあの者達は人を殺した」
 男もそれはその通りだと述べた。
「しかしそれでもじゃ。御主もまたじゃ」
「私もだというのか」
「そうじゃな。殺したな」
 笑いながらだ。話した男だった。
「何人もな」
「では私もまた罪を犯したというのだな」
「そうじゃ。同じではないか」
 笑いながら男は話していく。
「そなたもな。盗賊達と同じではないか」
「違うと言えばどうする」
「嘘だと言う」
 それだというのだ。男はだ。
 
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