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ルパン三世シリーズ×オリキャラ

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大人の事情と祭り(ルパン三世2nd/名探偵コナン/オリキャラ)

 祭りというのにあまり縁が無かった。
そんな時代もあった。

 **

 これはほんの数時間前の話。
 赤いジャケットを羽織った男がいきなりリビングに繋がる木製のドアを開けながら放った。

「お祭りに行きましょう!」

 有無を言わせぬその笑顔に突っ込みたいのをその場に居た全員が思ったのにも関わらず、ジャケットを羽織った男は気にすることなく、自分から1番近い場所に居る、文庫本を読んでいる少年に近付いた。

「勿論、行くよなぁ?」

 笑顔、一言で言ってしまえば笑顔なのだが、何故かその笑みは追い詰められた鼠と獲物を見つけて、余裕のある猫を表している。
 少年は文庫本から顔を上げ、ジャケットを羽織った男、ルパン三世を見上げる。

「……俺じゃなく次元誘えば?」

 素っ気無く、文庫本を人差し指で挟み、窓際に置かれている大分古くなった藍色のソファに横になって煙草を咥えている男、次元大介を勧める。
 それに対して次元は鼻で笑えば灰皿に煙草を押し付けるようにして消した。

「次元ちゃんはもう了承済みよ」
「おい待てルパン。いつ、誰が祭り何かに行く何て言ったんだ?」

 ルパンが今勝手に了承したと口にすれば、突っ込むように次元はルパンに尋ねる。
ルパンはその質問を待っていましたよと言う表情をし、人差し指をピンッと立て、「今に決まってるじゃない」と言ってのけた。
 その姿は自分の獲物を自慢している猫に似ている。

「くだらね、俺は降りるぜ」

 祭りに行く事を「くだらない」と言って次元は行かない宣言をした。
少年、恋也も祭りにはあまり縁がなく、行く事もないのだろうと思っていた方なので、「俺も良いや」と行かないと宣言して、文庫本に目を移した。
 そんな様子をルパンは見つつも、1人で行く気にもなれず、既に不二子と五右ェ門は予定があるので誘う訳にもいかず、ただどうやってこの2人を連れ出そうかと考える以外にはないのだ。

「そんな冷たい事言うなよ、俺と恋也ちゃんの仲でしょ?」
「どんな仲だよ。良い人に連絡とってやるからその人と行けば良い。きっと喜ぶぞ……あ、もしもし? 銭形さん? 実は――」

 恋也がポケットから端末を取り出して電話した先があの銭形警部だと知ったルパンは、恋也の端末を奪いとって恋也の声で「ワッパの意味を知りたいんだけど……。え? 手錠? 警察用語……有難う、仕事の邪魔して悪かった。じゃ」と不自然に切る事は出来なかった。
 その所為か恋也の声で手錠の別の言い方、『ワッパ』の意味を知りたいと、適当に思いついた嘘を銭形に尋ねた。
 銭形はご丁寧に警察用語だと返答して、何の違和感もなく通話は終了された。

 そして端末は恋也に返却される、だが「何でとっつぁんと祭りに行くの! 楽しくないでしょ!」と文句と一緒に。

 恋也は溜息を吐きながら、端末の中に入っている連絡先をぼんやり眺めつつ「俺と行っても楽しめないと思うけど……」と呟く。
 ルパンは関係がないのか「不二子ちゃんも五右ェ門ちゃんも予定あるから、次元ちゃんか恋也ちゃんしか居ないのよ」と跪いた。
 どこの夢物語だと、次元が零していたのだがルパンは気にすることなく恋也を祭りに誘おうとしている。

「俺が行ったら、コナン君誘うけど?」
「ガキンチョ誘うのか?」
「何か不満か?」

 恋也の獲物を逃さないという笑みにルパンは負け、首を横に振り恋也が江戸川コナンに連絡をしているのを暫し聞いている。
 コナンは特に用事がなく、祭りに参加すると言うが条件付だった。

『パパも連れて来てねって世良の姉ちゃんが……』
「世良が?」
『一度見てみたいんだって』
「まぁ、引っ張り出してでも連れていくしかない、か……」
『じゃまた後で』

 傍に世良が居たのだろう。
次元も連れて来いと言うのだからよっぽど世良が次元に興味を持ったのだろう。
 推測しか出来ないが、世良も来るなら連れて行くしかない、恋也は簡単にそう思う。

「コナン君いけるって。あ、あと、次元も来いって」
「はぁ!?」

 次元のボルサリーノがずれて普段見えない次元の目が見える。
やはり驚いているのだろうか、目を見開いている次元に恋也は笑みを浮かべ「とっつぁんに捕まるか祭りに行くか、どっちが良い?」笑みの明るさは黒かった。

 **

 脅されて脅してを繰り返してはルパン、次元、恋也の3人は雰囲気作りだとルパンに言われ浴衣を纏った。
 ルパンは淡い赤の無地、次元も灰色の無地だった。
恋也はというと、同じく無地で緑の浴衣を羽織っている。

 現地集合としており、目印は【赤い鳥居】。

「さーて、集合時間まで遊ぶぞ次元!」
「元気だなぁ」
「そうだな」

 ルパンは1人ではしゃいでいる(いつものこと)が、次元と恋也ははしゃぐというより、ルパンの行動を傍観している。

 コナン達からしてみれば距離があるだろうこの場所も、夏の雰囲気が出ており、辺りにはちょうちんが飾られ、太鼓や尺八などで奏でられている音楽が流れつつ、数々の屋台と数え切れない程の人で賑わっていた。
 何人か恋人同士で来ている組や、学生の集り、親子で祭りに来ているのを見かける。
 周りが周りなので、自分達が浮いている感がハンパないと感じてしまう。

「じげーん、こっち来て見ろよ! 射的あるぜ」

 ほらほらと手招きをしながらルパンは射的の屋台の前で止まっている。
祭りなのだから、射的はあるだろうと次元は呟きながら、仕方なくと言った雰囲気でルパンに近付く。
 端から見れば一体どんな光景で見えているのだろうか。

「10発中に倒れたら賞品やるぜ」

 体格の良い、腹に腹巻をして頭にバンダナをしている男性にそう言われ、1回100円の射的をルパンと次元はしようとしているのだが、内容は酷いものだ。

「俺が1発で決めたら『タコ』焼きな」
「じゃぁ、俺が1発で決めたら『エビ』フライ」

 何故互いが嫌いな物の名称を言いながら、それを食べさせようと言う風にしているのだろうかと恋也はぼんやり思いつつ、そういえばと2人が日本円を持っているのかと、ふと気になった。

「どうでも良いけど、日本円持ってるのか?」

 恋也の問いに次元とルパンは財布を取り出して確認したところ、確かに日本円はあるのだが、諭吉が3枚という両替もしにくい金額だった。

「福沢諭吉が3枚ならあるぜ」
「いや、見せ付けなくて良い」

 次元がヒラヒラと1万円札3枚を振っているのだが、見せ付けられている気分になった恋也は間髪入れずに言葉を発した。
 ルパンも持ってはいるが同じく1万円札が3枚という状態だったので、恋也が200円を払うことになった。

「兄ちゃんもてーへんだなぁ。なんだぁ、父ちゃんの知り合いか?」

 200円払うと、射的屋の男は気さくに恋也に話しかけ、どうやら次元を恋也の『父親』だと勘違いしたようで、ニヒヒと笑いながら一通り射的のルールを言い、銃を渡す。
 
「2人とも俺の父さんの友人で、暫く海外生活していたらしく、日本の生活を忘れてる感じです」

 その場で吐いた嘘なのだが、射的屋の男はパイプイスに座っていた腰を上げ、実際見てみると恋也よりも背が低く、そろそろ腰が曲がってきている。
 パイプを優雅に咥えながら恋也の傍に寄って来ては「振り回されてるなぁ」と声を高くして言った。

 その瞬間、バァンと音が聞こえたかと思うと1番上の真ん中に置かれている、白猫を誰かが撃った。
 構えているのは次元なので、次元が白猫に当てたのだろうと予想を立て、そうなればルパンがたこ焼きで苦笑いしている姿を思い浮かべ、その次に同じ音が聞こえてはルパンが「コレで1対1だぜ?」とニヤリとした笑みで言った。

 10発中、全て撃った場合どうなるのかと聞いてもいなかったので、順番に当てられていくのを見つつ、残り最後の1発になった時に射的屋の男が言った。

 前触れもなく、ただの遊びで。

「お前さんたち、腕は確かなようだな。どうだい目を瞑って的に当たった方が勝ちって事で」

――どんな遊びだよ……。

 内心呟きつつも面白そうだという2人は止めることが出来ないので、少し離れたところで見物しようと距離を取り、銃の引き金を引かれる時を待つ。
 チャンスは一度、失敗すれば苦手な食べ物が待っている。
 目を閉じて、得意のワルサーでもコンバットマグナムでもない銃を握り、気配だけで獲物の場所を確認して、一切の迷いも無く、引き金を引く。

――バァン。

 祭り会場の射的屋の近くで銃声が鳴る。
確かに2人が発砲したのは同時だった。
 その同時さは良かったが、目を開けてみた光景は何とも言えない光景そのものだった。

 ルパンの目には狙っていた赤猫、次元の目には同じく狙っていた黒猫、そのどちらもが倒れることなく台の上で座っている。

「……あれぇ、もしかして……」

 ルパンが赤猫を指差しながら、次元に向き苦笑いを浮かべる。
次元は被っているボルサリーノを押さえ、射的屋に背を向ける。
 間単に言うと、どちらも獲物に当たらなかった。

「2人とも罰ゲーム受けるの?」

 ルパンの問いに恋也が笑いそれを答えにした。

 **

「この辺りのはずなんだけど……」
「見えないね。場所を伝え忘れたとかじゃないのか?」

 ボーイッシュな子が眼鏡をかけた子供に尋ねる。
 2人とも格好は洋服だ。
 ボーイッシュでぱっと見は少年を思わせる少女――世良真純は帝丹高校の青を基調と制服を身に纏い、片手にスクール鞄を持って、男らしく待ち合わせ場所の【赤い鳥居】の前に立っていた。
 眼鏡をかけた子供――江戸川コナンは青いブレザーに赤の蝶ネクタイ、灰色の短パンを穿いていた。
 祭りなのだから浴衣を着れば良いのに、という事も毛利蘭から言われているのだが、それだと待ち合わせの時間まで間に合うかは分からない状態だったので、2人は制服といつもの服で来た。

「確かに【赤い鳥居】に行くって言ってたんだけどなぁ……」

 可笑しいな、という笑みをコナンは浮かべた。
 時刻は午後7時。
待ち合わせの時間はとっくに過ぎていると言うのに、未だに現れない3人の姿をキョロキョロと辺りを見渡して捜している。

 もう待ち合わせの時間から10分は経過しているのだが、来る気配がないのでコナンはスマホを取り出して、恋也に電話をした。
 3コールで電話に出た恋也の声を聞いて、辺りがざわついている事からもうこの場所には来ているのだろと予想した。

「あ、もしもし? 僕だけど」
『あぁ。コナン君、すぐそっち行くから少しだけ待ってて』
「うん。分かった。場所分かる? うん、分かった。10分経っても来なかったらまた連絡したら良いんだね」

 バイバイ、と子供のように言ってから電話を切った。
もうこの場所には来ているのだが、【赤い鳥居】が見つからなくて今捜しているそうだ。
 普段あれだけ目立つ格好をしているのだから、すぐに見つかるだろうと思っていつつも、どうも目立つ連中が居なくて辺りを見渡す。
けれど周りには家族連れや、恋人達で、待ち合わせをしている人物ではない。

「どうだった?」

 世良がコナンに尋ねる。
コナンは無邪気な顔で「出来るだけ早く向かうって。10分経っても来なかったらまた連絡してって」と電話内容をそのまま伝えた。

 **

「んで、その【赤い鳥居】はどこにあんだ?」
「それが分かれば苦労はしない」

 次元の問いに恋也が答える。
待ち合わせの時間が近付いたので、待ち合わせの場所に向かおうとしていたのだが、【赤い鳥居】が見つからなく、ずっと捜し続けている。
 大体20分ぐらいが経った頃にコナンから連絡が入り、できるだけ早く向かうと告げたのだが、全くもってどこにその鳥居があるのか分からずにいる。

「そこにあるじゃないの」

 ほら、とルパンが【赤い鳥居】を指差した。

「どこに?」

 指を差した所を恋也が目で追うと、確かに【赤い鳥居】があった。
古びていて、朱色というわけでもなく、そろそろ剥げてきそうで、雨風に晒されていたのだろう、黒ずんでいる鳥居があった。
 地上から30cmぐらいの高さで。

「……誰も小さいとは思わないな」

 恋也が呟いたことにコナンが気が付いたのか、世良と話していた途端振り向いた。

「あ、やっと来た。久しぶり、パパ!」
「パパって呼ぶな!」
「パパ!?」

 次元と世良の声が重なった。
次元はコナンに『パパ』と呼ぶなといつも通りに言い、世良はコナンが次元に対して『パパ』と呼んでいる事に驚いている。

「コ、コナン君……、この人が君のパパなのか!?」

 世良は次元を震える指で指差しながらコナンに尋ねている。

「前に親子の振りして事件を解決しただけだよ」

 世良の問いに何でもない風にコナンは答えた。
 暫くそのやり取りを見ていたルパンと恋也は、赤い鳥居の方に興味がいき、小さい鳥居を色んな角度で見つめて「何でこの高さなんだ?」とか「よく踏まれなかったな」など言っていた。

「それよりおめー、コイツは誰なんだ?」
「あ、そうそう。パパに会いたがってた世良の姉ちゃんだよ」

 次元とルパンと世良は初対面なので、まず紹介が先だろうと次元に会いたがっていた世良の『姉ちゃん』と女の子である事を伝えつつ、世良に対しても次元の事を簡単に説明した。

「へー……、コナン君と事件を解決したって事はやっぱ賢いのか?」

 興味深々に次元の事をコナンに聞いている辺りはいつのも世良のようで、ルパンと恋也は未だに鳥居について話しているのだが、「じゃぁ、揃ったところで行くとしようぜ」とルパンが言ったので、屋台を回っていく。

「次元ちゃん、アレやろうぜ!」

 ルパンが『金魚すくい』と書かれた屋台を指差す。
世良とコナンなら可愛げがあるのだが、ルパンと次元では画になるのかとふと恋也が思う。

「冗談はよせ。俺たち2人が金魚すくいしてる図なんて誰が見たがるんだ?」
「僕が見たいさ!」

 次元の言葉に世良が両手を腰に手を当てて言った。
にぃ、と言う笑みが一番似合うだろう。
無邪気に笑みを浮かべて頭の後ろで手を組んでいる。

「やってみても損はないだろ?」

 世良は笑みを崩していなく、隣でコナンが苦笑いを浮かべているのだ。

「あのさ、俺の金でやろうとしてるだろ」

 そう言えばと恋也が口を開き、ルパンがバレたかという表情を浮かべていると恋也に笑みを浮かべられながら「たこ焼き30個」と宣言され、ルパンは止めてくれと両手を合わせて謝罪していたのである。
 その光景は意外にシュールだ。

 **

 金魚すくい、文字にしてしまえば金魚をすくうのだが、金魚をすくう行動を見ていると、誰が1番初めに考えたのだろうかと思ってしまう。
 本気でルパンと次元が金魚すくいをしている光景は滅多に見られないだろう。

「I do not miss the take that I aimed at.The master thief who strikes everywhere at once――It is Lupin the Third」
「Yes, therefore?」

 狙った獲物は逃さない、神出鬼没の大泥棒――それがルパン三世。
 うん、だから?
 何故か急に英語で話し出したルパンに恋也が英語で答える。
勿論その場に居た全員が英語を日本語に訳せるのだが、独り言の様にも聞こえたのだろう。
 恋也以外誰も何も発さなかった。

「おじさん、さっきから一匹も取れてないよ」
「うるせぇな! 金魚なんて盗った所で嬉しくねぇよ!」

 今のところ次元が3匹、ルパンが0匹、コナンが3匹、世良と恋也は不参加という状態だ。
 といっても、ルパンはもうとっくに終了しているが。
子供に紛れて大人が金魚すくいをしている所を、カメラに撮っても良かったのだが、世良がいるため、からかう用に写真を撮れずにいる。
 ルパンは1匹も取れない事に不満なのか、頬杖をつきながらコナンと次元の勝負を見ている。
 世良はと言うとニヤニヤしながら上から眺めている。

「ルパン三世も金魚には敵わないのか」
 
 良い情報を手に入れたと言う表情を作っている世良に恋也は「ルパンの情報を得る為に祭りに来たのだろうか?」と言う疑問を持った。
 コナンから次元の事は多少聞いていて、それを口実にしてルパンの情報を得ようとしているのだと考えると、恋也は自分がした事に後悔した。
 後悔して顔には出さないようにしつつも下唇を噛む。
 あくまで可能性の話なのだが。
 
 どうやらコナンは終了したようで、合計4匹の金魚を水槽に返却した。
 次元はというと7匹目で終了した。

「じげーん、もう1回」

 1匹も取れなかった事に不満なのかもう一度させてくれとねだるのだが、恋也の「たこ焼き33個」と言うセリフで何事もなかったようにその場から立った。
 
 **

「恋也ちゃんアレやろうぜ!」

 今日のルパンはいつにも増し元気だな、と恋也と次元が思う。
恋也の肩に腕を回し、ホレホレと『くじびき』と書かれた看板を指差す。
くじびきぐらい自分1人ですれば良いだろうと思うコナンと次元なのだが、口に出すを面倒なので2人とも黙って見ている。
 
「1回100円だから、安い方だと思うよ」


 世良が値段標を見てルパンと恋也に伝える。

「1回ぐれぇ、良いだろ?」

 溜息を吐いて、恋也とルパンはくじびきをすることになった。

「何で……」
「良かったな、コレで毎日悪夢が見れるな! 俺なんてイカだからな」
「イカの方がマシだっつーの!」

 くじを引いた結果、ルパンがA賞で恋也がC賞だった。
ルパンが持っているのはどう考えても8本脚の吸盤の付いた、ルパンの苦手な「タコ」だった。
 両手に乗るサイズのとても可愛いぬいぐるみだ。
 自分の苦手な物のぬいぐるみが当たった事にガックリと肩を落としてるルパンに次元が励まし、コナンと恋也では呆れた表情を浮かべていた。
 恋也は何故か「イカ」のぬいぐるみだった。

 次元ちゃんあげる、とルパンが次元にタコを渡し、次元も断らずタコを受け取った。

「次、どこ行こうか?」

 世良が頭の後ろに手を組んで尋ねる。
誰に、と言う訳でもないが、それぞれ考えて「……俺焼きそば買って来る」と恋也が言い出し、休憩所で待ち合わせになった。

 **

 恋也が焼きそばを買いにいって数十分が経つ頃、恋也は来た道を戻ってきていたのだが、前触れも無く背中にカチャリと音を立てて、押し当てられた。

「おっと、騒がないで下さい。私は貴方を撃つ気はありません」

 本当にキザな奴だ、口には出さずに恋也はそう思った。
恐らく背中に当たっているのは拳銃だろう。
人を殺すことは出来ない、拳銃だろうけれど、脅しぐらいには使えるものだ。

「俺に何の用で?」
「とある同業者の方にお会いしたいので、案内をしてもらおうかと」

 同業者、それは誰のことかすぐに理解した恋也はすぐに「YES」と言える訳もないので、暫し間を置いてから「……俺の正面に来たら案内してやる」と述べた。
 キザな男といってもまだ高校生の黒羽快斗通称「怪盗キッド」は、クスリと笑みを浮かべトランプ銃を仕舞い、恋也の目の前に姿を現した。

 その姿は普段目にする姿ではなく、地味なパーカーとスラックスなのだがこの場で普段の格好をするのは、変に悪目立ちをするだろう。
 仕事をしているわけではないので格好を変えたのだろうと恋也は予測し、快斗を見つめる。

「『同業者』って言ってたな。見てたのか?」

 同業者、字の如く同じ業界の者。
アニメ関連ならアニメの同業者、芸能界関連なら芸能界の同業者、恋也の目の前に居るのは『怪盗』。
怪盗の同業者など、1人しか存在しない。
 恋也の問いに怪盗キッドは肩を竦め、「えぇ。まぁ。あのお方が日本にいらっしゃると小耳に挟んだもので、一度お会いしたいと思いまして」と笑みを浮かべ答えた。
 完全に見られていたという事だ。
見ていたが姿を現さなかった原因は2つある。
 1つは江戸川コナンがいるという事。
 2つは次元大介がいるという事。
 探偵とガンマンが居られると幾ら怪盗でも、撃たれて死にはしたくないし、捕まえられたくないという思いがある。
 その為、誰かが1人になるのを待っていたのだろうと単純な推測が立てられる。

「……まぁ、会ったところで気に入ってくれるかはどうかは知らないけどな」
 
 ついて来い、恋也は片手を上げて怪盗キッドの目の前を通り過ぎた。
距離的にはまだ距離がある為、コナンにもルパンにも次元にも世良にも、キッドの事は知られていないだろう。
 だがしかし、急に知り合いにあったなど言える訳も無いので、どう言い訳をするかと考えながら休憩所に歩みを進めていくのだが。

 **

 同時刻。

「おいガキンチョ……」
「何、ルパンおじさん」
「いい加減そのタコこっち向けるの止めろ!」

 休憩所にある木製で出来たイスに腰掛けるも、次元から例のあのタコを貸してもらい、ルパンの目の前に突き出しているコナンの姿があった。
 端から見れば子供がぬいぐるみを渡しているようにも見えるのだが、コナンにしてみればただの『嫌がらせ』である。

「僕も預けられたイカを向けてみても良いか?」

 コナンとルパンのやり取りに世良が食いつく。
 大人を苛める子供の姿が、休憩所では他の客に暇つぶしとして面白い図として、記憶に残っていた。

 次元に助けを求めようと、喫煙コーナーと手書きで書かれた看板の下に行っている次元に手を伸ばして見たのだが、ルパンに気付いてはいるが助ける気はないようで「本物じゃねぇだけマシだ」と、他人事にした。

「嫌ならルパンおじさんも喫煙コーナー行けば良いじゃん」

 コナンが逃げ道を作ってあげるも、実際に行こうとしたら大声で叫ばれた為、動かずにいる。
 煙草を吸いに行く時は何も言わない小学生と高校生だが、逃げようとしたら大声で叫ぶのだ。
どろぼーっと。
 事実なのだが、何も盗んだ訳でもないので、反論しては休憩所の禁煙コーナーから動けないでいる。

 それを繰り返して大体数十分後に、恋也が姿を現した。

「よう名探偵久しぶりだな」

 ルパンが恋也に声をかけようとした途端に後ろにいたキッドが、コナンに声を掛けた。
キッドはコナンに対して結構砕けるのだ。

「ストップストップ! 今日はただの『一般人』だ」

 手で来るなと言うようにしてコナンを近づけさせないようにしており、盗みに来た訳ではないのだから一般人で合っている。
 用があるのは名探偵ではなく、同業者のルパンなのだから。

 世良は世良で色々キッドに言いたい事があるのだが、それはもう大分前に蹴飛ばした事で終りにしておき、コナンとキッドの様子を見ながらも、「ところで何の用なんだ?」と気さくに話しかける。

「あぁ、その事なんだが……」
「ルパンに会いたいんだとよ」

 キッドの言葉を無視して恋也が告げた。
フードを被っていないのだが、特に顔バレはしているこのメンツでは顔を隠しても意味が無く、素顔ではないが、怪盗キッドの髪型等にセットはしているものの特に隠したりはしていない。

「ルパンに会いたいなんざ、物好きも居るもんだな」

 煙草を吸い終えて禁煙コーナーにやって来た次元が会話を聞いていたのか、ルパンに向かって茶化すもルパンは口角を上げ「それだけ俺様の人気があるってモンよ」などと言いのけた。

「じゃ、その場はお2人に任せるぜ」

 次元が腕を軽く上げ、コナンと世良と恋也をつれて休憩所を後にした。  
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