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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico12騎士に融合騎、はやてにリイン

 
前書き
騎士に融合騎、はやてにリイン/意:魔導騎士はやてに、融合騎リインフォースⅡが加わったら、どんな強敵にも真っ向から立ち向かえるという例え。 

 
†††Sideルシリオン†††

聖王教会騎士団の精鋭・銀薔薇騎士隊ズィルバーン・ローゼの隊長(イコール教会騎士最強)であり、剣騎士最強のシュベーアトパラディンであり、教会のシスターでもあり、いま俺たちが訪れているザンクト・ヒルデ魔法学院の講師でもある、シスター・プラダマンテ・トラバント(敬称は騎士ではなくシスターの方がいい、ということだ)に案内され、応接室へと赴いた。そこに居たのは、「シャッハ!」シャルがそう呼んだように、修道服を着たシスターシャッハだった。

「おはようございます、イリス。そしてお久しぶりです、はやてさん、ルシリオン君、アインスさん、リインさん。本日、皆さんを案内させていただく、シャッハ・ヌエラです」

騎士カリムの補佐を務める秘書・護衛であり、教会のシスターでもあるシスターシャッハが俺たちを迎えてくれた。そんなシスターシャッハとは特別技能捜査課での研修時、シャルの家に泊まっている間に騎士カリムに紹介されて知り合った。そして先の次元世界と同じくシグナムと意気投合し、これまでに何度か模擬戦を行っている。ちなみにリインは通信越しでシスターシャッハと会った。

「見ず知らずの講師に案内されるよりかは気楽だから良いけど・・・。カリムは放っておいていいの?」

「ええ。今日はグラシア家のみでの集まりがありますから。ですから今日の私はこちらでお手伝いです」

「そうなんだ。じゃあ今日はよろしく、シャッハ」

シャルに続いて俺たちも「よろしくお願いします」とお辞儀すると、「はい。こちらこそ」シスターシャッハも笑顔でお辞儀に応えてくれた。そして俺たちは始業ベルが鳴るまで応接室でシスター・プラダマンテやシスターシャッハと話した。

「――さて。始業ベルも鳴りましたので、ご案内を始めましょうか」

シスターシャッハが立ち上がり、俺たちも続いてソファから立ち上がって応接室を後にする。シスター・プラダマンテとはここでお別れ。帰り際にもう1度挨拶しに来ることを約束した。廊下を歩く中、「まずはわたし達の知り合いの授業を観に行きたいんだけど」シャルがそう言って、トリシュとスクライア姉妹のことを伝えた。

「えっと、みなさんのお友達であるトリシュタンさん、セレネさん、エオスさんは同じ4年3組だったはずで・・・。今は、第3競技場での魔導競技の実習中ですね」

シスターシャッハは前面に初等部全体のスケジュールが記されたモニターを展開、トリシュ達のクラスの1時限目の科目と実習場所を確認した。

「じゃあ、そこへの案内お願い、シャッハ」

そう言うわけで最初の見学場所が決定。俺たちの友人であるトリシュ達の在籍しているクラスが実習中だという第3競技場へ足を運ぶことになった。そして、校舎より2分と掛けて歩いて件の競技場に到着したんだが・・・「すごい・・・。とゆうか、競技場、なんか・・・?」はやてが目を丸くして驚く光景が目の前にあった。まぁ、俺としては見慣れているものだが。

「第3競技場は約4万3千平方メートルの広さを誇り、その全体が空間シミュレーター仕様ですから、ああいった建造物群を乱立させることも可能なんです」

サッカーのフィールド4枚分の広さだという第3競技場。そこには現在、高さが疎らな四角柱群が10数棟と乱立している。シスターシャッハの話では、いま行われているのはちょっとしたゲームだということだ。

「――つまり、クラスを2チームに分けて魔導戦をやってるってこと・・・?」

「あくまで実戦に近いスポーツと言ったところでしょうか。生徒のみなさんの周囲にターゲットスフィアと呼ばれる魔力球を帯同させ、そこに魔法攻撃を受けたら失格。時間切れまでに生き残った人数が多いチームが勝利、となってます」

「魔法を使ってのスポーツかぁ。なんや面白そうやな」

「戦闘以外で魔法を使ったのは、最近で言えばお花見の魔力砲花火くらいですね」

そう言ったアインスに「あれは綺麗だったよな」俺も同意。そこに至るまでの経緯は馬鹿話だったが。記憶が飛んでいたシャルも「映像でしか観てないけど、確かに綺麗だったよね~」と笑う。

「あの、シスターシャッハ。わたし達も参加できますか?」

「「リイン・・・?」」

リインからまさかの意見。シスターシャッハは少し考える仕草をした後、「担当の教諭に聞いてみましょう」競技場に向かって歩き出し、彼女に続いてシャル、そして俺たちと続く。着いた競技場の手前には、準備運動を終えたばかりの4年3組の生徒たちが居た。みんなはもちろん運動着姿だ。

「あっ、シャル、はやて、ルシル!」

「それにアインスとリインも!」

真っ先に俺たちに気付いたセレネとエオスが大手を振って迎えてくれた。2人の近くに居たトリシュは声を上げることはせずに綺麗なお辞儀を1回、顔を上げて微笑みを向けてくれた。まぁ、今ので3人が俺たちと知り合いだと判った他の生徒がざわざわと話しだし、俺たちと3人がどういう関係なのかと、彼女たちに群がった。

「シスターシャッハ。もしかして彼女たちが、朝の定例会議に上がっていた見学者の子らですか?」

「はい。イリスさん。はやてさん。ルシリオン君。付添いのアインスさん。リインさん。以上5名が見学者となります。それで早速なのですが、みなさんを実習に参加させてもらうことは出来ませんか?」

「え、ええ、出来ますけど。大丈夫ですか? イリスさんはフライハイト家の騎士として有名ですけど、はやてさんとルシリオン君はどうなんでしょう? 3組は魔導師としては優秀ですので、少なくともDランクは欲しいのですが・・・」

「あ、それについては問題ないはずですよ。えっと・・・、ルシリオン君。あなたとはやてさんの魔導師ランクって確か・・・」

シスターシャッハと女性教諭が話し合う。それに聞き耳を立てながら、トリシュ達と手を振り合っているはやて達を微笑ましく眺めているとシスターシャッハからそう訊かれたため、「俺が空戦S+で、はやてが総合Sですよ」と答えると、「Sランク!!?」女性教諭がとんでもなく驚いた。AAAランクでも珍しいからな。

「それだと3組は束になってもルシリオン君ひとりにすら勝てないかもしれませんよ!」

「あ、それは大丈夫ですよ。俺とはやてとシャルは魔力リミッターを掛けますから。Dランクまで下げますよ」

古代ベルカ時代やPT事件ではAAランク以下まで魔力を消費すると記憶を失っていたが、魔力上限を増やす要因となったジュエルシードを取り込むという手段のおかげで、その制限も今ではEランク以下にならなければ問題無しという好条件と化した。そうそうEランク以下まで魔力を消費するという状況にもならないだろうし、気にすることも無いだろうな。

「そうなんですか。すごいですね。この学級に来たということは、9歳、なんですよね? それにしては魔力リミッターを自分に掛けることが出来るんですね。すごいです!」

「一応、俺とはやて、アインスとリインも管理局の捜査官として勤めていますから。魔法の鍛錬で学んだんですよ」

「朝の会議で聞いてはいたんですけど、本当に管理局員だったんですね・・・」

管理世界に出掛ける際には持ち歩いていることにしている管理局員IDを見せると、女性教諭は感心しながら俺たちを見回した。とまぁ、そういうわけで俺たち見学組も実習に参加できることとなった。
女性教諭が改めて俺たちを3組の生徒に紹介すると、「よろしくお願いします!」挨拶されたからこちらも「よろしくお願いします!」と返す。そして早速チーム分け。3組はすでにチーム分けは済んでいるらしく、あとは俺たちが別れるだけなんだが・・・

「そんじゃあ、わたしとリインはユニゾンして1人と考えて、ルシル君もこっちに入って2人やな」

「うぐぐ・・・! ずるい、ずるい、ずる~い! わたし1人だけ仲間はずれ~!」

俺たちが揃ってどちらかに付くのはアンフェアということで、ジャンケンで二手に分かれることになった。その結果、俺とはやてはセレネとエオスの居るチームに入り、シャルはトリシュの居るチームに入ることとなった。トリシュは第4学年だけではなく初等部最強らしい。これでバランスはそれなりに整っただろう。

「オーディン様と同じ魔法を扱いになられるルシル様と、こうして刃を交えることが出来るとは思いもしませんでした。イリス。ルシル様は私に任せてくださいます?」

「強いよ? 大袈裟じゃなくてマジで。パラディース・ヴェヒターとして何十何百と命懸けで戦った経験もあるし。魔力リミッターがあると言っても油断すると・・・」

「ええ、心得ています。ですが私とて、兄様――シュペーアパラディン・パーシヴァル。我が師――ボーゲンパラディン・ガラガース様。シュベーアトパラディン・プラダマンテ様。ファオストパラディン・アルテルミナス様。レイターパラディン・ガリフット様。アクストパラディン・ライオネル様。シュラーゲンパラディン・リシャール様。ゼンゼパラディン・マドール様からの英才教育を受けている身。そう容易く負けるつもりはありません。それに私も学友とランクを合わせるべくリミッターを掛けます。魔力は五分と五分。勝敗を決するは、己が技術のみ!」

ギラリと力強い戦意の籠った目を向けて来たトリシュ。しかしそれにしても出るわ出るわ、パラディンの名前。剣騎士、弓騎士、槍騎士、拳闘騎士、騎兵騎士、斧騎士、打撃騎士、鎌騎士の8人か。とりあえず「お手柔らかに頼むよ、トリシュ。そしてシャル」やる気を漲らせる2人に微笑む。

「「へっへーん。ユニゾンはやてとルシルがこっちに居るんだから、今日は負けねぇゼ♪」」

両手を腰に置いて仁王立ちするセレネとエオスがトリシュに向かってそう宣言した。どうやらこれまでの競い合いでトリシュに辛酸を舐めさせ続けられているようだな。俺としてもパラディンに鍛えられるというトリシュの本気を見てみたい。はやてと戦った時のが全力でないことは明らかだしな。

「ではみなさん。Aチームは西の、Bチームは東の陣地へ移動してくださーい!」

俺たちBチームとシャル達Aチームはそれぞれ競技場の端に移動。そこで俺たちは作戦を立てることにした。真っ先に上がったのは「トリシュが強いんだよ、ホントにさぁ~」トリシュの撃破を最優先にしたい、ってことだ。
そういうわけで、トリシュ撃破を優先としての作戦を立てることに。トリシュは開始早々に建造物の屋上に上がって、そこから相手チームを狙い撃ちするそうだ。ならそれを阻止するのが一番だろう。

「じゃあ作戦を立てよう!」

†††Sideルシリオン⇒イリス†††

はやてとルシルとは違うAチームになったわたしは、「トリシュ。これまでと同じ戦い方をすると足元を掬われるからね」って、うちのチームリーダーのトリシュに警告しておく。作戦立案能力に優れたルシルもそうだけど、はやてには指揮官適性ありっていう才能もあるって判ってきてる。こっちも何かしら考えないと一掃される可能性がある。たとえ魔力が抑えられてるとしても。

「そうですね。でもやる事は変えません。上を取ります。乱立する四角柱の屋上を取りませんと狙い撃ちされてしまいますから」

そう、このゲームは何をしても狙撃ポイントを先に確保するのが必勝法。ということなら「わたしが護衛に入るよ。トリシュは狙撃に集中して」わたしが守りで、トリシュを攻めに徹しさせる。他の子たちはトリシュやわたしが居るからってすでに戦勝ムード。だから「作戦を立てた方が良いって」わたしが窘めるんだけど、やっぱり戦勝ムードは変わらない。

「イリス。私とあなたの2人が生き残り、ルシル様たちを全滅させればいいだけです」

トリシュらしくないちょっと冷たいセリフにビックリ。それからわたしはトリシュと2人だけで作戦会議。そんで作戦とまでは言えないけど、トリシュを移動砲台としてエリア内を駆け回りながら相手チームを殲滅。その間、わたしが迫り来る攻撃や相手チームを迎撃する。

「はやてとルシルが間違いなくわたし達を潰しに掛かってくるだろうから・・・」

「まずはお2人の撃破ですね。判りました」

そしていよいよ競技開始。陣地上に3色シグナルが表示されたモニターが展開。浮かれてるみんなやわたしとトリシュの身体の近くにバスケットボール大の赤い魔力球――ターゲットスフィア(向こうのチームは青色だそうだ)が創り出された。コレに攻撃を食らうと失格なわけだ。

「はぁ。みなさん。今回の相手はおそらく最強です。これまで以上の警戒を」

トリシュが最後の警告をした。それと同時にシグナルが赤→黄→青へと変わり、『競技スタート!』先生の開始宣言が競技場全体に響いた。一斉に戦場に散っていくチームメンバーを見送って・・・

「行きますよ、イリス!」

「りょ~か~い!」

両脚に魔力を込めて、同時に空に向かって跳び上がる。競技中は、飛行魔法は禁止だからね。乱立する四角柱の中で一番高い場所を陣取って、そこを狙撃ポイントにする。空戦が出来ない以上、高い場所を陣取った方が有利だからね。そのための跳躍。あと少しで身近な四角柱の屋上へと着くというところで・・・

「魔力反応の接近・・・? 速い・・・!」

「イリス!」

――フレイムブレット――

――フローズンブレット――

目前を通り過ぎたのは火炎弾と冷気弾。計6発。この魔法は知ってる。そう、この魔法の使い手は「セレネ、エオス!」の2人で間違いない。つうか、跳躍中を狙ってくるなんてタチが悪い。おかげで跳躍の勢いが殺がれて落下してしまう。けど飛行魔法は使用不可。使ったら即失格なのがルール。

――シュヴァーベン・マギークライス――

「トリシュも乗って!」

「はいっ!」

だからベルカ魔法陣の足場を作って着地。広さは確保したからトリシュも着地。ああもう、たったこれだけでも魔力の消費が辛い。

「というか一体どこからの攻撃!?」

「判りません! 跳躍途中もあって視界が狭まっていたので!」

そこを狙われたわけか。こりゃルシルの差し金だね。それにしてもAチームとBチームの陣地間の距離は約240mもある。いくらなんでもこんなに早くこっちの陣地にまで来る方法なんて飛行魔法くらい。一体どうやって・・・。

――フレイムブレット――

――フローズンブレット――

「「っ!」」

今度はハッキリと視認できた発射地点。わたし達が上がろうとしていた柱から4mと離れた、こっちと同じ高さの柱の屋上。迫って来ていた6発の火炎弾と冷気弾を、2人でシールドを張って防御。すぐに高低差を利用されての集中砲火を免れるためにもう1度跳躍して、屋上へと上がる。

「セレネ、エオス! やってくれるじゃ――・・・って、あれ!?」

「居ない、です・・・?」

屋上に立ってすぐ攻撃地点の柱へと目をやるんだけど、居るはずのスクライア姉妹の姿はどこにも見えず。ということは「狙撃ポイントを放棄した・・・?」ってことになるのかな。わたしがそう小首を傾げると、「もしくはさらに高い柱へ移動したか、ですね」トリシュが補足。そしてそれは現実になった。

――バスターラッシュ・アイシングフレア――

ここより高い柱から火炎と冷気の砲撃が2本と飛来。狙いはトリシュの側に浮遊してるターゲットスフィア。トリシュは横っ跳びすることで躱して、起動した“イゾルデ”を構えた。
とその時、ふと競技場上に展開されたモニターに目が行って、今現在の戦況を確認してしまうことに。わたし達Aチームの残存メンバーを示す数字が、16から5になってた。つまりはすでに11人が失格になったというわけで・・・。しかもはやて達Bチームは17から14・・・たった3人しか失格に出来てないときた。

「うええ!? なんか一気に減ってるんだけど!!」

「くっ。やはりこうなってしまいましたか・・・!」

――フローズンブレット――

――バスターラッシュ・バージョンエオス――

冷気弾4発と火炎砲撃1発。それらを避けながら、「トリシュ、わたしの後ろに付いて!」スクライア姉妹を失格にするために2人の居る柱に向かって跳躍する。着地と同時に襲撃されることを警戒してトリシュを一歩遅らせて跳ばせた。

「今度は逃がさないよ、2人とも・・・!」

着地してすぐ迎撃準備。けどまた逃げられたみたいで、その姿はどこにもなかった。遅れて着地したトリシュが「イリス、上です!」って“イゾルデ”を頭上に向けた。そこに居たのは「鳥・・・?」1羽の大きな鳥だった。よく見れば、ハムスターとリスの姿に変身してるスクライア姉妹の姿と、2人分の青いターゲットスフィアが。

「あの鳥は、学友の1人が変身したものです!」

「あっ! 変身魔法は禁止されてないから・・・!」

確かに鳥の側には3つ目のターゲットスフィアがある。鳥に変身したクラスメートに乗っているんだから、2人の移動速度にも納得だよ。でも、それでも開始直前で240mと走破するには速度が足らない気がするけど・・・。とにかく、それが判ったから「撃ち落とします」トリシュが魔力矢を創り出して魔力弦に番えた。

「狙い撃ちます・・・!」

――速翔けし一輪の討ち華――

“イゾルデ”から射られたのは一輪の蒼い薔薇。それが一直線に、超高速で鳥の側に浮かぶターゲットスフィアを撃ち抜いた。競技場上に展開されているモニターに表示された、Bチームの残存メンバーを表す数字が14から13へと減った。

「イリス。セレネさんとエオスさんを討ちます・・・!」

「よしっ!」

2人が乗ってる鳥が羽ばたきながら高度を落とし始めた。それをジッと待つわたし達。鳥の背から降り立った瞬間から再開らしいから、その瞬間をひたすら待ち構える。そしてとうとうわたし達の居る屋上へと降り立った鳥。

「ちょっと! そんなにガチで待ち構えないでよ!」

「降りるに降りられないでしょ!」

すでに失格になった鳥・・・に変身してる生徒はもう動けないから、その周りを包囲すればスクライア姉妹はもう終わりなのだ。それが判ってるからこそ2人がぎゃあぎゃあ騒ぐ。でもこっちは聞く耳持たず。散々コケにしてくれたお礼はキッチリ返さないとね。

「ほらほら、早く降りなよ~」

「セレスさん、エオスさん。往生際が悪いですよ」

「「友達でしょ!? 少しは距離を取ってくれてもいいじゃんか!!」」

「ダ~メ♪」「ダメです♪」

トリシュと揃って笑みを浮かべる。少し沈黙が降りる。こうしている間にも、わたし達Aチームの残存メンバー数が・・・2になった。それが示すのは、残っているのはわたしとトリシュだけ、ということだ。

「やられた・・・! まんまと嵌められた・・・!」

「イリス・・・?」

「あちゃあ、さすがに・・・」

「気付かれちゃったか」

――ブラッディダガー――

――アクセルシューター――

わたしとトリシュを包囲するように襲いかかって来たのは血色の短剣8本と桜色の魔力弾6発。はやての高速射撃と、ルシルの複製射撃だ。わたし達のターゲットスフィアが撃ち抜かれるより早くその場から離脱。はやての射撃は屋上に着弾して終わったけど、「こんの・・・!」ルシルが放った、なのはから複製した誘導操作弾はうざいくらいに追い縋って来る。

「せいっ!」「やあ!」

わたしは“キルシュブリューテ”を、トリシュが“イゾルデ”を振るうことで全弾迎撃した。そして「来たね・・・!」はやてとルシルがその姿を見せた。わたし達の居る屋上にそっと降り立つ2人が、いつの間にか人の姿に戻って双銃を携えたセレネとエオスと頷き合った。

「これは・・・ルシル様の作戦ですか? それともはやて様の作戦ですか・・・?」

「ルシル君やよ。トリシュちゃんが入ったチームの勝率は8割。そやからチームメイトは余裕を持つ、油断するんや。そうみんなに聞いた」

「だからトリシュをどうにかすることこそが勝機になる、と踏んだわけだ」

――ブリューナク――

――プラズマランサー――

――フレイムブレット――

――フローズンブレット――

四方から計30発の射撃魔法が雪崩のように襲いかかって来た。狙いはターゲットスフィア。判りやすいからこそ対処もしやすい。

――クヴァドラート・ヴァイガーン――

すでに最高クラスの結界魔導師として認められているセラティナ直伝のバリアタイプの防御魔法を発動。術式名の通り正方形状で、わたしとトリシュのターゲットスフィアを完全防御。だけど、いま扱える魔力はDランクだからそう長くは保ちそうにない。とは言ってもこの包囲を抜けられることが出来るだけで十分。

(狙うのは、はやて・・・!)

欲張ってルシルを狙うのは自殺行為。ここは手堅いところから攻めて行くのがベスト。はやても強くなってるけど、それでもまだまだ。セレネとエオスからって手もあるけど、逢わなかった期間にどんな新魔法を習得したかは判らない。下手に手を出して返り討ちにあうなんて御免だもん。

「せぇぇーーーいっ!」

「っぐ・・・!」

はやての元へ一足飛びで最接近して“キルシュブリューテ”を振るう。狙いは当然、はやてのターゲットスフィア。でもはやても負けてなかった。わたしの一撃を“シュベルトクロイツ”を水平に構えることで防御して、「セレネちゃん、エオスちゃん!」2人の名前を呼んだ。

――チェーンバインド――

クリーム色の魔力光で創られたチェーンバインドが8本、わたしを拘束しようと伸びて来たから鍔迫り合いを止めて後退。

――マニューバA.C.S――

「いっけぇぇぇーーーっ!」

はやてが突撃して来た。なのはから教わったっていう突撃技だ。突き出された“シュベルトクロイツ”はやっぱりわたしのターゲットスフィアを狙ってる。さらにはセレネとエオスも突っ込んで来るのが見えた。3対1でわたしを押し切ろうってわけか。

「上等!! トリシュ! 悪いけど・・・」

「問題ありません! 勝って、ここで合流しましょう!」

――バスターラッシュ・アイシングフレア――

はやての突撃とスクライア姉妹の二重砲撃を躱した後、トリシュとルシルを置いて、はやてとセレネとエオスを引き連れて別の柱の屋上へと移動する。

「リイン!」

『バルムンク、いきます!』

はやてとリインの繰り出すのは剣状射撃魔法。6本のバルムンクが扇状に拡散発射されてきたからシールドを張って防御。間髪入れずに「もらったぁぁーーー!」エオスが両手に携える双銃からバスケットボール大の火炎弾を2発と発射。それを警戒した直後、セレネが同じように双銃から2発の通常の魔力弾を発射。

「「ワイルドファイアーワークス!」」

「っ!!」

火炎弾に着弾する魔力弾。するとそれが切っ掛けとなって火炎弾が炸裂して、小型の火炎弾数十発を全方位にばら撒いた。あぁ、だからファイアーワークスなわけか。

「風牙烈風刃!」

それらに対してわたしが放つのは風圧の壁。わたしと、わたしのターゲットスフィアを覆うように発生させて、迫って来ていた火炎弾を全弾消し飛ばす。

(セレネとエオスは、相変わらず2人で1人のコンビネーションを取っているのか・・・)

なら、先にどっちかを潰そう。片方とはやてのコンビネーションが上手くいくわけないしね。そうと決まれば、サクッと「撃破させてもらうよ!」エオスに向かってダッシュ。待ち構えるのははやて。でもさ「魔力を抑えられてる状態のあなたに、わたしを止められる!?」わけないよね。

「やってみな判らへんよ!」

――クロイツシュラーク――

“シュベルトクロイツ”に魔力を付加しての直接打撃魔法。魔力付加されているのは先端の剣十字のみ。ゆえに退くことなく前進してはやての懐に入り込んで、振り下ろし中の柄を左腕で防御。即座に“キルシュブリューテ”の刺突ではやてのターゲットスフィアを狙う。

――コンプレッション・クラッカー――

わたしとはやての頭上に発射された魔力弾が1発。撃ったのはセレネだ。その魔力弾が炸裂。何が起こるのかと思えば「(そう簡単には行かないか・・・!)こんのぉぉぉ!」周囲の大気を急激に圧縮し始めた。わたしはその場に留まれずに足が宙に浮いて、吸い込まれそうになる。けどはやてはしっかりと屋上に足を付けてた。

「クリーム色のバインド・・・! エオスぅぅーーーー!」

はやての両足首には、対象をその場に固定して捕縛するリングバインドが掛けられてた。セレネが圧縮弾を撃ち、エオスがはやてが巻き込まれないためのバインド発動。

「わたしらの勝ちやっ!」「「もらったぁぁぁーーー!」」

――バルムンク――

――フレイムブレット――

――フローズンブレット――

体勢を整える前に発射された剣状射撃・火炎弾・冷気弾、計24発。とにかく今は「パンツァーシルト!」シールドでターゲットスフィアを護る。そしてわたしに向かって来る流れ弾は“キルシュブリューテ”で迎撃。けど遅れてわたしに届こうとしていた火炎弾1発が迎撃できそうにない。当たる、って思った時・・・

「のわっ!?」

大気圧縮による吸引力が突然切れたことで落下。それで運良く躱すことが出来た。お尻から叩きつけられる前に体勢を立て直して着地。そこに「バスターラッシュ!」火炎砲と冷気砲の同時攻撃。横っ跳びして避けたところに「クロイツ・・・シュラァァァーーークッ!」はやてが“シュベルトクロイツ”を振り下ろしてきた。

「ぅぐ・・・!」

「せぇぇぇーーーい!!」

“キルシュブリューテ”を水平に構えて防御。さらにまた「それそれー!」スクライア姉妹の火炎弾と冷気弾が襲いかかって来るし。力づくではやてを弾き飛ばして、飛来してくる弾幕は「烈風刃!」風圧の壁で迎撃。
弾き飛ばしたはやては「ブリューナク!」そのまま短剣型射撃を連射して来た。それをシールドで防いで、「真空刃!」真空の刃ではやてのターゲットスフィアを狙う。けれど、魔力付加したままの“シュベルトクロイツ”で叩き潰してきた。

(うわぁ、やってくれるじゃんか、はやて・・・!)

全くと言っていいほどに魔力が付加されてないとしても、それなりの威力はある一撃だったのに。本当に強くなったよね、はやて。リインとユニゾンしてるからってこともあるだろうけどさ。それでも・・・

「強くなったじゃん!」

落下を始めたはやての元へ跳ぶ。はやては「リイン、シールド!」自身とわたしとの間にシールドを張って、わたしの攻撃に備えた。わたしは“キルシュブリューテ”を振りかぶりながら最接近。

(セレネとエオスは・・・うん、ちゃんと攻撃準備に入ってるね♪)

そしてわたしは、「あらよっと」“キルシュブリューテ”を振り下ろすことなくシールドを足蹴にして跳ぶ。向かう場所は双銃を構えていたセレネとエオス。

「あ・・・!」『え・・・!?』「「んな・・・!??」」

驚くはやて達に思わず笑みが出ちゃう。スクライア姉妹はすぐに驚きを押さえ込んで銃口をわたしに向け直した。

「「バスターラッシュ・アイシングフレア!!」」

発射される火炎と冷気の二重砲撃。さすがに魔力弾幕じゃわたしを仕留め切れないって判断しての砲撃かな。わたしは前面にシールドを展開。砲撃が着弾する前にシールドに足を付いて、着弾直前に蹴る。シールドに着弾する二重砲撃が爆発を起こす。直上に跳んだわたしを呑み込む煙幕。

「風牙・・・真空刃! 二連!」

煙幕に呑み込まれる前に確認したセレネとエオスの居場所に向かって真空刃をに連続で放つ。落下が始まる頃、「ぎゃぁぁぁす!」2人の悲鳴が聞こえた。

(もしかしてターゲットスフィアじゃなくて本人に当てちゃった・・・?)

煙幕の下から出て、屋上に着地。すぐにスクライア姉妹を確認する。さっきのはどうやら杞憂だったようで、2人のターゲットスフィアは消失してた。ということは、あとは「はやて!」のみ。

「シャルちゃん!」

――マニューバA.C.S――

例の突撃技でわたしに最接近して来たはやて。わたしは真正面から受け立つために“キルシュブリューテ”を振りかぶって、間合いに入ったはやてのターゲットスフィアに向かって振り下ろした。その結果・・・

「・・・・って、あれぇぇぇーーー!?」

手応えはあった。それを示すかのようにはやてのターゲットスフィアを真っ二つに斬り裂いた。それなのに、わたしのターゲットスフィアも消失してた。

「やったー!」

『やりましたですぅー!』

「え? へ? な、なんでー!?」

はやてとリインの目線の先、競技場上に展開されてるモニターを見る。そこにはわたし達Aチームの残存メンバー数は0。それはつまりトリシュも負けちゃったってわけで・・・。

「というか待って! どうしてわたしのターゲットスフィアまで消されちゃったわけ!?」

「ごめんな、シャルちゃん。わたしは、リインと一緒なんよ。2対1ってことや」

はやてが説明してくれた。私への突撃を始める直前に、上空にリインがブラッディダガー1本を待機させていたって。わたしの意識がはやての突撃に集中しているところに、リインが射出。わたしの一撃がはやてのターゲットスフィアに当たると同時に、わたしのターゲットスフィアを撃ち抜いた・・・と。

「本当なら、マイスターはやてが失格しないようにするつもりでしたけど、シャルさんの一撃が速過ぎて間に合いませんでした」

はやてとユニゾンを解除して姿を現したリインがペロッと小さな舌を出して残念がった。はやては「そうゆうわけや。リインが居ってくれたからこそ、わたしはシャルちゃんを失格に出来たんよ」って悔しそうに苦笑。

「はぁぁぁ・・・。うん、わたしの負け。負けだよ」

それでもわたしは生き残れなかった。それはつまり、負け、なのだ。わたしはその場に座り込んで、大の字になって寝転がった。

 
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