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払われる迷い

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3部分:第三章


第三章

「貴女が御自身でこのことを何とかできるか」
「自分で成就させられるか」
「それです。それは」
「どうなりますか、それは」
「見て下さい」
 この言葉と共にカードをひっくり返した。出て来たのは。
 正義だった。速水はそれを彼女に見せて話した。
「できます。誠実であられれば」
「誠実にですね」
「相手の方と誠実に接して下さい。そうすれば進めます」
「そうなのですね」
「周りの反対者に惑わされず。応援してくれる人を信じて」
「そのうえで誠実に」
「そうすればいいのです」
 こう彼女に話すのだった。
「それが貴女の採るべき道です」
「わかりました」
「そしてどうなるか」
 いよいよ最後のカード十枚目だった。
「これは」
「一体」
 引かれた。出たのは。
 世界だった。速水はそれを見てすぐに言った。
「おめでとうございます」
「おめでとう、ですか」
「この恋は成就します」
「そうなのですか」
「それも最高の形で、です」
 右目と口元をを笑わせてだ。そのうえでの言葉だった。
「成就します」
「それは本当ですか?」
「カードがそう教えています」
 こう彼女に話すのだった。
「タロットカードがです」
「そうなのですか」
「はい、この世界は正しい形で出れば最高の状況を示すのです」
「では本当に」
「周囲には注意すべきですが励ましてくれる人もいます」
 速水はこのことも話した。
「だからです。貴方は幸せを信じて進まれて下さい」
「本当にそれで」
「占いを信じられなければここには来られませんね」
 速水は相手の目をその右目で見てだ。そのうえでこう話した。
「そうですね」
「それはそうですが」
「では信じて下さい」
 こう彼女に告げた。
「私の言葉を」
「はい、それでは」
「では占いは終わりです」
 微笑みをそのままに穏やかな声で告げてみせた。
「有り難うございました」
「はい、それでは」
 こうしてだった。彼女は速水の前から去った。それから暫くの間彼は占い師としての本業だけでなく他の仕事もして多忙だった。そして一月が経った。
 その一月が過ぎた時にだ。彼は朝起きてまずはタロットのカードを引いた。彼の日課であるその日のことを占うことをだ。それをしたのだ。
 それはいつも一枚のカードを引くことで行われる。そして出て来たカードは。
「成程」
 それを見てだ。速水は微笑んだ。
 そしてそのうえでだ。こう呟くのだった。
「では上手くいったのですね」
 そしてその微笑みと共に仕事場に向かう。そこに入るとだった。
 すぐにだ。彼女が来た。そして満面の笑顔で彼に言ってきたのだ。
「あの」
「お久し振りですね」
 速水は自分の席に座ったまま笑顔で彼女に応えた。
「明るい顔をされてますね」
「あっ、はい」
「今日はお仕事は」
 あえて大事なことを話さずにだ。世間話をしてみせる彼だった。
「お休みですか」
「夜勤だったんです」
 それだと話す彼女だった。
 
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