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アクセル・ワールド 〜赤龍帝の拳〜 (更新凍結中)

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第六話 心の声 後編

 
前書き
一ヶ月以上も開けてしまい、大変申し訳ございませんでした‼︎いろいろ有ったんです。テストがあったり、追試があったり……とはいえ、最新話です‼︎最後が随分とグダリましたが、ご了承下さい。では、どうぞ。 

 


結局、あのバックドアは消さなかった。
いや、消せなかったが正しい表現だ。
あそこで消しては、俺がバーストリンカーだと疑われる。下手をすれば特定されるだろう。

それはそれとして………

「やべえ……死にてえ……」

現在、テンション絶賛急降下中である。

理由は……聞かないでくれ。単に俺がクソ野郎ってだけだ。
とにかく、千百合はバーストリンカーではなかった。それは確かなことだ。

だが、この事件の犯人は千百合のファイルにバックドアを仕掛け、それを通して学内ネットワークに進入している。

つまり、こちらからは仕掛けられないが、彼方からはいつでも仕掛けられる。
これは不利だ。不公平だ。

何か対策を練らなければ………

「やあ、おはよう!」

トンっと、後ろから背中を叩かれ、振り向く。もう突っ込んだりはしない。

「姫、少し加減をしてくれ。」
「むっ、そうか、すまなかった。」

姫と俺は並んで歩く。昨日見た夢のせいで少し目を合わせずらい。

「その、昨日はすまなかった。」
「へ?なにが?」

姫の突然の謝罪。まったく意味が分からなかった。

「えっと…なんの話?」
「ほら、昨日のことだ。」

昨日……あ、もしかしてあれか?

「千百合のことか?」
「ああ。あんな風に言ってしまって。」

別に気にしてはいない。本当に。姫だって自分の身を危惧してのことだ。
仕方ない仕方ない。

「それに、君にあんな無茶を言わせてしまって……」

…………おかしいな。そこだけは覚えてる。それはもうハッキリと。

「いくら君でも、直結して確かめるなんて無茶なことできないというのに…」
「いや…………その、したよ?」

沈黙が走る。

「したのか?」
「あ、ああ……」
「どこでだ?」
「千百合の家で……だけど……」
「家のどこだ?」
「あいつの部屋で………」

段々と、姫の歩くスピードが早くなる。
心なしか、目つきも鋭くなってる気がする。

「長さは?」
「え?」
「ケーブルの長さは?」
「さ、30㎝くらい?」

正直に答えると、先ほどよりも歩くのが早くなり、俺を置いていってしまった。

「なんだよ……あいつ……」

姫の不自然な行動に、俺はやはり戸惑いを隠せなかった。

時は流れて昼休み。千百合は他の友達と飯食ってて一年では見事なボッチ!
悲しくなんかないさ!慣れっこだもの‼︎
手早く、菓子パンとコーヒーを平らげる。そこから先は寝るだけ。

寂しくなんて無いさ!

「すいませーん!有田一誠くんて居ますか?」

………無視したい。だが、これで行かなかったら余計面倒くさい。

「あの…俺ですけど……」
「おお、君が有田くん!結構イケメンだね!」

何を言ってるんだこの先輩。アレか。上げてから一気に落とす作戦か。やるな。

「それで…何の用ですか?」
「いやね、君があの黒雪姫先輩と付き合ってるって噂が流れててね。」

その言葉に一瞬、

ふざけんな‼︎‼︎‼︎
と、叫びそうになったが、自重した。
ここで必死になったら余計怪しまれるし、目立つ。
それはダメだ。

「そんな関係ではないですよ。」

目を逸らし、否定する。呆れたように。馬鹿馬鹿しい世迷言を言われたかのように。これが一番効果的だ。

「この前直結してたのは、あの先輩のニューロリンカーにウイルスが入って、それを俺が駆除するように頼まれただけで。」

うまい言い訳だと、自分でも少し思う。

「カフェでのだって、その一件でのお礼ですし、告白宣言だって、なんかの悪戯ですよ。今朝だって、話してたら急に怒り出しちゃうし……」
「今朝?と言うと、どんな話を?」

そこまで聞いてくるのかよ………

「別に、千百合……倉島の話をしたら、急に機嫌が悪くなるんですよ。」

そう言うと、新聞部の先輩は何かを考え始める。

「そうか……そういうことか…」
「あ、あの…何がですか?」

先輩は何か納得したようにうなづいた。

「いやね、私も半信半疑だったんだけどさ。これは本当みたいだね。」

何がですかね?

「それって、嫉妬なんじゃないかな?」



「んなわけねえよ。」

昼休み、トイレの個室に篭り頭を抱えていた。ありえない。ありえる訳がない。
あいつとは一年近く辛苦を共にしてきた。いわば、戦友のような物だ。同じレベル9erと言うのもあって、仲は良かったのだろう。
だが、それだけだ。今では俺のレベルは1という正に初心者まで成り下がった単なる雑魚プレイヤー。
今一緒にいるのだって、扱いやすいからとか、そんなものだ。

期待はしない。それで何度も裏切られた。
夢は見ない。破れた時のダメージがでかすぎるから。
現実を見る。その方が、楽だ。
だから、だからこそ……………

「無駄な期待は持たせないでくれ…」

俺は小さく、そう呟いた。自分に言い聞かせるように。

放課後になった。

正直、姫に会おうとは思えない。会いたくないのに。

「や、やあ一誠くん。奇遇だね。」

どうしてお前はそんな時に現れる。

「待ち伏せしてた奴がよく言うぜ…」

皮肉たっぷりに言う。だが、姫は全く意に返さない。

そして、俺と姫は並んで歩き始める。もちろん直結状態だ。昨日のことを話すと姫は信じられないと言った表情をする。皮肉気に言葉を並べていく。

「君は、やっぱり怒っているのか?」

姫が立ち止まり、直結ではなく、自分の言葉で俺を引き止めた。その目は困惑に満ちている。

「確かに、今朝の私は大人気なかったと思う!」

違うよ。

「でも、私だって人間だ!」

そんなことじゃないんだ。

「不完全な一人の人間の人間なんだ。」

もう、やめてくれ。

「苛立ったり不安になったりもしてしまう。君と、倉島くんを見ていたら……」
「やめろよ…」
「え……?な、なんで……」

終わりにしてしまおう。こんな、不完全な関係は。いい加減、裏切られるのは御免だ。

「結局、俺はお前の子でしかないんだよ。命令されて、従うのがルールだ。
いちいち、そんな感情的な演技されてもキツイんだよ。」

これで、もう絶望なんてしなくて済む。

「お前はただ、俺に命令していらなくなったら狩れば……」

その時だ。頬に鈍い痛みが走る。それは、姫による平手打ちだった。

「バカァ……」

顔をくしゃくしゃにして、その目からは絶え間なく涙を流している。

「バカァ…バカ…………」

何が起きたのか、さっぱり理解できない。ただ理解できるのは、

俺が彼女を泣かしてしまったということだけだった。

そして、突然轟音が鳴り響く。

俺たちは咄嗟に其方へと目を向けた。車だ。この時代には有り得ない、あってはならない現象に、お互いバーストリンクをする。

「いって!」

肉体から弾き出され俺は猫のアバターへ、姫は揚羽蝶のアバターへと変わる。

「このご時世で運転ミスなんてある訳……」

言葉を止めた。そこにいたのは、他校の制服を着たガラの悪い男だった。
だが、見覚えがある。

「知り合いか?」
「いや、知り合いというか……前に壊滅させた不良グループのリーダー…かも…」

よく憶えてないが、結局は単純な話である。

俺のせいだ。俺がいたから、狙われた。

「OK、姫はアウトしたら下がれよ。俺が盾になる。」
「……いや、私が前に出よう。」

アレを使う。と、そう言った。その一言で、何か分かってしまった。

「よせ、やめろ!お前がそんなことしちゃいけない‼︎」
「いいんだよ。それに、死に瀕した今なら、君にも私の言葉を信じてもらえるかもしれない。」

姫は俺に近づき、少し頬を赤めながら言った。

「一誠くん。私は、君が好きです。」

一瞬、時間が止まったような感覚に陥った。あの姫が、俺のことを、好き?

「な、んで俺なんだよ……どうして……俺なんかを……」

譫言のように姫に尋ねると、彼女は少し困ったように答える。

「なんで、か。強いて挙げるなら、強さかな?君に出会った日から、君の強さに惹かれたんだ。
「たった一人でも戦って、大切なものを守る為なら、いくらでも傷ついて。
「そんな優しい君がカッコよくて、
「抱きしめてあげたくなった。
「これが恋だって気がつくと、本当に嬉しくて。
「だから………………」

そっと、俺の唇に姫の唇が重ねられる。
キスされたのだと気がつくのに、二秒といらなかった。

「今は、君の為にこの命を使わせてくれ。」
 
 

 
後書き
重症を負った姫の傍に寄り添う一誠は、自分のやるべきことを自覚する。それは、シアン・パイルを倒すこと。

次回「決戦、悲しい真実」 
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