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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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ワールド・カタストロフ~クロスクエスト~
  Round《5》~アクセル・ダンス~

 デュエル大会第二ラウンド。

 第一試合は、《流星の獅子》リオンと、《聖女》クロエの対決である。

 この対戦カード、致命的な組み合わせ、と言えた。

 クロエの主装備は、二丁の銃である。《変身(ターン)》の能力で作り出されたものとは言え、銃は銃だ。

 対するリオンは、幼少期のトラウマから、銃器は手真似であっても目視すれば気絶するほど苦手だ。最近では流石に耐性がついてきたものの、未だに苦手であることに代わりはない。

 そう言うわけで、リオンは気が遠くなりそうな現状にどうにかして耐えていた。

 ――――ヤバイよヤバイよ。銃持ちと対戦するとか考えてなかったよ。

 SAOには基本的に銃は存在しない。ほかの世界のチーターどもが再現する可能性は考えていなかったが、もし彼らと当たることになったら銃なんざ使われる前に、主武装の剣か魔法の方でぶっ飛ばされるだろうと考えていた。

 だからまさか、主武装が銃のプレイヤーと戦うという結果は、想像すらしていなかったのだ。

 せめて何とか平静を保って戦闘できる程度には慣れていることを祈るしかない。もっと訓練しておくんだったか。


 だがそんな風に今更後悔しても遅い。もう試合は――――

『……』
「うぉぉぉッ!」
 
 始まっているのだ。

 ダァン! という音と共に、二丁の銃が火を噴いた。

 対戦相手の少女――――クロエは、無言で両の銃を撃ち続ける。リオンはひたすら逃げまどい、時折《投擲》スキルでソードスキルを投げる。

 戦闘開始から、一分余りが経過した、現在の状況であった。

 そもそも、クロエとの対戦において、たった一分であってもリオンが生き残れていること自体がそうとう凄まじい事なのだ。

 まず理由の一つは、前述の通りにリオンが銃に対してアレルギーと言っても過言ではないPTSDを患っていること。クロエのもつ錆びを模した装飾の銃…《錆びた銃(ラスティ・ポンプ)》と言うらしい…の銃身(バレル)を見ただけで発狂し、強制ログアウトされても不思議ではないのだ。

 一度SAO時代に、アインクラッドのとあるトラップボスとの戦いで、死にぎわに銃を模した指遊びで挑発をしてきたボスを見て、気絶してしまった経験がある。あの時はログアウトすることはなかったが、それがSAOの、ひいてはそのハードであるナーヴギアの仕様だったからだ。

 あくまでも今リオンが現実世界でかぶっているのはアミュスフィア(正確には後継機のアミュスフィア2だが、大差はないのでこの際無視する)。重度の精神異常には即座に対応し、強制的にログアウトさせるほどのセキュリティが掛けられているゲームハードだ。

 そして理由は、このリオンの銃嫌いだけにとどまらない。

 もう一つの理由は、クロエの能力。電子空間に直接干渉する《電子干渉(スナーク)》の能力は、彼女の放ったあらゆる攻撃を必中にすることすら可能だ。そもそもそれを散々避けまくった、彼女の一戦前の対戦相手、ランの方が異常であり、普通は避けることすら許されずに、なすすべもなく銃弾に貫かれてジ・エンドだ。

 にもかかわらず、今だクロエの攻撃はリオンにあたっていない。

 実際のところ――――クロエは、リオンが銃嫌いだ、という事を知っていた。そもそも今回のデュエル大会で、対戦相手の事を調べてきていないプレイヤーなど存在しないだろう。大会開始前は【???】と表記されていた二人のプレイヤー…リオンと対戦した片方(ハク)は、回線切断(ディスコネクション)によって失格となったが…を除けば、全員の情報を調べ上げてきているのが常だ。逆にリオンがクロエの事を調べてきていない、というのはクロエにとって予想外である。

 そしてクロエは、今回――――一つ、公平な試合をするための指示を受けていた。

 即ち。

「いいか。《電子干渉(スナーク)》の必中は絶対に使うなよ」
『……分かってる』

 《錆びた銃(ラスティ・ポンプ)》に《変身(ターン)》したクリスが、クロエに向かって言う。

 そう、今回の試合。唯でさえ不利なリオンに、此処にクロエが必中まで使ってしまっていては、話が全くさっぱり面白くない。故に、クリスはせめて必中能力だけは使わないようにしろ、と指示していたのだ。

 クロエには《心剣》という銃以外の武器も存在しているのだが、それよりは二丁銃の方が使い慣れている。リオンには悪いが、これにはクリスも口出ししなかった。

 クロエだけなら何の容赦もなくリオンを吹っ飛ばしただろう。だが、クリスがいたからこそ、今この試合は、

 クロエが乱射する。

 リオンがひたすら避け続ける。

 ――――このように、一方的ではあっても面白くなっているのだ。

 クロエとクリスが、二人で一人であることの証明であった。

 
 さて、とにかく逃げ回るリオン。すでに此処まで生きていられるという事自体が奇跡に近いのだが、もちろんリオンとて諦めるほど往生際は悪くない。

 レベルは現在の参加者の中では恐らく一番低いだろう。

 だが、それであるが故に、リオンには様々な技能があるのだ。

 踊るようにクロエの銃撃を回避する。ステップを踏むように、くるり、くるりと。

 そして投げる。取り出した片手剣に、《ヴォーパル・ストライク》を乗せて。次に抜きはらったレイピアに、《フラッシング・ペネトレイター》を纏わせて。最後に投擲用(スローイング)ナイフに、《投剣》ソードスキル、《シングル・シュート》と、シノンのユニークスキル《射撃》の《エクスプロージョン・アロー》を編んで。

 リオンの全力を込めた反撃だ。流星の如く舞い散る、《投擲》されたソードスキルたち。輝き、煌めき、炎舞する。

 その全てを、クロエは避ける、あるいは銃撃する。踊るように、それら流星たちを無効化していく。

 だがリオンの攻撃は終わらない。弾かれた剣たちは全て彼の手中に舞い戻り、再びクロエめがけて飛翔する。

 延々と続く、投擲と銃撃の応酬。

 しかしそこには、圧倒的な差異が存在する。

 即ち――――《実力》、と言う名の。《限界》、と言う名の。

 先に集中が切れたのは、リオンの方だった。手元が狂う。クロエには絶対に当たらぬ方向へと、彼のレイピアが突き進む。

「しまっ……」

 あわてて《クイックチェンジ》でレイピアを手元に戻そうとしたその時にはもう遅い。クロエの《錆びた銃(ラスティ・ポンプ)》が――――その銃口が、リオンを捉えていた。

『……』
 
 ダァン! という炸裂音と共に、弾丸が発射される。それは狙い違わずリオンを貫き――――

【Fast―Battle:Winner is Kuroe!!】

 勝敗は、此処に決した。



 ***



 第二試合の組み合わせ――――シャオンVSリュウは、ある意味で非常に相性が悪いと言える。

 シャオンの持つユニークスキル《SEED》――――正式名称を《SEED Mode―ExtremeAccel》は、全ての状態異常を無効にするのだ。SAOシステムを超越した存在の攻撃ならまだしも、リュウの《双刀》すきるはあくまでSAOの常識に乗っ取ったもの。確率で発生する状態異常は、シャオンにはさっぱりきかない。

 故に――――

「前回は消化不良だったからなー。今回はトップスピードで振り切るぜ。ひとっ走り、付き合えよな!」

 【デュエル!!】の文字が瞬くと同時に、青い影が疾走する。SAO最速の一角は、開始からトップスピードで攻撃に出た。

 《連二刀流》上位ソードスキル、《フラッシング・ツインブレイド》。二十一連撃の猛威が、リュウを襲う。

「させるかっ!」

 対する黄色のオレンジバスターも、その幸運を全力で注ぎこむ。
 
 《双刀》ソードスキル、《フェルカー・モルト》。確率十六連撃。

 激突。

 閃光がバトルフィールドを舐める。

 弾かれあうシャオンとリュウ。しかし《SEED》の効果でスキルディレイの存在しないシャオンは、再び疾走を開始する。同時に、ソードスキルを発動。

 《神速剣》上位ソードスキル、《トライアルフィニッシュ》。十四連撃がさらに加速する。

 その斬撃を、技後硬直(スキルディレイ)中のリュウは受け流すことができない。素早い斬撃をもろに喰らって、コロシアムの壁際まで吹っ飛ぶ。HPの総量は残り八割まで落ち込んだ。

「ぐっ……」
「まだまだ! 終わらないぜ!」

 シャオンは容赦なく追撃する。

 《神速剣》ソードスキル、《オーバーフリーズライザー》。六芒星を描く斬撃が、リュウを切り裂かんと奔り出す。

 だがそれを、リュウが黙って見ているわけがない。スキルディレイが解除されたリュウは、その両剣をシャオンめがけて突き出した。
 
 威力は低いが、確定で敵を吹き飛ばして隙を生み出す《双刀》ソードスキル、《エルレイン》だ。

 システムすら追いつかないとされる速さで、それを避けるシャオン。しかしリュウのねらいは、シャオンを吹き飛ばすことではない。

 どれだけ一瞬の出来事であっても、シャオンを『移動させる』ことだ。これによって彼の行うアクションには隙ができ、リュウが脱出しやすくなる。

 もちろん、シャオンのスピードの前では、どれだけ逃げようが一瞬で追いすがられてしまうだろう。だからそれを、真っ向から迎え撃つための準備だ。

「疾ィッ!!」
「……ゼァァッ!!」

 シャオンの二刀と、リュウの両剣が同時に光を纏う。

 シャオンのそれは、《連二刀流》上位ソードスキル、《ソードダンス・オーバースピード》のモノ。
 対するリュウのそれは、《双刀》立体軌道ソードスキル、《トーデス・シュトラーフェ》。

 シャオンの剣技は三十連撃を超える。嵐のような斬撃が、リュウの剣の竜巻に巻き込まれ、弾かれあう。

 加速する剣戟の応酬。すでに仮想の大気すらが切り裂かれ、バラバラになっていく域へ。速く。疾く。

 そして――――シャオンの剣戟すべてが出終わるのとほとんど同時に、リュウも斬撃をストップさせる。

 即座に愛剣を構え直す両者。これから彼らが打ち出すのは、他のそれとは一線を画す、彼らのもつ中でも最上位に属するソードスキルたち。

 加速しすぎた故か。停滞して、スローモーションのように見えるその空間の中で、勇士たちは勝者を決めるべく、動き出す。

「……光速(ひかり)が奏でしこの歌は、六刃(むつば)の聖なる協奏曲!
  《ライトスピード・ディバインセクステッド》!!」
「喰らえ……ッ! 《カタストロフィ・ブレイク》!!」

 方や《連二刀流》と《神速剣》の複合、108連撃の斬撃の歌。
 方や《双刀》最上位ソードスキル、大威力に加えて、五パーセントの確率で即死判定の一撃。

 果たして――――

 結果は、意外な形を見せた。

 まず、想像を絶する速さで叩き込まれたシャオンの斬撃が、リュウのHPを丸ごと削り去った。
 ほぼ同時に、リュウの斬撃がシャオンにヒット。幸運少年の名の通り、たった五パーセントの確立を引き込んで、シャオンに即死判定(状態異常ではないため《SEED》で無効化できない)。

 全く同時に、お互いのHPがゼロになり、ポリゴン片となって爆散する。そのわずかな差異は、模倣カーディナルが判別できないほど。

 別フィールドで見守る観客たちが、すわ引き分けか、と戦慄したその時。

「……《幸運少年》のHPの方が、先にゼロになりました」
「ありがとう、アーニャ」

 くせ毛の、《神の契約者》が。《神に愛された少女》が。《確定存在》が。

 判決を下した。

 それは《不存在存在》に聞き入れられ、デュエルの勝者は決定したのである。

 あっけなく。

 そして、ある意味では無情に。


「振り切ったぜ――――ッ!!」
【Second―Battle:Winner is Shaon!!】 
 

 
後書き
 お久しぶりでっす! 春休みに入ったは良いが宿題が終わらなそげなAskaです。

 シャオン君のソードスキル口上を、語呂が良いように勝手に改変してしまった……KZMさん、本当に申し訳ありません。
刹「だから謝るくらいならやるなと……」

 そーいやなんか足りないな、と思ってたら、このコラボ編のデュエル、実況とかが付いてないんですね。うーん、迷いますね……つけてもなぁ。アスリウとアーニャだしなぁ……やめるか。

 因みに最後のシャオン君VSリュウ君ですが、同時決着の勝者はくじ引きで決めました←
 こんなところだけ不運なリュウ君……。
刹「……ごめんなさいは?」
 龍驤さんごめんなさい!

刹「さて、アホ作者は置いておくとしまして。
  それでは次回もお楽しみに」 
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