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雪ん子

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3部分:第三章


第三章

「それでさ、御爺ちゃん」
 勉が自分の祖父に問う。既に話は全てしている。
「知ってる?その女の子のこと」
「学校で遊んだんじゃな」
「うん、今話した通り」
 彼はそう答える。その通りなのだ。
「全部話したよ。それで何か知ってる?」
「そうか。今も元気にしておるようじゃな」
 祖父は孫の話を確認して急に笑顔になった。穏やかな顔がさらに穏やかになる。
「今もなあ」
「今もなあって」
 英行達はその言葉に首を傾げさせた。
「それどういうこと?」
「何か知ってるんですか?」
「よく知っておるさ」
 彼は孫達にそう述べてきた。
「わしもな。遊んだからな」
「遊んだって?」
「わしも子供だった頃がある」
 彼はまた言う。その目がふと何かを懐かしむようになった。そこにはあるものを見ていたのである。孫達と同じものをである。
「あの時の学校は今とは全然違っていたがのう」
 その懐かしむ目で語る。
「校舎も木造でな。周りに建物も少なく」
「ああ、それは知ってる」
 英行がそれを聞いて言う。
「昔はここ凄く人少なかったって」
「そうじゃ。それがかなり増えたんじゃが昔から変わらないものもあった」
「それは何なの?」
 勉が祖父に問うた。
「今話していることじゃよ」
「今っていうと」
「その通り」
 また言う。言葉は不思議な響きを感じさせるものになっていた。
「その女の子のことじゃが」
「知ってるんだ」
 英行達はそれを聞いて目をしばたかせる。そうして何か妙なものを感じるのだった。
「わしも一緒に遊んだのじゃ」
「一緒に!?」
「嘘だよそんなの」
 孫達はその言葉を信じようとしない。それも当然のことであった。
「だって御爺ちゃんだよ」
「どうしてそんなことが」
「あの学校に昔からおってのう」
 だが祖父はそんな孫達に対して語るのだった。懐かしいものを語るその目をそのままにして。孫達に街の古いものを話す顔であった。
「昔から?」
「さっきわしも一緒に話したと言ったな」
 またそのことを言う。
「うん」
「小さい女の子が雪遊びに混ぜてくれと言ってきて冬の間ずっと一緒に遊んだ」
「そうだよ」
「それで俺達も」
「じゃろうなあ。何もかも一緒じゃな」
 祖父は勉や英行の言葉を聞いて頷く。そうしてまた言うのだった。
「わしの時と」
「あのさ、御爺ちゃん」
 話を聞けば聞く程わからなくなってきたので勉が声をあげる。そうして祖父に対して問うのであった。怪訝な顔を露わにして。
「何なの、それ」
「そうだよ。一緒に遊んだって」
「有り得ないじゃないか。俺達と一緒だったんだよ」
「何でそれが」
「だからじゃ。不思議な話なのじゃ」 
 祖父はまた言うのだった。
「そうしたことがのう」
「はあ」
「何が何だか」
「わしだけではない」
 彼はまた言う。
「わしの先にも後にもあの女の子と一緒に遊んだ生徒は多い。一年だけな」
「一年だけか」
「うむ。毎年いるのじゃ」
「毎年っていうと」
「それじゃああの女の子は」
 彼等はようやくわかってきた。あの女の子が何なのかを。それは今まで話には聞いていたが見たのははじめて見るものだったのだ。
「そうじゃ。人ではないぞ」
「やっぱり」
「あの女の子は」
「害はないぞ」 
 祖父はこうも言うのだった。
「だから安心しておけ。ただしじゃ」
「ただし?」
「あの娘と一冬遊んだのじゃな」
 それをまた言う。
「一冬。そうじゃな」
「うん」
 孫達は祖父に素直に答える。
 
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