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義勇兵

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5部分:第五章


第五章

「くっ、何だこいつ」
「手強いか」
 河原崎もスコットもお互い言う。
「フライングタイガースにこんな奴がいるのか」
「日本軍、強いか」
「ならな。それでもな」
「撃墜してやる」
 お互いに言葉を交えさせてはいない。しかしそれでもだ。
 激しく闘いだ。お互いを倒そうとしていた。
 空中でドッグファイトを続けていく。だが互いに決定打を欠き撃墜できない。
 そしてだ。河原崎は通信を受けた。
「おい、もう帰るぞ」
「撤収ですか」
「そうだ、時間だ」
 だからだというのである。
「もうな。帰るぞ」
「わかりました、それなら」
「あっさりとしているな」
 通信を入れている上司はこう彼に言うのだった。
「それはまた」
「そうでしょうか」
「まあいい。とにかく今は帰るぞ」
「はい」
 ここはあっさりとスコットのP40から離れてだ。そのうえで重慶上空から姿を消す。後に残ったのはスコット達義勇軍だった。
 スコットはすぐにだ。部下達に通信を入れた。そうして問うことはだ。
「皆いるか」
「はい、います」
「大丈夫です」
「生きています」
「そうか、ならいい」
 彼は部下達のその言葉を受けてまずは納得して頷いた。
「それならな」
「部隊全体でもそれ程損害は受けていません」
「撃墜された機体は二機です」
「それも全員脱出に成功しています」
「そうか、それならいい」
 報告を受けたスコットは満足した。無事だと聞いてだ。
 そしてだ。その彼にまた報告が来た。
「ただ、日本軍も損害は大きくありません」
「撃墜できた機体は二機です」
「それだけです」
「二対二か」
 スコットはその数を聞いてだ。難しい顔で述べた。
「それはまたな」
「残念ですが引き分けかと」
「元々も数も互角でしたし」
「結果として」
「そうだな。引き分けだな」
 スコットはその難しい顔で頷いた。
「それではな」
「それに向こうも脱出しましたし」
「今国民党軍が捕虜にしに向かっています」
「情報は手に入れられそうです」
「わかった」
 このことには満足した。やはり情報は有り難い。
 何はともあれ戦いは終わった。そしてスコットは捕虜から得たという情報を聞いてだ。そのうえでこう話すのだった。
「河原崎中尉か」
「それが敵の部隊のエースらしいです」
「その男がです」
「間違いないな」
 彼はまた酒を飲んでいた。そこで部下達とその酒を酌み交わしながら話を聞いてだ。そのうえで確信したのである。
「俺が戦った奴はそいつだ」
「それがその河原崎ですか」
「その男ですか」
「絶対にそうだ」
 彼はまた話した。
「あいつがそうだ。動きが他の奴とは違っていた」
「そいつが一番手強いですね」
「やはり」
「ああ、手強い」
 また話す彼だった。彼は強敵が出て来たことを感じていた。
 
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