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没ストーリー倉庫

作者:海戦型
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【D×D】来いよ掃除男!理論なんか捨ててかかって来い!

 
前書き
今回は宗教・伝承的な部分ではなく人格的な勝負です。 

 
 
掃詰箒という男はいつも何かを考えている。
だがその思考回路は、いつも周囲の想像の斜め上を行く。

例えばこんなことがあった。
ライザーとリアスのレーティングゲームが行われた際に、サーゼクスが気まぐれで箒を観戦席に招いたのだ。
サーゼクス・ルシファー。悪魔界のトップ4である4大魔王の一角にしてリアスの兄。悪魔界の特級VIPにして権力者であった彼がそのような席を設けたのは、単純にリアス伝手に聞いた箒という少年が興味深かったからに他ならない。

箒はそこでゲームを物珍しげに観戦しながら、サーゼクスと雑談をした。
悪魔界のトップに呼び出されているという下手をすれば死をも覚悟しなければいけない事態でありながら、実に呑気である。本来は人間が悪魔に呼び出されること自体が異常な訳だが、そこはそれ、魔王としての公務に退屈した暇人の考える事。箒もたまたまその日は暇だったのでグレイフィアの案内でノコノコ付いてきてしまった訳だ。
内容は堕天使と悪魔の境が伝承で曖昧になっている理由や、実は堕天使と悪魔には本質的に違いがないんじゃないかと言う独自理論など。既存の価値観に縛られない自由な発想をサーゼクスは気に入り、話は弾んだ。そしてその折、ちょっとしたプライベート話になった時の事……。

「へー。じゃあさっきのメイドっぽい人が奥さんなんですか。……ぶっちゃけ趣味ですか?」
「私がやらせたわけじゃないから本人の趣味という事になるかな?」
「悪魔ってのは奇人変人の巣窟ですね」

魔王の妻である「銀髪の殲滅女王」を唐突に奇人変人の仲間に追加する箒。
しかもその物言いだとサーゼクスやリアスもその中に含まれている。見る人が見れば悲鳴を上げて彼の口を塞ぎたくなる光景だ。
が、サーゼクス的には悪魔は元々秩序の反対にいる存在という価値観があるため「悪魔だからね」と良い笑顔で返していた。


ちなみに控えていたグレイフィアは、無表情を貫きながらも内心では変人扱いされたことにショックを受け、必死で訂正したい気分になった。



 = =



「ちなみにこの戦い、君はどちらが勝つと思うかね?」
「グレモリーはもう勝機を逃してるんで、よっぽど運が良くないと負けでしょう」

さらりと級友の敗北を予見する箒に、サーゼクスは興味深そうに目を細めた。
彼が気になったのは妹が負けると断言されたことではない。贔屓目に見ても元々彼女の勝機は薄いし、客観的に見て彼の言う事は正しい。サーゼクスが気になったのは、「勝機を逃してる」という部分だ。

レーティングゲームは佳境に入り、既に双方で脱落者が出ている。だがグレモリー眷属は全体的に見ればかなり善戦していたといえるだろう。にも拘らず、彼はそれが不十分だったと言っているのだ。あの戦いの中にあった勝機を妹が見逃している、と。サーゼクスには少なくとも、それほど決定的な瞬間は無かったように思えた。

「ふむ………君がリアスなら勝っていたと?良ければ君の戦略を聞かせてもらえるかな?」
「確実な事は言えませんけど………そうですね、まずは兵藤の『赤龍帝の籠手』にエネルギーを溜めます」
「ふむ。それで?」
「相手のライザーは自尊心高いみたいなのでふんぞり返って高い所に移動することが予測されますから、使い魔でもなんでも使用してライザーの立ってる位置を割り出します」
「ほほう、なるほど」
「その間、他の連中に敵の迎撃をさせ、兵藤と大将(キング)に近寄らせないようにします。で、規定時間まで粘ってもらって……」
「もらって?」
「えっと、アレ。なんか兵藤が『山を吹き飛ばした』とか言ってたドラゴン波みたいなのを壁越しにライザー方向に放って、校舎ごと吹き飛ばします。山ごと吹き飛ばす威力ならフェニックスも再生できないと聞いたんで、それでチェックです」
「………………………君は想像以上に恐ろしいことを言うね?」
「多目的破砕榴弾砲の正しい使い方ですよ」

確かにその方法ならば勝てるが、下手をすれば相手を殺しかねない威力である。しかもその方法だとよしんば外れても相手ごと校舎を吹き飛ばせるので、発射前に眷属を逃がしつつ敵の足を止めることは可能。そうして大半の眷属が行動不能(リタイア)になったところで数を活かして攻勢に出るという訳だ。

しかし、何というか……攻め方がテロリストっぽい。赤龍帝の大火力を戦力ではなく移動砲台として考えているというのがまた感情を伴わない冷酷さを感じる。言うならばチェスを取り出して「勝負しよう」と言ったのに、盤そのものに剣を叩きこんで「キングを倒したぞ」と真顔で言われるような、こちらの理解を越えた行動。

「ま、一度しか使えないのが玉に傷ですが……本気で勝ちたいんならまっとうに戦っちゃ駄目でしょうよ」
「厳しい意見だね。だが確かに悪魔ならば、勝ち取りたい未来のためには知恵と力を尽くすべきではある。はははは……はぁ」

人間のリアリズムというのは恐ろしい。実は人こそ一番恐ろしいのかもしれない。
その戦術は使ってはいけないとは言われてないが……何となく受け入れがたいサーゼクスだった。



 = =



「はじめまして☆ 私、魔王セラフォルー・レヴィアタンです☆『レヴィアたん』って呼んでね☆」

しゃらーん、と現れた魔法少女……というか魔王少女に戸惑いを隠せない。
髪の色や顔の輪郭が若干ソーナに似てるな。姉妹だろうか?

「………やっぱり悪魔っていうのは変な奴しかいないんだな」
「それは私も含めてですか、掃詰くん!?私も姉さんと同じ扱いですか!?」
「ちょっと箒!私はまともよ、私は!!」
「えーい近寄るなくっつくな自分を正当化するな!主にグレモリー!主にグレモリー!」

お前を常識人とは認めない。人の記憶を弄び、堕天使と戦争をしたレッドアリーマめ。今までどれだけ俺の記憶と方向感覚を弄んだと思っている。だいたいお前が人間に干渉している時点で俺はどうかと思うね。
実際コカビエルとかいう奴には町を滅ぼされかけたと聞いている。おかげであの時期は生きた心地がしなかった。一般人を巻き込むなお前ら。

「っていうか姉なんだ?」
「そうだよー☆ソーたんはレヴィアたんの妹なのだー☆」
「うざっ。頭悪そう」
「どストレートな悪口!?ちょっと心が荒み過ぎだよー!?」

あの魔法少女オーラと圧倒的な存在感を前に、まったく自分のペースを崩さない箒。それどころか悪魔側を煽っているという恐ろしい状態である。ちなみに本人に煽っている気はなく、ただ単にどストレートな感想を漏らしただけだ。

ふとソーナの方を見ると、俺ならばこの状況を打破してくれるのではという密かな期待が込められている。ふむ、ソーナはグレモリーに比べれば『比較的』まともな部類だし、ここは助けておくか。

「レヴィアタンと言えばあれだよな。超ウソツキで有名な悪魔だな」
「へ?ちょ、ちょっとウソじゃないよ!私が魔王だもん!」
「あれ?さっきは魔法少女じゃなかったっけ?」
「うぐぐ……魔王は表向きの姿!本当は魔法少女が真実の姿なの!」
「やっぱり嘘だったんだな。ということは実はソーナの姉どころか家族であることすら偽りか」
「だから嘘じゃないってば!君ってばイジワルー!!」
「分かってる分かってる――嘘をつくのがアイデンティティだもんな」
「ちーーがーーうーー!!」

意外に弄り甲斐があったので暫く「レヴィアタンって偶に神聖視されてるよね」とか「ヘビなの?タコなの?」とか魔王の襲名システムを知らないふりして翻弄したら、力尽きてぐでっと大人しくなった。
我、魔王の鎮圧に成功セリ。

「ナイスです掃詰くん!姉さんを完封した人は初めて見ました!」
「……これでよかったのか?」
「よくないわよっ!!」(←セラフォルーです)

後日、魔王に勝った男として三大勢力会談に参加させられた。
お前の所為だグレモリーと責任転嫁してみたら、自業自得よと返された。



 = =



さっきの騒ぎの後、グレモリーに変人呼ばわりしたことを訂正しろと言われた。
そうは言われてもなぁ。考えても見ろ、グレモリー眷属と言えば………

うっかり記憶消去女のグレモリー。
黒翼の異端堕天ハーフ悪魔、朱乃。
猫耳と尻尾が生えていることが判明した塔城。
ゲイの気がありそうな木場。
悪魔の癖に神にお祈り、アーシア。
あと引きこもり(ギャーすけ)変態(イッセー)痴女(ゼノ)

「ほら変人しかいねぇ」
「い……言い訳できない!!というか貴方なんで朱乃と小猫の秘密知ってるのよ!?」
「あんまりにも契約しろってしつこいから、言いたくないヒミツをひとつ暴露する旨の契約突きつけてやったらゲロった。……お試し無料契約コースで」
「代価なしになるまで焦らしておいての!?想像以上に外道ッ!!貴方それでも人間なの!?」

契約しないしないを数か月繰り返してどんどん相手の敷居を下げさせたうえであっさり土足で踏み込んでくる。身を削らずに相手から情報を絞り出す、邪魔外道の手口である。
お試しでいいって言うし契約書までチェックしたから試しにやってみただけなんだが。タダより怖いものはない(悪魔視点)だ。


朱乃の黒翼と悪魔の羽で半々な翼が出てきたときは、どうにもリアクションに困った。

『どうです、この羽……醜いでしょう?』
『堕天使か翼の悪魔との混血か?半々って…… 安 直 だな』
『安直!?安直って何ですか!?私はこれの所為で散々に悩んだんですよ!?』

その後何故か正座させられて、こんこんと不幸話を聞かされてしまった。そんな話されても知らんわ、というのが正直な感想だ。

『まぁ不幸だとは思うけどさぁ……所で1つ聞きたいんだけど、いい?』
『な、何ですか?』
『朱乃はさぁ……その父親のバラキエルってのを恨んでるんでしょ?』
『……当然でしょう。あの人の所為で、母は……!』

『もうひとつ聞くけどさ………お前は親父を殺したいほど嫌いなのか?母親の仇だと思って憎しみを募らせてるのか?』

『え……?』

恨んでるだの何だのとさっきから口では言っているが、その割には父親のバラキエルを恨む感情に肉親的な家族感情が見え隠れしている。恨んでるとかなんとか口で言いつつ、その父から受け継いだ力を使わないなど相手にその姿を見せつけたいという子供っぽい願望がちらついた。

『本気で恨んでるんなら『必ずお前を殺してやる』くらいの事をアザゼルに伝えるだろ。それをやんないってことは、お前は本気じゃないよ』


「ってな会話をした」
「箒、アナタ……それで朱乃は何って?」
「何も言わなかったなぁ。おかげで声をかけにくくて『バラキエルって七大天使として普通に伝承伝わってるけど、何で堕天使したのに伝承で天使として残ってんの?』とは言えなかった」
(何で朱乃の時だけそんなにまっとうな事を……というか箒。そういうこと言ってると朱乃の家庭事情に巻き込まれても知らないわよ?)
※後に巻き込まれます。


で、塔城の方なのだが。

『にゃん』
『………ネコマタの仲間?』
『猫ショウといいます』
『案外大したことない秘密だったな』
『………(無言で足を蹴る)』
『痛いっ!え、ちょっ何?痛ぁっ!?』

本人的には割と勇気を持ってアピールしたのに反応が薄かったのが気に入らなかったらしい。
そうは言われてもなぁ……朱乃の話聞いた後だとちょっとお茶を濁す程度の内容でしかないので。それに猫が好きであることと猫耳尻尾が好きであることはイコールではないし。

『お前じゃ猫の魅力には勝てんよ。猫耳のお前とお前の使い魔のシロなら……シロの方が可愛い』
『ニャッ!?』
『ががーーーん!!』


「以来、口をきいてくれん。逆にシロは前以上に懐くようになった」
「謝ってきなさい今すぐに!!女の子に対してなんてこと言ってるの貴方!?道理で最近小猫があなたに話しかけてないと思ったら!?」
「えー。だって猫耳って人間が猫に挑む行為だろ?人間的な可愛さはともかく猫的な可愛さではそりゃ猫に負けるだろ」
「い・い・か・ら・謝りに行きなさい!あれは生まれつきなのっ!そして女の子には言っていいことと悪い事があるのっ!」

リアスは頭を抱える。本当にもう、この男は今更になって真実暴くマンの力の片鱗を見せつけてくるとは。既に朱乃は彼の罠によって真実を暴かれてしまった。このままだと小猫の秘密が暴かれてしまうのも時間の問題ではないだろうか?

前にも言ったが箒は神器なし、魔力なし、紛うことない一般人。悪魔たちの世界に関わるのに損しかない身分だ。事実、危険しか訪れてない。
いっそのこと彼の両親を洗脳してこの町から出てもらうのもアリだろうか。いやしかし既に結構な大物たちに彼の名前は知れ渡っている。ならば下手に手の届かない所に置くよりやっぱりこの町に……いやいやしかし、と同級生の扱いに迷うリアスだった。



なお、その日の夜に妹を泣かせた男に報復しようと姉猫が彼の前に現れたのだが、「うわ、着物全然似合ってねーな。ファッションセンス疑うわー。ファッションチェックなら21点くらい」という一言の感想に女のプライドが叩き割られ、泣きながらラーメンをやけ食いしていた所を同僚に発見されたらしい。
  
 

 
後書き
周囲が遠慮しなくなってきたので段々と自分も遠慮しなくなってきた箒くん。
なお、オーディンに出会った時の彼の様子↓。

「オーディンと言えば、神の癖に自分が死ぬ予言知っちゃったうっかりじいさんだろ?分不相応なもん求めるからつまらん結末迎えるんだよ」
「おぬし人間の癖してわしのものすごく痛いところ突いてきたの!?おぬしの後ろに運命三女神(ノルン)の顔がちらつくんじゃが!!」

箒の称号が追加された!
・真実暴くマン
・カイムの末裔
・邪魔外道
・ノルンの弟 ←New!! 
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