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虎退治

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5部分:第五章


第五章

「手強いぞ、あれは」
 言ったのはジョーンズだった。
「それこそちょっとやそっとじゃな」
「そのちょっとやそっとのことをしないんだよ」
 バージルはジョーンズに対してこう言葉を返した。戦車の中での会話は今は強いものになっていた。
「こっちもな」
「ドイツ軍は鋭いぞ」
 精鋭である。ドイツ軍は個々の将兵の能力もかなり高い。ヒトラーはただ闇雲に戦争をはじめたわけではないのである。その強さも知っていたのだ。
「下手に隠れても気付かれるぞ」
「ただ隠れるだけじゃないさ。いいか?」
「どうするんだ?」
「今この戦車をな」
 その物陰に隠れている戦車をというのだ。
「さらに隠すんだよ」
「さらにか」
「ああ、隠れているだけじゃなくてな」
 隠しもするというのだった。
「木の葉やら枝やらかけてな」
「それで隠れるんだな」
「わかったな。いいな」
「若し失敗したらな」
 ジョーンズはその中で言った。
「終わりだぞ」
「終わらないようにするんだよ」
 バージルの考えは変わらない。あくまでするというのだった。
「いいな、終わらないようにだよ」
「わかった」
 ここまで聞いてだった。ジョーンズも遂に頷いた。
「じゃあやるか。あのデカブツ退治をな」
「ああ。まずはな」
 彼等は戦車の外に出た。そうhして木の葉や枝でカモフラージュに入った。M4の巨体が忽ちのうちに森の中に完全に消えた。
「よし」
「まずはこれでいいな」
 四人はその隠れた自分達の戦車を見て言い合った。
「後は奴等が来た時に」
「やるか」
「賭けだな」
 チャーリーがここで言った。
「冗談抜きにな」
「分の悪い賭けか?」
 エドワードはこう言った。
「これは」
「かなりな」
 ジョーンズが二人に返した。
「相手が相手だからな」
「分の悪い賭けをあえてして見事に勝つ」
 バージルは不敵に笑ってみせてそのうえで言葉を出した。
「それがアメリカ人じゃないのか?」
「確かにな」
「そこで勝利を掴むってのがな」
 チャーリーもエドワードもそれは頷くものがあった。
「アメリカ人ってやつだ」
「危険を乗り越えてだ」
「じゃあ俺もその賭けに乗ってやる」
 ジョーンズも遂にそれに乗った。
「乗るからにはな」
「ああ、勝ってやる」
 バージルが最後に言った。そうして道の脇の森の少し奥に置いたカモフラージュをした戦車の前にも枝を置いた。ただし砲撃できる程度の間隔は空けた。こうして虎を待つのだった。
「雨で奴等も視界が悪い」
 バージルはその間隔から覗きながら呟いた。
「俺達が隠れているってことにも気付かないからな」
「ましてやここにいるのはか」
「わからないってわけだな」
「ああ、そうさ」
 まさにそうだとまたチャーリーとエドワードに述べた。
「だからだよ。ここに隠れていてな」
「それはいいがな」
 ジョーンズは視界が悪いことが相手にも影響することは認めた。
 
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