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武士と騎士

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4部分:第四章


第四章

「しかし信念で勝つことはだ」
「大きな意味がある」
「そのことこそが」
「日本の武士道に勝つ」
 言葉は毅然としていた。全く揺らぐことのないものだった。
「必ずだ」
「そしてそのうえで」
「この戦争自体にも勝つというのですね」
「その通りだ。私は勝つ」
 彼は部下達に対して断言した。
「日本の武士達にだ」
「では我々もまた」
「勝ちます」
 こう話してだった。彼等はこれからの戦いに赴くのだった。
 そして次の空の戦いにおいて。日英両軍は激しい空中戦を繰り広げた。その中には当然のように米田がいた。彼は飛燕を駆って戦場にいた。
「いいな」
「はい」
「それではですね」
「そうだ、全機正面から向かえ」
 そうせよというのである。
「敵もまた正面から来ているからな」
「そうですね。確かに」
「敵は正面から来ています」
 見ればイギリス空軍の編隊はだ。正面から来ていた。まだ小粒程度にしか見えないその編隊が正面から向かって来ているのが見えている。
「それでは我々も」
「正面から」
「卑怯な真似はするな」
 米田はこうも告げた。
「いいな」
「正面から正々堂々と向かい」
「そのうえで倒せというのですね」
「武士道を見せてやれ」
 これが彼の信念だった。
「いいな」
「武士道をですね」
「我々の」
「それを見せてやれ」
 彼はまた言った。
「己が戦うのに相応しい相手にな」
「はい、それでは」
「今から敵に対してですね」
「正面から」
「全機突撃だ」
 具体的な命令を今出した。
「そして勝つ」
「了解」
「それでは」
 こうして米田が率いる飛燕の編隊はイギリス空軍の編隊に向かった。そしてそれに対するイギリス空軍の編隊を率いるのは。やはり彼だった。
「クエスター大尉」
「それではですね」
「今から」
「そうだ、今からだ」
 クエスターもまた、であった。正面から来る日本陸軍航空隊の編隊を見据えていた。そうした意味において米田と全く同じであった。
「敵に正面から向かう」
「そして正々堂々と戦う」
「そうするのですね」
「そして勝つ」
 彼は空でも言い切ってみせた。
「武士にだ」
「騎士が勝つか武士が勝つか」
「今ここではっきりさせるのですね」
「その通りだ。行くぞ」
 後続の部下達に対しての言葉だ。
「臆するな」
「臆することはありません」
「決して」
 部下達もであった。その言葉に迷いはなかった。
「我等も騎士です」
「だからこそ」
「騎士は正面から戦いそのうえで勝利を収めるもの」
 ここでも彼の信念を言ってみせる。
 
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