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大陸の妖精

作者:sinの妖精
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妖精女王の明日

場所は塔の内部


エルザとアルトは塔の外への脱出を試みていた



エルザ「うあっ」


アルト「エルザ!大丈夫か!?」


塔の大きな揺れで転んだエルザを優しく起こすアルト



エルザ「だ・・・大丈夫だ」


アルト「それにしても見ろよアレ・・・あの硬い魔水晶(ラクリマ)がグニョグニョに曲がってる・・・」


アルトが指さす先にはかなりの高度を持つ魔水晶(ラクリマ)がまるで粘土のように曲がったり、凹んでたりしていた



エルザ「(器・・魔水晶(ラクリマ)を変形させるほどの魔力か・・・想像以上の魔力を秘めているようだな・・・これでは外に出ても暴発に巻き込まれてしまう・・・このままじゃ・・・)」


アルト「くそぉ・・・こうなったら爆発そのものを阻止するしかねえよ!!」


そんなアルトの表情を見たエルザはある決意を固める



エルザ「(いや・・・あきらめるものか・・・今度は私がお前を救う番だ、アルト・・・)」


半ば諦めかけていた表情から、いつもの凛とした表情に切り替えるエルザ


その刹那、先ほど聞いたジェラールのセリフが脳裏によぎる




『この27億イデアの魔力を蓄積した魔水晶(ラクリマ)にお前の体を融合する、そしてお前の体は分解され、ゼレフの体へと再構築されるのだ』




エルザ「(融合!!?私とエーテリオンを融合できれば・・・この魔力を私が操り、暴発を止められるか!!?)」


そしてエルザは魔水晶(ラクリマ)の前に立った



アルト「エルザ・・・?」


エルザ「(これにかけるしかない!!!!)」


アルトが怪訝そうに見守る中、エルザは右腕を魔水晶(ラクリマ)に通す



アルト「!!?」


エルザ「うう・・・(よし!!魔水晶(ラクリマ)は まだ私を受け付けている!!!)」


アルト「な・・何してんだよエルザ・・・体が水晶に・・・」


エルザ「エーテリオンを止めるにはこれしかない」


エルザがそう言ったのと同時に、塔の天井の破片が上から降り注ぐ



エルザ「じきに この塔はエーテリオンの暴走により大爆発を起こす・・・しかし、私がエーテリオンと融合して抑える事ができれば」


アルト「何言ってんだよ!!そんな事したらお前が!!!」


徐々に身体を水晶に埋めていくエルザ


それを見たアルトは止めようと、エルザへと向かって走る



エルザ「何も心配しなくていい、必ず止めてみせる・・・」


アルト「やめろーーー!!!」


体半分が魔水晶(ラクリマ)に埋まりながらも、エルザは走ってきたアルトの頬へと手を伸ばす



エルザ「アルト・・・」


アルト「やめろってエルザ!!頼むからぁ!!」


頬に添えられたエルザの腕を握るアルト



エルザ「私はフェアリーテイルなしでは生きていけない、仲間のいない世界など考える事もできない・・・私にとってお前たちは、それほどに大きな存在なのだ」


アルト「エルザ・・・」


エルザ「私が皆を救えるのなら何も迷う事はない、この体など・・・くれてやる!!!!」


握るアルトの腕を払い、両手を広げ水晶の中へ全身を放り込むエルザ



アルト「エルザ!!!!出てこいエルザ!!!!」


エルザ「アルト・・皆の事は頼んだぞ」


水晶を叩くアルトだったが、エルザはどんどん水晶の奥へと進む


そして、片目にわずかな涙を溜め、優しい表情で言った





エルザ「私はいつもお前たちの傍にいるから」



アルト「エルザーーーーー!!!!!」


夜空にアルトの叫びが木霊する


次の瞬間、エーテリオンは凄まじい暴風を引き起こし、爆発を起こすことなく空の彼方へ消え去った




竜巻のように渦を巻いて、エーテリオンの魔力は消滅したのだった





◆◇◆◇◆◇◆◇


エルザが次に目覚めた場所は真っ白で何も無い世界だった


先ほどまで身にまとっていた装束とは違い、とても清楚な白いドレスを着ている



エルザ「(ここは・・・!!?)」


天も地も見当たらない世界にいささか戸惑いつつも、冷静に自分がおかれた状況を見つめなおす



エルザ「(エーテリオンの中!!?・・いや・・違う・・・もっとあたたかくて・・・)」


ふと、足元に目を向けるエルザ


そこには冷たい雨に打たれ、重苦しい雰囲気ただよう葬式が行われていた



エルザ「!!」


黒い喪服を身にまとい、葬式に参列しているのはフェアリーテイルのメンバーたちだった



エルザ「(そうか・・・私は・・・死んだのか・・・)」


全てを悟ったエルザは申し訳なさそうに目を細めた


自分の墓の前に立ち、涙を流している仲間の姿を見るのはとても辛い事だ



マカロフ「彼女・・エルザ・スカーレットは・・・神に愛され、神を愛し・・・そして我々友人を愛しておった・・・」


雨に打たれながらも、平静を装い、言葉を並べるマカロフ



マカロフ「その心は悠久なる空より広く、その剣は愛する者の為に気高く煌めき、妖精のごとく舞うその姿は山紫水明にも勝る美しさだった・・愛は人を強くする・・・そしてまた人を弱くするのも愛である」


感情を押し殺すマカロフだったが、徐々に言葉に込められた覇気が薄れていく



マカロフ「ワシは・・・彼女を本当の家族のように・・・」


涙が止まることなく溢れだす


マカロフが涙を流す姿は、雨の中に紛れていた




エルザ「(マスター・・・)」




「・・・彼女が・・・安らかなる事を祈る・・・」


黒いコートを着た評議員たちが、エルザの墓の目の前に立つ



「魔法評議会は満場一致で空位二席の一つを、永久的にこの者に授与することを決定した」


評議員たちの中心に立つオーグ老師が祈りを捧げ、言葉を発した



オーグ「エルザ・スカーレットに聖十大魔道の称号を与える」


すると、マカロフやフェアリーテイルの皆も目を瞑り、祈りを捧げた



アルト「・・・・・」


しかし、眉をひそめ墓を見据える黒髪の少年、アルトレアだけは目を瞑ることも祈りを捧げる事もなかった




エルザ「(アルト・・・)」




ナツ「ふざけんなァっ!!!!」


突如、墓の前に立つ桜色の髪をした少年


ナツ・ドラグニルは声を荒げて叫び出す



ナツ「なんなんだよ みんなしてよォ!!!!」


すると、墓の前に添えられた花を蹴って散らかすナツ



ルーシィ「ナツ・・・やめて・・・」


グレイ「てめえ!!」


他の者たちは、生気のない目でナツを見る



ナツ「エルザは死んでねえ!!!」


ルーシィ「お願いナツ・・・やめて・・・」



ナツ「死ぬわけねえだろォォ!!!!」


ルーシィ「現実を見なさいよォオォッ!!!!」


互いに、互いの話などまるで聞かずに無意味な良い争いが始まる


ナツは力いっぱいに暴れ、エルザの墓を荒らす



ナツ「エルザは生きてんだァ!!!!」


アルト「いい加減にしろよナツ、テメェ!!!!」


暴れるナツの上にのしかかり、頭と体を取り押さえるアルト



ナツ「アルト!!!」


アルト「これ以上ここで暴れる事は許さねェぞ!!!」


そう言ったアルトは歯を食いしばり感情を必死に抑えている表情をしていた



ナツ「アルトォ!!お前までエルザが死んだって言うのかよォオ!!!!」


アルト「バカ言うな!!!!俺だってエルザが死んだなんて思ってねェよ!!!!」


ナツ「嘘つけェ!!だったら何でこんなくだらねェモンに黙って参加してんだァア!!!!」


アルト「じゃあ聞くがなァ、ナツ!!!!」


声を震わせ、ナツのマフラーと胸倉を両手で掴み上げるアルト


ナツの顔を自分の正面におき、怒号じみた声で言い放つ



アルト「ここで暴れればエルザは戻ってくんのかァ!!!!」


ナツ「!!!」


アルト「ここで派手に暴れて!!そこに建てられた墓ぶっ壊せば!!!エルザは帰って来てくれんのかよォオ!!!!」


叫ぶアルトの目には徐々に涙が浮かびあがる



アルト「本当は皆もお前と同じ気持ちなんだ・・・エルザの無事信じてんなら・・・こんな見苦しい真似すんじゃねェよ」


ナツ「アルト・・・」


アルトの叫びを聞いたナツは全身の力が抜けたように、ダランと手足を垂らす


そしてアルトが胸倉から手を離すと、ナツはその場に座り込む




そんな光景を涙を流しながら見つめるエルザ




エルザ「(私は・・アルトの・・皆の未来の為に・・・なのに・・・これが皆の未来・・・残された者たちの未来・・・)」


エルザの目の前にはアルトたちが大粒の涙を流す光景が広がっていた



エルザ「(頼む・・もう泣かないでくれ・・私はこんな未来が見たかったのではない・・・私はただ・・・みんなの笑顔の為に・・・)」


顔を覆い、泣き崩れるエルザ




『やめてくれ・・・私は・・・こんなの・・・』





◆◇◆◇◆◇◆◇


エルザ「!!」


エルザの意識が覚醒する


目の前には満天の星空が果てしなく広がっていた



エルザ「ここは・・・!?」


状況が飲み込めず動揺するエルザ


しかし、そんな感情はこちらに近づいてくる声と足音にかき消された



ナツ「エルザーーーーー!!!!!」


ルーシィ「よかったぁ!!!無事だった!!!!」


グレイ「どれだけ心配したと思ってんだよ」


ショウ「姉さーーーん!!!!」



エルザ「ど・・・・どうなってるんだ?生きているのか?私は・・・」


すぐさま手のひらを天に掲げ、自分の体が本当にあるのかを確かめるエルザ


同時に、エルザは自分がある男に抱きかかえられている事に気づく



エルザ「アルト・・・お前が私を・・・?」


アルトは押し黙ったまま、エルザの問いに答えなかった



エルザ「(あの魔力の渦の中から私を見つけたと・・・?な・・なんという男なんだ・・・)」


するとアルトは抱きかかえていたエルザをそっと水の上に置く


そして俯いたまま話す



アルト「同じだよ・・・」


エルザ「え・・・?」


アルト「俺たちだって・・・エルザと同じなんだ・・・俺は・・・仲間であるエルザにずっと生きててほしい、ずっと傍にいてほしい」


自然と声が震えるアルト


そんなアルトを見たエルザは左目に涙を浮かべていた



アルト「二度とこんな事するな・・・」


エルザ「アルト・・・」


アルト「するな!!!!」


エルザ「・・・うん」


エルザはしばらくアルトを見つめ、やがて柔らかな笑みを浮かべて自分の額をアルトの額にくっつけた



エルザ「アルト・・ありがとう」


そっとアルトの濡れた頬を撫でる



エルザ「(そうだ・・・仲間の為に死ぬのではない、仲間の為に生きるのだ)」


そしてエルザはアルトと共に顔を上げ、立ち上がる



そして自分の仲間達に向かって微笑みかけた



エルザ「(それが幸せな未来につながる事だから)」


そんなエルザの右目からは本来出るはずの無い涙が流れていた


 
 

 
後書き
多分、後1話で楽園の塔編も完結ですね

それと、エルザの右目が義眼っていうくだり省いちゃいました・・・「なんでエルザの右目からは涙が出るハズないの?」って思った方は申し訳ありませんが、原作をご覧ください(汗) 
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