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遊戯王ARCーⅤ 〜波瀾万丈、HERO使い少女の転生記〜

作者:ざびー
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十一話 ーデート、なんです。ー

『今日の優希さんは一段と可愛いですね〜♪』

ぽつりと呟く。当の本人はいつもの事なのでさして気にもとめず、自らに与えられ宿題に取り組む。
ニコニコと微笑むデスガイドの視線の先には背中を向け机に向かっている優希の姿が。
ただ今日はいつもと容姿が違く、ポニーテールに結わえられている栗色の髪の毛は解かれ、肩辺りまで伸びている。優希曰く気分転換らしいのだが、余計にデスガイドを喜ばせていることになっている。

『しかし、こう眺めているだけじゃ、つまんないですね。』

不敵に笑い、ひっそりと優希の背後に迫ると耳元に暖かい息を吹きかける。すると、びくりと飛び跳ね、体を反転し、睨みつけてくる。

「ふっふ、睨んでも可愛いだけですよ、優希さん?」

はぁとため息を吐くと額に手を当てる。

「……まったく。なんなのよ、今日。」

「いや、ただのスキンシップですよ?」

それだけ聞くとまた机に向き直り、宿題を進めようとする。

うーん、なんかこの頃ノリが悪いですね〜。

「ねーねー、優希さ〜ん」

ツンツンと肩を突いて、構ってアピールするがスルー。効果はいまひとつのようです。
しかし、めげずに続け、試しとばかりに脇腹を突っついてみるとびくんと肩が跳ねる。

ここも弱い……みたいですね。

優希さんの弱点の発見に内心で喜んでいると椅子ごと体をこちらに向ける。
目が一体何がしたいんだと語っている。

「あ、やっと反応してくれましたね〜」

「やっと、じゃないでしょ……。集中させてくれる気は?」

「ないですよ?」

キッパリと笑顔で断るとはぁと大きく息を吐く。
う〜む、悩める優希さんもいいですね〜。

さて、優希さんもこちらにしっかり意識を向けてくれたので本題に移りましょうか。

「ねぇ、優希さん……」

やや少し声のトーンを落として、いかにも真剣です。という雰囲気を醸し出す。

「私、優希さんの為にいろいろと尽くしてますよね?」

「へ?」

思わず素っ頓狂な声が優希さんの口から発せられる。薄っすらとだが、冷や汗が見て取れる。

「例えば、優希さんが家にいない時にお部屋の片付けをしたりとか……」

「へー……って、勝手に入らないでよ!な、なんも漁ってないよね!?」

あたふたと慌て出す優希さん。なんかやましい物でも置いてあるんでしょうか?

「心外ですね〜。私は優希さんの事を一番に考えてますのでそんな詮索するような真似はしませんよ」

それを聞くとホッと安堵する優希さん。これは意外と黒かもしれませんね。まぁ、誰にでも知られたくない事の一つや二つ……。私だって、優希さんのベッドの上で……、と言えない事もありますので探し出すのはやめておいてあげましょう。

「それに、LDSのメンツが熱血塾……でしたっけ?そこに、カチコミに行った時に私のおかげで事が終わる前につけたんですよ?あの時に来てもらったファントムオブカオスさん、無理し過ぎたようで体調崩しちゃったんですよ?おかげでわざわざお見舞いに行くはめになりましたよ。」

「モンスターも体調崩すんだ。てか、あの時私もいろいろ被害被ったんだけどね!?」

「あの時は私の責任じゃございませんよ〜。ていうわけで、そろそろ私にご褒美とかあってもいいと思うんです!」

そう言うとガシリと優希さんの両肩を掴み、逃げられなくする。

「ご、ご褒美って……例えば?」

優希さんはようやく納得してくれたようで、怯えた小動物のようにふるふると震えながら尋ねてくる。

「じゃあ……一緒にお出かけしましょう!」

たっぷり一拍開けて言い放つ。へっ?と頭上にはてなマークが浮かんでる優希さんを他所に話を続ける。

「ほら、私ってあんまりこの街を散策したことなかったんです。一人で見て回るのも嫌ですし。まぁ、巷ではお一人様とかいう生涯独身野郎の言い訳が流行ってるらしいですがね〜。
それにどうせ行くなら優希さんとかいいんです!」

「……その心は?」

「某決闘もできるギャルゲーみたく優希さんとの友好値を上げればイベントが……アイタッ⁉︎何するんですかぁ!」

うへへ〜と思考がトリップしていたところを頭にチョップを喰らわされ引き戻される。涙目になりつつ、訴えたがスルー。酷い。

友好値がカンストしたあかつきには、きっと優希さんは私の事が……。そうじゃなくても、頃合いを見計らって……、といけないいけない。思考がまた変な方向へいってしまいそうになりますね〜。焦るのは禁物です。強いては事を仕損じるとよく言いますしね。時間はあるのでゆっくりじっくりと優希さんを攻略していきましょう。

私が今後のプランを練っている最中、うーんと腕を組んで悩んでいる優希さん。どうしたのでしょうかね?

「ねぇ、一緒に出かけるのはいいとしてデスガイドはどーすんの?私以外に見えないわけだしさ。」

「あ、その辺は心配なさらずに。ちゃんと準備はできますので」

パチンと指を弾けば、私の体をすっぽりと光が覆う。そして、それが晴れるとあら不思議。添乗員さんコスから、紺色のスカートとブレザーを着、赤紫色の髪の毛を左右で結んだ私服姿に変わっているではありませんか。
姿も背景が少し透けて見える程度からしっかりとした実体になっているのでこれで優希さん以外にも私を見られるようになりました。

「へー、見事なビフォーアフター……。」

「えへへ、見事なものでしょ?こんな感じで実体化できるのは精霊の中でも一部だけなんですよ?」

と、こんなやりとりをしていたらコンコンと扉がノックされ、優希さんの弟さんが扉を開け、入ってくる。

「姉ちゃん、今、暇〜?あれっ、友達来てたんだ……」

徹さんは私の事を視認するとギョッと驚くもののすぐに丁寧なお辞儀をする。
年齢の割には礼儀正しいですね。

「どうも、」

「あ、いえ……どうも、弟の徹です。」

「へー……君が徹君ですか?優希さんが話してた通り礼儀正しくていい子ですね〜」

えっ、姉ちゃんが!?と驚く徹。内心、変な事でも言われてないか心配なんですかね?

「他にもマジうちの弟天使!とか弟愛滲みでるような発言してましたよ?」

「待て待て待て!そんな事は言ってないから!?」

慌てて優希さんが止めに来るものの時すでに遅し、私は言い終えた後で徹君からは絶対零度の視線を照射されることに。それでもアワアワとしながら弁論する優希さんも可愛いですね〜。

ちらりと部屋の時計を見ると短針は三時を示していた。
出かけるには少し遅い気がしますが、まぁいいでしょう。そろそろ行きますか。

「じゃ、優希さん……そろそろ行きませんか?」

「へ?あ、うん。じゃ、ちょっと待って準備するから」

優希さんはどうにか徹君の誤解を解いたようで別の話をしていたようで急いで準備をし始める。髪をポニーテールに結んで、ポーチに必要最低限の物を入れてるだけですけどね。

「あれ?姉ちゃん達はお出かけ?」

「そう。ちょっと買い物して来るね〜」

言うが早いかさっさと私を家から連れ出していく優希さん。



◆◇◆

家を出た後、舞網市の色んな要素が凝縮された場所、マイアミ・ストリートもとい舞網商店街でウィンドウショッピングを楽しみ、休憩として大道路沿いに面したカフェでお茶を楽しんでいるのですが……

「うぐっ、これ甘すぎでしょ……。優希さんも一口食べてみます?」

私の目の前に置かれた某とろけるアップルベリーパイかっこ以下略の予想外の甘さに四苦八苦し、そうだ!と思い付きに優希さんに薦めてみますが、華麗にスルー。
くっ、あわよくばアーン、なんて事もできたのに‼︎ いと悔しき事かな。

ちなみに優希さんはジェリービーンズマンコーヒーなるものを飲んでいます。ジェリービーンズマンって、あのバニラモンスターの事ですよね?美味しいのでしょか?
ちなみにですがメニューにはしっかりとブルーアイズマウンテンもありました。

「そういえばさ、なんでデスガイドは私について来ようと思ったの?」

ゆっくりとコーヒーを味わっていた優希さんが徐に顔を視線を上げ、私に尋ねてきました。

「ついて来た理由……ですか?そりゃ、優希さんに一目惚れ、って言う理由では納得しませんよね?」

マグカップを両手で覆うようにしたまま、こくりと頷く。やっぱり来て正解でしたね〜。いつものハイテンションの優希さんとは違った一面が間近で見られて新鮮です。
おっと、話がそれました。ついて来た理由ですか……。

「そうですね〜……優希さんの魂の波動的なのが相性よかったから、ですかね〜?」

「は?」

ぽかーんと口を開けてフリーズしてしまう優希さん。そんなに何かおかしな事言いましたか?

「何と言うか、オーラみたいな感じなものだと思ってください。で、それはどんな生物でも持ってる物なんですけど優希さんの特に強いんですよ〜。ちなみにですけど、波動の強い人は結構、決闘で強い傾向があるんです。」

「へー、なるほど。けど、それと相性ってどゆこと?」

「相性って言うのはですね。遊戯王風に例えるとですね、波動にも色んな属性があってですね〜。優希さんはそれが闇属性なので、闇属性のモンスターである私にとって心地好いんですよ♪」

優希さんの側にいる時の心まで満たされるあの感じを思い出し、思わず顔が綻びます。
優希さんは闇属性と聞いて顔を顰めるが割と納得したようでヘェ〜と頷いている。

「なんとなくわかった。けど、オーラって例えてたけど色とかあったりするの?」

「えぇ、もちのロンでありますよ。ちなみに優希さんは闇属性ってだけであって黒色です。けど、それも全くの不純物の無い黒……漆黒ですね〜。黒く煌めくソレを見てるだけで思わずウットリしてしまうほど美しいのですよ〜。」

「そ、そーなんだ……。もう一つ質問するけどさ、なんで波動の強い人がいいの?」

おっと、割と重要な所を突いてきますね。私の印象にも関わるんですが、まぁ、優希さんの今後の事もあるので話しておいて損はないでしょう。

「その波動は言わば、精霊の力の糧になるんです。だから、ソレが強い人を精霊は好んで集まるんです。そして、強く清らかな波動ほどより力が強まり、そして美味なんですよ〜。」

うふふ、優希さんの波動の味……思い出しただけで涎が出てしまいますね。

「けど、優希さんもラッキーでしたね〜。もし、憑いた精霊が私じゃなきゃ即パックンチョされてましたよ?まぁ、優希さんがそう望んでくれるんなら、私も一思いにやれるんですがね〜?どうですかね、試して見ます?」

「誰がするか!?てか、ダメでしょその表現は!!」

がたりと音を立てて、立ち上がる優希さん。
まったく公衆の面前なんですから、もうちょい落ち着いて欲しいですね。
ズズズっと紅茶を啜ると立ち上がったままの優希さんがチョップをくださいました。結構痛いです。

「あんたは落ち着き過ぎでしょ。」

「むぅ、仕方ないんですよ。さっき以外の表現が思い付かなかったですしー。それに本当ですよ?理性のない奴らなんかいきなり異空間かなんかに引きずりこんだり、急に闇のゲームを仕掛けてその存在ごと吸収したりして……。だから、優希さんも気をつけてくださいね?」

「え、あ、うん。わかった。……って、なんで私が説教されてる感じになってんの!?」

紅茶を飲んでスルーしようと思ったら空でした。まぁ、もう休憩も済んだのでそろそろ行きますかね。

「さて、優希さん。もう少しで暗くなってしまいますのでもう少し買い物楽しんだら、帰りましょうか。あ、ここは私の奢りでいいですよ?ついでに私のありがたみがわかったら、もうすこ〜し大胆なご褒美が貰えたらいいなと思います。」

伝票を持って逃げるようにレジの方へと向かう。優希さんが私の話を聞け〜‼︎と唸ってますがこういう時は逃げるが勝ちです。


◆◇◆

「もう〜、機嫌直してくださいよ〜。優希さ〜ん!」

さっきのが癪に触ったようで少し怒った様子で先を歩いて行く優希さん。こうも反応がないのはつまらないですが、少しばかり御機嫌斜めの優希さんもいいものですね。などと思いながら、優希さんのご機嫌取りを続けていると優希さんが通行人とぶつかったようできゃっと可愛いらしい声の後に少し遅れてガシャンと何かが割れる音。そして、ひどく汚く聞こえるわめき声。

なんなんですか、一体もう!!

「イテテ、なんなのよ。前見て歩いてよ。」

と、お尻を摩りながら立ち上がる優希さん。お怪我が無いようで何よりです。

「前見て歩けよ、はこっちの台詞だよ!おい、どーすんだよ、コレ!高かったんだよ!」

汚いノイズを響かせるのは割れたボトル瓶を見せつけてくるモヒカン男。そして、背後にいる取り巻き二人がそうだそうだと喚きたてる。
そして、男達の足元には透明な水たまりができている。

恐らくだが、優希さんとぶつかった拍子に男が持っていたワインボトルを落として、割れてしまったのでしょう。

そして、大抵こういう輩は……

「おいおい、姉ちゃん!人の物壊した時は弁償すんのが当たり前だろ?これ、マジで高かっんだぜ〜?」

「そうだぜ、姉ちゃん。これ一本何十万もするワインなんだぜ〜?」

と某ワイルド芸人のような小肥り二人が小物臭漂う台詞を言ってのける。

あぁ、今更、ボトルマンですか……。まったく古典的な事をやってくれますね〜。そんなの流行りませんから。

優希さんも同じ事を思っていたようで私と目が合うとため息を吐く。それを見たチンピラ三人組はバカにされたと勘違いしたようで優希さんに詰め寄る。

「あぁん?姉ちゃんよ、ぶつかったのはおめえだろう?だから、弁償しろよ?ま、それとも……」

逃がさないように男の手が優希さんの腕を掴む。

「っ!?離してよ!」

振り払おうとするが意外にも男の腕力は強く引き剥がせず、もがいている優希さんを見て、男共は勝ち誇ったかのように笑みを浮かべる。
周りを見回すと巻き込まれたくないのか通行人は居らず、居たとしてもやや離れた位置から、傍観しているくらいである。

「……金で払えないって言うなら別のもんで払ってくれてもいいんだぜ?例えば、体でとかよ〜。貧相な体だが、顔は結構好みだぜ?」

モヒカン男は自由な方の手で優希さんの顔を撫で回し、ゲヘヘと気色悪い声をあげる。そして、それに同調した取り巻きも笑い声をあげる。

さて、私は寝取り物は好みじゃないので……そろそろお助けしましょうかね?ここは遊戯王風に……

「おい、決闘(デュエル)しろよ。」

「えぇっ!?パクった!」

某蟹の台詞を言うと、掴まれたままなのに、ツッコミを入れてくる。案外、余裕そうですね。
チンピラ共は意外そうな表情をするも、自分たちの圧倒的有利を確信してか、リーダー格のモヒカン男は優希さんの拘束を取り巻きに任せ、

「へぇ、面白そうな事言ってくれるじゃねぇか?それで……?勝ったら友達を解放してください、とでも言うつもりか?」

安易に誘いにのって来てくれる。流石、決闘史上主義……。デュエルだけで事が運ぶので楽ですね。

「あ、一々何度も相手するのもめんどうなので纏めかかってきてもいいですよ?」

「結構デカくでるじゃねえか、嬢ちゃんよぉ。その言葉、後悔するなよ?」

優希さんを捉えている男とは別のもう一人の取り巻きと目配せをすると左腕へと決闘盤(デュエルディスク)を装着し、構える。

それでは、地獄行き、2名様参ります♪

「「「決闘(デュエル)」」」


◆◇◆

デスガイド:LP4000
モヒカン:LP4000
取り巻き:LP4000


「さて、私の実力を優希さんに知ってもらういい機会です。あまり早くくたばらないでくださいね?
私の先行!カードを二枚伏せて、手札から『カードカー・D』を召喚します。そして、『カードカーD』をリリースし、効果を発動します。二枚ドローし、このターンを終了します。」

どうしてこうなった……。
ニコリと笑顔を向けてくるデスガイドを見つつ、そう思う。

そーいえば、デスガイドってどんなデッキなんだろうか。バカそうな奴らとは言え、二人一度に相手するということは、アドバンテージは二倍……場合によってはそれ以上だ。だが、逆に考えれば、それすらを覆すほどの自信がある証拠ともなりうる。
ともかくだ、ここはデスガイドの自信を信じ、見守ろう。

「いくぜ、俺のターンだ!手札から通常魔法 『テラフォーミング』発動!デッキからフィールド魔法『炎王の孤島』を手札に加えて、そのまま発動するぜ!」

男の背後に現れたのは真っ赤に燃え盛る山がそびえ立つ一つの孤島。そして、その頂上には火の鳥もとい炎王神獣ガルドニクスが飛んでいる。

「炎王……ですか。バトルロワイヤルでは一層厄介なデッキですね〜」

破壊をトリガーにし、効果を発動する『炎王』。しかも、そのエースである『炎王神獣ガルドニクス』は効果で破壊されると次のターンに蘇ると共に場を焼け野原にしてくれる。通常の1vs1の決闘ならリカバリーが効くが1vs2では、まずデスガイドのターン中にガルドニクスを効果で破壊し、次の男のターンで復活し、焼野原に攻撃。続く取り巻きのターンで追撃、と対処するのも酷だ。

だが、デスガイドは厄介と言いながらもその表情は余裕そのもの。その余裕はどこから?

「俺は永続魔法『炎舞ー天璣』を発動するぜ!効果でデッキからレベル4以下の獣戦士族モンスターを手札に加えるぜ。俺は『炎王獣 バロン』を手札に加える!そして、ここでフィールド魔法『炎王の孤島』の効果発動だ!手札の『炎王神獣 ガルドニクス』を破壊し、デッキから『炎王獣 ヤクシャ』を手札に加える!」

「出た!兄貴のデストロイコンボだ!これで兄貴の勝ちはほぼ確定だぜ!」

ワーワーと煽てる取り巻き二人。いや、まだ決まらないし……。

「まーまー、まだデュエルは始まったばかりだ。じっくり楽しもうぜ。俺は手札に加えた『炎王獣 ヤクシャ』を召喚。バトルロワイヤルルールじゃ、各1ターン目は動けねぇしな。カードを一枚伏せ、ターンエンドだぜ。」

「おっと、何もしないなら……リバースカードオープン!」

エンドフェイズへと移行した時、デスガイドが動いた。

「永続トラップ『暗黒の瘴気』を発動します。墓地のガルド二クスを除外し、手札の『暗黒界の龍神 グラファ』を捨てます。」

黒い霧状のモノが墓地へと吸い込まれていく。

「んなっ!?俺のガルドニクスが!」

モヒカン男はせっかく蘇生条件を満たしたガルドニクスを除外され、悲痛の叫びをあげる。一方、私は取り巻き一人に拘束されつつも密かに男達に向かって手を合わせる。

暗黒界かよ……。ただでさえ、ガチ回りしたら手がつけられないのに、そこに精霊補正が……。ダメだ、これは決闘じゃなくて蹂躙になるぞ。南無。

そして、デスガイドは私に一瞬にニコリと笑みを向けると男たちへと向き直り、さらなるカードを発動させる。

「私は捨てられた『暗黒界の龍神 グラファ』の効果を発動!さらにもう一枚の伏せカード……永続トラップ『強制接収』も発動しますね。強制接収の効果は今の所ありません。そして、グラファの効果で伏せたカードを破壊します!」

黒い雷が落ち、男の伏せられていた通常罠『ジェネレーション・チェンジ』が破壊される。

あ、暗黒界に強制接収!?や、やばいよ!あいつ、早くしないと手がつけられなくなるよ!?

実質、毎ターン手札を捨てられる『暗黒の瘴気』と手札が捨てられる度に相手の手札を捨てさせる『強制接収』のそろい踏みに戦慄する。

もっとも男たちは1vs2という有利な状況にあぐらをかいて、慢心しているが。どうなっても知らないぞ……。

「俺のターン、ドロー!俺は手札から『神獣王 バルバロス』を妥協召喚!さらにカードを二枚伏せてターンエンドだ。」

『神獣王 バルバロス』地
☆8 ATK1900

バトルロワイヤルルールでは、一巡目は攻撃できない為、取り巻きのターンはやけにあっさりと終わりを迎える。デスガイドも暗黒の瘴気の効果を発動したいだろうが、相手の墓地にモンスターが居ない為、発動できない。

「私のターン、ドロー!おっと、いいカードを引きましたね。マジックカード『手札抹殺』を発動します。全員、手札を捨て、捨てた枚数分ドローします。」

三人とも捨てた手札は三枚。よって三枚デッキからドローする。だが、デスガイドの手札が捨てられた事で……。

「永続トラップ『強制接収』の効果発動!私の手札が捨てられた時、捨てた枚数分、手札を捨ててくださいな♪」

「「んなっ!?手札が!」」

ニッコリと笑ってそう言うが、やっていることはかなりえげつない。まさかの開始二巡目でハンデスコンボがきまり、男二人の手札は全て墓地へと送られる。そして、暗黒界の効果が発動される。

「さて、手札から捨てられた『暗黒界の狩人 ブラウ』、『暗黒界の術師 スノウ』、『暗黒界の尖兵 ベージ』の効果が発動されます。
逆順処理でまずは墓地のベージを特殊召喚。そして、スノウの効果でデッキから暗黒界と名のつくカードを手札に加えます。私は二枚目の『暗黒界の龍神 グラファ』を手札に加えます。そして、最後にブラウの効果で一枚ドローします。」

「んなっ!墓地から効果だと!」

カードが二枚加わり、手札は一気に5枚に。早速好きにやってくれという感じだ。

唯一の防御手段が残ってるのは、取り巻きの伏せ二枚とバルバロスだけ……。これはリーダーの方、死んだか。

「さぁて、本番はここからですよ。フィールド魔法発動『暗黒界の門』!」

デスガイドの背後に禍々しい彫刻の施された巨大な門が出現し、少しだけ開かれた門の隙間からは黒い瘴気が漏れ出ている。

そ、ソリッドビジョンがある分余計に怖い!?なんだろ、近くにいるだけでSAN値が……。

SAN値直葬にならないように気をしっかり保つと早速デュエルからただの蹂躙劇へと移ろうとしている三人の闘いに目を向けるとデスガイドが添乗員らしく、暗黒界の門の解説をしていた。


「えー、私の後方に見えますのは、『暗黒界の門』でございます。最近、暗黒界の方々は麻雀にはまっているらしく、運が良い方はグラファさんやハ・デスさんの対局を見られるやもしれません。よければ足を運んでみてはいかがでしょうか?ただ不用意に近づけば、ベージさんに強引に彼方の世界にご招待してもらえますのでご注意を。」

「待て待て!?なんかおかしいって!暗黒界で麻雀ってなんなのさ!?」

デスガイドのぶっ飛んだ解説に思わずツッコンでしまった。
考えてみて欲しい。あのいかにも悪魔族です。と言う奴らが卓を囲んで麻雀とかシュール過ぎる。てか、グラファとか麻雀牌を持てるのか?

「ちっ、舐めやがって。何が暗黒界だ!そんなもの俺の炎王で焼け野原にしてやるぜ!」

と、煌々と燃える大地の中心でモヒカンが叫ぶ。

「舐めてる?まさしくその通りですよ。獅子は獲物を狩る時は全力を尽くすと言いますが……。それはタダの強者のする事。本当の強者という者はあなたたちみたいなどうしようもないほどの雑魚などを相手にするのは闘うなんてものには当てはまりませんよ。ただの前戯や暇つぶしです。そんなものに本気を出すなど馬鹿馬鹿しい。」

デスガイドは男の言葉を鼻で笑い飛ばすと今度は私の方へと向き、終わったらご褒美くださいね?とサディスティックな笑みを浮かべる。

……ご、ご褒美って何ですかね?ものすごく不安なんですが

先の事を考え、恐々としているとデュエルが再開される。

「『暗黒界の門』の効果を発動します。墓地のブラウを除外し、手札のグラファを捨て、一枚ドローします。そして、捨てられたグラファの効果を発動します。あなたの伏せカードを破壊します。」

「さ、させるか!チェーンして速攻魔法『禁じられた聖杯」を発動!バルバロスを選択し、効果を無効にする代わりに攻撃力を400ポイントアップさせる!どうだ!この攻撃力なら倒せねえだろ!」

これでバルバロスの攻撃力は元の数値へと戻り、さらに攻撃力が400ポイントアップする。一時的だが、これで暗黒界の門の効果を受けたグラファよりも攻撃力が上となる。

男はただの虚勢かデスガイドに挑発的な言葉を吐く。だが、デスガイドは終始笑顔を崩さず、男二人を見据え、

「攻撃力至上主義は絶滅したと思ってたんですけどね。まだ居ましたか。いっその事、今日ここで消しておきましょうかね?」

などと呟いている。

「『暗黒界の雷』を発動します。あなたのもう一枚の伏せカードを破壊し、その後、三枚目のグラファを捨てます。そして、効果で捨てられグラファの効果でバルバロスを破壊します。」

伏せられていた『スキルドレイン』が雷に貫かれ、バルバロスがグラファに容易く引き裂かれた光景を見た取り巻きは小さく悲鳴をあげる。

「ふふ、まだこんなものでは終わりませんよ?私はフィールド上のグラファ以外の暗黒界を手札に戻す事によって、墓地のグラファを特殊召喚します。私はベージを手札へと戻し、グラファを特殊召喚!
殺し、奪い、壊し尽くせ!不死身の龍神よ!我が僕となりて、世を恐怖と混沌へとたらしめよ!降臨せよ!『暗黒界の龍神 グラファ』!!」

空が曇り、雷鳴が轟き、暗黒界の門が完全に開かれる。そして、黒い龍神が身の毛もよだつ咆哮を轟かせ、姿を見せる。通常のテーブルデュエルでは決して体感することの威圧感が場を支配する。そして、まだ終わらないのがデスガイドクオリティー。

「私は手札から『魔界発現世行きデスガイド』を通常召喚します。このカードの召喚した時、手札・デッキからレベル3の悪魔族モンスターを特殊召喚できます。ただし、効果は無効にされ、シンクロ素材にもできませんがね。」

バスがデスガイドのすぐ隣に停車し、そこから添乗員コスのデスガイドが降りて来るとにっこりと笑顔を振りまく。

「暗黒界の門前、到着です。ご乗車ありがとうございました〜。私は『暗黒界の狩人 ブラウ』を特殊召喚!」

デスガイドに続いて、狩猟弓を肩にかけた悪魔、ブラウが降りて来る。ちなみにだが、バスの中には他に儀式魔人御一行が乗っていた。

そして、デスガイドの足元に赤い渦が出現し、デスガイドとブラウが黒く光る光球となると、そこに呑み込まれる。

「レベル3のデスガイドとブラウでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!次元の彼方より姿を現せ!『虚空海竜リヴァイエール』!」

『虚空海竜リヴァイエール』
★3 ATK1800

宙に裂け目が開き、蒼い鱗をした海竜が躍り出る。

「んなっ!?え、エクシーズ召喚だと!」

「こんな娘、まさかLDSのエリート生なのか!?」

「そんな驚く事ですかね〜?ただのランク3モンスターですよ?」

デスガイドは男たちのオーバーリアクションに呆れた表情をする。
まぁ、エクシーズは塾の極一部しか教えられないらしいからね……。こう考えると志島北斗が40連勝できたのも納得いく。まぁ、遊矢に負けたらしいが。

「まぁ、気を取り直してリヴァイエールの効果を発動します。オーバーレイ・ユニット一つを使用し、互いの除外されているレベル4以下のモンスター一体を特殊召喚します。私はブラウを特殊召喚!」

リヴァイエールが一鳴き、咆哮をあげると次元の裂け目が開き、そこからブラウが輩出される。

「さらに墓地のグラファの効果発動!ブラウを手札へ戻し、特殊召喚!出でよ、不死身の龍神!優希さんに仇なす不届き者を八つ裂きに!!」

猛々しい咆哮をあげ、二体目の龍神が場に揃う。

「『暗黒の瘴気』の効果発動して、墓地のバルバロスを除外して、手札のベージを捨てます。そして、墓地のベージの効果発動します。自身を攻撃表示で特殊召喚!さらに三体目のグラファの効果発動!ベージを手札に戻し、グラファを特殊召喚!!」

晴れていた空は曇天に覆われ、そしてデスガイドの前には三体の龍神が男たちを見下ろす。さっそく地獄絵図と化している。いつの間にか、私を拘束していた取り巻きは手を離し、地面にへたり込んでいた。腰を抜かしたいのはこっちだよ。デスガイドの笑みが怖すぎる……。

デスガイドは笑みをさらに深くすると目つきが鋭くなる。

「さぁ……懺悔の準備はできていますか?」

と、某ナンバーズハンターの台詞をモロパクリだが、その恐ろしさはオリジナルの比ではない。グラファ三体を前にしたら、銀河眼なんて霞んでみえる。

「悔い改めよ!リヴァイエールとグラファ三体でダイレクトアタック!」

「っ!?ギャアァァァァァァ!!??」

デスガイドが命令を下した瞬間、目を瞑る。そして、直後に男たちの断末魔が響く。

眼開けたら、絶対SUN値が吹っ飛ぶ……。絶対見ない。と念仏のように唱えながら、目を瞑っており、静かになったので眼を開ければ、地面に伸びている男二人となぜか恍惚とした表情のデスガイド。そして、もう一人の取り巻きも気絶している始末。見なくてよかったと心底思う。

「コラ!お前たち、そこで何をしている!」

デュエルが終わり、本当に今更だが、警察らしき人たちが駆けつけて来る。
てか、この状況不味いんじゃ。

「で、デスガイド!行くよ!」

考えるよりも先に体が動き、未だ呆然としているデスガイドの手を掴み、走り出していた。


◆◇◆

反射的に逃げてしまった為、余計に追いかけられる事になったがなんとかして振り切ることができた。

「はぁはぁ……ひどい目にあった……。」

「そうですか?私は結構楽しかったですよ?」

どこがだよ……と言いつつ、呼吸を整える。

「そうですね。優希さんと一緒にウィンドウショッピングなんてできたし、お茶もできたじゃないですか。」

笑顔を咲かせ、そう言うが正直、私はチンピラに絡まれるわ、追っかけられるわで大変だった。せめてもう少しノーマルな休日を過ごしたかった。

「少しは刺激がないとつまらないですよ。それに優希さんに手を握ってもらえたし、一緒に逃げてる時なんか駆け落ちしてる恋人みたいで思わずウットリしてしまいましたよ〜♪」

「ブレないね、あんたは……。」

再びうっとりとしているデスガイドを見て、ため息を吐く。

まぁ、後半はともかく、始めの方は楽しかったな。

「まぁ……また機会があったら、一緒に行こっか。」

「っ!本当ですか!」

「わわっ!?抱きついてこないでよ!」

なぜかやけにハイテンションなデスガイドをあしらいつつ、家へと帰る。

たまにはこんな休日もいいかもしれない。


 
 

 
後書き
優希:❤︎1/4

デスガイド「ふふ、これが4つ溜まった暁には……。きっと優希さんが私の事を……。ふふふっ」

優希「絶対ないから!?」



ようやく、デスガイド回でした。ちゃんとデスガイド活躍しました……よね?(威圧感)

 
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