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パットン

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1部分:第一章


第一章

                    パットン
 この戦争がはじまるとはまずは誰も思っていなかった。
 当事者の側の一方であるソ連の独裁者スターリンですら最初はそんなつもりは一切なかった。
 ところがだった。その彼に熱心に説いたのが金聖柱であった。
 俗に金日成と呼ばれているがこれは偽名であるというのが今ではかなり濃厚な説になっている。抗日パルチザンの英雄であり不屈の名将であったという触れ込みであった。
 ところがだ。あまりにもおかしかったのだ。どうおかしいかというとこうした証言が残っている。
「金日成はこれで何人目だ?」
 日本軍のある人物の言葉だという。その金日成と戦ったとされている日本軍は既に二人の金日成を捕らえてテロリストとして処刑していた。なお当時韓半島を日本として統治していた日本側からすれば金日成はただのテロリストである。
 まず何人も金日成と名乗る人物がいた。しかも彼はかなり古くからいた。ところがこの金日成はやけに若い。第二次世界大戦が終わり朝鮮半島にやって来たこの男を見て皆首を傾げたという。
「若くないか?」
「ああ。何で若いんだ?」
 首を捻って言い合った。
「もっと歳がいっている筈なのに」
「妙だな」
 しかも彼の弟がその金日成となっている彼を見て驚いた顔でこう言ったという。
「兄貴、何でそこにいるんだ?」
 と。つまり彼は伝説の将軍金日成になりすましていたのである。
 この金聖柱なる男が中華人民共和国の成立を受けて一気に活気付いた。またこの時アメリカが防共ラインを日本からフィリピンのラインまで引き下げたのも彼を刺激した。
「半島を己のものにできる」
 この男は野心家であった。山師にはよくある話だが野心はかなり大きかった。この韓半島を己のものにしようと企てたのだ。
 こうしてスターリンに熱心に説いたのだった。今なら朝鮮半島を赤化できると。スターリンも最初は乗り気でなかったがそれでも彼の言葉に頷くことにしたのだった。
「できるのだな」
「できます」
 彼は断言した。
「そして半島は我等のものです」
「そこまで言うのならやってみるといい」
 スターリンはとりあえず彼にゴーサインを出した。
「援助を約束しよう」
「有り難き御言葉。それでは」
 もっともこの時スターリンはこの男がヘマをすればそれで切り捨てるつもりであった。金聖柱は元々はソ連軍にいたことが確認されている。そこで中尉として戦いスターリングラードの戦いにも参加しているという。白頭山で抗日パルチザンをしているという話もこれでその信憑性に疑問が生じる結果となっている。なお息子の金正日もこの山では産まれていない。ソ連で産まれていることははっきりと確認されている。
 何はともあれこの男の言葉で朝鮮戦争がはじまった。まずはソ連の援助を受けた北朝鮮軍の快進撃により戦争ははじまったのだった。
「三日でか!?」
「はい、三日です」
 日本に司令部が置かれていたGHQではこの言葉が出ていた。
 何と大韓民国の首都ソウルは開戦から僅か三日で陥落したのだ。開戦が六月二十五日であり陥落が六月二十八日である。これには誰もが驚いた。
「しかも撤退の際橋を爆破しまして」
「橋にいた多くの市民が巻き添えになったのだな」
「その通りです」
 こんな逸話までついていた。
 
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