| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

没ストーリー倉庫

作者:海戦型
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

【IS】千万回負けても、諦めない。

 
前書き
※この話における「打鉄ちゃん」とは、大成が初めて出会い乗ったISフレームとそのコアを指す固有名詞です。流石の彼も打鉄全てを愛しているという訳ではありません。本気で愛するのは自分の子だけです。 

 
 
奇跡的な大逆転勝利の後、方法はどうあれ国家代表に勝ったという事で皆から苦笑しつつも褒められた。まぁあの手は二度と使えないだろう。俺としては今回の一勝さえもぎとれればそれでよかったし、次は勝てないから期待すんなと一応周囲にも言っておいた。

「確かにあれじゃ次は無理だろうけど……それでも、国家代表に一回でも勝つって凄い事だよ大成君!!」

ありがとうモブ子Aちゃん。君は入学当初から全面的に俺の味方してくれるよね。

「へん。まぐれ勝利で精々浮かれてなさい。もう二度と勝利の栄光なんて来ないんだからね!」

相変わらずツンツンだねモブ子Bちゃん。君は入学当初から一貫して俺を貶してくるよね。

「……この性悪女の事は気にしなくていいよ!!」
「黙りなさいいい子ぶりっこ女!!」
「なにさ!!」
「なによう!!」

このモブ子Aとモブ子Bはいつもこの調子だ。仲がいいのか悪いのか。
A子はいつもこちらをベタ褒めしてきて、B子は大抵こちらを貶してくる。なんなんだろうか、仲良しだろうか。聞いた話では二人は幼馴染で、いつだって好みが対立しているらしい。B子は織斑派らしいので、つまり俺と織斑ってそんなにかけ離れてんの?


さて、その後は言うまでもなくIS整備室へGOだ。
自己修復プログラムを走らせる打鉄ついでに装甲を装着し直しながら、俺は打鉄ちゃんを優しく撫た。別段返事が返ってくる訳でも修復が効率化する訳でもないが、労ってやりたかったのだ。
一緒に戦ってくれてありがとうと。こうして触れ合ってると、自然と顔がゆるんでくる。
打鉄っちゃんって肌スベスベだね、とか言おうとしたところで背後から声がかかった。

「本当に打鉄好きなのね、貴方」
「あ、ミレディ先輩」
「変な仇名つけられてる!?楯無よ楯無!生徒会長もしくはたっちゃん先輩と御呼びなさい!!」
「じゃ、かっちゃんでいいですか?」
「違う!そういうノリじゃなくて楯無のたっちゃんなの!双子の野球兄弟じゃないしアッコさんの子分でもないの!」
「南先輩、なんか用?」
「誰が朝倉南よ!更識楯無と何一つ被ってないわよ!どうしてかなーその名前で呼ばれるとイライラするッ!!」

またつまらぬやり取りをしてしまった。というか最近の子に通じるのかコレ。アニソン特集とかアニメ名場面特集で見た事くらいはあるかもしれないけど。俺ああいうのメジャーどころしか取り上げてなくて嫌い。ってそんなことは良くてですね。

「結局何の用なの、たっちゃん?」
「今後の事でちょっとね。ホラ貴方、一応私に勝ったでしょう?」
「勝ちましたね。計算通りに」
「……まぁいいんだけど。私を倒したことで貴方に対する周囲の期待が爆上げなのよ。もう天にも昇る勢いよ」
「ほうほう、実力の伴ってない身としては非常にありがたくないですね」
「そーよ。私にとってもよくないのよ」
「……といいますと?」

楯無さんことたっちゃんは盛大な溜息を洩らし、キッとこちらを睨んだ。ヤダちょっと怖い。

「つまり!私に勝った貴方が実はチンチクリンでしたなんてことが外部に知れ渡ったらロシア代表としての私の名誉が崖の下にまっさかさまなの!しかも上がった評価の反動で貴方も落ちるわ!そりゃもう重力加速度のせいで余分に落ちるわ!もうそうなれば貴方の発言権は消滅すると言ってもいいの!!」
「え、そりゃマズい!打鉄ちゃん取り上げられちゃうじゃん!?」

あ、やっぱりそんな認識なのねという呆れた目で見られた。結局のところ言いたいのは、これからも私と訓練(じごく)に付き合ってもらうと言う事らしい。こうなれば国家代表が完全付きっきりでISのいろはを教え込んで、来月までに代表候補生レベルまで押し上げるんだそうだ。
………それってつまり今まで並の頑張りを継続させられるのでは?

「休憩あります?」
「私が貴方の部屋に住みこんで健康管理してアゲル!」
「( ゚ω゚ )お断りします。自分の部屋に他人がいると気が散るので」
「拒否権ないわよ!!」
「えー汚い。生徒会長汚い。俺に負けた癖に俺に命令ですかぁー?」

とりあえずゴネてみる。世の中の半分くらいの悩み事はゴネれば突破口が見えてくる。
だが後になって思えばこのゴネはちょっとマズかった。

「じゃあ代わりに部屋の中でだけ『貴方のたっちゃん』になってアゲル。私に勝ったご褒美として遠慮なく受け取って、ね?」
「なん……だと……?」

いや、あんまり興味ないけどノリでノッてしまったのだ。ノリって怖いよね。
結局これ以上ごねても無理そうなので諦めた。



その後、大成は約束通り簪にフィギュアを受け取りに行くついでに黒ロボの格好よさについて一晩語り合い、結局は代価として自分の秘蔵フィギュアも彼女に渡すという盛大な交換会になった。
しかし試合の結果は大いに不満だったようで、「こ、今回はたまたま上手くいったけど……お、お姉ちゃんの実力は、あんなものじゃないんだから……!」と言い残して帰っていった

「やっぱりあの子シスコンなんだな」

オタク戦士とIS戦士の自分がきっかり分裂しているらしい。友達としては認めるけどという奴か。



 = =
 


それは更識会長もといたっちゃんを見事に打ち破った翌々日くらいの事。
結局専用機の開発が決定して落胆が隠せない俺の下に唐突なる知らせが飛び込んできた。

「浅田君、入院です」
「え?」

教室に行くなり、俺は山田先生率いる教師集団によってされるがままにIS学園附属病院に連行されました。
や、やめろ!離せ、死にたくない!俺は感染なんてしてないんだ!殺処分は嫌だぁぁぁーーー!!などと取り敢えず思いついたセリフを吐きながら病院に担ぎ込まれた俺は、愛しの打鉄ちゃんを取り上げられて頭を中心に精密検査をさせられた。
何所が悪いの?頭?頭が悪いといいたいのか?なかなかにユーモアのあるジョークだが笑えない。

「まぁある意味頭の悪い事をしてたよ、君はね」
「マジっすか。この打鉄ちゃん大好き大成くんが何したんすか?」
「打鉄馬鹿だからねぇ君。馬鹿の行動力は常識では測れないよねぇ……」

主治医の先生の話をかいつまんで話すとこうだ。

俺は会長に勝つためにISの根幹処理プログラムを解き、その中に前の試合で使用したような自作プログラムを上手いこと噛みあわせた。処理をコアに依存させることでよそのプログラムを邪魔しないように上手くできた訳だ。
ところがどっこい、この根幹処理プログラムとは要するにマンマシーン・インターフェイス――脳と直結したイメージ同期な訳で、そこにプログラムを組み込んで一定の行動をとらせるというのは「操縦者の脳にISの情報を一方的にDLさせる」のと同じことらしい。つまりあの戦闘中、俺は脳に直接プログラムの結果を一方的に送り付けられるという海馬の活動範囲を超えたことが起こっていたそうだ。

「機会が拾うはずのデータを人間の脳味噌に直接送ってたわけだから、下手すりゃ君ってば廃人になってたところだよ?」
「はぁ。でもなってないんでしょ?」
「ある意味別の意味で既に廃人だけどね……打鉄廃人という名の」

データ上では俺の脳には影響なし、打鉄ちゃんにも影響なしだそうだ。
というか、さり気にブラックボックスであるISコアを中心としたプログラムにメスを入れるという前代未聞の真似だったらしい。打鉄ちゃんのプログラムを見た研究者が「下手したらコアそのものが駄目になっていたかもしれないんですよ!?」と超怒られた。

「君さ、これもう打鉄のインターフェイスの面影残してないくらいに改変されてるんだけど。IS統合管制システムにプログラム上書きするなんて聞いたことないわよ……下手したらバグで機能不全になるでしょ!一体いくつ記述を追加したの!?」
「えー大丈夫ですよ。計算を全部コアの処理システムに回しておいたから余計なちょっかいは起きない筈です」
「そう、わかったわ。貴方実はパイロットじゃなくて工学畑の人間だったのね……オーケーオーケー……オーケーな訳あるかぁぁぁぁいッ!!」

ぶっちゃけ、そんなことにはならないと思うのだが。プログラムをいろいろ調べてみたが、ISの根幹システムはどこかがエラーを起こしても別のプログラムがその補機の役割を果たし、エラーを起こしたプログラムも別の部分に組み込まれて穴を補うという複雑怪奇な相互保存機能を持っていた。
あれを作った奴は本物の天才だ。そう断言してやると、研究者は泡を吹いて倒れてしまった。

まぁ調べた結果「BABEL」とかいう赤文字ウィルスでも出てきたらどうしようかと躊躇いはしたが。

「ほう、ISコアのブラックボックス内はそのようなプログラム構造だったのか」
「あ、織斑先生」

後ろから先生登場。ババァーン!とか言ったら特に意味もなくぶん殴られそうだ。

「今までISを解体分析しようとする輩は数多いたが、誰もそれを実現できなかった。何故ならそのプログラムはマッチ棒で組み立てた模型のように緻密で、かつ触れればすべてが崩れ去るようなデリケートな構造になっていたからだ」
「まぁ確かに一見すると詰んだジェンガでしたけど……それだとプログラムとして脆すぎます。篠ノ之博士がそんなお粗末な物を完成品として人に見せますかね?俺なら誰も用途が分からないような機能や、一見して意味がないようなプログラムで補強します」
「ふ……奴のお仲間か。まぁいい」

俺は正直、プログラムを読んだというよりそれを組んだ篠ノ之束という人物像を読み取って、大丈夫だろうと踏んだのだったりする。というかそれ位みんなもやっている物と思っていたが……

「ほら、お前の打鉄だ。専用機までの付き合いになるが、コアは引き継がれる。服が変わるようなものだと思っておけ」
「………俺の打鉄ちゃんは現状で戦えますぅー。新型を態々作って寄越されても、こっちにゃこっちの積み上げたノウハウって物があるんだから困りますぅー」
「何がノウハウだ操縦期間一か月以下の癖に。パイロットは現場においては臨機応変。ISも然りだ」
「だから臨機応変に打鉄ちゃんの調整してるんじゃないですか!今ある力を最大限に活かして状況に向かう事はむしろ基本でしょう!」
「……といいながら打鉄の待機形態を我が子のように抱くのはやめろ。見ていて笑えるから」

そんなこんなで俺は学園に復帰した。

なお、帰ってきた頃には中国転入生やらトーナメント襲撃やらで騒ぎが一通り起きた後だった。実は検査入院に10日以上をかけてしまってたのだ。その間も俺の所に来て勉強やら訓練やらに付き合ってくれたたっちゃんの助力なしには復帰は難しかっただろう。

専用機持ち増えてるじゃん。セシリア対策は検査入院中にいくらか考えたけど、中国のアレはイマイチ付け入る隙が分からないな。よし、模擬戦してデータ収集するか。


ちなみにどこぞの自称十全の天才さんはというと、人生で初めて見つけた彼女の「理解者」に、興味深げな笑みを浮かべていたとか。



 = =



トライアンドエラー。人生の基本にして俺の基本だ。
試しては敗北し、敗北しては試す。その反復練習こそが勝利に必要な物であり、生きていくうえで大事なことだと俺は思っている。だからこそ、特に何の対策もなく挑んで勝ってしまうと拍子抜けする。

「織斑………お前もうちょっと本気出して戦えよ!対策立てないまま普通に勝っちまったじゃねえか!」
「ぜはー、ぜはー……お、お、お前その言いぐさはないんじゃないか!?俺がブレードオンリーなのを知ってて嫌らしく距離取りながらマシンガンで袋叩きにしたのはお前だろ!」
「だって普通もうちょっと色々戦い方を考えてると思うだろ!!」
「俺と白式にはこの戦い方しか出来ないんだよぉぉぉーーーッ!!」

この織斑、結構本気で戦ってたらしい。この常敗無勝とも言える戦いをする俺より弱いとは、予想外だ。ど、どんまい!明日はきっといいことあるさ!
見物客たちはざわ・・・ざわ・・・してるけど、俺は元々たっちゃんに一度とはいえ勝ったので「本当に強いんだ……」とか「美男美女に厳しい」とか「ひっこめ打鉄馬鹿ぁー!」とか言いたい放題聞こえてくる。何とでも言うがいい。勝った奴が勝者だ!

「セシリア。お前はこの戦いをどう見る?」
「どうと言われてましても……一夏さんの警戒すべきところを抑えて極めて堅実に戦った結果、リーチの差で完封できた。……としか」
「よねぇ。アクビが出るくらい模範的で、呆れるほど有効な戦術よ。特にあの左右に不規則にぶれる機動が完全に一夏を翻弄してたわ」

かしまし三人娘(一夏の指導官でもある)がはぁ~、とため息をつく。
たっちゃんの指導でその辺の1年くらいには勝てる段階まで腕を上げたつもりだったが、こんな消化不良では腕の自信もクソもない。勝てる相手に勝っただけだ。そもそも力量に大差がなく、しかも剣しか持ってないと分かっているISにどうやって負けろというのだろうかと言うのが俺の感想である。

「えっと、織斑……お前のISって本当に武器それだけなのか?」
「ああ。一撃必殺にしてEN食い虫の『零落白夜』を搭載したこの雪片一刀しかない」
「つまり対策はパイロットの腕次第、勝てるかもパイロットの腕次第か。言っちゃ悪いが素人に渡すものとしては糞ISだな」
「言うな!内心でそう思ったけどお前が口に出すな!!」

薄々感付いていたらしい織斑が血涙を流している。
スペックは打鉄ちゃんを凌駕しているようだが、装備品が一個で固定というのが痛すぎる。つまり何が来ても装備に頼らず自分の腕だけで勝負しなければいけないのだ。試合開始と同時にひたすら敵に突っ込んで何が何でも一発叩き込む以外に戦い方がないとは、これを作った倉持技研は恐るべき変態である。

「とりゃーずお前がやるべきは敵の攻撃を掻い潜る訓練だな。あと、ISの脚による踏み出しを活かしてもっと地上での移動を学んだ方がいいと思うぞ。攻撃より機動と回避を最優先だ」
「おお!ものすごく真っ当なアドバイス!」
「あとその一撃剣の使い時。加速を活かすなら斬るより突くほうが有効かもしれないし、敢えて発動させないまま素の剣を叩きこんでバランスを崩し、続く二太刀目で一撃とか?」
「か、神が舞い降りた……!セシリアは言うことが難しくてわかんないし、鈴は説明しないし、箒は根性論というの地獄に降り立った一筋の光明だ!素晴しきかな男友達!男友達バンザァァーーイ!!」
「え、なにこいつキモッ……」

なお、その後一夏はかしまし三人娘に袋叩きにされていた。
一応ながらレーザーや衝撃砲だけでなく実弾にも慣れさせるべしと伝えておく。



 = =


あれから40年!というのは嘘で、暫くして俺は未だにたっちゃんに操縦を教わりつつ色んなISの対策をたて続ける日々を送っていた。だが、この日とうとう専用機が送られてきた。
送られてきてしまったのだ。矢張りと言うか約束は反故にされてて俺の心はブレインショック中だ。

『コア摘出。新型に移植を開始します』
「あああ~……俺の打鉄ちゃんがどこの馬の骨とも知れないISフレームに変わっていくぅ~……」
「はいはい開発した張本人たちの目の前でそういうこと言わないのっ」

泣いて止めたいところだが、たっちゃんが暴れないように俺に絡みついて動きを封じているので出来るのは泣くだけである。嗚呼、毒蛇に絡め取られるー。

「……年上のオネーサンと体が触れあってる事に関してはノーコメントな訳?」
「そんなことより打鉄ちゃんがぁぁ~~!」
「そ、そんなことって……!?このたっちゃんが鉄の塊に色気負けだとぉぉぉ~~~!?」

普段はこんな風にくっつかれると恥ずかしがる大成だが、彼の相棒打鉄ちゃんに対する愛着はケルマデック海溝より深いらしい。女として敗北した……と楯無はがっくり項垂れた。

そしていざ試乗。

「性能いかが?」
「いかがって……使いにくい。体が妙に軽いせいでステップ踏みにくいし、スラスタが過敏すぎて機体がぶれすぎる。着地時にオートで衝撃を吸収するバネの具合が気持ち悪いし、何より前の打鉄ちゃんに比べて装甲デザインがなんか刺々しくて嫌い」

仮にも日本の最新鋭第三世代ISにここまでボロクソ言う男は彼くらいの物だろう。打鉄と操作の勝手が違うから慣れていないだけともいえるが、今まで彼が極めてきたのは図らずとも『打鉄の極意』なのだ。ぶっちゃけ合うはずもなかった。そして初期化と最適処理化を済ませたその新型ISが眩い光に包まれる。

「アクセルシンクロォォォーーーッ!!」
「メガシンカァァァァーーーーッ!!」
「ワープぅ!進化ぁぁぁーーーーッ!!」

ワープ進化をチョイスした研究者が他二名に「は?何それ?」みたいな目で見られている。どうやらチーム内でのジェネレーションギャップが顕在化しているらしい。それはそれとして、最適処理化が終わって光が収まっていく。

「んん?」
「あれ?」
「これは……!?」

改めて晒したその姿は――なんか見覚えのある形。
鎧武者を思わせる非固定浮遊部位に動物の耳を連想させるECCMセンサ。
和のテイストを保ちつつも、地に足の着いた安定性と可動域の広さで接近戦で真価を発揮する名器。
その名も――!

「打鉄?」
「打鉄、だな」
「打鉄……ですね」

どこからどうみても第二世代IS「打鉄」そのものである。
細部に変化はあれど、一目でわかるほどに打鉄だった。一同呆然である。
しばしの無言の末、研究者の一人がぼそりと呟く。

「つまり、彼にとって最適なISの形状は打鉄で間違いないと」
「結局打鉄になるのかよぉぉぉぉ!?俺達……俺達政府の依頼で新型作れるって聞いてものすごーく期待したんだけど!俺らのデザインしたISが空飛ぶ姿とか想像してウキウキしたりしてたんだけど!!聞いてよ、ねえ聞いてよ!!ブレードウィングの配色とか角度とかめちゃめちゃ拘ったんだって、なあ!
!!」
「俺達の……俺達の努力と徹夜に捧げた時間は何だったんだ……」
「我々がわざわざ新型機を開発した意味は!?三日にわたり話し合って決定した名前の意味は!?」
「あーあ、名前発表のタイミングを今か今かと図ってた主任が……」

研究チームの皆さんの絶望と脱力具合が凄い。春の木漏れ日も「うわっ、陰気くさっ」とか言われそうなほどの落ち込みに頭の端っこでカビやキノコが生えちゃっている。リセッシュしなきゃ(使命感)。

「これでは回帰移行(リカレンスシフト)だな。一応組み込んだ第三世代兵装は生きているようだが……」

結局打鉄ちゃんのコアは形状変化で前のISの姿に戻ったため、色々と諦めた研究チームだった。

「たっちゃん!打鉄ちゃんが帰って来たよ!帰ってきたんだよぉ!!」
「うわぁ。これはひどい」

泣いて喜ぶ大成を見ながら、たっちゃんこと楯無は深い深いため息をついた。
  
 

 
後書き
百の失敗を重ね、千の苦節を味わい、万の挫折を甘んじる。されど、まだ終われない。敗北の先にあるたった一度の勝利を味わうまでは。
必要なのはデータと努力と、あとは対策。戦術と計算といくらかのハッタリを織り交ぜて、打鉄ニストの彼は無謀な戦いを続ける。人は彼を「不屈の男」と呼ぶ――まぁ、別名「ズレた男」でもあるが。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧