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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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StrikerS編
  88話:久しぶりのガチ喧嘩

 
前書き
 
 物凄く遅れてしまって申し訳ありませぇぇぇぇん!!(前方伸身宙返り三回転ひねり後土下座)

 一か月もかかってしましましたが、ようやく最新話更新です。
 後書きには前回募集したアンケートの結果発表があるので、見逃さないでね!
  

 
 





「―――どういう事か、説明してくれへんか?」
「どう、と申されましても…」


 どうも、皆のアイドル士君だよ(おいおい)。
 現在朝の十時過ぎ。俺は今、六課の隊舎の一室―――部隊長室にて、はやての前で正座されている。


「ただ網を張っていたら、偶々ヒットして退治したってだけだよ」
「その網をなんで張っていられたんや? 正直に話してみ」


 そう、昨日のホテル・アグスタの任務の際、ホテルの駐車場で爬虫類のような奴と交戦した。が、俺は面倒だった為その事をその日の報告書に書かなかったのだ。
 だってガジェット相手に変身したのを書くので、かなり時間がかかって面倒になったんだよ! さらに状況を書くのは面倒くさかったんだよ!

 しかしまぁ、結局は今日になってその事がはやてにバレてしまい、この有様だ。


「偶々だって言ってるだろ? ガジェットが本当に骨董品か何かを狙っていたなら、多方面から狙った方がいい筈なのに、一方向からしか来なかった。それに疑問を覚えてな、サーチャーを撒いておいたんだ」
「うん…それなら一理ありやな。でも、それじゃあ駐車場だけにサーチャーを設置した理由が繋がらない」
「むっ……」


 しまった、ツッコまれた。


「正直に白状しぃや。なんでわかったんや? んや…なんで〝わかってた〟んや?」
「……あ~ぁ、そこまでわかってんの?」


 もうダメだな。ここまで感づいてるのなら、話した方が早いな。


「―――情報屋だよ」
「情報屋…?」
「そう。ホテル・アグスタの依頼が来た時、少し気がかりがあってな」


 ホテル・アグスタについては、『特策隊』にいた時に一度耳にしたことがあった。よくない方の、噂だ。
 表向きにはロストロギアのオークションをしているが、その裏ではロストロギアの闇取引きを行われているらしい。

 そのことが頭にあった為か、仕事の依頼が来たときにその点が引っかかったのだ。


「だから、出る前に情報屋に依頼してな。昨日闇取引きがあるかどうか、をな。そしたら案の定、ヒットした訳だ」
「ほぇ~、いつの間にそんなこと覚えたんや?」
「ま、俺にも色々あったってことだ」


 ふ~ん、と顎に手を当てて納得するはやて。よし、乗り越えられたな。


「それじゃ、俺はこれで…」
「ちょい待ち、まだ話は終わってないで」
「はぁ…?」


 用事を済ませ部隊長室を出ようとしたが、急にはやてに止められた。なんだよ、まだなんかあんのか?


「理由はわかったけど、だからって報告書を書かなくていい理屈になんかならへんよ?」
「……まさか…」
「そ、報告書書き直しや。それと、サボった罰として、私の仕事手伝うて」
「はぁ!?」


 確かに、報告書の書き直しは納得できる。俺が書き足せばいいだけの話だ。
 だが、なんで俺がお前の仕事まで手伝わなきゃなんないんだ!


「てめぇ、楽したいだけだろ!」
「そんなアホな、私は仮にもこの部隊の部隊長やで? 部下に示しがつかんようなことはせぇへんよ」
「嘘こけこの子狸が…(ボソッ)」
「なんか言うたか?」


 笑顔だが目が笑っていないはやての表情に、両手を上げて「なんでもありません」と答えた。


「わかったなら、よろしい。ほなお願いね」
「はいはい、わかったよ…」


 あぁもう……またしばらくはデスクワークか。トホホ……


「あ、そう言えば…ティアナのこと、大丈夫かな?」
「大丈夫、ってのは?」
「そりゃ、ミスショットして気持ちの面で…」
「あいつはそんな柔じゃねぇよ、伊達に兄の死を乗り越えちゃいないし、なのはの教え子だぞ? それに…」


 ―――失敗から見えてくる物もあるさ。
























 その後数日が経過した。この間はガジェットの反応も大きな事件もなく、静かな数日が続いていた。

 俺はこの数日は、結局はやてに押し付けられた仕事と新たに来た書類仕事が続き、碌に運動もできなかった……
 因みにヴァイスの話によるとティアナは朝晩、しかもなのはの訓練の前後にスバルと一緒に自主練をしていたそうだ。


 そして数日が経った現在、俺も書類仕事を終えて久しぶりに訓練の方に顔を出すことにした。


「あ、士」
「ん? フェイトか、何をそんなに急いでいるんだ?」
「いや、今日は各分隊の2on1での模擬戦があるんだけど…その模擬戦相手を私がする予定だったの」
「でも仕事が長くなって遅れてしまった、と?」
「そ、そうなの…」


 と肩を落として落ち込みながら言うフェイト。まぁフェイトの場合は、スカリエッティの捜査の方もやってる訳なんだから、忙しいのは当たり前か。


「しかし、ここで止まってていいのか?」
「あ、そうだった!」


 俺がそう指摘すると、フェイトは慌てて走っていった。それを見た俺も、丁度いいやと思い一緒について行くことにした。


「スカリエッティの方はどうだ? 何か進展はあったか?」
「え? いや、まだ全然ダメだよ。手がかりが上手く掴めないよ…」
「そりゃあまぁ、今までずっと捕まらずに逃げてきた奴だからな。早々尻尾掴ませてはもらえないだろ」


 広域次元犯罪者として指名手配されているスカリエッティは、二十年以上も管理局から逃げているんだ。尻尾掴めって方が難しい話だ。


「そういう士の方はどうなのさ」
「あぁ? はやての所為で仕事が長引いたんだよ。ったく、仕事押し付けやがって…」
「はは、士が何かやらかしたんでしょ」
「あ、バレた」


 そんな話をしながら走っていると、ようやく他の面子が集まるビルの屋上に辿り着いた。


「あ、もう模擬戦始まっちゃってる?」
「フェイトさん、士さん!」
「よ~、エリオにキャロ。ヴィータもいたか」
「おう」


 屋上に上がると、そこには模擬戦待ちのライトニングの二人と、スターズ副隊長のヴィータがいた。


「私も手伝おうと思ってたんだけど…」
「今はスターズの番」
「ほんとはスターズの模擬戦も私が引き受けようと思ったんだけどね」
「あぁ、なのはもここんとこ訓練密度濃ぃからな~」


 そう、教導官としてのなのはの仕事は生半可ではない。
 訓練中に撮っていた映像を確認したり、戦技教導官としてフォワードの訓練メニューを作る。模擬戦の仮想相手になることは勿論、四人の陣形をモニターで確認することもやる。

 更には教導官の仕事だけでなく、普通の書類仕事も多少なりともあるのだ。その総合的な仕事量は、俺やはやてにもほど近い。おそらく普通の局員からしてみれば、ワーカホリックじゃないのかと思われるぐらいだ。


「なのはさん…訓練中も、いつも僕達のことを見ててくれるんですよね…」
「ほんとに、ずっと…」


 そんな事をフェイトの口から説明され、エリオとキャロがそう言いながらなのはのことを眺めていた。


「お、クロスシフトだな」


 そう言うヴィータの視線の先には、魔力弾を展開しなのはに照準を合わせるティアナがいた。
 そして展開した魔力弾を一気に放ち、オレンジの閃光が空を舞う。…が、しかし……


「…なんかキレがないな」
「コントロールはいいみたいだけど…」
「それにしたって…」


 そう、ティアナがコントロールする魔力弾は、その動きにキレを持たずなのはに向かっていたのだ。
 当然なのははそのスフィアを避ける。その後を追いかけるように魔力弾は移動する。

 ティアナの魔力弾にキレがない理由として、考えられるのは二つ。
 一つは、彼女がスバルと一緒に続けている早朝練習と居残り練習の疲れが残っていた所為。そしてもう一つは……


(なのはの動きの誘導、か…?)


 そう考える最中、なのはが飛ぶ先にスバルのウイングロードが伸びる。なのははすぐに魔力弾を用意する。
 そしてウイングロードの先からなのはに向かって行くものが一つ―――スバルだ。だがなのははそれがティアナが作ったフェイクだと予想していたのか、少し表情を変えた。

 しかしすぐに用意していた魔力弾を一斉に発射、なのはに向かって突っ込んでいくスバルに向かっていく。
 スバルはそれに対し、右手を突き出し防壁を展開、魔力弾を防ごうとしたが数発だけ防壁を突き破り、スバルの体のギリギリを通っていった。


「うぅりゃぁぁぁぁ!」


 それでもスバルはなのはの魔力弾を突き抜け、拳を振り上げた。
 対しなのははレイジングハートを向け防壁を展開、スバルの拳を防いだ。

 水色と桃色の閃光、二つの色が空に輝く。しっかし……


「危ねぇ軌道しやがるな…」
「あぁ、いくら私が鍛えてるからって、あれじゃ下手すりゃ当たってたぞ」


 少しの均衡が流れるが、なのはが上手く弾き返すような形で均衡は崩れた。
 勢いを付け過ぎたスバルは跳ね返された勢いのまま、ウイングロードから吹き飛ばされる。空中で回転しながら落下するスバルは、下にまだ残っていたウイングロードに上手く着地した。

 なのははスバルに対し何か言っているようだが、その間にも背後からティアナの魔力弾が迫る。しかしなのははそれを見もせずに避ける。
 そう言えばティアナは? そう思ったその時、なのはの頬にレーザーサイトが照射される。そしてその先のビルの屋上には、砲撃魔法を準備するティアナの姿が。


「砲撃…ティアナが?」


 フェイトがそう言うのも無理はない。ティアナの本来のスタイルは魔力弾による射撃と幻術による後方支援が主だ。前衛を巻き込むような砲撃を、自ら打つ方ではない。

 するとなのはに弾かれたスバルが、行動を起こした。右腕を再び振り上げ、カートリッジを使用する。そしてローラーを回し、再びなのはへ向かって突っ込んでいく。
 なのははそれを見て同じように魔力弾を撃ちだす。しかしスバルはその全てを避け、再びなのはの防壁とぶつかり合う。

 再び拮抗する拳と防壁、二つの閃光がほとばしる中ビルの屋上に立っていたティアナの姿が霧散した。


「あっちのティアさんは、幻影!?」
「本物は…!?」


 そう言ってキャロとエリオが、ティアナの姿を探し始める。

 その時ティアナは、スバルが作ったウイングロードを駆け抜けていた。クロスミラージュのトリガーを二回引き、銃口から魔力刃を展開させる。
 ウイングロードを駆けるティアナは、なのはの頭上辺りに来ると飛び上り、魔力刃をなのはに向けて突撃していった。

 そしてもうすぐなのはに到達するという瞬間―――


『―――――』


 三人の姿が爆煙に包まれた。爆風は大きく、遠目から観戦していた俺達のところにまで到達した。
 しかし普通の状態じゃあ爆発が起こる筈がない。おそらくこの爆煙はなのはの〝バリアバースト〟によるものだろう。範囲もでかいから、三人共多少なりとダメージが……

 と、そう思ったその時、ふとあることに気がついた。
 今回のスバルとティアナの戦法は、実に奴ららしくない物だ。スバルが足止めし、ティアナが接近戦。そもそもおとりにしたティアナの砲撃だって、普段の彼女ならやろうとはしない行動だ。

 となると二人のこの戦法は、〝なのはに対する〟戦法。なのはが相手である事を想定したものだ。しかもあまり実戦向きとは言えない。
 さて、無茶をした結果がこの戦法だが……なのははどうでる…?


 時間が経つにつれ、爆煙は少しずつ晴れていく。視界が良くなっていき、三人の状況も見えるようになってきた。
 視界が晴れたそこには、スバルが突き出した拳を左手で掴み、ティアナの魔力刃を素手で掴み〝フローター〟でティアナの体を浮かせたなのはがいた。


「な…!」
「スバルさん、ティアさん…」


 その光景にエリオとキャロが驚く。しかし俺からしてみれば、奇妙な点が多い。今のなのはなら、別にあんな怪我をするような方法でなくとも二人の攻撃を避けられた筈だ。なのに何故…?
 そう思った時、何か嫌な予感がした。〝あの時〟程ではないが、あまりよくない、嫌な感じだ。

 それを感じたのとほぼ同時にティアナがなのはから離れ、先程と同じように砲撃を放とうとした。それに対しなのはは複数の魔力スフィアを展開、指先をティアナに向ける。


「あれは…」
「ティアナと同じクロスファイアだ」


 そう、なのはが用意している魔法は、ティアナがよく使う〝クロスファイア〟。しかしスフィアの大きさはティアナのよりも一回り大きい。
 そしてティアナが砲撃を撃とうとした瞬間に、なのははクロスファイアを発射。砲撃を放とうとした一瞬の隙を狙った攻撃は、見事に命中して再び爆煙を作る。

 そこまでならよかった。ティアナもふらついていて、限界なのは目に見えていた。そこで終われば問題はない。
 しかしなのははスバルにバインドまでして、更にティアナに追撃を与えようとし始めたのだ。

 それを見た俺は急いで駆け出し、屋上の端まで移動する。


「つ、士…!?」
「トリス、スタンバイ!」
〈 OK ! 〉


 フェイトの声が聞こえたが、今は構っていられない。方向をなのは達のいる場所に合わせ、一気に駆け出す。その間にトリスを待機モードからベルトへ変え腰に装着。ライドブッカーからカードを取り出し、屋上の手すりに足をかける。


「(魔力が足りるかわからんが、今はやるしかない…!)いっけぇぇぇ!」
〈 ATACK RIDE・TIME 〉


 そして足に力を籠め屋上から飛び上ると同時に、カードをバックルに装填。回転させて発動させた。
























 フェイト達の視界から宙に浮いた士が消えたのと、なのはの砲撃が命中するのはほぼ同時だった。
 士が消えた事には驚いたが、すぐに爆音が響いた事で四人の視線はなのは達の方へと移っていた。

 三度立ち込める煙に、スバルがティアナの名を叫ぶ。親友である彼女が、意識が朦朧としているところに砲撃を受けたのだ。当然の反応だ。
 しかし、その肝心のティアナの姿が見当たらない。あれだけの攻撃ならウイングロードから落ちてきてもあり得なくない。だが煙から落ちてくる物はない。


「―――ったく、テメェは何してんだよ…なのは」


 その時煙の奥から聞こえてくる声にスバルは驚き、なのはは眉を寄せる。
 少しずつ煙が晴れていく中、人の影が段々と見えてくる。その人物は左の掌を正面に向け、何かを抱えた状態で仁王立ちをしていた。

 そして煙が完全に晴れ、その姿がはっきり見える。


「つ、士さん!」


 そう、その人物とは先程まで離れた別のビルの屋上にいた筈の士だった。左手の先にはマゼンタ色の魔力障壁が展開されており、その脇には気を失っているらしいティアナの姿があった。


「……何をしてるか? それはこっちにセリフだよ、士君」
「あぁ?」
「今は模擬戦中、つまり教導中だよ? 士君は邪魔をしにきたの?」


 そう言って腕を降ろすなのはに、士は「はぁ…」とため息をついた。


「模擬戦だぁ? スバルは拘束、ティアナは戦意喪失でもうとっくに終わってるだろ。そんな状況なのに、さっきのお前の追撃は度を超えていた。だから止めただけだ」
「……模擬戦はまだ続いていたよ」
「はっ! だったらお前ら教導官は、ボロボロになった奴に追い討ちをして落とすのが趣味なのか? いい趣味してるな」


 とにかく、今回の模擬戦は終わりだ。
 そう言って士はウイングロードから飛び降り、スバルのすぐ側に着地する。そしてライドブッカーを剣にして、スバルに巻き付いているバインドを斬りさく。


「スバル、動けるか?」
「は、はい…」
「じゃあ取りあえず、ティアナを頼む」


 え? と声を漏らすスバル。そんなのにお構いなしに、士は抱えていたティアナをスバルに預ける。


「あ、あの…」
「それと―――俺の後ろから動くなよ」
「え…?」


 士はそう言い残すと、呆けているスバルに背中を向けた。その士の正面には、仁王立ちし続けるなのはの姿が。
 両者が睨みをきかし、沈黙が空間を支配する。二人共口を一切開かず、鬼のような表情で睨み合う。


「…どうしても、邪魔をするの?」
「…さっきも言った筈だ、模擬戦は終わりだと。さっさと帰るぞ」


 最初に口を開いたのは、なのはの方だった。その後少し様子を見るように、士が語り掛ける。
 がしかし、再び二人の間で沈黙が流れる。士の背後にいるスバルも、その二人の重々しい雰囲気に思わず息を飲んだ。


「―――レイジングハート」
「っ、そこにいろよスバル!」
〈 Sword mode 〉
「えっ!?」


 次の瞬間、なのはは待機モードからアクセルモードに起動させたレイジングハートを掴み、それを見た士はライドブッカーを取り出し剣を構える。
 すぐさまなのはのアクセルシューターが飛んでくる。士に向かってくるシューターは避け、避けきれない弾はライドブッカーで弾いた。背後にいるスバルは驚きつつも、ティアナを庇う。

 なのはは一瞬眉を寄せたが、すぐに躱されたシューターを誘導させ士の背後に回す。


「―――っ!」
〈 Gun mode. Dimension bullet 〉


 しかし士はすぐさま手首のスナップだけでライドブッカーを銃に変え、後ろを見ずに銃口を向け引き金を引く。
 アクセルシューターとディメンションバレット。二種類の弾丸が、花火のように空で弾ける。


「っ……」
「おぅ、どうした? これでおしまいか?」


 士はそう言うと、なのはに向かって一歩ずつ歩き始めた。なのははその士の雰囲気に呑まれ一歩下がるが、すぐにシューターを展開する。


「なんで…なんで邪魔するの!? 皆に無茶して欲しくないから、こうやって…!」
「無茶して欲しくないから傷つけるのか、痛めつけるのか? 教導隊ってのは面白い事をするもんだな? だが……ここは教導隊ではない、地上部隊だ! 好き勝手やる訳にはいかねぇんだろうが!」
「……だから、何!? 私は教導官として、ティアナに大切な事を教えようとしていたんだよ!?」


 なのははそう言って、展開したシューターを撃ち放った。一斉に士に向かって、ほぼ八方を塞ぐ形で飛んで来るその弾丸に対し……否、先程のなのはの発言に対して、一度舌打ちをした後―――


「こんの…バカがっ!」


 ―――ライドブッカーを手放した。


「―――えっ…?」


 なのはが一瞬声を上げたその時、放たれた弾丸が士に命中した。命中の爆発音と共に爆煙が生まれ、士の姿を包み込んだ。
 その光景に見ていた全員が驚く。大事な武器を自ら捨て、相手の攻撃を生身で受けたのだ。正気の沙汰ではない。

 しかし皆がそう驚く中、士は煙の中をなのはに向かって突っ切ってきた。
 そして驚きで硬直していたなのはの目の前まで来ると、なのはのレイジングハートを持つ左手を掴み、逆の右手でなのはの頬を鷲掴みにして、足を引っかけウイングロードの上に押し倒した。


「大切な事を教える? だったらもっとちゃんとした方法で伝えろよ! その口はなんの為にあんだよ、食いもん食う為だけか!? 違うだろ! 大切な事を教えたいなら、しっかりその口で伝えろ!」


 士にそう言われたなのはは、明らかに怒りの表情を浮かべ顔を抑える士の手を払いのけた。


「士君はそうするかもね! でもこれが私のやり方なんだよ!」
「確かに、今まではそうやって戦う事で伝えられたかもしれないな! 教導隊でもそれで通ってただろうよ! だが今回はそれで通用しなかった、だからこんなことが起こってんだ!」


 士はそう言うと払われた手を、今度はなのはの肩を押さえ付けた。


「人の口は、その思いを他人に伝える為にある! お前は自分が考えてるフォワード陣の理想形を話したか? あいつらに何を望んでいるか、口にした事はあるのか!?」
「そんなの…!」
「何も言わずに全てが伝わるとでも思っているのか? 思い上がるなよ! 人間そんなに完璧にはできてねぇんだよ!」


 一息でそう言うと、士はなのはと数瞬の間睨み合う。息を整えた士はなのはから手を離し、ゆっくりと立ち上がった。


「なのは、お前はしばらくの間自室待機だ。頭を冷やして、自分に何が足りないかったかをよく考えるんだな」
「………」


 士の言葉になのはは何も言わずにいたが、士はそれを肯定と受取りその場から離れた。
 そして別の場所で座り込んでいたスバルの方に歩み寄っていった。


「ティアナの具合はどうだ?」
「え…あ、はい。まだ気絶しています…」
「なら今からシャマルさんとこ行って、治療してもらってこい。お前も自主練で疲れてるだろうから、少し休むといい」
「りょ、了解…」


 スバルの返事を聞くと、士は笑顔を見せた後スバルの肩をポンと叩いてから脇を通って行った。
 だが士は数歩歩いて行くと、足元をもたつかせ、遂にはウイングロードから足を踏み外して落下していってしまった。


「―――っ!?」
「士さん!?」

「っ、士!」
〈 Set up 〉


 立ち上がってすぐにそれを見たなのはは驚きを見せ、近くにいたスバルも思わず声を上げた。
 そして少し離れたビルで見ていたフェイトがバルディッシュを起動、〝ソニックムーブ〟で落下する士をキャッチした。


「士、大丈夫!?」
「……あぁ、フェイトか。悪い…魔力使い過ぎたみたいだ……〝アイツ〟がいるとはいえ、無理…し過ぎたわ……」


 しかし落下前に受け止めたにも関わらず、士の顔色は優れなかった。

 『TIME』を使ってなのはの攻撃を防ぐ事ができたが、しかしそれはディケイドの状態ではない。生身の状態でだ。そうなると魔力の消費量が多くなってしまい、更には魔力障壁と身体能力の強化で士の魔力はほぼ底をついていたのだ。
 そこに来て、なのはのシューターによる攻撃。なのはに一瞬でも隙を作る為にライドブッカーを捨てたとはいえ、なのはの攻撃を生身で受けたのだ。魔力エンプティに加えて身体的疲労も相まって、気を失いかけていた。


「後の事、頼むわ…」
「ちょっ、士! しっかり! 士!」


 士はそう言い残し、フェイトに抱えられながらも意識を手放した。





  
 

 
後書き
 
 という訳で、アンケート結果は……


 ブレイド側
  ギャレン 1
  カリス 7

 ファイズ側
  カイザ 6
  デルタ 1


 ということで、ブレイド側はカリス、ファイズ側はカイザという事で決定いたしました。アンケートにお答えしていただいた方、本当にありがとうございました。
 このアンケート結果が小説にどう影響されるかは、お楽しみという事でお願いします。

 ここで近況報告を少し。
 今回の投稿が遅れてしまった理由は、バイトが忙しかったり、『弱虫ペダル』にはまってしまったり、オリジナル部分がちょっと多かったこと等色々あるのですが……一番大きな理由としては、今後の私生活の準備をしていた、という事です。

 大学の方も決まり、一人暮らしをすることになったのですが、引っ越し先探しや買い物などで時間がかかってしまって、こんな感じになってしまいました。本当に申し訳ありません。

 そしてその私生活先の家での、インターネット環境が曖昧でして……
 その影響で、おそらく28日以降しばらくは投稿ができなくなりそうです。次回はできるだけその前に上げたいとは思うのですが、どうなるかわからないというのが現状なので、そうなった場合は時間がかかりそうです。

 長々と私用を説明してしまい、申し訳ありません。できるだけ早く投稿しようと考えているので、よろしくお願いします。
 感想や意見、誤字脱字の報告などお待ちしております。それでは次回まで、さようなら~(^^)ノシ
  
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