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『八神はやて』は舞い降りた

作者:羽田京
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第4章 戦争と平和
  第35話 カットバックドロップターン

 
前書き
・ハーメルンでちょっと修正したものを投稿開始します。 

 
「ひれ伏せ塵芥。我こそは闇統べる王、ロード・ディアーチェである!」


 会場がどよめく。それも仕方ない。八神はやて(17)が登場するかともったら、そこには8歳くらいの幼女がいたのだから。
 エメラルドの瞳に、シルバーグレーのショートヘア。黄色の刺繍が施された紫のサーコートに、同じく黄色の縁取りがされた黒いコート。紫の十字の髪留めがアクセント。
 身の丈ほどの紫のステッキを持っている。柄には包帯をぐるぐる巻きにしていた。
 全体的に黒と紫が基調になっており、ダークヒーローにもみえる。
 顔つきは、はやてそっくりで、はやての妹では? と多くの人間が考えていた。
 まさに、魔法少女! と全身で表現しているようである


「えー、ここで司会から報告です。八神さんの代打として、八神さんの親せきの女の子が出場することになりました。ロード・ディアーチェさんです」

「ふん、はやての代わりに出ることになったディアーチェだ。おのれの分をわきまえず魔法少女(笑) などと抜かす年増を成敗しにきた。感謝するがいい」


 ディアーチェちゃんかわいいー!
 会場から歓声が上がる。
 ぶっきらぼうな受け答えも、容姿の可愛さと相まって実に様になっている。


「かわいいライバルね☆ でもレヴィアたんは負けないゾ(^^)/」

「ぬかせ。格の違いをみせつけてくれるわ、コスプレ老女」

「いい感じに盛り上がってきましたね。どう思います、解説のサーゼクスさん」

「セラフォルーも年齢の差にはかなわないだろう。この勝負、ディアーチェが圧倒的に有利だ」

「コメントありがとうございました」


 私だって若いもんね! というセラフォルーの叫びは無視された。
 その後二三やり取りが行われ、アピールタイムにうつる。





り~りかる~とかれ~ふ~きるぜむお~る~♪

 檀上の後ろから変身テーマが流れてくる。マイソウルフレンドと一緒に作った思い出の品だ。
 ラジカセをもったリインフォースが死んだ魚のような眼をしている。ボクの姿に悩殺されたのだろうか。照れるな。
 ロード・ディアーチェとは、リリカルなのはのゲームに登場する人物である。闇の書に隠されていたデータたちだ。詳細はゲームをやってみてほしい。
 なのはを素体としたシュテル、フェイトを素体としたレヴィをまとめるリーダーで、はやてを素体としているのがディアーチェである。
 基本的にはやてとスペックは同じだが、言動がとてもかっこいいのが特徴である。肉体は9歳児相当。
 残念ながら復元された夜天の書にはデータが見当たらなかった。無念。


「エルシニアクロイツ、セットアップ!」
『jawohl』


 デバイスに呼びかけ、テーマ曲に合わせてふりふりと踊る。
 さすがに、本当に変身はしない。というよりも、この姿が既に騎士甲冑だったりする。
 エルシニアクロイツは元となったロード・ディアーチェの所持デバイスの名前だ。
 シュベルトクロイツを2Pカラーにしただけである。
 この踊りはなんたらカードを通じて知り合った少女のあざとさを見習ったものだ。
 ステップ、ステップ、ここで――。


「カットバックドロップターン!」


 おおおおおー! とどよめきがおこる。
 きれいにターンを決めると、客席に身をよじり、決め台詞を放つ。


「みなぎるぞパワァー! あふれるぞ魔力ッ! ふるえるほど暗黒ゥゥッッ!!」


 フッ、決まった。今のボクは超絶かっこいいだろう。
 ザフィーラ撮影できている? と、当然です主。よしよし。


「司会の匙です。え、えーっと、素晴らしい変身シーンでしたね」

「中二病? いやまあ、俺も人のこといえないか。うーん、八神さんの胸には食指が動かないのに、ディアーチェちゃんは、こうおっぱい分を感じるなあ。ちょっと偽物っぽい感じはするけれど、八神さんほどじゃないね」

「ちょっと、何言っているの一誠。ま、変身というより曲芸ね」

「……かっこいい」

「お兄様!?」


 ボクの変身シーンがいろいろと論評されている。
 というか、すごいな兵藤一誠。胸で大人モードの変身魔法を見破るとは。
 観客席の様子をみると、呆気にとられているようだ。
 ふふふ、ボクのかっこよさにハートを打ち抜かれたのだろうか。
 まったく罪な女だな。


「では続きましては、レヴィアたんのアピールタイムです」





 ウフフ、私のアピールタイムは完璧ね☆
 ちっちゃくなったはやてちゃんには驚いたけれど、ネタキャラは流行らないのよ(^^)/
 親戚のロード・ディアーチェちゃん? って名乗っているけれど、変身魔法みたい。リインフォースちゃんがこっそり教えてくれたの。
 私にすら見破られない高度な変身魔法なんて、すごいわ☆
 かわいらしい踊りだったけれど、ちょっと前衛的すぎるわね(´・ω・`)
 結局最後に勝のは正統派魔法少女と決まっているの。
 はやてちゃん、まだまだ甘いわね(^_-)-☆


「おおっと、レヴィアたんの変身ポーズに会場は大盛り上がりだ」

「……こんなんがトップだなんて、冥界は大丈夫なのか? かわいいのには同意」

「ソーナに心底同情するわ」

「レヴィアたん、さすがプロの貫録だな」


 サーゼクスちゃんの言う通り。
 冥界の看板魔法少女番組を背負って立つ私が、そう簡単に負けるわけにはいかないのよね( `―´)ノ


「では、トークに移りましょう。まずは、レヴィアたんから」

「はーい☆」

「レヴィアたんにとって『魔法少女』とは何ですか?」


 む、いきなり深い質問が来たわね( ゚Д゚)
 ここは茶化さず正直に答えましょう。


「私にとって魔法少女は、天職かな。魔法少女のお仕事を続けてけれど、一度も辛いなんて思ったことはないわ☆ 私こう見えてもとある組織のトップなんだけれども、ストレスがたまってしょうがないの。しがらみも多いしね」

「なるほど、兼業魔法少女ということですか。コスプレも息抜きの一環で?」

「そうね。コスプレしてみんなを元気にしたい。そして、元気なみんなから、私も元気がもらえるの。もう魔法少女が本業でいいからしら☆」

「なるほど、お仕事に対する真摯な姿勢に感服いたしました」


 ちょっと真面目に答えすぎちゃったかしら(´・ω・`)
 司会のほうは、ぎょっとしているようだけれど。
 でも、大事なことだからね。茶化すことはできないもん。
 はやてちゃんはどうでるかな?


「では、ディアーチェさんにとって『魔法少女』とは何ですか?」

「いい加減魔法少女を仕事か何かと勘違いしている奴うざい。仕事じゃないし。魔王の方がよっぽど仕事」

「仕事じゃなかったらなんなんですか」

「人生……かな」


 な、なんと!? その言葉に私は衝撃を受けたのだ。
 人生……そこまで重く魔法少女をとらえたことはなかった。
 手を抜いてきたつもりは一切なかった。が、魔王課業の息抜きである側面は否定できない。
 私にとって魔法少女は創作活動だった。


 魔法少女の「コスプレ」といっている時点で私は負けていたのだろう。
 コスプレ、とかなりきりではなく、彼女は自然体で魔法少女そのものなのだ。
 姿かたち、仕草までもが無駄なく洗練されている。
 負けたよ。ディアーチェ。お前がナンバーワンだ。


「だが、ちょっと待ってほしい。ボクの魔法少女の師匠がこちらにたどり着いたようだ。後学のためにも、ゲストとして呼んでもいいだろうか」


 なんですと!? 今日は驚いてばかりね。
 はやてちゃん上回る魔法少女、これは見ないわけにはいかないわ(#^^#)
 会場からもラブコールが起こる。司会も登場を認めたようだ。
 魔法少女コンテストに特別ゲストとして登場したのは――。





 そのとき会場は熱狂の渦に包まされていた。
 学園三大お姉さまそっくりのロリ魔法少女ロード・ディアーチェと、同じく三大お姉さまの生徒会長の姉だという謎の魔法少女マジカル☆レヴィアたん。
 どちらも超が付くほどの美少女であり、そのあざとい仕草に目が離せなかった。
 だからだろう。ソレに気づけなかったのは。
 ディアーチェが放った、最強の魔法少女が来る。その言葉を誰も疑わなかったのだ。


 それは魔法少女というにはあまりにも大きすぎた。
 大きく分厚く重くそして大雑把すぎた。
 それは正に漢女だった――。
 それが観衆の見た最後の光景だった。


「ミルたん。覇王色の覇気使っちゃダメでしょ。みんな泡吹いて気絶しちゃっているじゃない」

「にょ? これはうっかりしたにょ」





 二メートルを超える長身。
 そこらのボディビルダーが裸足で逃げ出すような鍛え上げられた肉体美。
 丸太のような腕。艶やかな漆黒のツインテール。ミニスカートからみえる絶対領域。
 そしてチャームポイントに黒の猫耳。
 完璧だ。完璧だよミルたん。どこからどうみても魔法少女だよ。
 ボクは涙を滂沱しながら拍手を送り続けた。


 何を隠そうミルたんこそが、ボクの魔法少女の師匠にしてソウルフレンドである。
 きっかけは、はぐれ悪魔討伐のときだった。
 サーゼクス・ルシファーの依頼で、はぐれ悪魔討伐に行くと、そこには犠牲になった人間の死体が散らばっていた。
 はぐれ悪魔自体はすぐに討伐できたのだが、そこで問題が発生した。
 現場を隠ぺいする前に、人間が現れたのだ。結界を抜けて。
 そのときの人間こそが、ミルたんである。


 あとで聞いたところ、正義の魔法少女としてあちこちで人間を襲う化け物を退治していたらしい。
 人間を殺したのがボクたちだと勘違いしたミルたんと、かつてない大激戦となった。
 駒王町は火の海になり、建物はすべて倒壊した。結界がなかったら大惨事である。
 こうして拳で語り合ったボクとミルたんは、熱い友情を交わしたのだった。
 そして、ミルたんの熱い魔法少女への思いに感銘を受けたボクは、ミルたんとともに異世界に修行にでたのである。


「はやてちゃん、どうかにょ?」

「素晴らしいよ、ミルたん。今日もパーフェクト魔法少女だよ。エヴァは一緒じゃないのかい?」

「エヴァにゃんは茶々丸の調整があるから来られなかったにょ」

「夫の晴れ舞台に来られなくてさぞ悔しかっただろうに。ザフィーラが撮影しているから、あとで見せてやろう。おや? 司会のみんなはミルたんの素晴らしい魔法少女っぷりに圧倒されているようだね」


 覇王色の覇気によって一般人は皆気絶してしまった。
 今残るのは、悪魔関係者のみである。司会の4人とセラフォルーは当然生き残っていた。


「え? 魔法少女? それよりも会場が大惨事だけれど大丈夫なのかこれ」


 慌てるな匙くん。気絶しているだけだから問題ないよ。
 まったく興奮しているからといって覇王色の覇気を纏うなんて。このうっかりさんめ。
 ん? 兵藤くんが震えているようだけれど、どうしたんだい?


「な、なぜだ。どうして俺のおっぱいセンサーがミルたんに反応しているんだ……!?」


 顔面を蒼白にして愕然としている。たしかに、ミルたんは性別の壁という大きな障害があった。
 しかしながら、ミルたんは魔法少女の頂きへと至ったのだ。その秘密は、悪魔の実である。

 「ヒトヒトの実:モデル魔法少女」

 これがその絡繰りである。悪魔の実を食すことで、魔法少女へと変身できるようになったのだ。
 ボクの変身魔法を見破ったときといい、彼のおっぱい力はとんでもないな。今の彼は仙人もかくやといった状態のはずなのに。
 皆何かを言いたそうにしているが、口をつぐんでいた。まあ、ミルたんの圧倒的なオーラの前に、声もでないのだろう。


 その後、会場の惨事の収集をつけることになり、魔法少女対決はうやむやになった。 
 

 
後書き
・はやてアイの節穴疑惑。

・カットバックドロップターン
空でサーフィンするときの大技。なんかすごい。エウレカセブン。

・「みなぎるぞパワァー! あふれるぞ魔力ッ! ふるえるほど暗黒ゥゥッッ!!」
ゲーム登場時のセリフ。この一言でネタキャラと化した。

・「人生……かな」
クラナドはエロゲではないという魂の叫び。2ちゃんねる。

・お前がナンバーワンだ
ツンデレ王子が放ったデレセリフ。ドラゴンボール。

・だがちょっと待ってほしい
日本に核ミサイルが飛んできた? だがちょっと待ってほしい。一発だけなら誤射かも知れない。朝日新聞。

・それは魔法少女というにはあまりにも大きすぎた。大きく分厚く重くそして大雑把すぎた。それは正に漢女だった――。
ガッツが愛用する剣「ドラゴン殺し」の描写シーン。ベルセルク。

・ミルたん
ハイスクールDDの公式チート。メインヒロイン(嘘) 服が破れても決して乳首をみせない漢女。魔法少女に憧れていた。

・覇王色の覇気
覇気と呼ばれる技の一種。覇王色に触れると格下は気絶する。ワンピース。

・エヴァ
エヴァンジェリン・A・K・マクダヴェル。真祖のロリ吸血鬼。既婚者。ネギま。

・茶々丸
エヴァの従者。魔法と科学のハイブリット。ネギま。

・悪魔の実
食べると特殊能力が得られる。ただし、泳げなくなる。ワンピース。 
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