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Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
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A's編
  第四十四話 想い

side シグナム

 空は闇に染まり、リビングから空を見上げる。
 雲はなく、星空が見える空。
 静かな良い夜だ。

 そんな時足音を立てずにリビングに降りてくるシャマルとザフィーラ。

「シグナム、士郎君からの使いは?」
「いや、まだだ。
 主はやては」
「さっき見てきたけどもう眠っていたわ」

 普段は本を読んだりもう少し起きているとのことだが、我らの服の買い物にいったりと色々と疲れたのだろう。
 
 寝室に行く際にヴィータと一緒に寝るとおっしゃったときは驚いたが。

 そんな今日の出来事を思い返していると

「士郎君の使いが来たら誰が行くのがいいかしら?」

 シャマルがふと疑問に思ったのだろう。
 そんな事を口にした。

「……そうだな」

 主はやてに今夜衛宮にあう事は内密にしている事もあって話していなかった。

 我々としても衛宮の事を完全にとはいかぬともある程度は信用している。
 だが衛宮以外に害をなす者がいないとも限らない。
 
「少なくともヴィータはここに残していくが」
「そうね。はやてちゃんを起こしちゃ悪いし」
「ああ」

 同じベットで寝ているのだ。
 ヴィータが抜け出した時起こすのも申し訳ない。
 その意見にはシャマルもザフィーラも同意見の様だ。

 少なくとも私はこの目で衛宮の屋敷などを見てみたい。
 シャマルとザフィーラは

「シャマル、一緒に来てくれ。
 ザフィーラはここに」
「え? 私でいいの?
 ないとは思うけどもし何かあった時私よりザフィーラの方が適任だと思うけど」

 シャマルの言う事もわかる。
 我らの中ではシャマルはサポート役。
 戦えぬわけではないがその能力は劣る。

 だがなによりも気になるのが

「衛宮が街に結界を張っていると言っていただろう。
 となれば屋敷にも張っている可能性が高い。
 もし罠だった場合、私やザフィーラよりもシャマルの方が感知できるだろう」
「確かにそうだな」
「でも士郎君の魔法、魔術がどのようなものか詳しい事がわからないから」
「シャマルが理解できなければ私でも理解出来ないだろう」

 シャマルはサポートのエキスパートだ。
 結界の術式の把握などは私達の中では秀でている。

「わかったわ。
 いつでも行けるように準備はしておくわ」
「ああ。
 ザフィーラも主はやてを頼んだぞ」
「心得ている」

 そしてリビングを後にするザフィーラ。
 恐らく主はやての部屋に向かったのだろう。

 それにしても今までの主とは違い幼いとは思っていたが蒐集に関しては予想外だ。
 夕食を食べた後、闇の書の蒐集について主はやてに説明して返ってきた言葉は

「それはいろんな人にご迷惑をおかけするんやないん?」
「それは……その通りです」
「ならあかん。
 それに蒐集をせんでもシグナム達は大丈夫なんやろ」
「それはそうですが、私達は闇の書の守護騎士です。
 蒐集を行い、主を守るのが役目」
「それでもや。蒐集はあかん。
 シグナム達はここで私と一緒に暮らしてくれればそれでええから」

 というものだった。

 まさか蒐集を望まない主が現れるとは思ってもいなかったというのが本音。

 そしてまるで家族のように接してくださる主はやて。

「どうしたのシグナム? やけに難しい顔をしてるけど」
「いや、主はやての言葉を思い出していた」

 私の言葉に納得したように頷くシャマル。

「アレは驚いたわよね」
「ああ。シャマルはどう思う?」
「私は……はやてちゃんが望まないんだったらそれでいいと思うわ。
 はやてちゃんがただ平穏に暮らしたいというなら私たちはそれを守るだけでしょう」 
 
 今まで見た事もないうれしそうなシャマルの表情。

 シャマルの言う事はもっともだ。

 私がくよくよ考えても仕方がない。

 その時『コンコン』と窓がノックされた。
 だが其処には人影はない。

「シャマル」
「ええ」

 レヴァンティンを右手に握り、警戒しながら窓に近づく。
 その後ろでシャマルがいつでも動けるように構えている。

 そして窓の外を見ると鋼の鳥が窓の周りを飛んでいた。
 私が窓に近づくと下に降り、こちらをじっと見ていた。

 これが士郎の使いか?

 窓を開けて、鋼の鳥に近づく。
 すると

「使いを出すのが遅くなってすまない」

 鋼の鳥が声を発した。

 予想外の事に驚くが、声は多少かすれているが聞き覚えのあるモノ。

「衛宮か」
「ああ、これが家まで案内するからついて来てくれ」
「わかった。玄関に回るから待っていてくれ」

 鳥は頷き、玄関の方に向かう。
 それを見届けて、窓を閉める。

「シグナム?」
「安心しろ。衛宮からの伝書……だ」

 伝書鳩と伝えようと思ったがどう見ても鳩には見えない。
 いやそもそも鳥の形はしているが生きているようには見えない。
 鳥が人間の言葉を発するはずもない。
 これも衛宮の魔術の一種か。

「シャマル、出れるか?」
「ええ。大丈夫」

 シャマルが頷いたのを確認し

(ヴィータ、ザフィーラ、衛宮の使いが来た。
 これからシャマルと衛宮の所に行ってくる。
 主はやてを頼んだぞ)
(おうよ。任せとけ)
(心得ている)

 思念通話でヴィータとザフィーラにも家を出る事を伝える。

 そして、シャマルと共に玄関を開けると先ほどの鋼の鳥が塀に止まってこちらを待っていた。

 さて、衛宮の家でなにが起きるかわからない上に騎士甲冑もまだないが行くとしよう。

 我が主の平穏な生活を守るためにも衛宮が私達の敵でない事を確かめるために




side 士郎

 使い魔の鋼の鳥を操り、シグナムとシャマルを俺の家に案内しつつ二人のお茶の準備を始める。

 シグナムとシャマルの表情はどこか硬い。
 もしかしたら俺が敵になるのかもと心配しているのかもしれない。

 当然俺にはそんな気はないし、俺の立場からすればシグナム達が俺に攻撃を仕掛けるメリットがない。
 そのためそんなに緊張もしていないのだ。

 しかし闇の書か。

 アレは何なのだろう?

 なのは達のようなデバイスとは違うように思える。
 はやての血筋が魔法に携わる家系で、一族の秘術に関して記述された魔導書かとも思ったがその可能性は低いだろう。
 はやての家、八神家に魔術にしろ、魔法にしろその痕跡がなさすぎる。

 それにシグナム達、闇の書の守護騎士。

 恐らく闇の書には何らかの能力がある。

 ただの魔法に関する事が書かれた本ならば守護騎士などという防衛機能はいらない。
 つまりは何らかの自衛手段をもっていなければならないという事なんだが、こればかりはシグナム達から教えてもらわなければ俺の考えでしかない。

 とそんな事を考えているうちにシグナムとシャマルももうすぐ近くまで来ている。

 お茶菓子なども準備は出来たし、出迎えるとしようか。




side シグナム

 あの鋼の鳥はデバイスのような知能があるのか、こちらの様子を見ながら私達を導く。
 こちらの様子を気にしてくれるので見失う心配もないので走る必要ない。

 しばらく歩き見えてきた古めかしい洋館。

 そして、私とシャマルは洋館、衛宮の館に辿りついた。

「シグナム、気をつけて。
 術式がわからないけど結界があるみたい」
「ああ」

 これが魔術師の結界か。

 我々が使う結界であればその結界の狭間というのが明確に眼に見えるものだがそれもない。
 日常や風景の中に違和感なく紛れ込む結界というわけか。

 魔法に関する知識や知らぬ者では気がつかないだろう。 
 いや、知らぬ者でもこの館の纏う空気に近づくのは避けるだろう。
 
 鋼の鳥に従い、館の敷地に一歩踏み出す。

 それと共にわずかに空気がかわる。

 こうして結界の中に入ったというのにどのような結界なのか理解できない。

 ここまで未知のモノだと気が抜けないな。

 だが踏み込まなければ始まらない。

 館に向かって歩みを進める。
 それと共に私達を出迎えるかのように開く玄関の扉。

 扉の中に入っていく鋼の鳥。

 それに従い館の中に足を踏み入れる。
 
 そこには

「ようこそ。シグナム、シャマル。
 歓迎するよ」

 黒のズボンとシャツを着た衛宮が静かに待っていた。

「せっかく来たんだ。
 お茶でもしていってくれ」
「えっと、ならお言葉に甘えて」
「ああ、いただこう」

 衛宮の後ろについていくとソファとテーブルがある部屋に案内される。

 そしてそこには私とシャマルが来る事がわかっていたかのように準備されたカップとポット、それにお茶菓子。
 道案内をしてくれた鋼の鳥もテーブルにいた。
 
 恐らくあの鋼の鳥からの情報を得ていたのだろう。

「そんなに固くならないでくれ。
 こちらにはシグナム達と戦うメリットもないんだ」

 警戒する私達の様子を見てか苦笑しながらカップにお茶を注ぎ、目の前にカップが置かれる。

 さて、これを飲むべきか?
 毒が入っていないと断言できるか?

 そんな時衛宮がお茶に口をつけ、お茶菓子を一つ口に入れ咀嚼し飲み込んだ。




side 士郎

 まったく警戒されたものだ。

 相手の結界の中にいるのだから無理もないのかもしれないが。
 なので客であるシグナムとシャマルよりも先に紅茶とクッキーに手をつける。

 これで信用してくれればいいんだが。
 
 俺がクッキーと紅茶をのみ込んだ後シャマルが

「いただきます」

 紅茶とクッキーに手をつけ、そのあとにシグナムも手をつけた。

「さて、一応ここが俺の家だ。
 なにかあった時はここに来てくれ」
「わかりました。で士郎君は他にも何か聞きたい事があるんじゃないんですか?」

 シャマルがこちらを探るように見つめてくる。

 なるほど俺が何か聞きたいと思っているのはお見通しか

「闇の書の守護騎士、君たちの役割についてだ」
「我々の役割?
 そんなのは決まっている我が主八神はやてをお守りする事だ」

 シグナムがさも当然というふうに応えるが

「俺の中ではそれが引っ掛かってる。
 主を守る存在がいるという事は、主を守らなければならない事態が発生するという事か?」

 俺の言葉に眼を見開く二人。

「昔はそうよ」
「シャマル」
「シグナム、士郎君には少し話しておいた方がいいわ。
 さっき言った通り主をお守りするのが私達の役目。
 だけど」

 シャマルは一度瞳を閉じ、再び俺に向けられた瞳は迷いのない真っ直ぐな瞳。

「だけど今は違う。
 はやてちゃんが言ってくれたから私たちははやてちゃんと平穏に暮らしたい」
「……ああ、私もそして、ヴィータもザフィーラもこの思いは変わらん」
「そうか」

 シグナム達がこうもはっきり言い切るならいらぬ心配か。

「なら俺が聞きたい事はもうないよ。
 なにか困った事があったらいつでも来てくれ」
「ああ、そうさせてもらう」
「お茶、御馳走様でした」

 シグナムとシャマルが立ち上がる。
 そこには来た時のような警戒はなかった。

「じゃあ、また」
「よかったら士郎君も遊びに来てくださいね。
 はやてちゃん喜ぶと思うから」
「ぜひ行かせてもらうよ。おやすみ」
「はい。おやすみなさい」
「ではな。おやすみ」

 シャマルとシグナムを屋敷から見送る。

 確かに闇の書には何かあるのだろう。
 だがそれが何かは関係ない。

 平穏を望んでいるのは間違いないんだ。
 なら俺は手を貸そう。

 リンディさん達には隠し事が出来るがまあ、その辺はどうにでもなるだろうし。

 さて、明日もバイトは入っているし、昨日はほとんど寝ていないのだ。
 霊脈調査もお休みでやすむとしよう。

 カップを下げ、ベットに入り眠りについた。 
 

 
後書き
第四十四話でした。

今週は遅れることなく無事に更新。

A's編でのエンディングをどのように迎えさせるか、最近悩み偽のセリカです。

次回更新も来週に予定通り行える予定。
三日連休あるとだいぶ色々できるのでいいんですが・・・

さてちょっと愚痴が入ってしまいましたが、また来週にお会いしましょう。

ではでは 
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