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ジャガイモを人気者に

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第二章

「気候が寒冷で確かに沼沢地や荒地を農地にしてきていますが」
「灌漑も進めていますが」
「農地に出来る場所は限られていますし」
「どうしても」
「麦畑に出来ないところがあるか」
 王は廷臣達の言葉を聞いて言った。
「そういうことだな」
「はい、具体的には」
「そうなります」
「麦では限界があるか」
 大麦でも小麦でもだ、欧州の主食であるこの作物ではだ。
 王はこの問題にぶち当たった、だがだった。
 王はこの話から暫し考えてからだ、廷臣達に言った。
「一つ思うのだが」
「一つ?」
「一つとは」
「ジャガイモはどうだ」
 廷臣達にこの作物を出したのだった。
「ジャガイモを民達に食べさせてはどうか」
「あの新大陸から来たですか」
「あの作物を」
「そうだ、今は家畜の餌にしているがな」
 王はさらに話していく。
「あれをな」
「民に食べさせると」
「そう仰るのですか」
「試しに私も食べてみる」
 他ならぬ王自身もというのだ。
「それで食べられるのならな」
「そういえばある学者が言っていました」
 ここで廷臣の一人が王に言った。
「ジャガイモはいいと」
「言っているのか」
「はい、痩せた土地でも生産出来」
「そうだ、私もそのことから言うのだ」
 王自身もというのだ。
「痩せた時でも多く摂れるな、あれは」
「だからこそ家畜の餌にもなります」
「そうだな、それでと思ったのだがな」
「そしてその学者もです」
「ジャガイモを食べるべきだと言っているか」
 人間、即ち民がとだ。その学者は主張しているというのだ。
「そうなのか」
「左様です、しかもジャガイモは」
「どうだと言っているのだ?」
「栄養的にも優れているとか。壊血病等にもいいと」
「ほう、壊血病にもか」
「はい」
「それは余計にいい」
 寒冷な欧州では壊血病は長い間恐ろしい病気だった、冬になるとそれこそ多くの者が命を落とした。その壊血病にもいいと聞いてだ。
 王は決断した、そのうえで廷臣達に告げた。
「決めた、ではだ」
「ジャガイモを、ですか」
「民に食べさせますか」
「あれを食べさせて民の腹を満たしだ」
 それにというのだ。
「壊血病等から守れ、いいな」
「それではですか」
「これからは」
「そうだ、ジャガイモをより多く作りだ」
 そしてとだ、王は言っていく。
「民に食べさせろ、いいな」
「はい、わかりました」
「それでは」
 廷臣達も王の言葉に応えた、しかしだった。
 ここで深刻な問題が起こった、廷臣の一人が王に報告した。
「ジャガイモを多く作ったのですが」
「どうした?」
 王はそのジャガイモを食べつつその廷臣に応えた。
「異変があったか」
「民が食べません」
 これが廷臣の報告だった。
「ジャガイモを」
「それは何故だ」
「形が悪く如何にもまずそうだと、それに」
「まだ食べない理由があるのか」
「まずい、それに聖書に載っていない」
 このことは当然と言えば当然だ、ジャガイモは玉蜀黍や唐辛子、カボチャと同じく新大陸から入って来たものだからだ。聖書に書かれていなくて当然だ。 
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