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エコロジー

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第一章

                       エコロジー
 飯田真宙は高校二年生だ、細い黒髪をショートヘアにしていて後ろだけ肩まで伸ばしている。細面で黒の眉は左右それぞれ一の字になっている。朴訥な感じだが色は白く鼻の形もいい。小さな唇は締まっていて目は一重で真面目な感じだ。背は一七〇ですらりとしたスタイルだ。
 その彼がだ、友人の宇山佑樹にクラスでこんなことを言っていた。佑樹は一八〇を越えるがっしりとした体格の持ち主で顔は四角く顔立ちもしっかりとしている、眉がかなり太く髪はスポーツ刈りだ。
「この前さ、沈黙の春って本読んだんだけれど」
「どんな本だよ」
「環境破壊の本だよ」
 それを扱った本だというのだ。
「それ読んで怖くなったよ」
「あれか?酸性雨とかか」
「そうそう、それから他の環境問題の本を読んだんだけれど」
「そんなに怖いのか」
「まずいよ」
 真顔でだ、真宙は佑樹に言った。
「このままだと」
「地球がか」
「そうしたら僕達も他の生物もね」
「死んでしまうか」
「そう、酸性雨に砂漠化にね」
「オゾン層とかもだよな」
「海洋汚染、生態系の破壊。一杯あるよ」
 一口に環境破壊といっても、というのだ。
「これは何とかしないといけないよ」
「じゃあどうすればいいんだよ」
「僕達で何とかするしかないよ」 
 真剣そのものの顔でだ、真宙は佑樹に告げた。
「僕達自身の手でね」
「俺達でか」
「そう、何とかしないといけないんだよ」
「それはな、やっぱり環境破壊ってな」
 佑樹もだ、真宙の言葉を聞いて頷いた。
「危険だからな」
「そうだよ、けれどね」
「けれど?」
「環境問題は僕達の手で何とかしないといけないけれど」 
 それでもとだ、ここで真宙は難しい顔になって首を傾げさせてだった。そのうえで佑樹に対してこうしたことを言った。
「具体的にはね」
「どうすればいいか、か」
「実際どうすればいいのかな」
 真宙は悩んでいる顔で佑樹に問うた。
「僕達は」
「それな、ちょっと先生に聞いてみるか」
「先生に?」
「ほら、公民の逵本先生な」
 この学園の教師の一人だ、五十近い独身の女教師で黒髪を短くしている。目は丸くいつも歯茎まで出した顔をしている。
 その逵本の名前をだ、佑樹はここで真宙に言ったのだ。
「あの先生何か色々活動しているらしいから」
「ああ、そうなんだ」
「差別とかな。ひょっとしたら環境とかにもな」
「詳しいかも知れないんだ」
「だからあの先生に聞いてみるか?」
「僕達が環境について具体的に何をすればいいか」
 真宙は考える顔のまま佑樹に応えた。
「それを聞けばいいんだ」
「そうしないか?」
 こう真宙に提案するのだった。
「二人でな」
「あっ、佑樹も一緒なんだ」
「そう言われるとな」
 真宙からだ、環境の話を聞くとというのだ。
「俺も心配になってきた」
「環境のことが」
「前からテレビとか新聞で言ってるからな」
 環境問題についてはというのだ。
「俺も少しだけれどな」
「気になってたんだな」
「そうなんだよ、じゃあな」
「それじゃあか」
「一緒に行こうな」 
 こう話してだ、そしてだった。
 二人はまずはその教師のところに行った、逵本は社会科教師の職員室で二人に環境保護の為に自分達はどうすればいいと聞かれるとだ、やけににやついた獲物を前にした動物の様な顔になってそのうえでこう言った。
「それならいい場所があるわよ」
「いい場所?」
「っていいますと」
「ええ、NGOでね」
 こう二人に言うのだった。 
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