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エセ秀才の生残りを目指した悪足掻き

作者:バンダナ
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第6話 英雄誕生フラグクラッシュ

 
前書き
久しぶりの更新です。期間が開いてすみません。 

 
第6話 英雄誕生フラグクラッシュ

宇宙暦797年2月1日 自由惑星同盟首都星ハイネセン 統合作戦本部
モニターに広域通信でのライブ映像のヨブ・トリューニヒト最高評議会議長が映し出されていた。
この映像は、自由惑星同盟、イゼルローン要塞はもとより帝国にも流されている。
「まずは、勇戦むなしく敵中にて捕虜になった同盟兵士諸君に対して謝罪させて頂きたい」
「諸君らが降伏を甘受せざる得なくなった責任は軍上層部にあり延いては任命責任を負う最高評議会にある」
「諸君らにその責は無い!責任は全て最高評議会にある。最高評議会議長として諸君に謝罪する」
そう発言した次の瞬間、ヨブ・トリューニヒトは演説台の横で土下座をした。土下座したまま続けた
「同盟兵士諸君、誠に申し訳ない!」
5秒・・・10秒・・・20秒・・・トリューニヒトは無言のまま1分間頭を下げ続けた
土下座を解き演説台に戻りスピーチを再開した
「そして感謝する」
「同盟兵士諸君!善くぞ、善くぞ生きて帰ってきてくれた。ありがとう!本当にありがとう!」
今度は立ったまま最敬礼を行った

「帰還する帝国兵士諸君、諸君らが“無事家族と再開できる”ことを願うものである」
「最後に、いかなる思惑があろうとも“人道”をもって、彼らの帰還に協力してくれた『帝国軍』の対応に対しても感謝の意を表する。
自由惑星同盟最高評議会議長ヨブ・トリューニヒト」


軍令によって、同盟軍全体にこのライブ映像を見るよう通達があったため俺もロビーで見ていたが、周りが騒がしい
(まぁ、『美麗字句の名人』『主戦派の代弁者』と言われて、いまや最高権力者になったトリューニヒトが謝るとは誰も思ってなかっただろうし)
(土下座とか最敬礼とかやりすぎだろ!)
(でもこれで、原作にあった『ラインハルトを信望する精兵200万』をいくらかは崩せるだろう)
(遠征作戦前にトリューニヒトに入れ知恵した甲斐があった)


実際に2月5日にラインハルトのメッセージを聞いた帝国兵士は
「なんだ、寵姫の弟は言うことも叛徒の長の二番煎じか」
「しかも、悪いのは自分じゃなくって前任者(ミュッケンベルガー)だって言いたいんだろう」
「そして、俺たちの関心を金で買おうってか」
などという原作とは違った反応があちこちでおこり、
特にモールゲン、ダンク、クラインゲルト、ハーフェンの出身者がいる部隊では遠征作戦時の非難声明を聞いていたせいか
「家族を餓死に追いやっておいていまさら何を言うか!」
と激しい反発がおこっていた




****************

宇宙暦796年8月1日自由惑星同盟首都星ハイネセン 国防委員長執務室
 ヨブ・トリューニヒトは俺から提出された『帝国遠征侵攻作戦』なる資料を読み終えるとデスクに放り投げて言った
「君は本気でこの作戦案に賛成しろと言うのかね」

俺はいかにも心外そうな表情を作って尋ねる
「国防委員長はこの案に不満なのですか」

トリューニヒトは呆れたように言った
「当然だろう、これは受売りだが『勝つため戦略とは敵の戦力よりも多くの戦力を用意すること』だろう?」
「帝国はその正規艦隊だけで十八個艦隊、貴族の私兵艦隊がほぼ同数程度あると言う」
「それなのに攻略目的地もなければ、攻略星域の指定もない。そのくせ動員するのは八個艦隊3000万人だ」
「勝てる見込みの無い出兵に賛成できる道理がない」

俺は頭を下げて礼を言った
「ありがとうございます。国防委員長が正しい軍事的見地をお持ちで安心しました」

持論を反対されて礼を言われるとは思っていなかったらしく、トリューニヒトは鼻白んだ
「君はいったい何をしたいのかね」

「この『帝国遠征侵攻作戦』を使って政権交代し、軍部・世論の暴走をとめます」

トリューニヒトは目を細めて聞いてきた
「君には詳しく聞く必要があるようだ」


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               ・
俺は、原作知識から予想できること、ブレイクしていくことを語った
予測されることとして
1、現政権は『支持率上昇』と言う餌があれば軍事的根拠の無い『帝国遠征侵攻作戦』を採用する
2、『帝国遠征侵攻作戦』に対してラインハルトが焦土作戦で対応してくる可能性が高い
3、その結果同盟軍は供給したはずの食料を逆強奪し、辺境住民の恨みを買う
4、士気の低下、部隊の分散による各個撃破により壊滅的被害が予想される
5、『帝国遠征侵攻作戦』失敗により現政権が総退陣を余儀なくされる
6、この作戦に成否にかかわらず、帝国には皇位後継者を決定していないため現皇帝の死後の内乱は必至であり皇帝の余命は長く無いことが予想される
7、内乱時に備えてラインハルトは門閥貴族との差別化をするため平民の人気取りのために『捕虜交換』を提案してくることが予想される
8、帝国内乱時に同盟軍の介入を防ぐために『捕虜交換』を利用した謀略(クーデーター)をおこなってくることが予想される
等を挙げていきその対策として
1、『帝国遠征侵攻作戦』を内実「大規模威力偵察作戦」にして早期に撤兵して兵力の損失を最低限に抑える
2、『捕虜交換』には合意し、捕虜に対して政府の責任を認め謝罪する
3、これまでの政権との違い(民力回復に努め選挙のための出兵をさせない)を明確に打ち出していく
等と説明していった
トリューニヒトは対策の2、3、に対して・消極、懐疑的だったが
「ローエングラム伯は前任者の非を打ち鳴らし、自分こそが平民兵士の味方だと主張するでしょう」
「しかし、閣下はお立場が違う。前任者の非を問えないのであれば、政府として謝罪することにより『自分は悪くない』と言うローエングラム伯をイメージダウンさせることができます」
「主戦論者には、『出兵したらまた『焦土作戦』を採られその結果、同盟の財政に打撃を与え、帝国にいる無辜の住民に再び飢餓の苦しみを与えることになる。それは同盟政府としても人道的観点からも好ましいものではない』
と主張してしまえば彼らはそれ以上強くいってこれないでしょう」
等々と熱弁(笑)をふるい説得していった
               ・
(ちなみこの時に、トリューニヒトに「憂国騎士団は地球教教徒でサイオキシン使っているよ(意訳)」と教えたら顔面蒼白になっていた(笑))
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               ・

そうして、トリューニヒトの同意を取り付けた俺は国防委員長執務室を出た時に警備兵の目の前で憤懣やるかたない表現をつくり
「国防委員長は分からず屋だ!私のこの作戦があれば大勝利間違い無しなのに!」と叫ぶ小芝居を演じつつ
最高評議会議長の秘書に会いに行った
****************



宇宙暦797年2月19日 惑星フェザーン
 遠くイゼルローン要塞で『捕虜交換式』がおこなわれているころ、俺は新任主席駐在武官として帝国高等弁務官レムシャイト伯ともう一つの捕虜交換いや『客人の帰還式』を終えた
実際には捕虜になったが外聞を気にして公式には『病気療養していた』門閥貴族に連なる貴族士官3000余名に秘密裏に「帝国にお帰りいただく」のだ
これによって帝国の貴族にパイプを作っておき内乱時にラインハルトに対するハラスメント攻撃をしやすくするためだ
勿論レムシャイト伯にも
「ローエングラム伯のメッセージではミュッケンベルガー元帥が無能であるかのように聞こえます。先達に対する畏敬の念は無いのでしょうか」
「飢餓作戦を行うような軍人が本当に約束を守るとは信じられません」
等とあたかも同盟政府がラインハルトを忌避しているかのように吹き込んだが、彼にとってラインハルトは『寵姫の弟』でしかなかったようでたいした反応は無かった


俺がフェザーンの主席駐在武官になったわけはロボスの遺命(笑)である。曰く
「フォーク准将は私に引導を渡しヤン・ウェンリーを次代の顔としている。それはいい」
「しかし許せないことに彼自身は楽隠居を画策している。軍官僚としては優秀な彼を是非とも扱き使ってほしい」
とクブルスリー新統合作戦本部長に直接嘆願したそうだ(クブルスリー大将から聞かされました)
クブルスリー統合作戦本部長から笑顔で
「ロボス元帥だけでなく、トリューニヒト議長からも「扱き使ってほしい」といわれているからね」
と言うありがたくない宣告を受けた俺は、遠征作戦後に『無謀な作戦を作成、推進めた』責任により一階級降格、記録統計室に左遷された職場を約三ヶ月で離れることになった
(ちなみに、遠征軍各司令官は「無謀な作戦にも拘らず、辺境住民の慰撫に努め同盟軍の瓦解を未然に防いだ」として昇進している)


宇宙暦797年10月19日 惑星フェザーン
 原作で言う『救国軍事会議のクーデター』は小規模のうちに終わり、『リップシュタット戦役』は未だにその終わりを見せなかった
この原因はグリーンヒル大将のクーデター不参加とグリューネワルト伯爵夫人暗殺という原作ブレイクにある


  
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