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ウォーボンネット

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第五章

「スー族になってか」
「それで応援なんてな」
「どうなんだよ、それって」
「また違うんじゃないのか?」
「フットボールでスー族ってな」
「どうもな」
 選手達はその苦笑いのまま話していく、だが。
 それでもだ、その苦笑いは嫌なものではなくだ。明るいものでこうしたことも言ったのだった。
「それでもな」
「悪くないな」
「ああ、スー族は強かったしな」
「格好いいしな」
 それで、というのだ。
「そのスー族に応援してもらえるんなら」
「是非な」
「いつも以上に頑張らないと」
「申し訳がないぜ」
 こう話してだった、彼等はいつも以上に気分をよくさせて試合に挑んだ。そうして心地良く勝ってからだった。
 観客席にいるスー族の二人にだ、こう言った。
「また応援に来いよ!」
「お陰で今日はエキサイトさせてもらったぜ!」
「次も頼んだぜ!」
「待ってるからな!」
 二人に熱い声で言うのだった、そして。
 二人もだ、会心の笑みを向け合って言った。
「正解みたいだな」
「そうだな」
「僕達の試みは」
「大成功だったみたいだな」 
 このことを実感したのだった、選手達の言葉を受けて。
 そしてだ、こうも言ったのだった。
「それじゃあ次の試合も」
「この格好で応援しような」
「このスー族の格好で」
「ウォーボーンネットで」
 二人で誓い合う、すると。
 チアガール、これまでは実質唯一のカレッジの応援だった彼女達もだ、二人のところに来て笑顔で言って来た。
「よかったじゃない」
「いい応援だったわよ」
「あんた達のその応援ね」
「最高だったわ」
「だからね」
 それで、というのだ。
「私達も負けないから」
「絶対にね」
「そっちがそれだけの応援するんなら」
「こっちもよ」
「ああ、じゃあお互いに」
「盛り上げていこうな」
 二人はチアガール達に笑顔でこう返した。
「応援を」
「これからも」
 二人はそれで満足だった、別に誰とも競争するつもりもなかった。ただ応援してチームが励まされればそれで満足だった。
 それでだ、二人は自分達の部屋に戻ってもだった。ウォーボンネットを脱いで普通の格好になってもこう言うのだった。
「チームが元気になってよかったな」
「ああ、僕達の応援でな」
「じゃあ次もな」
「次もチームが元気になる様に」
「この格好になってな」
「応援しような」
 二人でコーラとスナック菓子で乾杯して話すのだった、そして次の試合もその次の試合もウォーボンネット姿で応援をした。
 それが何時しかだ、このカレッジに定着して。
 スポーツチームの応援は常にウォーボンネットが登場する様になった、それがこのカレッジひいてはユニバーシティのトレードマークになりだった。何時しか通称がウォーボーン=ユニバーシティとまでなったのは後日の話である。二人が卒業しそれぞれ社会人になってからの。


ウォーボンネット   完


                         2015・2・26 
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