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ウォーボンネット

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第一章

                  ウォーボンネット
 ウォーボンネットについて、二人の祖父ウォール=アクセントはこう言っていた。
「映画では観たな」
「映画ではなんだ」
「お祖父ちゃんは」
 エイブラハムとジョージ、二人の孫達は祖父の言葉を聞いてこう言った。
「観たんだ、ウォーボンネット」
「そうなんだ」
「あれだよ、スー族が被っていたんだ」
「うん、スー族はね」
「僕達も聞いてるよ」
 二人はまだあどけない、共に青灰色の目を輝かせて答えた。見ればウォールも青灰色の目だ。そして髪は濃いブロンドだが孫達も同じだ。彼から娘に、そして孫達にと受け継がれているものだ。
「ネイティブアメリカンのね」
「部族だよね」
「物凄く強かったっていう」
「有名な部族だね」
「ああ、映画だとな」
 その映画のことをだ、ウォールはさらに話した。
「インディアン嘘つかないと言う戦士がな」
「着てるんだね」
「そうした服だよね」
「あれだ、鷲の尻尾のところの羽根をたっぷり使ってな」
 祖父はウォーボンネットの詳しい形についても話した。
「オオツノヒツジやらアカシカの皮で作ったシャツにズボン、それにヤマアラシとかの針も付ける」
「それで斧とか槍持って」
「盾も持つんだよね」
「盾にもな」
 ウォールは孫達の突っ込みに話の波を乗らせて話した。
「それでだ」
「それでだね」
「馬に乗って」
「白人やっつけろ!」
「そう叫ぶんだよね」
「ああ、強かったんだこれが」
 ウォールはスー族の戦士のこともだ、明るく笑って話した。
「騎兵隊が強くてもな」
「そうだよね、何かね」
「騎兵隊も格好いいけれどね」
「スー族も格好いいよね」
「かなり」
「ああ、敵だけれどな」
 これは映画の中だけのことではない、アメリカという国そのものに対してだ。映画にそのままそれを出していたのだ。
「格好よかったな」
「僕大人になったらね」
「僕もね」
 ここで孫達は笑ってこうも言った。
「スー族の戦士になりたい」
「ウォーボンネット被りたいよ」
「それで斧とか持ってね」
「騎兵隊と戦うんだ」
 まだ幼い二人は笑って言う、だが。
 ウォールは二人のその言葉をだ、笑って否定した。
「流石にそれは無理だな」
「今は?」
「無理なんだ」
「もう騎兵隊もいないしな」
 この場合の敵である彼等もというのだ。
「それにスー族ももう敵じゃないからな」
「だからなんだ」
「もうスー族にはなれないんだ、僕達」
「ウォーボンネット被ったり」
「戦士の格好にはなれないんだね」
「そう、なれないからな」
 こう孫達に話すのだった。
「残念だけれどな」
「何だ、折角なのにね」
「折角格好いいのにね」
「違うんだ、実際は」
「もうなれないんだ」
「そうだ、まあそこは諦めてな」
 祖父は孫達に優しく話した。
「こうした格好もあったことは覚えておけよ」
「うん、ネイティブの人達の格好」
「こうしたのもあったんだね」
 ようやく小学校に入るかどうかという年齢のエイブラハムとジョージはこの時はただ頷くだけだった、そして祖父とのこの話はすぐに忘れた。
 二人は成長していってだ、ハイスクールを卒業して。 
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