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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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第四話 事件解決……垣間見る失われし記憶

全は周囲の状況を把握する。

万が一、集団に包囲された際の対処法なども全は知っている為、最優先事項を設定する。

─────まずは、人質である二人の安全確保……!

全はそう決めて、腰から短刀をとなったシンを抜き放つ。

「誰ですか、君は……?月村が雇った護衛か何かですか?いや、そんな小さい護衛がいる訳もないか」

リーダー格である男はそう結論づける。先ほどの男が気絶しているのは男の実力不足で全は所詮子供と決めつける。

「お前たち、あのガキは殺しても構わん」

「てめぇ、よくも!」

男の声と共に立ち止まっていた男の仲間だろう、三、四人が全に襲いかかる。

「に、逃げなさい橘!」

アリサはそう叫ぶが、全は振り返りもせずに─────()()()()()()()()

「なっ!?」

「ど、どこに……!?」

男達は見失った全を探そうと目を凝らすが……

「がっ!?」

男の一人がそんな苦悶の声をあげる。

その男の後ろには、右手に逆手に持った短刀に左手を添えて腰を低く構えている全の姿があった。

「なっ!?い、いつの間に!?」

「小僧、舐めるのも大概にしろよぉ!」

男達は全に迫るが……触れるか触れないかという間一髪という所で再び全は消える。

「お、思い出した、これって神速とかいう奴じゃねぇか……?」

「はぁ?んな訳あるか、んなもん扱える奴は化けモンだろうが!」

それよりも早いのだがな、と全は動きまわりながら嘆息する。

全の考えている通り、今全が使用している高速移動術は神速……よりも早い《縮地(しゅくち)》という術である。

名前の通り、地を縮める……つまり、この移動術の前に距離など無意味。どれだけ離れていても一瞬で距離を詰めるのがこの縮地の特徴だ。

といっても、今の体で全力の縮地をすれば全自身の体がついてこれない為、今使用しているのは縮地の3歩手前の早さだ。

しかし、それでも早い。おそらく神速使いでもなければ見える事は敵わない程の早さなのだ。

「ぐっ!?」

「が……」

そして、あっという間に残りの男を沈黙させた全。

そこまでいってリーダー格の男はようやく焦り始める。

「ば、バカな……貴様、ただのガキではないのか……?」

「俺はお前なんぞ知らん……だがな」

そう言いながらゆっくりとリーダー格の男に近づいていく全。

リーダー格の男はゆっくりと近づいてくる全に怯える。

「く、来るな!?」

「俺は……俺から何かを奪っていこうとする者を……許さない。約束も違える訳にはいかないからな……」

「や、約束……?そ、そうか……き、貴様、あの時のガキか……!」

と、何かを思い出したのか男は全を指差す。

「そ、そうか、ならばお前の異常な戦闘力も頷ける……四年前のあの時も大の大人を何人も()()()()()んだったな!」

「え……?」

それを聞いて驚いたのはアリサだった。

すずかも泣きはらした顔で驚愕している。

それもそうだろう、目の前の少年が四年前……つまり、まだ小学校に上がる前に殺人を犯しているなどと信じられないからだ。

「そうだった、そうだった!確かに貴様にはあの時の面影があるな!」

「貴様があの襲撃を手引きした、という解釈でいいな……?」

「ああ、そうさ!月村家の御息女を誘拐すれば、あいつも俺に当主の座を明け渡すかと思ったんだが……まさか、あの時助けに現れた貴様がまた俺の計画を邪魔するとはな!」

「え、どういう事……?」

すずかには目の前の男の言っている事が分からなかった。

なぜなら自分にはそんな記憶はないからである。四年前なら自分も憶えているはずなのに……彼女にはそんな記憶はない。

「ああ、憶えてないようだな……まあ、あんなショッキングな物を見せられれば憶えてないのも頷ける!こいつはな!平然と殺しをしていた!」

そう言って激しく叫び立てる。

「正真正銘の化け物だ!目には動揺なんかなく、ただ作業をしているような目!お前なんか普通の人間なんかと一緒にいちゃいけねぇんだ!」

「ああ、そうだな」

それに対する全の解答は淡々としたものだった。

「別に。俺が異常なのは何年も前に知っているし、それと向き合っている。ただ、それだけだ。それとさっき俺の事を化け物だと言っていただろう?」

「ああ、そうだな。お前のような殺人鬼は化け物で充分だ!」

「そうだな……それじゃあ、月村は化け物ではないな?」

「は……?」

「「え……?」」

全の言葉を聞いた全員が呆ける。

「そうだろう?化け物とは人の理解の範疇を越えた存在に人間が畏怖して付ける呼び名。だが、月村はどうだ。吸血鬼などと言われても信じる人間はほぼいないだろう」

「たとえ信じたとしてもちょっとした特異体質の体だと説明すればいい。どうだ?これでも、月村は自分を化け物と罵る事が出来るか?」

「き、貴様……!」

そう、この言葉を全は待っていたのだ。

全は相手に自分を理解出来ない存在=化け物だという価値観を植え付けた。その上ですずかの事を説明する。

実際全の言う通り、すずかは吸血鬼と言われてもわからない。ならば、理解出来ない存在である全の方が化け物扱いされるのが当然なのだ。

「さて……それじゃあ、化け物による制裁を与えようとしようか……」

そう言うと、右半身を引いて右手に持っていた短刀を隠すように後ろに持ってくる。

腰を低くして、左手は右腕に添えるように持ってくる。

「な、何をする気だ……?」

「さあ、何かな……?」

そう言った瞬間──────全の姿は男の前にあった。右手に持っているシンを振り抜こうとしている。

「暗殺妙技、閃軌(ひらめき)

振り抜かれようとしているシン。

その場面を見たアリサとすずかの脳内には……再び、あの映像が流れていた。

その映像の中でも少年は男を殺す為に今のような動きをして、男を殺していた。

そして、その映像が止まると────





























「「やめて、全(君)!!!」」




























「っ!?」

振り抜かれようとしていたシンは……男の顔のすぐ横を掠めた。

「あっ……ああ…………」

男は死んだと思ったからなのか、それとも生きてると安心したからか、気絶する。

一方、名前を呼ばれた全は驚き二人のいる方に振り返る。

それはなぜか……簡単な事だ、昔と同じように全の名前を呼んだからだ。

「な、何で……?」

「え、わ、私なんで……?」

「ど、どうして……?」

どうやら二人共、思い出した訳ではなく無意識に叫んだだけらしい。

「そう、だよな……」

全は落胆した様子でその場に立ち尽くす。

─────ありえる訳ないのに…何で、期待なんかしたんだ……。

と、その時

「「すずか!!」」

男性と女性が部屋の中に入ってきた。

女性の方は紫色の髪をしているので、恐らくはすずかの親戚か……それか、当主と言われていた存在だろう。

男性の方は小太刀を両手に持ち、戦闘準備は万端だといった感じだ。

「お二人を救助に来た方ですか。それでは、俺はこの辺で」

全はそう言って出ていこうとするが

「ちょっと待ってくれないか」

男性の方が出ていこうとする全の肩に手を置く。

「君にも話を……!?」

男性は全の顔を見た瞬間、驚愕する。女性の方も同様だ。

そして、男性と女性に全は見覚えがあった。

()()()()()ですね、恭也さん、忍さん。話は後でも構いませんよね。それでは」

そう言って今度こそ全は出て行く。

まるで、逃げるように……。 
 

 
後書き
暗殺妙技、閃軌────一瞬でトップスピードに達し、相手の首にある動脈を一瞬の内に切り裂く技。相手に見つかった際の一撃決殺に縮地を加えた全だけの暗殺妙技。

この暗殺妙技は全て、対人戦闘に特化しており、相手が人であれば全は躊躇無くこの妙技を使い、相手の命を奪ってきた。 
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