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銀河転生伝説 ~新たなる星々~

作者:使徒
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第32話 第四次グリニア星域会戦

第三、第五、第七艦隊の壊滅。
それは、ルフェール全土に激震と恐慌をもたらした。

この作戦を主導した現政権は総辞職し、軍部も統合参謀本部長フォルト・ゲイム元帥が全ての責任を負って辞職。
代わりにロング・ニトラス元帥が本部長となり、第一艦隊司令官マイト・アルベイン大将が元帥に昇進の上、宇宙艦隊司令長官へ就任した。
また、総参謀長の地位には元第三艦隊司令官エルマン・ガーディ大将が着き、各艦隊の編成は以下のようになった。

第一艦隊:13000隻(マリク・バーバラ中将)
第二艦隊:12000隻(ワルトゥ・モンド中将)
第四艦隊:12000隻(ロイド・ジーグ中将)
第六艦隊:12000隻(カルスール・ミクロン中将)
第十三艦隊:12000隻(ラルフ・エーヴィン中将)
第十四艦隊:13000隻(ラムディ・エンソン中将)
第十五艦隊:13000隻(アラン・バンディーク中将)

これに、司令部直属部隊5000隻と4つの独立艦隊が10000隻。それと1000隻程度の特殊部隊がある。
これが今のルフェールの全軍であり、他は星間警備隊と哨戒隊の艦が残るのみである。
自由惑星同盟の末期と比べればまだマシであるが、それでも銀河帝国との国力比を考えると絶望的な状況であった。

そして、このルフェールの窮状を見た銀河帝国皇帝アドルフは、宇宙艦隊司令長官ミッターマイヤー元帥にルフェール侵攻を命令。
しばらくの準備期間の後、正式にルフェール本国侵攻が発令された。

・・・・・

帝都フェザーンを出立したルフェール侵攻部隊は、各地の部隊を吸収し、最終的に15万隻もの規模に達した。

ルフェール側もこれに呼応して大規模動員をかけると共に九王国連合へと援軍を要請するが、時間的に見て間に合わない可能性が高かった。


宇宙暦818年/帝国暦509年 11月24日。
ティオジアでの最終補給を終えた銀河帝国は、いよいよルフェール領へと侵攻を開始する。

ミッターマイヤー、ハウサー、アルトリンゲン、ウィンディルム、グローテヴォール、ザウケン、ディッタースドルフ、バイエルライン、ハルバーシュタット、ブラウンヒッチ、ホフマイスターの11個艦隊15万5000隻が辺境の国々を通過する様は、まさに壮観の一言に尽きた。

対して、ルフェールも全軍の7個艦隊(+4個独立部隊、1個特殊部隊)10万4000隻を率いて出撃し、帝国軍を国境で押しとどめるためにグリニア星域にて布陣する。

かくして、グリニア星域にてルフェールの命運を掛けた一大決戦が行われることとなった。


* * *


――宇宙暦818年/帝国暦509年 12月6日 2時21分――

「ファイエル!」

「ファイヤー!」

4度目となるグリニア星域会戦が幕を開けた。

銀河帝国は、攻勢に強いハルバーシュタット、ホフマイスター両艦隊30000隻を先頭にルフェール軍へと攻め寄せる。

「敵旗艦の艦形確認。シュトルム・ティーゲルにヘルゴラント……ハルバーシュタット艦隊とホフマイスター艦隊です!」

「なるほど、共に攻勢に強い指揮官だな………第一、第二、第十四、第十五の4個艦隊を翼形に展開して敵の攻撃を受け止めさせろ。間違っても単独で当たらせるなよ」


ルフェール軍宇宙艦隊司令長官マイト・アルベイン元帥はそう指示を出しつつも、心の中で考える。

「(それにしても、これは完全に意表を突かれたな。あの2艦隊は戦略予備として戦局を決定づける場面まで使用してこないと思っていたが……ままならんものだ。おかげで初手から防戦一方になったが、別動隊が敵の後背を突けば攻勢に転じることも可能だろう。下手に打って出て作戦全体が崩れるより遥かにマシだ。ここで何とか敵にそれなりの打撃を与えることができれば、当座は凌げる。凌げば………凌いでどうするのだ?)」

脳裏に、ある疑問が浮かび上がる。

「(凌いだところで、銀河帝国が圧倒的に有利な状況は変わらない。しかも、ロアキアと辺境を掌握した際には更にその差は開いてしまうだろう。ルフェールが生き残るには勝ち続けるしかない。だが、勝ち続けられるのか? そんなことは不可能だ! ならば、今ここを凌いだとして、その先に何がある? 何が待っている?)」

今まで蓄積されていた疑問が次々と、間断なく浮かび出していく。

と、そこへ

「閣下……閣下!」

思考の渦に耽っていたアルベインは、総参謀長であるエルマン・ガーディ大将の声によって我を取り戻した。

「ん、どうした?」

「そろそろ、別動隊が敵の後背に出る頃です」

「そうか……ここが正念場だな」


3時54分。
小惑星帯を隠れ蓑に帝国軍の後背に出た第四、第六艦隊が攻撃を開始する。

それを見たミッターマイヤーは、感嘆の声を上げた。

「ほぉ……小惑星帯を迂回してきたか。数において劣勢な中、あれだけの別動隊を組織するこの大胆な作戦。敵の指揮官は中々やり手だな」

「閣下、如何しますか?」

「後背に関してはザウケンとグローテヴォールに任せれば問題は無いだろう。両艦隊とも数で敵を上回っているし、少なくとも今すぐ突破されるような事態にはならないハズだ」

「はっ」

「しかし、ふむ………よし、今度はこちらから仕掛けるとしよう」

「はっ?」

副官が怪訝な声を返す。

「この艦隊を急進させ、敵左翼部隊に攻撃を加える。幸い、敵は別動隊にそれなりの兵力を裂いているため本陣が手薄だ。あの前衛部隊さえ突破すれば、こちらの勝利は目の前だ」

「ですが、その間の全軍の指揮は………」

「俺が指揮をしなくても、代わりにハウサーがやってくれる。なにも問題はないさ」

ミッターマイヤーはその神速の用兵を用いてホフマイスター艦隊の右方より飛び出し、ルフェール軍左翼を担当していた第十五艦隊へと襲い掛かる。

「くっ、総司令官直々に出てくるとは……第三、第四独立部隊を第十五艦隊の援軍に当てろ!」

アルベインは、遊撃隊として後方で待機していた4つの独立部隊の内、ダグラス・ドーザン少将の第三独立部隊とノルド・ヨルキン少将の第四独立部隊を投入することを決めた。

両部隊は合わせて5000隻程度でしかないが、第十五艦隊と戦っているミッターマイヤー艦隊にとっては無視できる数ではない。
彼らにある程度の戦力を裂く必要性が生じ、その分、第十五艦隊の負担は軽いものとなる。

後は、第四、第六艦隊が敵の後衛を突破するのを待てば良いだけだ。


一方、帝国軍の方でもこの動きは察知していた。

「閣下、敵の増援が出撃した模様です。このままでは我が艦隊の側面を突かれます」

「そうか。全軍に攻撃の強化を伝達。前方の敵を押し込んでから、改めて敵増援と対峙する」

ミッターマイヤー艦隊は第十五艦隊へ攻勢を掛けて押し込んだ後、直ちに90°反転してやってきた第三、第四独立部隊へと向かう。
合わせても5000隻程度にしかならない第三、第四独立部隊ではミッターマイヤー艦隊に太刀打ちできる筈もなかった。

・・・・・

第三、第四独立部隊を撃破したミッターマイヤー艦隊は、改めて第十五艦隊へと向き直る。
既に、第十五艦隊の損傷率は半数近くに達していた。
第十五艦隊が崩れればハルバーシュタット、ホフマイスターの艦隊を止める翼陣形は成り立たなくなり、帝国軍によって瞬く間に蹂躙されるだろう。

今が頃合いと見たのか、アルトリンゲン艦隊、ウィンディルム艦隊、バイエルライン艦隊が前進を始める。

「敵軍、待機していた3個艦隊が動き出しました」

「不味いな……別動隊を組んだ分、こちらの本陣は手薄だ。前線を突破されれば後が無い。第四、第六艦隊はまだか?」

「依然、敵2個艦隊と交戦中。突破は難しい模様」

「これは失敗だな……両艦隊には後退して本陣に戻るよう伝えろ。急げ!」

とはいえ、第四、第六艦隊が戻るまでには相応の時間が必要であり、その間、帝国全軍の攻勢に曝されるのは間違いない。

「全軍総力戦用意。第十三艦隊と第一、第二独立部隊は前線に出て敵の攻勢を防げ。それと、第一特殊部隊に出撃命令を出すんだ」

アルベインの命に応え、第十三艦隊と第一、第二独立部隊が前線に加わる。

帝国軍もアルトリンゲン、ウィンディルム艦隊が前線へと加わり、戦局は総力戦へと移行しつつあった。

ルフェール軍は、今や全軍で以って前線を支えている。
特に第十五艦隊の損耗は著しく、崩壊は時間の問題であった。

と、そこへ1000隻程度の部隊が更に参加していく。

この部隊――第一特殊部隊は第二次グリニア星域会戦で壊滅した第一独立機動部隊の流れを組む部隊であり、同様に全艦が痛艦で構成されている。
その勇猛さはルフェール軍随一であり、アルベインは切り札として切るタイミングを計っていた。

前線に参加した第一特殊部隊は暴れに暴れ、僅か1000隻の少数であるにも関わらず、3000隻以上の帝国艦艇を撃沈破する戦果を上げた。

これには、ミッターマイヤーでさえ唖然となる。

「痛艦隊か……敵として出てくるとこれほど厄介とはな。倒せない敵ではないが、こちらの被害もバカにならん。ここは同様の部隊を当てるとしよう」

「ですが、現在このルフェール侵攻軍に痛艦など――」

「彼らには、アーベ中将の部隊を当てようと思う」

オイゲン・アーベ中将は『戦場の穴掘り師』の異名を持ち、敵味方に――特に男から――恐れられている。
捕えられた捕虜が彼に『アー』される(男限定)ことが異名の由来なのだが、つまりそれだけ敵軍や反乱軍、宇宙海賊を破り、捕えているということの証明でもある。
また、この行動が軍上層部から事実上黙認されているという点から見ても彼の有能さが窺えるだろう。

実際、ホモやゲイが大嫌いなアドルフさえ彼を黙認しているのだから、軍人としての実力は言わずもなが。
次世代の将官で彼に匹敵できるのは、帝国一の邪気眼使いロメロ・フォン・バルタン中将だけであると言われていた。

そのアーベ中将は、自身の専用艦である戦艦ヤラナイカの艦橋で、歓喜に声を上げていた。

「久々の獲物だ! それも生きが良さそうじゃないか。よし、決めたぞ。俺はあの特に派手な艦の指揮官を食うことにする。あの艦だけは沈めるなよ!」

この瞬間、第一特殊部隊の将兵の運命は決定した。
彼らにとって、死ぬことは生きて捕虜になることよりも救いであった。


* * *


――12月8日 9時45分――

この総力戦を制したのは、やはり艦艇数において上回る銀河帝国軍であった。

全軍の三割強を失ったルフェール軍は、それでもまだ指揮系統を維持しながら秩序だって後退していく。
帝国軍も追撃を仕掛けたいところではあったが、彼らもそれなりに消耗していたため全軍の再編を優先とし、追撃を断念。

ここに、第四次グリニア星域会戦は帝国軍の勝利として終結した。

そして、このグリニア星域にて銀河帝国とルフェールが矛を交えることは、以後二度となかった。
 
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