| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン ~Hero of the sorrow~

作者:C.D./hack
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

ファントム・バレット編 ~守り人たち~
  真なる武器は

 
前書き
痛みを受ける、この拳のみ。
RIGHT@さんの小説を見て、ユキの決意とか書きました。 

 
「すべての武器、今、拳に背負う」

ユキは怪人達が囲む中、途中で保護した少女を背負い、ただ一言呟いた。

『本郷』は、自分と同じ者たちを、拳のみで制してきた。

ならば、こちらも武器を使うのを極力控えよう。

徒手空拳のみで戦うその拳に、手甲が装着される。

それと同時に体が元に戻る。

装飾も何もない、銀色の拳。その拳は『未来』。

「さぁ、どっからでも来い!!」

叫んだ瞬間に、無数の怪人がユキへと襲い掛かる。

(もう、とっくのとうに人間じゃないのなら)

(もう、誰も触れられぬこの拳で、誰かを守ろう)

怪人の肉を引きちぎり、赤心少林拳で怪人が命を散らすのを、しっかりと目に焼き付ける。

ただ一人。その孤独の中で戦う。変身もせず。ライダーの魂を、その体に宿しながら。

「ウルトラサイクロン!!」

ノーモーションでの超電子ウルトラサイクロン。

セイクリングジャンプで怪人たちを押しつぶし。

風が吹き荒れ怪人を消し飛ばす。

「らぁっ!!」

神速、ノーモーション、光の速度の上、『粒子』を超えた一撃。

ただそんな中でも。奴らはやって来る。

「・・・・・・!!ショッカー」

そう、奴らだ。悪魔の組織。背負った子供を下ろし、傍に隠れてという。

アシムレイトロイド量産タイプ。と、そこには。

「?・・・・・・リンさん、ライトさん?」

そう、ライトが。リンが。いや、番外個体(ワースト)がそこに立っていた。

「そこにいるんだろう?死神博士」

ゆらりと近くの次元が揺れた。そこから現れたのは、死神博士。

「やあ、裏切り者」

「何の用だ?お前がここに来るなんてこと、絶対にないだろう?」

死神博士は鼻で笑うと、こちらを一瞥し、ワーストを見る。

「心なしか本郷に口調が似たな。まぁ、いい。貴様に会い来たのは他でもない、君の抹殺だ」

「その量産タイプは、異世界の勇者の戦闘力そのまま再現して造ったのだ。それを君に斃せるかな?」

行け、と死神博士が言った。量産タイプが動く。その速度は――――――。

「有に光を――――――」

死神博士が言おうとした瞬間だった。量産タイプが全て四肢をもぎ取られてもがいていた。

「いったい何が―――――」

量産タイプの頭部を持ったユキは、力を入れながら言った。

「これで終いか、死神博士?」

「彼らの力の、約三割しか出てない。一割がステータス、二割がスキル。そう、彼は言っていたよ。じゃあ残りの七割が何なのか、貴様に分かるか死神博士?」

「今からそれをわからせてやる」

ワーストが動く。ゆっくりと歩くユキ。死神博士は変身した瞬間を狙えと言った。

「・・・・・・」

だがもう、そんな理論は彼に通用しない。

バヂィッと、音を立て、リンタイプのワーストが黒焦げになった。

「そんなバカな・・・・・・!?ストロンガーの放電能力!?貴様、まさかベルトが・・・・・・変身せずとも歴代ライダーの力が使えるのか!?」

「使えるとも。そもそもSPIRITSを使う時点で、ベルト等必要なかった!!」

次は背後で爆発。異常な破壊力となったパイロキネシスだ。

生き残っていた量産型を焼き尽くすと、ライトタイプにユキは向き直った。

話ながら、ライトタイプの攻撃をいなす。

「残りの七割の答えは」

「これだ」

拳をいなし、がら空きになった腹部へ拳を叩き込む。

「分かるか、死神博士?これが人が強くいられ続ける理由だ!この、心の強さが!!彼らがどれだけ強いかの・・・・・・」

「証拠だあああぁぁぁっ!!!!!」

凄まじい気迫。それを衝撃として出し、死神博士ごとライトタイプを跳ね上げる。

両腕から発せられるユキの心から、一人のライダーの姿。

(お願いします・・・・・・『本郷』さん!!)

圧倒的なオーラを纏った一号が頷き、ライダーパンチを縦横無尽に跳び、繰り出していく。

ユキも同様に、ライダーパンチを放ち続ける。

正面に回った二人は、そのまま渾身のライダーパンチを繰り出す。

一号ライダーが飛び、ライダーキックを叩き込む。

光の道が出現する。

ユキはそれを駆けあがり始める。

「ライダー・・・・・・」

全ライダーの幻影。ユキの全身に吸い込まれていき、必殺の一撃を放つ。

「キック」

一気にそれは二人を貫き、断末魔も上げさせずに消滅させた。

着地したユキは、後ろを振り返る。

「いるんだろ、仮面の男」

「ん?なぁに。いやぁ、とっても楽しかったよ」

ユキは一気に間合いを詰め、拳を首ギリギリで止めた。

仮面の男はリボルバーをユキの頭に突き付けている。

「あんたは一体、何がしたい。いい加減に教えろ」

「・・・・・・いつからそんなに口がでかくなったんだい?」

「今さっきさ」

次の瞬間、一瞬の攻防が繰り広げられた。

そして、それを制したのはユキだった。

仮面を剥ぎ取り、ようやく顔が見える。ユキは短く、ただ一言言った。

「予想していた通りか」

「よう、僕」

仮面の男の顔は、ユキそのものだった。

違う点としたら、目が赤く、右側の火傷がないのと髪が白い点。

男は深く笑い、こちらを見下した。

「あーあ。ばれちゃった」

ユキはリボルバーを左手で押さえ、手刀を首に押し付ける。

「お前は・・・・・・どの世界の『僕』だ?」

男はさらに笑みを深め、言った。

「・・・・・・英雄は。その力を宿した体を」

「・・・・・・?」

リバルバーがユキの足を穿つ。手刀が空を切る。

仮面の男は一瞬でリボルバーを抜くと、そのままユキに構えた。

「地に落とされる」

断罪(ジャッジメント)

赤い光弾が炸裂する。世界が。全次元がそれに従った。

ユキの英雄の力を粉砕するべく、全次元がその法則に切り替わる。

「・・・・・・それがどうした」

けれど、ユキは無表情に。淡々と。冷酷に。

ライダーパンチを繰り出した。

「なっ・・・・・・!?」

飄々としていた仮面の男、否、sorrowの顔が驚愕に代わる。

「何で!?」

「あなたが《同質化(アシムレイト)》したのは言葉。世界を次元を創る前に、神様が創ったもの。人類以上に神に貢献し、神すらもそれがなくなると困る」

ユキが歩みだす。sorrowの顔には、驚愕と恐怖しかない。

「だけどあなたは、言葉の権利を強奪したんだ。言葉には、力がある。無条件に人を屈服させる力が。
たとえば、そうだな。軍の上官が無理やり無茶な命令を部下に命令するように。その上官を信頼していたら、部下は動いてくれるだろう。しかし、それと同時に信頼されてなくても部下は動いてしまう。それはなぜか?」

「恐怖だよ、僕。あんたは恐怖で・・・・・・世界を屈服させているんだ」

「あんたは世界と半分同質化することで、世界を脅かしているんだ。そして一つの世界が消えてしまうと、本来の物語が歩めなくなってしまう。そして、この世界に関わっている世界を、最悪の場合『破滅』に導いてしまう。だから次元は、あんたの命令にしぶしぶ従っているんだ。しかし、全部はできなかった。その体が耐え切れなかったんだろう?」

「・・・・・・ご名答だよ、ユキ。じゃあ今度は、なんで『言葉』が効かないか、僕の推測を言おう」

「君は『本郷』と同質化(アシムレイト)したね?SPIRITSはそのおかげでパワーアップした。だけど、あの『本郷』は、仮面ライダーが彼以降存在しない世界の住人だ。だが君は、仮面ライダーがそれ以降存在する世界の住人だ。その力が組み合わさった時、『本郷』ですら予測できぬ事態が君の体に起こった」

ユキは無言のまま、その話を聞いた。

「世界と世界、次元と次元が反発し合い、君はそれを無理やり安定させた。だから不安定な存在の君は、世界規模や一部分の規模の攻撃は何も通じない。もちろん存在、誰か一人でも、所持者が把握していようがなかろうが、全ての能力を君には効かない。でも君はいずれ世界から、次元から排除されるよ。不安定すぎて、次元や世界にとっては癌と同じなのだから。君の優しく、強く、愛され、嫌われる姿は・・・・・・」

ライダーパンチがリボルバーを粉々に砕く。

「滑稽だよ!!」

リボルバーが二丁に変化し、弾丸がユキの体を抉っていく。

「その程度・・・・・・チャージアップ!!」

ユキの体が白く発行し、雷を纏う。

「なら時間稼ぎだ!!異世界のライダー、ゴー!!」

弾丸から無数のライダーが出現する。

EXASシステムが発動、全対象の弱点、攻撃方法、パターンが表示される。

圧倒的なデータ量にユキの脳部分がパンクしかけるが、ユキの中のマーキュリー回路たちが対応することで、パンクを防いだ。

「パンクしろよ、なんでお前はそれに耐えられる!!」

sorrowが雷を纏った弾丸を発射する。

「あんたもシステム持ってるのか!!」

「ああ、そうさ!プロトタイプだけどね!!」

ユキの目が朱く、sorrowの目は碧く染まる。

「「システム、フルドライブ!!」」

だが、不利なのはユキだ。

一斉に飛び掛かる異世界のライダーも相手にしなければならない。

「お前は、僕の計画に必要だけど!!精神崩壊ぐらいはさせないといけなかったようだ!!」

「計画って言うのもなんだ!!?」

ユキは周りのライダーを一掃するべく、その拳に雷を纏わせる。

「エレクトロウォーターフォール!!」

広範囲を一掃するストロンガーの技だ。

雷を受けたライダーたちは塵も残さず消滅する。

「一億ボルト以上か!!?しかも一分経っているはずなのに・・・・・・!!」

「そんな事、僕が知るか!!」

驚きつつ、何とか空中でそれを避けたsorrowは赤心少林拳の構えを取る。

「赤心少林拳・・・・・・桜花!!」

空中へと舞い上がり、拳を構えるユキに向け、それを放とうとするが―――――――。

「ライドル!!」

ライドル。Xライダーの武器である。

それを空中で制止させ、回転する。

「真空うううううううううううっ!!!!」

ユキは足でsorrowの首を絡め取り、そのまま自分の方へ引き寄せる。

桜花の拳が首に突き刺さるが、ユキはそれを無視して回転を続ける。

「地獄車ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

相手の頭部をひたすら地面に叩き付ける。

そして、地面に向かって放り投げる。

骨の軋む音。

叩き付けられたsorrowはそのまま立ち上がろうとするが、真空地獄車はそこで終わらない。

「X・・・・・・クリムゾンキィイイイイイイイイイイック!!!!!」

「んなっ!!ま、まさか・・・・・・」

「君はファイズの力と《同質化(アシムレイト)》してっ・・・・・・」

円錐状の赤い光が放たれ、sorrowの体を貫くと同時に、ドリルのように回転してsorrowの体を抉っていく。

そして正面にはXの紋章が現れ、紅い閃光と共にsorrowへと飛び蹴りを打ち込む。

上空へとそれは登っていき、閃光が散った。

上空、12000メートル。

今、sorrowの上には、ユキがいる。

「ま、まさ・・・・ぐぶぅっ!!」

最後まで言葉を紡ぐことは、ユキが許さない。

両腕を右腕でふさがれ、両脚は左腕に抱えられる。

「この、構えは」

「三・点・ドロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオップ!!!!!!!!!」

スカイライダー最大の大技、三点ドロップ。

「こんのぉっ!!!」

sorrowの背から銃が出現し、ユキの右目を撃ち抜いた。

「後悔するなよ、僕!!」

血が垂れる。下にできたのは。

「フォトンブラッドの槍・・・・・・っ?」

12000メートルからの落下。

「クソッたれがああああああっ!!!!」

「12000メートルの持久戦だ、僕!!お前の計画遂行への思いと、俺の中の怒り・・・・・・どちらが強いかのな!!」

「負けるかああああああああ!!」

2000を切った。どんどんと近づくフォトンブラットの槍。

「うっがああああああああ!!!」

否、それは生への執着。腹部から銃を展開し、疾風の弾丸を放つ。

そして、sorrowは叩き付けられた。疾風の弾丸に。

左回りの疾風の弾丸と右回りのフォトンブラッドの円錐が反発し合い、出力で劣る疾風の弾丸が弾かれた。

同時に接地していたsorrowも弾き飛ばされ、ユキも同じように飛ばされる。

「・・・・・・っ」

ユキは立ち上ろうとするが、ガタが来たようで立ち上がることができない。

「まったくさ・・・・・・君はどこまで邪魔したら気が済む」

「そもそも、君がその姿になったせいでこれ以降、ライダーは誕生しないかもしれない」

「世界の危機が訪れたとき・・・・・・君一人が強くても、誰も救うことはできない・・・・・・」

sorrowの問いに、立ち上ったユキは答えた。

「仮面ライダーの魂は受け継がれていく。彼らの背中を見て育った人々が、次の仮面ライダーとなる・・・・・・!!だから、破ることなどできない!!魂のない赤心少林拳を放ったお前に・・・・・・魂を持たぬお前に・・・・・・っ」

「彼らは・・・・・・ライトさんたちは・・・・・・リンさんは・・・・・・皆は!負けない!!!」

その言葉に、sorrowは表情を曇らせた。

「・・・・・・そうか、分かった。君の七割の枷は、取れたか。バイバイ」

リボルバーから弾丸が発射され、弾丸が次元を砕いた。

「・・・・・・・・・」

ぼそりと、sorrowは呟き、次元の先へ消えていった。

「!!?」

静寂だけがその場に残された。

ユキは最後にsorrowが呟いた一言を繰り返し言った。

「僕は・・・・・・未来の君・・・・・・?」

そんなバカなと思ったが、横から現れた少女が、心配そうな表情でこちらを見ている。

「大、丈夫・・・・・・?」

ユキは驚いた顔で少女を見つめた。

「どうして?」

「とって、も、哀し、い・・・・・・痛そう、な顔をしていたから・・・・・・」

カタコトのその言葉を聞き、ユキは上を向いた。

「大丈夫。痛くなんか・・・・・・ないよ」

少女の手を引こうとしたが、自身の体の事に気づき、手を引く。

「痛くなんか・・・・・・っ」

だけど。少女はユキの手を取った。

「痛く、ない。痛くな、い」

しゃがんだユキの頭を撫でながら、ユキは声を出した。

「え・・・・・・?」

「痛く、なくなっ、た?」

ユキは平気な顔で、少し笑った。

「帰ろうか・・・・・・」

そのまま少女の手を引いて、ユキは歩みだした。

けれど、少女は気づいていた。ユキの顔に、涙が流れている事を。

ユキはただ、気丈に振る舞おうとした。

孤独を恐れながら、優しさをその身に宿しながら。

そして最後に。本郷の言っていたことを思い出す。

お前は走る。仮面ライダー。その名と共に―――――――――。 
 

 
後書き
いかがでしたでしょうか?ユキはさらに、哀しい宿命へと身を落としました。
これが枷を外したユキです。もっとひどい方向へ行きますが。けれど、これでいいんです。
仮面ライダーはその姿を隠しながら、孤独に戦い続け、悲しみを一身に背負う。それが、石ノ森章太郎さんが残そうとした人間ドラマだと思ったのでこうなりました。
けれど、ユキは戦い続けます。それが仮面ライダーだから。本当に短い間でしたが、『本郷』はそこまでの影響を与える人物だったということです。
事実、小説版仮面ライダー最後の『The Present Day』では、今までの『本郷』の視点ではなく、おまえとなっています。そして私、作者は思いました。次はお前の番だと。
この文章が、私のこれを書こうという決意を下さいました。
長くなりました。駄文ですみません。だけど、仮面ライダーはヒーローだけではないことを知っておいてください。

長ったらしい持論文すみませんでした!!
感想・コメント・誤字・脱字・アドバイス・質問ありましたらください!!
そしてどなたか、私に・をルビ振る方法を教えてください。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧