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SAO-銀ノ月-

作者:蓮夜
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第二十四話

 
前書き
プロットが、前回の話で尽きました… 

 
「――ッ……」

 いきなりのライトエフェクトが終わり、視界が元に戻り始める。
普段から体験している筈の転移だが、いきなりすぎて視界や平衡感覚が慣れるのに時間がかかった。

 辺りを見回してみると、俺たちをここに吹き飛ばした老店主が言っていた通りに、草原が広がり、風が吹き抜ける気持ちがよい場所だった。

「……大丈夫か、リズ」

 俺と共にここに飛ばされてきた少女の名を呼ぶが、反応が無い。
このフィールドに飛ばされてきていないならまだ良いのだが、もしかして、別の場所に飛ばされてしまっていたのなら……!

「……キ」

 鍛冶屋であるリズが、未知のフィールドにいるのは危険だ。
一刻も早く合流しなければ……!

「……ョウキ」

 しかし、この未知のダンジョンのどこを捜せばいい?
リズがまだ転移してなかった場合、俺がここを離れては追って転移してきたリズが一人になってしまい、それもマズい。

 だからといって、行動しないわけにはいかない。
俺はリズを捜す為に、すぐさま駆け出し――

「ショウキ!」

 その声に俺はようやく、自分が何かを護るように抱きしめていたことに気づいた。
転移してすぐ感覚が追いついてこないとは、もしかしたら、あの転移門は古いのかもしれない。

 恐る恐る、自分が抱きしめているモノを解放して、どんなモノを抱きしめていたのか――思い当たる節は一つしかないが――確認した。

 それは、この世界では珍しいピンク色の髪をしており、服はなぜか、その職業には似つかないエプロンドレスだ。
血色の良さそうな顔は、今は真紅に染まっている。

 ……簡単に言うと、俺が抱きしめてしまっていたのは、顔を真っ赤にしたリズだった。

 どうやらリズもまだ、あの旧式な転移門(仮)によって感覚が麻痺していたらしく、自分が抱きしめられているという状況に、ようやく気づいたらしい。
真っ赤な顔で、俺をキッと睨みつけてくる。

「ええっと、だ。まずはすまない。コレにはキチンとした理由があり――」

「にぎゃあああっ!」

 リズは俺に弁解の余裕も与えず、真っ赤にした顔のままで放たれた見事なアッパーカットが、俺を中空へと吹き飛ばした。


「悪いとは思ってる。だけど、いきなり転移されたから、つい癖でお前を庇うような態勢をとってしまっただけで他意はない!」

「ふ、ふーん。どうだか」

 俺はリズに吹き飛ばされ、地面に叩きつけられたダメージをポーションで回復しつつ、(流石は鍛冶屋だ、意外と効いた)どうにか弁解をしていた。
だが、その弁解も功を労せず、リズは未だに若干頬を紅く染めつつ、そっぽを向いていた。

「……なあ、頼むからいい加減許してくれ。帰ったら、なんでも一つ依頼聞くから」

「……ホントに?」

 よし、好感触!
俺は内心でガッツポーズをしながらも、そういや、殴られて遠ざからなければ、リズには俺を監獄送りに出来るボタンがあったことを思いだし、嫌な汗を大量にかいた(気がした)。

「ああ、約束する。それより、早くダンジョンに行こうぜ?」

「そうね。でも、私たち二人で大丈夫かしら?」

 なんとか話を逸らすことに成功――ではなく、リズが真っ当な意見を出す。
一応攻略組とはいえ、良くわからない俺に、元来戦闘職ではないリズの二人では、確かに不安は残る。

「まあ、とりあえず行ってみよう。お前は必ず護るって約束するさ」

「お気楽ねぇ……ま、いつ泣いて転移脱出するのか見ものだけどねー」

 その言葉と共に、俺たちはストレージを操作し、防具を装備した。
……まあ、俺の場合は普段着がそのまま防具となっているため、胸当て程度だが。
リズは、あのエプロンドレスの上から簡素な防具を装備、手にはメイスを持った。

 お互いに転移結晶を服のポケットに入れ、老店主の話通り、歩いてすぐの場所にあった、遺跡のようなダンジョンの入口に立った。

 戦闘職で無いリズは、この草原エリアに残すことも考えたが、何が起きるか分からない場所に置いておくのは危険すぎる。

「じゃ、行くぞ……油断するなよ」

「あんたこそ、気をつけなさいよ」

 俺を先頭に、謎のダンジョンに足を進めた。

 その遺跡ダンジョンは明らかに人間が入るには大きく、また、サブダンジョンとしても一級品の広さだった。
内部はピラミッドの中のような構造になっており、奥行き・横行き共に、巨人が通ることが前提であるような広さであった。

 出現するモンスターも、まさか通路の大きさに合わせた巨人のようなモンスターが出てくるのかと思ったが、出てくるモンスターは全て、平均的なサイズの《ゴーレム》だった。

 レベルも、この五十層に出てくる程度のレベルらしく、動きも鈍い。
サクサクと斬る俺と、武器的に相性が良いリズの相手ではなかった。

 加えて、ダンジョン自体は広いものの一本道であり、敵も弱くトレジャーボックスも無いことから、未知のダンジョンの踏破は手早く進みんだ。

 むしろ、隠しのダンジョンとしては簡単すぎて、拍子抜けしていると同時に、何かの罠かと思う疑っていた俺とリズは、巨大な《扉》に直面した。
通路の大きさに似つかう巨大さで、この先に何があるのか容易に想像できた。

「ここってまさか……」

「十中八九ボス部屋だな」

 現場慣れしている俺の言葉に、問いかけたリズはピクリと反応し、メイスを握りしめる。
いくら強がっていても、当然ボス戦は始めてだろう、無意識に力が入っている。

「お前をボス戦に参加させたくはないが、このモンスターが出る場所にも置いていけやしない……頼むから、転移結晶を持って隠れていてくれ」

 聞いた当初は、あまり納得していないような表情だったものの、いつになく本気である俺の表情と声に、リズはしぶしぶ頷いた。

「じゃ、行くぞ」

 扉に手をかけた瞬間、扉は大きく音をたてて押され始めた。
そういや、アインクラッドのダンジョンの扉って、みんな押し戸だな、などとくだらないことを考えながら部屋に入った俺は――側面からの衝撃を受け、部屋の横の壁に吹っ飛んだ。

「ぐはッ……!?」

「ショウキ!?」

 俺を吹き飛ばした物の正体は――腕。
何もかもが巨大な遺跡の守護神として相応しい、五メートル程の巨大な《ゴーレム》の腕だった。

 《マッシブェイト・ゴーレム》という名前が識別され、俺にトドメをさそうと近寄ってくる。
その動きは鈍重だが、一歩一歩が大きい為にすぐに俺がいる壁に追いついてくる。

 だが、俺とてただやられるわけにはいかない。

「……でぇぇい!」

ポーションを口に含み、伸ばしてきたマッシブェイト・ゴーレムの腕についている指を斬り、ひとまず態勢を立て直すことを優先し、部屋の中央に移動する。

「リズ! 離れてろ!」

「き……気をつけてね!

 流石に適わないと分かるのだろう、リズは扉の近く、部屋に入るか入らないかのところで待機する。
リズには悪いが、これで思う存分戦えるというものだ。

 日本刀《銀ノ月》を腕と並行に構え、いわゆる《突き》の態勢をとる。
――まずは、《マッシブェイト・ゴーレム》の耐久性を調べる。

「刺突術《矢張月》!」


 自分が使う技の中で、もっとも一点突破力がある突き攻撃により、ゴーレムの腕を避けて足に日本刀《銀ノ月》を突き刺した。

 結果、弾かれはしなかったが、貫通することも無かった。
流石にボスモンスター、なかなかの耐久力を誇っているようだったが、あくまで階層相応の耐久力。

 勝てなくはない……!
そう思った瞬間、舐めるなと言わんばかりにパンチが飛んでくる。

「おっと……!」

 日本刀《銀ノ月》で軌道をずらして払い、第二撃が来る前にもう一撃斬って、即座にバックステップにより射程外に後退する。

 だが、やはり硬い。
日本刀《銀ノ月》ならばともかく、対プレイヤー戦の隙を無くすための足刀《半月》には荷が重いだろう。

 ……つまり、俺がどうやって戦うべきかは自ずと決まってくる。
そう、一点突破をしつつの、高速戦闘……!

「《縮地》!」

 高速戦闘になくてはならず、俺の生命線と言っても過言ではない技、《縮地》を使用し相手の足下に近づいた。
当のマッシブェイト・ゴーレムは、一瞬で近づいてきた俺に対処できず、なんとか蹴りを放とうとするが――遅い。

「はッ!」

 蹴りを放とうとした足の支点を斬りつけ、蹴りを中断させる。
その中断された隙に何度となく足に剣戟を浴びせ続け、マッシブェイト・ゴーレムがパンチを繰り出そうとした時には《縮地》でこの馬鹿デカいゴーレムの後方に回り、怯んだところを再び足に向けて剣戟の雨を浴びせる。

 俺の狙い通り、この高速戦闘に、パワー型であろうマッシブェイト・ゴーレムは付いていけずに、目に見えて混乱していた。
しかし、今までにいた通常のゴーレムよりはるかに堅く、十撃二十撃与えても倒せる気配は見えない。

「……ッと」

 マッシブェイト・ゴーレムがこちらを見たので、足を斬りつけつつ、《縮地》にてゴーレムの裏側に回り込む。
さて、さっきと同じように、再び剣戟による乱撃を浴びせるのだが、思ったより足が硬い。

 それに、《縮地》は便利な技ではあるものの、もちろん弱点はある。
それは、平常時の《縮地》の連続使用回数は五回であるということだ。
気力や体力に左右されるものの、だいたい平均して五回が限度であるため、ずっと《縮地》を使用しつつ攻撃、などという手段は使えないのだ。

 体力にも辛いし、神経を使うので五回が限度だが、それをもう三度使用している……これでは分が悪い。

 と、その時。
マッシブェイト・ゴーレムが、いつになく俊敏な動きで裏拳を繰りだしてきた。
マッシブェイト・ゴーレム自体の重さの分、その勢いは並大抵の物ではなく、日本刀《銀ノ月》で受け止めるには、いささか厳しい……!

「はッ!」

 俺は考え事を中断し、全力でその場からジャンプした。
マッシブェイト・ゴーレムの裏拳が、俺の足下スレスレを横切ったので、避けられたことを確認した。
そのまま空中でクルリと宙返りをし、遠心力を込めてマッシブェイト・ゴーレムの首に足刀《半月》による蹴りを叩き込む。

刀を伴った蹴りを受け、マッシブェイト・ゴーレムのHPゲージが目に見えて下がる。

「――ビンゴ!」

 本来ならば、威力の劣る足刀《半月》では大したダメージを与えられないだろう。
だが、大したダメージを与えたということは……そこが弱点ということだ。

 そのまま着地したすぐ後に、バックステップによりマッシブェイト・ゴーレムと距離を開け、日本刀《銀ノ月》を鞘にしまう。

首が弱点だと分かったことは朗報だが、攻撃するたびにさっきのように空中へジャンプして攻撃しては、命が幾つあっても足りない。
よって、俺はポケットから《クナイ》と一般的に呼ばれる武器を取りだした。
元々は何の変哲もないただの投げナイフなのだが、個人的な趣味により、《鍛冶》スキルで意味もなくクナイ型にしている。

 もちろん、戦闘スキルが使えない俺にとって、キリトのような《投げナイフスキル》は使えない。
だが《眼》には自信がある。
――狙いを、外す気はない。

「てェッ!」

 大きく振りかぶって投げられたクナイは、狙い通り吸い込まれるように、マッシブェイト・ゴーレムの『足』に当たった。

 首は狙わない。
クナイごときを当てても、焼け石に水だからだ。
ならば、何故足を狙ったか?
答えは簡単、足を破壊するためだ。

 先程までの、百撃はくだらない日本刀《銀ノ月》による剣戟の嵐。
もちろん、HPゲージを着実に減らすことが目的ではあったのだが、第一の目的は、足自体の耐久力を減らすことだった。
足自体の耐久力が限界に近づいていた時、トドメとばかりにクナイを投げ当てた。

 結果。
マッシブェイト・ゴーレムの片足は自重に耐えきれず、刺さったクナイの場所から破壊音と共に砕け散っていく――

「―――!??!」

 マッシブェイト・ゴーレムが驚きの声(?)を上げながら、片足を失った影響でバランスを崩し、倒れ込もうとする。

「ここまで上手くいくと、むしろどこか怪しいな……ま、良いか」

 倒れ込んでくるマッシブェイト・ゴーレムの影に近づき、日本刀《銀ノ月》を構える。
狙いは、先程までは届かなかった弱点の首――!

「抜刀術《十六夜》!」

 マッシブェイト・ゴーレムは、片足を失って倒れ込むと同時。
自らの首を切り裂かれ、ゴーレムではなく、ただの物言わぬ人形となっていた。

「まあまあナイスな展開、だったじゃないか……!」

 ふう、と一息つきながら日本刀《銀ノ月》を鞘にしまい、扉の前でポカーンと驚いたような顔をしているリズに対して歩きだした。 
 

 
後書き
頭を使って戦うショウキを描写……出来た、かな?
自分にはわかりません。

それと、これから学校がテスト期間に入りますので、更新がだいぶ遅れます。

では、感想・アドバイス待ってます。 
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