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Bistro sin〜秘密の食堂へいらっしゃいませ〜

作者:黒米
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終演と開演。

 結局、沢城とその仲間は謎の失踪という形で行方不明となった。
彼らに何があったのかは、誰も知らない。誰も気にも留めなかった。
悪党の行方など、誰も気に留めない。寧ろ、消えたことにすら気付きもしない。
その翌日も、Bistro sinは変わらずにひっそりと営業していた。

 翌日、賢太郎はいつものようにウェイターに励んでいた。
しかし、その時脳裏に過ったのは平泉のことだった。
確かに相手は最低の悪党であったが、それでもあんなに冷静のまま躊躇なく人を殺してしまえるのか。
と言葉にできない複雑な気持ちを抱いていた。

すると、平泉が賢太郎の元へと寄ってきて小声で言った。
「賢太郎くん、私だけ自分の罪を告白していませんでしたね。…私は『殺人』を犯したんです。でも、いつになっても、人を殺すことは決していい気分ではありません。しかし、悪を裁くためには悪になるしかない。手段は正しくありませんが、その手段を他の罪のない人たちに背負わせるわけにはいきません。だから、私たちは仕事を全うすることしか、他に正義を知らないのです。」
賢太郎は、ただその話に聞き入っていた。
すると平泉は、いつものようにニコリと笑って言った。
「だからこそ、今は目の前のお客様に全身全霊を注ぐ。さっきも言った通り、それが私たちの正義です。」
少しホッとした。
何も思わず殺してしまうような、冷酷なわけではないとわかったからだ。
こうして、今日も賢太郎はウェイターに励む。


 ここは、街の外れにひっそりとある隠れ家のようなレストラン。
営業時間は17時〜22時。定休日は水曜日。
温かい料理とおもてなしで、お客様をいつでもお待ちしています。

最高の『仕事』をモットーに、今日も働いています。

その店の名は『Bistro sin《罪の食堂》』



Bistro sin〜秘密の食堂へいらっしゃいませ〜

       -End- 
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