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ぼっちな俺が異世界に来てしまったようです

作者:奏 誠
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プロローグ 異世界に来ちゃった

 
前書き
小説家になろうにも連載してます 

 
ふー。今日は午前授業で学校早く終わったー。

 午後はフリータイム、好きに遊べるぜ。

 ………………。

 なんて。

 はぁ、今日も俺はぼっちか。
 友達と一緒に帰宅することなんて一生ないのかね。ましてや、遊ぶなんてことも。

 俺とて、ぼっちになりたくてなったわけじゃないのにな。

 そんなことを学校の帰り道、一人でブツブツと呟きながら歩いているのが、この俺――草薙椎良
《くさなぎしいら》だ。

 今は高校だが、中学の頃からずっとぼっちである。
 小学生の時はいろんな友達と遊んだりしていたのに、中学の頃から余計な羞恥心が芽生え始めた。

 他人に話しかけるのがとてつもなく恥ずかしかった。
 そのおかげで、俺は友達を作ることができず、ぼっちになった。

 後悔しかしてない。
 今となってはどうしてあの頃に恥ずかしいからと言って、他人と接触するのを頑なに拒んだのか、自分でも疑問だ。

 今はもう羞恥心なんてもの大してないが、俺はぼっちだから根暗という位置づけをされていて誰も近寄りはしない。

 何気なく話しかけようとしても避けられる。

 まぁ、慣れたけどな。

 一つ道を踏み外すと奈落のどん底に落ちるんだな。身を持って痛感した。

 それにしても、ぼっちは寂しいな。
 友達という温もりが欲しい……小学生からやり直したい……。

 てか、思ったんだけど。
 今からでも遅くないんじゃないか?

 ぼっちって位置づけされてるのはきちんと友達作ろうとしてなかったからだし、何気なく話しかけようとしてる程度だったから避けられてたのかもしれない。

 きちんと話しかけてみれば、話の合う友達もできるかもしれないし、根暗ってイメージなくなって友達が増えるかもしれないな。

 おお、俺の行動次第ではお花畑のような学園ライフが……。

 一歩間違えれば茨の園だけどな。

 そうと決まれば。
 友達作りをするために、みんなの共通の話題みたいのを俺もわかるようにしないとな。

 そんなことを考えながら、俺はいつも通る帰宅路を進んでいた。

 学校から家まで、約25分。徒歩のみだ。

 通学、帰宅と、どちらもソロだ。

 俺と同じ方角のクラスメートは何人もいる。
 いるけど言った通り俺はぼっちだから結局は一緒に帰ることはない。

 ……毎日楽しそうに話しながら帰ってるね、奴らは。俺はそれを見て楽しそうに帰ってるよ。

 ……ん?待てよ?

 ここどこ?

 普通に歩いてきた筈なのに、いつもと違う道なんだけど……こんな通りは見覚えないな。

 右手には狭い路地が。

 左手には壁。

 しかも。なんか赤レンガ倉庫みたいな建物が連なってるんだけど、こんなところ東京にあったのか……。

 俺はいつもの通り、
 学校を出て、
 直進し、
 突き当たりの角を右に曲がり、
 またしばらく歩いて、
 角を左に曲がった。

 いつもの通りの道なのに、なぜ見知らぬ通りに出てしまったのか。

 考え事していたから道を間違えた?

 いや、でも、それにしてはおかしくはないだろうか。

 少し間違えたからって、外国のような通りに出ることはないだろう。

 でも、ダメだ……まるで小説の中のような出来事で……ワクワクしてきた俺がいる……。

 興味心が抑えきれない……ここで引き返せば、元の道に戻って何事もなく帰れる……。

 ここはもしかしたら危険かもしれない、ヤクザとかの溜まり場かもしれない。

 でも、興味が……俺の中の中二病心がくすぐられる……。

 決めた、しばらく見て回って、危険そうならすぐに引き返して家に帰ろう。

 ♦️

 ある程度見て回ったんだが、特に何もない。
 人の気配もないし、
 建物も、どれもこれも同じ赤レンガ倉庫のような建物。

 なにも面白いものはなかった。

 ほぼ全ての道を散策したが、
 行く先々、最終的に、袋小路でどこも道は短かった。

 でも、俺はまだ入っていない路地がある。

 この通りに入ったとき、右手に見えた狭い路地だ。

 幅は狭くとも、先は長いかもしれない。

 まぁ、そんなことはないんだろうけど、せっかくなら見ていこう。

 ……。

 そして俺はこの通りの入口(決めた)にたどり着いた。

 やはり。このまで歩いてきても別の道はなかったからこの路地が最後だろう。

 どうせすぐに、戻ってくるから平気だろうから、この邪魔な鞄をここに置いていくとしよう。

 俺は、体が生まれつき弱い。

 だから、脂肪もあまりないし、筋肉もない。

 今まではこんな体の弱い子に産んでくれた母親を憎んでいたが、今は感謝している。

 こんな狭い路地に入っていくことのできる俺を産んでくれてありがとう母さん。

 多分、俺のクラスメート、誰一人この路地に入ること出来ないだろうな。

 草薙だから、出来たこと。

 うーむ。それにしても、この路地狭い割には長いな。

 もうかれこれ5分は歩いてるのに、全然終わりが見えない。

 いつまで歩いていればいいんだろうか。

 引き返そうか。

 ……いや、ここまで来て引き返すのはどうかと思うな。進もう。


 ……それから、10数分歩き続けた。

 俺が歩いている道にはもう光はなく、上を見ても、右を見ても、左を見ても、振り返ってみても暗闇が広がっている。

 かろうじて、俺の足元は微かに見える。

 一寸先は闇だ。

 そんなありえない状況の中、さらに10数分歩き続けた。

 大体その頃から、俺に言いようのない恐怖が襲い始めた。

 何かがおかしい、こんな事ある筈がない、こんなに長い路地の一本道が俺の住むこの街にあるとは思えない。

 それに、まだ昼過ぎなのに

 俺は幻覚でも見ているのか。

 それとも、夢を見ているのか。

 いや、それはない。こんなリアルな夢があるわけが無い。

 嗚呼この恐怖は、この道はいつになったら終わるのだろうか。

 興味心なんかでこんなところに入り込まなければよかった。

 今更ながら俺の好奇心旺盛な性格を恨んだ。

 ……と。その時だった。

 俺が進んでいる方角から、光が差し込んできた。

 その光は、まるで希望の道だった。

 俺はなんのためらいもなく、その希望の道をたどった。

 そして、その終着点にたどり着いた。

 そこは、少し開けた場所であった。

 中心には井戸があった。

 その、終着点を喩えるなら、大きな井戸。

 その井戸の中の中心部にさらに井戸があると言えばわかるだろうか。

 その中心にある井戸から、光は漏れていた。

 どうやら、先程から見ていた光は、この井戸の中から漏れていた光のようだった。

 すこし周りを見てみたが、井戸以外には特に何もない。

 俺は井戸を調べることにした。

 その井戸には、はしごが付いていた。

 まるで、これを使って降りろとでも言っているかのようだった。

 当然のごとく俺は降りた。

 言うまでもないが、光はかなり眩しく、目を開けていることができないほどだった。

 目を閉じても、光が認知できた。

 俺は目を閉じながら、ゆっくりと下に降りていった。

 しばらく降りていくと。目を閉じていても光を感じることはなくなった。

 目を開けると温かい光が俺の目を焼いた。

 焼いたとは言っても、別に痛いわけではない。

 なにか。こう、心地のいい感覚に襲われるのだ。

 光は出ているのに、眩しいと感じるわけではない。不思議と俺はその光を許容していた。

 下に降りれば降りるだけ、温かい光が俺を包み込んでいく。

 そして。

 ある時、とても強い光に包まれた。

 突然で、俺は手で目を覆った。

 そして。はしごから手を離してしまった。

 俺は落ちていった。

 俺は死ぬんだな、と直感で悟った。

 長い長い井戸の中を光に包まれながらゆっくりと落ちていく。

 光が俺を地面に誘うかのように。

 ゆっくり落ちているというのは俺の脳が勝手にそう感じているだけだろう。

 走馬灯も見せてくれないなんて、皮肉だな。

 こんなにゆっくり。長い時間落ちていくならその時間で走馬灯を見せて欲しかったよ。

 まあいいよ。

 さて、そろそろかな?

 光が強まっているから。自然と終わりが近づいているんだという思考ができた。

 あぁ。せめて、この井戸の底に何があったのか、知りたかった。

 ……残念だ。

 ………………ドサっ。

 ♦

 んん。

 なにか柔らかく、プニプニしたものが頬に当たる感触で俺の意識は覚醒した。

 意識が覚醒したはいいけど、何故か目が開かない。

 起きたばかりだから仕方ないかもしれない。

 それはいいとして。なんだこの感触は。

 プリン?

 わからないな……うーむ。

 母さんが起こしに来たのかな。

 後5分……いや10分だけ寝かせて……。

 俺がうう、と唸っているのに気づいたのか、母さんは

「起きたみたいだね、でもまだ光の影響で目が開かないみたいだね。安心して、暫くすれば直るから」

 待てよ?
 こんな声母さんじゃないよな、話し方も違う。

 この声は若い男の子のような声だ。

 誰だ?
 それに、光の影響?

 光?

 ……あ、思い出したぞ。

 俺落ちたんだったな……。光に導かれて……。

 あんなに深い井戸で落ちて助かったとは。

 ……ん?
 おかしいな、あんなに深い井戸の底に人が住んでるのか?

 そんな訳あるか!

 なんだこれ、超常現象?
 実は別世界につながってましたーみたいな?

 なわけないか。

「そろそろ、目をあけても問題はないと思うよ、さぁ、ゆっくり開けてみて」

 若い男の子のような声をした人はそう俺に進言してきた。

 言う通り、ゆっくり瞼を開けていった。

 まず目に飛び込んできたのは――ん?ゼリー?
 でっかいゼリーが目の前にあるぞ?
 というか、これ、俺の顔にも乗ってるぞ。

 さっきの、頬に当たってた感触の正体はこれか……く

 次に目に飛び込んできたのは――――草原。

 ゼリーの背後の景色。

 草原だ。

 ……なにここ、幻想郷?

 あ、やっぱり俺逝ってるか。

 はは、は。

「顔が面白いね、にこにこして、どうしたの?」

 そうだ、この声、どこから聞こえてる?

 近くから聞こえているのにその姿は見えない。
 周りをキョロキョロ見渡してみたが、目に映るのは草原と、でっかいゼリーのみ。人の姿なんてない。

「あれ、僕はここだよ?」

 ……どうやら……目の前のゼリーから聞こえていたようだ……。

 ゼリーが喋るわけないよな……気のせいだよな……はははは。

「ところで、君は名前は? 僕はティミだよ」

 自己紹介してきてるね、ど、どうせ気のせいだし答えておこう。

「俺は椎良、草薙椎良だ」
「シイラかー、よろしくね!」

 ティミと名乗ったゼリーはプルプルしながら返答してくれた。

 気のせいじゃなかったわ。

 友好的なゼリーみたいなので、聞きたいことを聞くとするか。

「な。なあ、ここはどこなんだ?」
「え? ここは、マイラ草原だよ?」
「マイラ草原? 初めて聞いたんだけど……」
「あー、そうか、この世界に召喚されて間もないんだね」

 召喚?
どういうことだ?

「えーと、ここは、アンリュード。この世界はそう呼ばれてるよ。で、僕は案内人みたいなものだよ」
「アンリュード? この世界?」
「うーん、イマイチわかってないみたいだね。えーとね、君は、君がもともと住んでいた世界から、このアンリュードに召喚されたんだよ」

 ……は!?

 召喚?元の世界から?
 別世界なのかここは?

 嘘だろ、そんなことがあるわけが無いよな!?

「驚いてるみたいだね、でも、それは事実だよ。ここは君の住んでいた世界とは違う。言うなら異世界だね。」
「そんなことって……」

 そんなことって、

 あるわけないだろ。
 あ、でもこの金色の草原と目の前のでっかいゼリーが、現に存在してるんだからあるのか。
 複雑だ。
 これからのことに恐怖を感じているけど、それだけでなく何が起こるのか、気になってしまう。

 ああ、元の世界に戻りたいと願うより、この世界で面白いことが起こらないか願ってしまう。
 まぁ、折角異世界来たんだし、楽しむか。

 そして、持ち前の図太さを発揮し、異世界に来てしまったことを受け止めた。

 そして、辺りには金色の草の揺れる音と、ゼリーのニュルニュル音で包まれた。

 そして改めて思った。
 ……どうやら俺は異世界に来てしまったようだ。 
 

 
後書き
これからの展開にワクワクですね(震え声) 
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