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俺の知ってる作品でバトルロワイアル

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25話:知将が二人

 場所は10-Aエリアにある帝丹高校の一教室。
 教室札には2-Bと書かれている。
 室内にいるのは腕を組みながら壁に寄りかかっている女性と、脚を組みながら机に腰掛けている女性の二名だった。年齢は二人ともさほど変わらないように見える。
 名は、腕を組んでいる方を霧切響子、脚を組んでいる方を萩原子荻という。
「そう。その零崎双識という男が一番警戒すべき人物なのね」
「ええ。変態ですから」
 よりにもよって零崎双識の話をしていた。
 よりにもよって、である。
「まあ、お互いに情報交換はこのぐらいでいいでしょう」
「問題はこのあとどうするか、よね」
 言って、口に手を添えて考え込むようなしぐさをする二人。机に座っている子荻はまるで『考える人』のようなポーズになってしまっている(心底どうでもいいことだが)。
 両方ともそんなポーズがやけに様になっているのは、やはり霧切響子が探偵で萩原子荻が策士だからに他ならない。
 二人は頭がいい。
 それも超高校級とか、化物とか呼ばれるレベルで。
 とはいっても職業が表している通りに二人の頭脳の方向性はまるで違う。
 霧切響子は探偵であるが故に理論立てや調査、断片的な情報を繋ぎ合わせて仮説を建てるような所謂推理が専門だ。
 一方の萩原子荻は策士であるが故に戦場においての指揮官としての技量がずば抜けている。その場の状況を一瞬で判断し、持てる策を全て用いて戦う。
「私としては策士さんにお任せしたいところだけど」
 霧切がそう漏らすと子荻は
「わかりました」
 と、やけにあっさり引き受ける。
 実は二人は既に同盟を組んでいた。
 霧切は考察や調査を行い、子荻はマーダーに襲われたときや、脱出のために策を練る、という具合に役割分担をして。
 故に。霧切は重要なターニングポイントになるであろう最初の方針を探偵である自分ではなく、子荻に任せてそれに従うことに何ら抵抗はない。最初にそう決めたのだから。
「とは言ってもあなたの意思も一応聞かなければなりません」
 目で話せと言ってくる子荻。
 霧切は答える。
「できれば戦力となり、かつ信用できる味方を増やしたいわね」
「どうして?」
「襲われたときに不安だからよ」
 霧切は先程の情報交換で暴力の世界に存在する殺し名や呪い名など"プロのプレイヤー"のことを聞いていた。
 霧切自身、そのような強さを持つ人物に心当たりが無いわけではない。例えば超高校級の格闘家である大神さくらなどは銃など通じなくてもおかしくはない。
 子荻もそれなりに武芸は身に付けているらしいが、とても一般人の域を出ているようには思えない。
「私も同じことを考えていました。あてはあります」
 西条玉藻。
 この状況において、子荻がもっとも信頼できる人物。
「さっきの零崎双識って人かしら?」
「ありえません」
 一秒も経たずに即答する子荻。
 基本的に子荻のやり方に口出しはしないと決めた以上、霧切は何も言えない。
「それで?」
 結局彼女の策とやらを話すように促すことしか出来ない。
「単純に人に出会いたいなら動いて、人の集まりそうなところに向かった方がいいでしょう。しかしその方法は同時に一網打尽を狙うマーダーに襲われる危険も孕んでいます」
 霧切は黙って聞いている。
「そこで、"高い実力を持っているが自分より格上の存在を知っているため慎重に行動する人物"の心理を考えてみましょう」
「‥‥‥なるほど」
 探偵である霧切も人の行動を予測することは出来る。
 子荻の言いたいことに予想はついたが、口出しは出来ないのでそのまま黙っていた。
「今がまだ序盤であることを加味して、いきなり見つけた人を襲うなんてことはほとんど無い筈です。そういう人は自分より強い存在に対抗するための手段を探そうとします。手っ取り早い方法が同盟を組むことです。勿論弱そうな人を見つけて殺害し、強力な支給品を奪うという方法もありますが、この策はリスクが高すぎます」
 確かに。
 殺した相手に支給された物が当たりだとは限らないし、仮に強力な支給品を持っていたとしても抵抗された際にこちらが深刻なダメージを受ける可能性は高い。
「強い味方を探したい場合。私なら、とりあえず見晴らしが良いところに行きますね。そこで他者の戦闘を見て、強さを見定める。そして味方にできそうな方に加勢すればいい。」
 つまり。
 我々の行くべき場所は見晴らしが良く、この会場の多くを見渡せるところ。
「‥‥‥まあ、異論はないわ」
「では、地図でそういうところの当たりをつけておきましょう」







 がら、と。
 会議を始めてから五分もしないうちに、2-B教室に一人の女子高生が入ってきた。
 なぜ女子高生だとわかったかというと、服装がごく一般的な、子荻のようにデザイン性に溢れたセーラー服でも霧切のように改造されたものでもないブレザーの制服を着ていたからだ。
 勿論、女装したどこかの戯言遣いではないのは、その特長的過ぎる髪型を見てわかった。
(ドリル‥‥‥?)
 以上が霧切の思考である。
 子荻はというと、誰かが入ってくるような気配を感じたために机から降りて立ち上がり、いつでも戦闘出来るように身構えていた。
 霧切には女子高生が入ってきたドアとは反対側に位置するドアの近くに待機するように指示してある。
「あ、あの」
 女子高生が先に口を開いた。
「あなたたちは?」
 名前を教えて欲しいならまず自分から名乗れ。
 子荻がそんな風に言う展開になるんじゃないか、と勝手に頭に浮かんだ霧切だったが、現実はそうはならなかった。
「‥‥‥私は萩原子荻です。殺し合いには乗っていません」
 今のところは、だが。
 乗ってない、と聞いて女子高生の顔から緊張が消える。
「よかった‥‥。私は毛利蘭です」
 毛利蘭。
 確かに、子荻の頭の中に完全にインプットされた参加者名簿の中にあった名だ。
「‥‥‥私は霧切響子」
 その声を聞いた蘭は驚いて霧切の声のした方向に振り替える。
 その顔は明らかに「いたんですか!?」と言っていた。
 早くも空気化フラグの立つ霧切である。
「それで、毛利さんは何故ここへ?」
「えっと。私はこの学校の生徒なんですけど、ひょっとしたら知り合いがいないかなと思って‥‥‥」
「知り合いというのは?」
「コナンくんっていう男の子と、父と‥‥‥」
 やり取りするうちに、子荻の率直な毛利蘭の感想は思う。
(‥‥‥普通ですね)
 あまりにも普通の女子高生だ。
 今現在子荻がいつでも毛利蘭から逃げられる位置に立っていることも、自分と話している間に霧切が蘭をじっくりと観察していることも、さりげなく子荻が蘭から様々な情報を引き出していることも気が付いてないようだ。
 まさか、自分や霧切みたいに少々世間一般から離れた世界で暮らしている人間の他に、こんな明らかに普通の女子高生が呼ばれていたとは。
 主催の意図がまったくわからなくなった。
 蘭と話しながら霧切に目配せする。
 勿論、完全に蘭の隙をついて配ったその目に蘭が気付くことはない。
(この子を仲間にするのはやめておきましょう)
(‥‥ええ、その方が良さそうね)
(何か口実をでっち上げるので、うまく適当に合わせてください)
 こくん、と霧切が頷く。
「―――の、もしよかったら一緒に行きませんか?」
 それきた。
 子荻は残念そうな表情を作って答える。
「せっかくですが、私は―――」
 霧切さんの仲間を探さないといけないのであなたの目指すところとは反対方向に行かなければならないんです。
 と、続けようとして気付いた。
 蘭が開けてそのままにしていた教室のドアから、人の気配、それも殺気が感じられることを。
 プロのプレイヤーが持つような物ではない。
 ただの素人の殺気。
(ていうか、微妙に銃が見えてます)
 撃つのを躊躇っているのか、開かれた引き戸から銃身が見えたり隠れたりしている。
「? どうしたんですか萩原さ―――」
 流石に蘭がいきなり黙った子荻を気にかけたと同時に。
 見えたり隠れたりするだけだった銃が持ち主ごと完全に姿を現した。
 子荻は駆け出す。
 霧切の待機している後方のドアへ。
 銃の存在を認識したそのときから、蘭が油断を見せたタイミングで撃ってくる可能性を考慮していた。
 霧切も咄嗟の出来事に対しての対処が上手い。
 すぐに大体の事情を察してドアを開ける。


 しかし、子荻はここでとんでもないものを見た。


 蘭を銃、正確にはニューナンブM60で狙っている男は躊躇いと恐怖が入り交じったような表情で、狙いを定める。
 定めたと同時に蘭が後ろを振り向いて、伊藤誠というニューナンブM60を自らに向けている男を認識する。
 蘭の体が完全に伊藤誠の方を向いたと同時に、発砲。
 バン、と火薬の弾ける音がした。
 子荻も霧切も毛利蘭はそのまま死亡すると思っただろう。
 何せ彼女は一般人だ。
 殺し名が持っているような戦闘スキルも。
 呪い名が持っているような非戦闘スキルも。
 いるだけで最悪を振り撒くような無為式も。
 持っていない。
 だが。
 それでも彼女は。

 ''力''を持っていた。

 銃を見た瞬間、その目付きが自らの髪型より鋭くなる。
 銃弾が発射された瞬間、体は動く。
 銃弾が当たる瞬間、髪がなびく。

「な、あっ!?」

 何かに驚愕したような声を上げる伊藤誠。
 そして、彼のように声など上げなかったが、霧切響子と萩原子荻も驚いていた。

 毛利蘭は、あろうことか、銃弾を避けたのだ。

 驚くべき点は銃弾を避けたという行為そのものではない。
 拳銃の弾を避けるのは、プロのプレイヤーならできて当たり前のことだし非戦闘集団である呪い名にも出来る者はいるだろう。
 問題は。
 毛利蘭が、紛れもない一般人だという点だ。
 一般人でありながら。
 普通の人間でありながら。
 表の世界で平和に暮らしていながら。
 何の戦闘スキルもない素人でありながら。

 プロのプレイヤーと同じことが出来るという点だ。

 稀代の策士を驚かせるには充分だったが、毛利蘭の力はこれだけには止まらない。

「はああああアアアアアアアアアアっ!!!!」

 威勢の良い掛け声と共に、毛利蘭の蹴りが伊藤誠の顔面に打ち込まれた。
 脚が当たると同時に意識を手放した伊藤誠の体は、サッカーボールのように飛んで、教室を飛び出して廊下の壁にめり込んだ。
 唖然としている二人の知将をよそに蘭は問い掛ける。
「大丈夫ですか?」
 それは、いかにも普通な、二人の女子高生を心配する言葉だった。

(‥‥‥見えなかった)
 戦闘は全く向いていないとはいえ、曲がりなりにも傭兵育成学校で育った子荻にも目で追えなかった。
 さらに男の体は壁にめり込んでいる。
 このパワーはひょっとしたら、あの人類最強にも匹敵するのではないか。
 勿論、力だけでなく動体視力や反射神経などもそのまま暴力の世界で通用するものだ。
 そして。
 子荻はこの時点で毛利蘭を自らのチームに引き入れる事を決めた。
 その理由はただ単に蘭が強力だからでない。
 彼女が強力で、かつ一般人だからだ。
 いくら殺し名並の戦闘力があるとはいえ、彼女の価値観はあくまで平和な世界の住人のそれだ。つまり、限りなく扱いやすい、限りなく操りやすいのである。
 言うなれば、戦車を自転車と同じ難易度で動かせるようになったようなもの。
 霧切と目を合わせる。
 一秒経ったあと、霧切は小さく頷いた。
(‥‥‥澄百合に入って、私の部下になったらどうなるのでしょうね)
 なんて、らしくないことをつい考えてしまう子荻だった。




≪チームJK≫

【萩原子荻@戯言シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品3つ
[思考・状況]
基本思考:脱出。参加者が減りすぎた場合は優勝狙い
1:チームJKのリーダー
2:毛利蘭を仲間にいれる
3:霧切とは信頼関係を築いておく
4:玉藻と合流したい
5:双識には死んでも会いたくない


【霧切響子@ダンガンロンパ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品3つ
[思考・状況]
基本思考:子荻の指揮のもと脱出する
1:子荻の決定に従う
2:苗木君‥‥
3:毛利蘭、一体何者‥‥?
4:零崎双識を警戒




【毛利蘭@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品3つ、ニューナンブM60、伊藤誠のデイパック
[思考・状況]
基本思考:脱出
1:コナンくん 達と再会する
2:チームJKの戦力
3:伊藤誠を縛り付けて行動不能にする




≪チームNice.boat≫
【伊藤誠@School Days】
[状態]:気絶中、顔に大ダメージ、背中の骨もやばい
[装備]:チームJKに根こそぎ奪われました
[道具]:チームJKに根こそぎ奪われました
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗るしかないと思っているが、人殺しの覚悟はない
1:気絶中 
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