| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ボスとジョルノの幻想訪問記

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

⑨爆撃注意報 その②

ボスとジョルノの幻想訪問記17

あらすじ

 竹林に現れた光の3妖精とチルノに『かくれんぼ』に付き合わされ足止めを食らっているジョルノと妹紅。
 妖精のくせにスタンド『ボーイ・Ⅱ・マン』と『エアロスミス』を使い二人を追いつめるが、妹紅の『スパイスガール』のおかげで光明が見えた。
 果たしてジョルノはチルノの爆撃をかいくぐり、3妖精を無事に見つけだすことが出来るのか!?

*   *   *

 ボスとジョルノの幻想訪問記 第17話

 ⑨爆撃注意報②

 瑠弾が不発に終わり自分が考えていたスタンドを用いた攻撃を全て(というか、一個しかないが)看過されてしまったチルノは『エアロスミス』を手元に戻した。

「・・・・・・どうした? もう終わりか??」

「ううぅ~~~」

 どうやらチルノはアレ(一斉射撃)しか攻撃方法を考えていなかったようだ。妹紅はチルノの方を向くとスタンドの『スパイスガール』を出して睨みつける。

 対するチルノは蛇に睨まれた蛙のようにびくっ、と小さく体を揺らしたのち、固まってしまう。悔しそうに歯を見せるが、所詮は若干強い妖精に過ぎない。

「無駄な時間を使いましたね・・・・・・。妹紅、早くそいつを再起不能にするんだ」

「分かってるって」

 と、妹紅はジョルノの言葉をうるさく思いながらチルノに歩み寄る。『スパイスガール』の射程距離は2メートル前後。だが、今のチルノに近づくことは容易である。

「サ・・・・・・」

 その時、あと2歩で射程距離に入ろうかという時。氷の妖精が言葉を発した。

「サニー! ルナ! あたいに能力をっ!!」

 ばばっ! と両腕を突きだし万歳の姿勢になった。するとそれを合図にチルノの姿が見る見るうちに消えていく。

「まずいッ!」

「テメェーーーマチヤガレッ!! クソガキィィーーーッ!!」

 妹紅は姿を消していくドヤ顔のチルノめがけて『スパイスガール』でぶん殴りにかかるッ! 『スパイスガール』も妹紅に呼応して罵声を発しながらラッシュをかけようとするが――――。

「ッチィ!!」

 彼女の足とスタンドの動きが止まった。完全に見失ったようだ。今からでも四方八方に弾幕を撒いても遅くはないが、もし背後のジョルノを盾にしながら逃走を計っていたら彼が巻き添えである。今のジョルノはまともに動けないため、妹紅の弾幕を避けることは不可能だろう。

「・・・・・・ッ! クソっ! 見失った!」

「いや、見失いはしましたが近いですよ・・・・・・。少なくとも姿と音を消せる奴はチルノに能力が届く範囲内にはいたはずです」

「あいつらの能力射程距離がどれくらいかは私はしらねぇぞ。結構広かったらあてにならないよな?」

「・・・・・・チルノの『声』だ」

 ジョルノの洞察力、判断力、推理力は並の人間や妖怪を越えている。妹紅では気が付かなかったこと、分からない断片的な情報などからあらゆる新情報を多角的な観点から見抜く能力は称賛に値する。

「あの氷精が『声』を発してから『消え始める』までの時間を逆算するんだ。チルノが叫んでから消え始めるまで体感で0.8秒。能力発動のタイムラグを無視しても3妖精が潜伏しているところは僕たちから半径300m以内の円の中です。仮に、チルノの声ではなく『万歳』を見てから、と仮定してこの竹林だ。目に見える範囲なら音よりももっと範囲がしぼられます」

「・・・・・・」

 妹紅は黙って聞くしかなかった。『かくれんぼ』が始まって既に1時間近くが経過していた。彼女の中では3妖精は既に出来るだけ遠く――――竹林の端の端まで逃げているだろう――――と思っていたため、300m以内にいるという情報を得られたのはでかい。

「少々時間がかかりましたが、これで結構追いつめることに出来ましたね・・・・・・。今度は僕らが詰める番だ」

 と、ジョルノはさっき蛇を生み出したのと同じように一本の竹を複数回殴り――――無数のコウモリを生み出した。

「熱がダメなら超音波で探索させます。半径300m以内なら10分とかからないでしょう」

 そう言ってジョルノは辺りにコウモリを飛び回らせた。キィーキィーという鳴き声とともに竹林を旋回しながら獲物を探すのだ。

 ジョルノの素晴らしい臨機応変な反応に妹紅は舌を巻く。それと同時に恐れのような感情を抱いていた。

 こいつは本当に人間なのか? という思いが・・・・・・。

*   *   *

 こちらは妖精サイド。情けなく一瞬で能力を破られたチルノはサニーとルナと一緒にカマクラに戻ってきた。

「あら、おかえり3人とも。心配でサニーとルナを派遣したのだけれど・・・・・・役に立ってよかったわ。お疲れさま」

 スターは3人を出迎えるや否や、にっこりと微笑んで労いの言葉をかける。それにまず答えたのはチルノではなくサニーだった。

「いやー、スターの勘は当たってたね! 私たちが駆けつけたときは蛇に睨まれた蛙みたいだったよ!」

 それに賛同したのか、ルナもうんうんという風に数回頷いて。

「そうそう。結構危機一髪だったから、私まで慌てて転んじゃったのよ? 感謝してよねチルノ」

「う、うううるさいな! さっきのはちょっと油断しただけだし! あたいってばサイキョーだし!」

 チルノはぶっすぅ~とふてくされながら地団太を踏んで悔しそうに言った。だがそれを見てサニーは更に大笑いする。

「どの口が言ってんのよ! あ~、おかしかった!」

「何だとサニー! お前あたいに勝てんのか~!?」

 ちょっと、喧嘩しないでよ。といがみあう二人を諫めようとするルナ。だが、二人の間に入ったせいでチルノから叩かれ、サニーから蹴られと結構散々な目にあっている。
 それをただ遠くから微笑みながら眺めているスターだが、ふと視線を外に移した。

「ちょっと、スターも見てないで止めるの手伝ってよ・・・・・・ってスター?」

「ん? スターがどうかしたか?」

 不意に外をカマクラに取り付けられた氷の窓から外を眺めるスターにルナは何か気付いたようだ。

「まさか、何か来てるの?」

 ルナはスターの視線の先を見る。――――だがそこには何も写っていない。

「いえ、結構な数のコウモリがこっちに・・・・・・」

 スターは能力の『生き物の気配を探る程度の能力』でコウモリが10匹程度こっちに飛んできていることが分かった。だが、そんなことは予定調和だ、と言わんばかりの表情でスターは微笑んだ。

「コウモリって・・・・・・さっきスターも出してたよね? 帰ってきたの?」

 そう、ルナが言うようにスターが先ほどジョルノから借りている『ゴールドエクスペリエンス』を用いて生み出した生物は、ジョルノと同じくコウモリだったのだ。

「コウモリは習性上、獲物を超音波の跳ね返りで探すいわばスコープのような機能を備えているわ」

「ふーん? そんな知識一体どこで・・・・・・」

「私たちが梅雨の時季に隠れ住んでいた館の領主の吸血鬼が言ってたわ」

「えっ?」

 いつの間にそんな情報をあの化け物から仕入れてきたのだろうか・・・・・・。ルナは言葉に詰まるがスターはさほど気にしない。

「まぁ、要するに『音波』ってことよ。ルナの能力でも消すことは出来るけど、『跳ね返り』を利用する超音波だと意味がないの」

 スターの言うとおり、超音波も音の一種のためルナの『音を消す程度の能力』で無くすことは可能だ。
 だが、音の跳ね返りを察知するコウモリにとって音が返ってこないのは『そこに音を吸収する何かがある』のと同じである。

「だから、こっちもコウモリを使うのよ」

 スターはあらかじめ竹林の随所にコウモリを配置していた。そしてジョルノがコウモリの超音波による探索をしたら同じようにこちらも超音波を発させるように命令している。

 つまり、超音波と超音波のぶつけ合いだ。

「音を操るルナなら分かるわよね? 同じ種類の音をぶつけると音と音がお互いの波にぶつかりあって――――」

「音は消える――――ってことか・・・・・・。でも結局は音の反射が無くなるわけだからコウモリには気付かれちゃうんじゃあないの?」

 と、ルナが尋ねるとスターは指を立てて「大丈夫よ」と言った。

「多分、今頃は困ってるだろうから」

*   *   *

 スターの言うとおり、コウモリの超音波を用いて探索をしていたジョルノだったが、困り果てていた。

「・・・・・・おかしい。いくつも、四方八方で音の消失が確認できます」

 既に『かくれんぼ』を始めて2時間半が経過していた。だが、何時までたっても3妖精の居所は掴めないでいた。

「ジョルノ・・・・・・どういうことだ?」

 妹紅は心配そうに空を見上げる。既に太陽は自分たちの真上にあった。もう正午なのだろう。

「分かりません・・・・・・が、音を消す奴の能力でしょう・・・・・・でもこんなに一度に、しかも広範囲に能力が使えるものなのか?」

「四方八方ってことは・・・・・・そうじゃあないはずだ。少なくとも、スターサファイアの能力は別としてルナやサニーの能力は一度に大量、しかも別々に能力を使うことは出来ないはずだ」

 そもそもは妖精の持つ能力である。複雑な能力は扱えないはずだし、最も言えば『スタンド』でなければそれほどまでに特殊な動きは――――。

「そうかッ! 『スタンド』だ!」

 ジョルノは唐突に閃いた。だが、この閃きは現状打破のためには対して役に立たないことは分かっていた。

「『スタンド』って・・・・・・妖精のか? そんな能力が付加価値的に付くとは考えられないけど・・・・・・」

「いいや、妹紅。あいつらの持っている『スタンド』の能力じゃあないんです。これはおそらく僕の『ゴールドエクスペリエンス』の能力・・・・・・同じようにコウモリを生み出して竹林各地で探索を妨害しているに違いありません」

 共震作用による音の打ち消しです。そうジョルノは妹紅に説明する。

「――――じゃあ、あいつらはお前の『ゴールドエクスペリエンス』の能力を使っているってことか?」

「多分、そうです。・・・・・・僕の『GE』の半身があいつらに取られたせいだと思います」

 ジョルノは左半身を失った『ゴールドエクスペリエンス』を見る。

「『熱には熱を、音には音を』ってわけか・・・・・・そんなにあいつら頭が良かった覚えはないんだけどな・・・・・・」

「確かに、4人のうち3人はただの5歳児と変わり無い気がしました。ただ・・・・・・僕のスタンドを奪いまんまと罠に引っかけたあの青い妖精は・・・・・・『猫を被っている』気がしました」

「・・・・・・スターサファイアのことか・・・・・・」

 3妖精はいたずら好きの妖精で知られているが、特に有名なのはサニーミルクだ。幻想郷最強(笑)妖精の次に知名度が高く、いたずら向きの姿を消す能力は人里の人間にとって迷惑以外何者でもない。

 ルナチャイルドもサニーに準ずるいたずら向きの能力を持っている。

 だが、スターサファイアはジョルノが言うように他の二人とは少し違う。妹紅も数回3妖精を目撃しているが、いつもサニーとルナの後ろでにこにこと様子を見ているだけである。

「確かに、あいつは賢い・・・・・・のか?」

 だが、ジョルノの探索をかいくぐっているのは事実である。

「妹紅・・・・・・もう少し、今度は別の方法を考えてみます。何かしら情報が得られればいいんですけど・・・・・・」

 妹紅がスターサファイアについて考えていると、ジョルノは辺りを見回しながら次の手を考えていた。熱もダメ、音もダメとなると・・・・・・。

 今二人は竹林の道のど真ん中。辺りに妖精や妖怪の気配は無くジョルノと妹紅の距離は3m前後、離れている。妹紅はジョルノとは別の方向の竹林に注意を配り、ジョルノも考えながら辺りを探していた。

 しばらくの沈黙が流れる。だが、沈黙を打ち破ったのはジョルノでも、妹紅でもなかった。


 ブロロロロロロロロロ・・・・・・

「「・・・・・・ッ!?」」

 二人が背を向けていたその間。前後3mの間の死角に突如として何かのエンジン音が響く。

 ガチャ、ガチャン!! という機関銃を組み立てる音がし、二人は同時に振り返る。そこにあったのは勿論――――。

「エ・・・・・・『エアロスミス』ッ!!?」

「よ、避けるんだァァーーーーッ!! ジョルノォォーーーーーーッ!!」

 今度の『エアロスミス』が銃口を向けていたのは不死の妹紅ではなく生身でしかも左半身が思うように動かないジョルノの方だった。

「コノポンコツガァァーーーーーーッ!!」

 すぐに妹紅もスタンドを出しジョルノ眼前に迫る『エアロスミス』を殴り落とそうとするが、『エアロスミス』は加速して『スパイスガール』の拳をすり抜ける。

「うッ・・・・・・ご、『ゴールドエクスペ・・・・・・」

 何とかジョルノはスタンドで反撃を試みるも、その前に『エアロスミス』に搭載された二丁のマシンガンの銃口が火を噴いた。

 ズガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ!!!

 今度は榴弾ではなく通常弾のようだが、連射数が桁違いだった。小さいながらも威力・スピードは本物の銃と変わらず、一発一発がジョルノの肉体を削り、殺ぎ、撃ち抜いていく。

「ウオオオオオォォォォーーーーーッ!!」

「このぉぉーーーーーッ!」

 妹紅は左足、『スパイスガール』は右足に力を込め同時に『エアロスミス』を破壊しようと蹴り飛ばす。見事に二人の蹴りは炸裂し、メキョッ! という音を発してプロペラ部分がひん曲がり数十メートル先に飛んでいく。

「ジョ、ジョルノ・・・・・・ッ!! 大丈夫か・・・・・・!!」

 ジョルノは仰向けで地面に血塗れの状態で倒れていた。全身から血を流しているが意識はあるようだ。

「も・・・・・・こう・・・・・・ぐっ・・・・・・だ、大丈夫・・・・・・です」

 よく見るとジョルノの傷は動かないはずの左半身に集中していた。

「お前・・・・・・まさか、『スタンド』で・・・・・・!」

 妹紅は先ほどのジョルノの行動を思い出す。『エアロスミス』の銃撃を全身に浴びる直前、ジョルノはスタンドで応戦しようとしていた。だが実際は違った。そう妹紅の方からは見えていたが、本当はジョルノの『ゴールドエクスペリエンス』は『エアロスミス』を迎撃するのではなく――――。

 ジョルノ自身の体を無理矢理『エアロスミス』に対して左半身が前になるように捻らせたのであるッ!

「う、動かない左半身を犠牲にしたのか・・・・・・!?」

「・・・・・・それしか・・・・・・、いえ、それが・・・・・・『最善』・・・・・・だったんです」

「だからって・・・・・・! こんな・・・・・・!」

 妹紅の素人目でも分かる。並の医療じゃあどうあってもこの傷は治せそうにない。

「動く『右半身』を救うため・・・・・・。そして・・・・・・思いついたんだ・・・・・・奴らを見つける・・・・・・方法を。それには妹紅・・・・・・あなたの力が必要です・・・・・・」

「・・・・・・ッ!!」

 妹紅は言葉を失った。そして自分の中のジョルノに対する評価が一転したような気がした。

 今まで彼女は1ヶ月ちょっと前にこの幻想郷に流れ着いたジョルノに対して良い印象は抱いていなかった。この馬鹿丁寧な口調もいけ好かなかったし、何より同じ人間のくせに永琳や輝夜から一目置かれているのが腹立たしかった。

 特に、輝夜からあだ名で『ジョジョ』と呼ばれているのが腹立たしかった。自分の方が輝夜との縁は深いはずなのに、輝夜は私に見向きもせず、そのくせ新人のぽっと出のこいつとは・・・・・・。

 だからこれまでも・・・・・・今朝永遠亭があんな状況だったときでさえジョルノには強く当たっていた。ただの逆恨みだという事は分かっていた。でも心がこいつを許せなかった。分かってる、ただのお粗末な、ちっぽけな人間のプライドだということは。

 だが、今妹紅はジョルノの一切迷い無く左半身を切り捨てた『覚悟』を目の当たりにしたッ!


 ジョルノ・ジョバァーナの黄金の精神をその目に見たのだッ!!


「ジョルノッ! お前の命がけの行動ッ! 私は敬意を表するッ!!」

 妹紅は自分の手首を噛みちぎり、そこから流れる血をジョルノの傷にあてた。

「モ、モコウ・・・・・・!」

 自分の主人の突然の行動に、スタンドの『スパイスガール』は止めるように妹紅に触れようとするが。

「いいのよ、『スパイスガール』。私が怪我するところは見たくないでしょうけど・・・・・・。これはジョルノの覚悟に答える為よ」

「ワカリマシタ・・・・・・」

 そう言って『スパイスガール』はスタンドヴィジョンを消した。

「くっ・・・・・・」

「大丈夫よ、蓬莱人の血には痛みを和らげ、怪我の治りを早める効果がある。とりあえずは応急処置よ」

「・・・・・・だったら・・・・・・僕の『GE』に石を持たせてください・・・・・・。足りないパーツを・・・・・・補強します」

「! 分かったわ」

 妹紅はジョルノの言うとおり、近くから小石をかき集めて右半身だけが出ている『GE』に握らせた。すると小石はジョルノの手の中で肉となり、『GE』に欠損した部位を補強するように、肉を傷口に詰めていく。

「っぐぅうううううううッ!!」

 蓬莱人の血で痛みを和らげていると言っても、激痛は伴う。痛みに耐えながら傷を徐々に治していくが――――。

 ブゥン・・・・・・

 敵は待ってはくれない。

「ま、まだ動けるのかッ!! 『スパイスガァーーール』ッッ!!」

 ひしゃげたプロペラを回しながらも『エアロスミス』は妹紅とジョルノめがけてマシンガンを乱射する。

「ナンドモナンドモオンナジテガキクトオモッテンジャアネェェーーーーーーッ!! コノスッタコガァァーーーーーーーッ!!」

 『スパイスガール』は迫りくるマシンガンの弾から二人を守るように立ちはだかり、+や-のような模様が描かれた頭から妹紅と同じ柄のリボンをほどいて広げる。

 リボンはすでに『スパイスガール』によって柔らかくなっており、広げられたリボンに突入した銃弾は全て勢いを止められる。そしてそのままパチンコの要領でゴムの弾性力を利用し――――

「落とし物だ、返却ッ!!」

 全てをエアロスミスに弾き返した!!

 ――――しかし、妹紅と『スパイスガール』の考えとは裏腹に『エアロスミス』は完全なる不意打ちを避けたのだ!

「――――な、何だって!?」

 壊れかけの機体からは想像も付かないような俊敏性に面食らった妹紅は『エアロスミス』に次の行動をさせてしまう。

 その行動とは――――。

「う、『腕』!? こ、このヘリの操縦室から小さな腕が伸びてるぞ!?」

 そう、妹紅がただのラジコン型のスタンドだと思っていた『エアロスミス』には操縦士が乗っていたのである!!(名前はスミス)

 操縦室から伸びた腕は何かを握りしめており、操縦士はそれを妹紅の足下に投げつけた!

 とたんに彼女たちの周囲を煙幕がおそう。どうやらさっきのはスモークグレネードだったらしい。あの大きさなのに妹紅とジョルノ二人を一瞬ですっぽりと覆ってしまう煙幕だ。

「く、そ! 何も見えないわ!!」

「こ、・・・・・・このままじゃあ・・・・・・ぅぐ! き、危険だ・・・・・・!!」

 ジョルノの言うとおり、これじゃあ『エアロスミス』がどこから攻撃してくるかが分からない。そう思っている間にも煙幕はその範囲を広げていき周囲10mは煙で一杯になった。

「なんっつぅ威力よあの煙幕! ジョルノ、ちょっと我慢してねっと!!」

「痛いッ!? きゅ、急すぎますよッ!!」

 妹紅はすぐさまジョルノを(結構乱暴に)かつぎ上げて煙幕からの突破を試みる。

「――――でもこの煙幕は好都合よ! おそらく、こう煙が濃いとチルノだって私たちがどこにいるかは分からないはず――――」

「痛い痛い痛いっ! 痛いですって妹紅!」

 急いでいたため妹紅の左手はモロにジョルノの左足の傷口に当たっていたが、妹紅にそんな余裕はない。あれだけの『覚悟』があるならこの程度の痛みも我慢してほしいものだ――と、思っているうちに二人は煙幕から抜けた。

「一旦、『エアロスミス』から距離を置くわ! こんな状況じゃあ3妖精を探す暇も無い」

 煙幕の中で『エアロスミス』のエンジン音を聞きながら妹紅は全力で走った。ジョルノがいちいち痛みに声を上げているが関係ない。

 次第に『エアロスミス』のエンジン音から遠ざかって・・・・・・。

 ブロロロロロロロロ!!

「――――はっ!?」

 音が遠ざかっていた筈がすぐに距離を詰めてきたのである。妹紅が慌てて後ろを振り向くと――

 ガチャン、ガチャン!!

 『エアロスミス』はもの凄い勢いで妹紅の背後まで来ていたのだ!!

「な、何でだァァーーーーーーーッッ!!?」

 どう考えても煙幕の中でも妹紅とジョルノの居場所が分かっていないと追いつけない時間だった。まさか、視覚以外の何かで私たちの居場所を察知しているのか?

 いや、そんなことを考えている暇は無い。さっきのガチャンと言う音! あれはもう闘いの中で何度も聞いている『エアロスミス』が銃でこちらに標準を付けた時の音だ!!

「『スパイスガァァーール』ッ!! 『エアロスミス』をぶん殴って柔らかくしてくれェエエエ!!!」

「WAAAAAAAANNABEEEEEEEEEE!!!!」

 ドドドドドドドドドドドッ!!

 間一髪で『スパイスガール』は『エアロスミス』が銃弾を放つ前にそのラッシュを叩き込むことに成功する――――だが、妹紅の目は『エアロスミス』の機関士がラッシュを食らう前に何かをこちらに投げ込んでいたのを見た。
 何かって?

 それは妹紅とジョルノのすぐそばに落ち――――丸みを帯びた何かだった。妹紅はそれが何かなんて全く皆目検討は付かなかったが、直感的に。本能的に『やばい』と思ったのだろう。彼女はすぐに行動に移した。『スパイスガール』は間に合わない。抱えているジョルノを出来るだけ遠くに投げ飛ばし、すぐにそれに覆い被さる。

 投げ込まれたのは――――『手榴弾』だった。

「も、・・・・・・妹紅っ!! 逃げろ、危険だァァーーーーーーッ!!」

 投げ出されたジョルノが叫ぶがもう遅い。

 ――――次の瞬間、少女の体は爆散した。


*   *   *

 チルノは退屈そうにしていた。

「あぁーあっ、つまんないつまんない! つーまーんーなーいッ!! どうしてあたいは待ってるだけなの!?」

 チルノ以下、光の3妖精はこぞって隠れた要塞、カマクラもとい『かくれんぼ大作戦作戦本部』でのんびりと過ごしていた。

「だって、チルノが動かすより自動操縦の方が強いじゃん」

 サニーはやれやれだぜ、という風に両腕を上げてチルノを窘める。

 そう、チルノは『エアロスミス』を手動ではなく自動操縦で動かしていたのである。自動操縦になると目標が決められない代わりにチルノ本体が動かすより断然強いというメリットがある。

「自動操縦だとあたいは何にも面白くないわ!! もういい! あたい突撃してくるから!」

「わーっ! ちょ、ちょっと待ってチルノ! あんたはここで待ってて! 頼むからさ!」

 ルナはチルノを押さえる。ルナはスターから「チルノがついうっかりここの場所を喋っちゃうとも限らないわ」と聞いており、こんな馬鹿のせいで自分たちのいたずらが台無しにされるのは御免だった。

 いや、そもそもこれはサニーの言い出したことなんだけど・・・・・・。っていつものことか。

「ほら、蛙。確かチルノって蛙凍らせるの好きだったよね? 見てみたいなー私!」

 サニーはチルノを挑発するだけだし、スターはただ見てるだけだし。結局チルノを引き留めるのは私しかいないじゃない!

「はい」

「え?」

「もう凍ってるよ」

「え? って、あぎゃーーーっ!?」

 ルナが手に持っていたトノサマガエルは既に凍っていた。ルナの手ごと。

「あんたらの言うことなんかもう聞いてられるか! あたいは先に行くぞ!」

「ちょっと待てよチルノ! いいから座っときなさいよ!」

 サニーはチルノが出ていかないように腕を掴んだ。

「チルノそれ死亡フラグ」と、スター。

「もう! 離してってば!」

 ルナが氷の冷たさに悶えている間、チルノは苛立ちながらカマクラを出ていこうとした時――!


 ドグォォォォンンンッ!!!!


「「「「え」」」」

 どこか遠くの方で爆音がした。四人は一斉に顔を見合わせる。

 四人は藤原妹紅の顔を思い浮かべていた。確かに、彼女ならば威力250の大爆発を起こしそうである。しかも次のターンに復活する。

 そして音が聞こえるということはルナが現在音を消し忘れているということだ。

「・・・・・・ルナ、音消して」

「・・・・・・じゃあチルノ、氷取って」

「・・・・・・ならサニー、手離して」

「・・・・・・よしスター」「いやよ」

「・・・・・・あの」「いやよ」

 しばらくしてカマクラ内は落ち着いた。

*   *   *

 藤原妹紅の体が手榴弾によって爆散すると同時に、あたり一面に炎と熱気が拡散する。

「ぐぅぅッ!?」

 ジョルノがそれに身構えるが――――不思議なことにジョルノには熱気が来なかった。

「・・・・・・妹紅?」

 そういえば、鈴仙から聞いていたが妹紅は炎を操ると言っていた。まさか妹紅はその能力を使って爆発の熱気と熱線を自分の体の炎を使ってジョルノを避けるように誘導したのでは? 例えば、水路を掘って川の流れを変えるように、雷が一旦地上に弱い電気の通り道を作り大きなイカズチを落とすように。

 おかげで、ジョルノの周りには爆発による被害が少ないが、それ以外は悲惨な状況だった。約30m周囲の竹はなぎ倒され、激しく燃えている。

「くぅッ!! 半身は・・・・・・妹紅の血のおかげか・・・・・・結構痛みは引いているが・・・・・・」

 それでもジョルノは立つことは難しかった。それにしても爆発のせいか、かなり熱気が立ちこめている――――。

 ブロロロロロ・・・・・・

 その時、ジョルノの耳に弱いエンジン音が聞こえた。何と、『エアロスミス』がぼろっかすになりながらも動いていたのである。

「ぐっ・・・・・・くそ! この体じゃ・・・・・・」

 ジョルノはあきらめかけ、目を閉じていた。続けざまにガチャン、というマシンガンの標準を合わせる音が聞こえる。

 そして、『エアロスミス』は引き金を引いた。

 ドドドドドドドドッ!!



 だが、銃弾はジョルノではなく、周囲の燃え盛る竹を撃ち続けていた!

「・・・・・・??」

 ジョルノは傷口を押さえながら、その奇妙な『エアロスミス』の動きを見ていた。

(まさか、『エアロスミス』は僕たちを視認していなかった? 確かに、煙幕の中からすぐに追いかけてきたが・・・・・・)

 ジョルノがそう考えている間も『エアロスミス』は燃え上がる炎に対して銃を撃ち続けていた。

(音ではない・・・・・・。『炎』に向けているということは・・・・・・『熱』?? いや、だとしたら火器を使えないはずだ・・・・・・)

 ジョルノは『エアロスミス』を観察していた。『エアロスミス』は『炎』に対して銃口を向けているようだった。しかし、ジョルノは気づく。

 実は竹以外にも、所々燃えているところはあった。地面にも弱くではあるが残った手榴弾の破片がぐずぐずに溶けていたし、それを考えると燃える竹より明らかに高温だ。やはり、熱感知ではない。

 更に、地面も所々ぶすぶすとではあるが燃えていた。だが、『エアロスミス』はそこを狙うこともなく、ただただ燃える竹に銃口を向けていたのだ。

(・・・・・・まさか・・・・・・いや、これしかない!!)

 ジョルノは地面を『GE』で殴りつける。そこから生まれたのは『二匹』の小鳥。一匹は元気に飛び回り、その生を喜ぶように舞う小鳥。そしてもう一匹は今のジョルノのように地面に這い蹲り、ほとんど虫の息状態の小鳥だった。

 すると、『エアロスミス』は片方の小鳥に銃口を向けて、すぐさま撃ち殺した。――――それは元気な方の小鳥だった。

(――――間違いないッ!! 『エアロスミス』は『二酸化炭素』を追っているんだ!! だから高温の溶けた鉄屑より有機物の燃える竹を打ち抜くし、虫の息で殆ど呼吸をしていない小鳥より元気に飛び回りたくさんの呼吸をする小鳥を撃ち殺す!!)

 そうと決まればジョルノの取る行為は決まっていた。彼は両者とも虫の息になった小鳥を土に戻し、今度は別の生物を生み出す。それは二種類の生物でジョルノの手元には大量の広葉樹林の青々とし、みずみずしい葉っぱ。そして燃え盛る竹の近くに大量のサボテンを生み出した。

(砂漠に生育するサボテンの水分比は90%以上! なので普通の植物なら火がつくような環境下でも耐えられる)

 サボテンは火に当たったところから皮が破れ水分が大量に染み出していく。そうすることによって火は次第に鎮火されていくだろう。

(そしてこの広葉樹林の葉っぱとサボテンの水分で! 『光合成をするマスク』を作る!!)

 『ゴールドエクスペリエンス』を器用に操り葉っぱをマスクのように編んでいき――――完成した。

 これをつければすでに虫の息のジョルノならば、『エアロスミス』のレーダーに引っかからない。

(・・・・・・あとは、待つだけだ・・・・・・)

 ジョルノは『エアロスミス』が自分を狙わないことを祈りつつ、残った傷の手当てをしていた。

*   *   *

 1時間もすれば火は消し止められ、ジョルノの傷もかなり回復していた。目標を見失った『エアロスミス』はふらふらとその辺を飛び回り続け、ゆっくりと西の方向へと進んでいく。

 その間にジョルノの隣では消し飛んだ妹紅の体が徐々に再生を始めていた。

 ジョルノは痛む体に鞭を打ち、『エアロスミス』を追いかける。

 あの爆発だ。すでに竹林から妖怪や生物は消えているだろう。つまり、あの『エアロスミス』が向かう場所は――――。

「・・・・・・妹紅、ありがとうございます」

 あなたの命がけのヒントは決して無駄にはしない、と心に誓う。ジョルノは息が上がらないように、ゆっくりと、慎重にエアロスミスを追いかけた。


 しばらくすると、『エアロスミス』がスピードを急に上げた。

(ということは・・・・・・!)

 ジョルノは確信する。『エアロスミス』のレーダーの範囲内に『四人の二酸化炭素』が入ったということを!!

 ジョルノは更に慎重になりながら、『エアロスミス』を追いかける。

 ――――そして20mほど進んだとき、目の前に突然カマクラが姿を現したのである!

「・・・・・・!! これか!」

 と、先にカマクラの中に『エアロスミス』が入った。そしてその数秒後。

 がちゃん!!

「えええええええッ!?!? ち、チルノォォ!! は、早くしまって、しまって!!」

「も、戻りなさい『エアロスミス』ッ!!」

「し、死ぬかと思ったァァーーーーーッ!!」

「何で急に『エアロスミス』が??」

「さぁ? もう敵を倒しちゃったからじゃあないかしら?」

「ってスター! 大丈夫なの!?」

「大丈夫よ大丈夫よ~、きっと誰も来て・・・・・・・・・・・・」ピタァ

「・・・・・・来て・・・・・・どうしたのスター?」

「『来て』の後は何なのよォォ~~~~!!」

「スター!!」

 ジョルノがカマクラの中をのぞき込んだ。



「見つけた」



「やっぱり・・・・・・来てたわね」

 スターはやっちゃった・・・・・・という風に頬を掻いた。

*   *   *

 ジョルノが3妖精を見つけると、彼女たちのスタンド『ボーイ・Ⅱ・マン』が現れ、口から『ゴールドエクスペリエンス』の左半身を吐き出した。

「あぁっあああ~~~!! せ、折角強そうな『スタンド』だったのにぃ~~!」

 サニーは『GE』を捕まえようとするが、するりと手から抜けて――ジョルノの中に幽霊を降ろすように入っていった。

「これで・・・・・・返してもらったわけか・・・・・・」

 ジョルノは急に体が軽くなったように感じ、背伸びをする。

 全く違和感はない。妹紅の血のおかげで怪我の痛みもない。

「さて・・・・・・」

 とジョルノは妖精たちを睨みつける。彼女たちは身を寄せあって震えているがジョルノには関係ない。ただのごっこ遊びで自分たちの邪魔をしたのだ。受けるべき制裁を与えてやるつもりだ。

「や、やめて下さいぃーーー!! わ、私たちはただの妖精なんですよ!? ふ、普通の殴りあいなんて勝てるわけがないじゃあないですかァ~~~~!!」

 ルナが命乞いを始めた。

「ええ!? な、殴るって・・・・・・嫌だよ私!! 殴るんならスターをどうぞ!」

「ちょっと、サニー! 私だって嫌よ! 言い出しっぺのあなたが大人しくしょっぴかれるべきだわ!」

 スターとサニーとルナはそれぞれ責任の押しつけ合いの口げんか。完全にジョルノにビビっていたが一人だけ違った。

「はん! なっさけないわねぇ~~~!! こんな人間一人にビビりあがっちゃって! やいやいコロネとか言ったか!? あたいが相手だ覚悟しろ!! 『エアロ・・・・・・」

 まるで見当違いのことを言いながらチルノはジョルノの前に立ちはだかり、『スタンド』を出して攻撃しようとするが――――。

 既に『ゴールドエクスペリエンス』の拳が彼女の顔面にめり込んでいた。

「――――無駄無駄・・・・・・」

 そして続けざまにもう1発、更にもう2発、だがジョルノの拳は止まらなかった。


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!!!」

 ドガバギボゴォメキョッドゴッドゴドゴミシバキィッッ!! 例えるならそんな擬音がチルノの全身から聞こえてきそうなほどの容赦なしのラッシュだった。

「ぎっぇええええええええエエエエエーーーーーーーーーーッッ!!?」

 チルノは叫び声を上げながらカマクラの壁に叩きつけられて

 ぴちゅーん! という音を上げながら消滅した。

 俗に言う『一回休み』である。

「あ、あわわわあわああ・・・・・・」

「ち、チルノがあんな一瞬で・・・・・・」

「や、やばいわ・・・・・・ちょっとヤバすぎよ・・・・・・」

 3妖精はお互いの肩を抱き合い泣きながらジョルノに懇願する。今度はお互いに責任を擦り付けたりせず、自分たちの非を認めて懇切丁寧に謝罪した。

「お、お願いです! 痛いのは嫌なんですぅッ! 許して下さいジョルノ様ぁ~~~!!」

「何でもしますから! 靴も嘗めてきれいに掃除します! レロレロレロレロ」

「二度とあなたたちにチョッカイかけないことを誓います! ですから、何とぞご容赦を~~~!!」

「・・・・・・」

 あからさまな態度の豹変にジョルノはため息をついた。やはり、こいつらは只の子供と何らかわらない。どうせ、ここで許しても同じことを繰り返すだろう。

 教育が必要だ。

「じゃあ、『一発』だけ。それも『一回休み』にはならない『ゆっくり』としたお仕置きをします。それで今回のことは見逃してあげましょう」

 チルノのあの有様を見ているせいで『一発』だけ、というのは3妖精にとって非常に有り難いことだった。一発耐えれば見逃してくれるのだから、これほど旨い話はない。

「ほ、本当ですか!? 何という慈悲! ありがたく承りますぅ~~~!!」

「やったぜラッキー! ・・・・・・じゃないや、ありがとうございますありがとうございます!」

 3妖精は喜んでいるが――――もちろん、そんな旨い話は存在しない。

「えっと・・・・・・じゃあ『ゆっくり』いきますよ」

 といって、まずジョルノは『ゴールドエクスペリエンス』で三人の頬に触れた。

 このとき、既にジョルノは『能力』を使っているのだが、そんなこと3妖精が知る由もない。

「・・・・・・」

 サニーからお仕置きを実行するようだ。サニーは痛みに耐えるように目を瞑っているが、ふと頬に何かが触れた。それは限りなくスローに動く『GE』の拳だった。

(な、なんだ・・・・・・ぜんぜんゆっくりじゃんかぁ・・・・・・これなら余裕だな! ・・・・・・って、え? ちょ、ちょっと・・・・・・、なに、こ・・・・・・)

 サニーを殴り終えたジョルノは次はルナ、そしてスターと普通に『全力』で殴り飛ばした。もちろん、サニーを殴ったのも全力である。

 だが、3妖精は動くことはない。

 何故なら――――

「君たちの精神を『暴走』させました・・・・・・。『鋭い』痛みを『ゆっくり』味わえ・・・・・・それが君たちへの『お仕置き』です」

 ジョルノはそう言い残してカマクラから出ていく。


 ちなみに・・・・・・感覚が暴走している3妖精はというと

(あああああああああああッッ!! な、何なのよォォ~~~~~!! い、痛いッ! でも、ぜんぜん動かないぃぃ!! 何で!? 『ゆっくり』激痛がおそってくるぅぅ~~~!! いやああああああああッ!!!)

(い、痛いのだめって! 痛いのだめって私言ったよねぇぇーーーーーー!! いやだぁぁぁっ! いやっ、いやぁぁっ! 痛いよ、誰か、誰か助けてえぇぇぇっ! うわあああああああああッ!!)

(こ、これはっ! ううううっ! か、感覚が、私たちの『感覚』だけが暴走してるんだわッ!! だから痛みがゆっくりとやってくるし、私たちは身動き一つ取れないッ!! あああああッ!! あ、がっ、顎が・・・・・・めきめき音を立ててるのが分かるうううううううううううッ!!!)

 ・・・・・・おそらくはチルノより酷い状況なのかもしれない。

 第18話へ続く・・・・・・

*   *   *

 後書き

 これで⑨爆撃注意報は終了です。この話で見物なのは遊び感覚の妖精たちと、命の危険を感じているジョルノたちとの間のギャップですね。二人が自動操縦の『エアロスミス』と死闘を繰り広げている間、妖精たちはカマクラの中でしょーもない話を繰り広げつつかき氷でくつろぐ。何一つ悩みのない妖精たちは羨ましいです。

 あと、『エアロスミス』が自動操縦型になっていた件について。これは作者のオリジナルです。どうやってもチルノでは『エアロスミス』を使いこなすことが出来ないので自動操縦も可能にしました。すべては操縦管握っている『スミスさん』の思い通りです。(原作でも操縦席に乗っているのはスミスという小さい人間)

 ちなみに自動操縦にした場合、『エアロスミス』は

 破壊力ーB  スピードーA  射程距離ー数十m
 持続力ーC  精密動作性ーA 成長性ーE

 備考:既に熟練の操縦士がそのまま操るかためスピードと精密動作性がかなり強化され、成長性がEに。また、『二酸化炭素』をより多く発する物体を優先して攻撃するため敵味方の区別が付かない、というデメリットがある。それでもチルノが普通に操縦するより格段に強い。

 となっております。まぁでも本体が最強(笑)なのでそこまで強くはないです。本体を見失わない限り。

 と、チルノといえば馬鹿! 馬鹿といえばナランチャ! ナランチャといえば『エアロスミス』! という発想(ニ●ニコ動画などからの影響)の元生まれたチルノ版『エアロスミス』でしたが、ジョルノたちにとっては相当な脅威でした。

 次の話はしばらく経ってから更新する予定です。それでは、また18話で。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧