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炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師

作者:BLADE
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”狩人”フリアグネ編
  七章 「夜に二人」

 夜、帰宅した俺はベッドに座り込んで一人悩んでいた。
 いや、悩むって表現は適切じゃないな。正確には考え込む……だろうか?
 無論の事だが、内容は今日の戦闘の顛末についてである。

 結局、封絶内の破損部位は、誰一人犠牲を出すことなく修復された。万事が丸く収まって、俺としては嬉しい限りだ。
「本当に便利な魔術―――、じゃないな。自在法……か」
 内容としては、そう難しい事ではなかった。範囲内を外界から切り離し、破損部位を修復……と言うより、巻き戻しただけだ。
 そうは言っても、そんな芸当は俺には到底出来る訳でもないから、正にシャナさんサマサマな訳だが。
 瀕死の重傷を負っていた池速人も、ちょっと寝違えたか? という程度まで持ち直せた。まぁ、重傷の原因の半分は俺なんだが……。
 だが代償に、俺自身の残り時間が削ったんだから、今回はこれで勘弁してほしい。何せもう俺には払うものがない。実際、支払い能力が不足していたから、不足分はずさんな修復作業という事になった。
 池の怪我は完治してないし、あれだけ派手にやられた教室は以前より確実に古びた状態で修復されてるし。
 だが、そもそも俺自身では修復作業すら出来なかったんだ。むしろ、この程度の被害で済んだ事は素直に喜ばないとな。うん、そうだ。そう思うしかない。無理にでもそう思う事にしよう。
 後ろばっかり見てても、前には進めないしな。上を向いて歩くんだ、俺。向き過ぎて足下をすくわれない程度にな。
「………よし!」
 立ち上がって頬を叩く。気合いを入れ直さないとな。部屋の中央に立って、少し長めの瞬きをする。
 ―――――さて。今は俺に出来る事をやるだけだ。
 さしあたって、当面の問題は戦闘時の立ち回りだろう。
 今回の戦闘でも夫婦剣――干将・莫耶の投影を試みはした。だが、正直あの投影速度では話にならない。
 具体的な所要時間は、投影開始から完了までに夫婦剣だと約五分。つまり五分の間、俺は素手の状態になる。
 聖杯戦争当時の経験―――と言うか希望的な観測で、俺の魔術は実戦では百発百中! なんとかなるさ! と思いたかったが、なかなかどうして上手く行かないものだ。
 今回は、近くにあった椅子の脚を強化して武器にしたが、これからはそう都合良くはいかないだろう。それこそあの頃の様に木刀を持ち歩くのも考えたが、そもそもあんな物は一般家庭には普通は置いていない。そもそも、衛宮の家が特殊なだけであって、道場なんて普通の家に備えられてないのが常識だろう。
 そうなると、調達自体も全部自分でやらなければならない。お隣のお騒がせ英語教師の家に頼む、なんて事ももう出来ないし。やっぱり旅行の土産物なんかじゃなくて、しっかりと実戦で使える物となると、割りとキチンとした造りの物じゃないとダメだ。
 戦闘用の木刀を探す為に、時間を割くなんて事は本末転倒。 
 仕方がないので、武器の捜索案は却下だ。
「なら、コイツを戦闘で使えるようにするしかないよな」
 強化自体は有効な戦術である事は間違いない。何せ今の俺が使える魔術で、タイムラグ無しで使える唯一の物だ。何も得物は木刀に限っている訳じゃない。防戦に限定すれば、例え紙の筒でも使いようはある。
「投影――開始」
 バカの一つ覚えだが、夫婦剣を投影。宝具でペナルティのない戦闘武器はこれしかないし、その辺りは勘弁して欲しい。
 昨日は投影を出来るか確認しただけだった為、本格的に投影精度の確認をしたい。こういう確認を最初からしておけば、あの時の立ち回りは幾分かは変わっていた筈だ。
 今後は希望的な観測を視野にいれた戦術の構成は控えねばなるまい。
 思考している間に、両手に夫婦剣が用意された。所要時間にして約五分。やっぱり変化はない。
 だが、速度は低下しているが精度に関しては変わらないようだ。完成した干将・莫耶の出来には殆ど問題は無い。
「そういえば、昨日と今日で投影したのは干将・莫耶と木刀を含めて3回だけか」
 元々、投影魔術の精度は自分のイメージによってその出来は大きく変化する。考えれば当たり前だが、俺の思い描く夫婦剣のイメージが変わらないのに、精度が変化する訳がない。
 それは分かっているのだが、一応、確認はしておかないとな。もう希望的な観測をする訳にはいかない。
 だからこそ、念の為に投影品を確認する事で確実なる安心、という形にしておこうじゃないか。なぁ、衛宮士郎。
 ―――って、なに考えてんだか。俺は別に不死身でもなければ不老不死でもないし、悪霊なんて操れないってのに。士郎、あなた疲れているのよ……なんてな。
 はぁ、と溜め息をついて、さらに俺は夫婦剣の投影を続ける。

「けど、魔力量がそのままなのは助かったな」
 聖杯戦争当時の魔力量で、今の増加した魔力消費量。そんなのだったら、すぐに魔力切れになってしまう所だもんな。
 夫婦剣を五対投影した所で完成品を眺める。まぁ、こんな所だろう。
「これで良し―――っと。これなら何とかなるかな?」
 これ以上投影をすると、消費した魔力量が無視できない量になるし、この辺りで確認作業を切り上げるか。ドカっと床に座り込んで胡座をかく。
「木刀の投影時間を考えると、やっぱり宝具の投影よりは普通の刀剣の方が良いのかもな」
 木刀も確かに時間は掛かったけど、夫婦剣程ではなかったし。それ程ランクも高くないし、特殊な能力もないけど干将・莫耶は宝具だ。通常の刀剣より投影の難度自体も高いし、消費魔力量も多い。
 今の俺に必要なのは利便性の高い武器だ。その点を考えると夫婦剣は、今現在の状態だとあまり便利な武器じゃない。うーん、どうしたものか。
 例え無銘でも剣は剣だ。それに宝具より当然、投影速度は早い。椅子の脚でも戦えたんだ、何も宝具に拘る必要はないとは思う。けど、それがフリアグネ相手になると少々不安がある。
 俺は窓の外を眺めながら思案する。あれから天気も崩れて、外では雨が降っていた。こんな天気でも、彼女は外で警戒を続けているのだろう。
 こう、毎度の事ながら女の子に守られてるなんて本当に情けないな。なんだで、聖杯戦争の後も遠坂に世話を妬かれっぱなしだったし。
 けど、格好がつかない事この上ないな。別に格好をつけたい訳でもないし、世間で言う程、正義の味方の真似事は華やかな物じゃない事は分かってはいるんだけどさ。
 せめて一人でなんとか出来る様にしないといけないよな。遠坂もいないんだから。

 そんな事を考えながら、ぼけーっ、と窓の外を眺めていると外から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
 雨音に混じりながらだから、ハッキリと断定は出来ない。けど、そもそもこの時間に、この天気で、窓の外から聞こえてくる声の持ち主なんて一人くらいしか思い付かない。まぁ、一応は聴力を強化して確認はしておくか。敵なら敵で厄介な話だし。
「―――妙な――違う。―――そう、嫌な奴!」
 途切れ途切れでしか聞こえないけど、やっぱり間違いない。この声はシャナだな。
 こんなに雨が降っているのに、外で警戒するなんて感心だなぁ。何処か屋内で良い所はなかったのか? 正直言って、凄く気まずいじゃないか。朝と夕方に襲撃があるんだから、夜の間は別に良いってのに。それに雨だぜ? 雨。
 勘弁してくれよ、全く。
 雨音に紛れて聞こえるのは罵声だし。しかも、嫌な奴、って所だけ妙に声が大きいし。
 多分、と言うか確実に俺の事を言ってるんだろうなぁ。罵倒されるような事をした覚えはないんだけどな、俺は。
「屋根の上………だよな。ったく、この天気の中で何でそんな所を選んだんだよ」
 嘆息がついつい出てしまうが、そこは仕方がないと思う。とにかく風邪をひかれても困るし、取り合えずこちらから出向く事にするか。
 素直に説得をしても無駄な気がするし、何か差し入れも交える事にしよう。交渉には貢ぎ物をってのは、いつの時代でもお約束だしな。
 そうと決まれば、まずは梯子だな。後、傘と……差し入れは飲み物で良いか。


  ◇


 という事で、傘と差し入れを用意して屋根に梯子を掛けた。思ったよりも雨足が強い。中に入れよ、なんて格好つけた矢先に、滑って頭でも打てば惨め極まりないので、少し慎重に行動する事にするか。
 さて、屋根の端から傘と頭を出してみると、屋根の上には案の定だが、シャナが傘を差して座り込んでいた。雨の中で、だとか下に何も敷かないで、だとか突っ込みどころは色々あるが、その前にまず言いたい。

 ―――何で胡座なんかかいてるんですかねぇ!?

 あんたの着てる服は何ですか? はい、ただの制服です。違う! セーラー服だろうが。
 あぁ、もう全く。セーラー服でそんなに行儀悪く胡座をかかれてたら不味いんだよ!
 俺は今、屋根の縁から少しだけ頭を出した形でいる。だから、自然とシャナを見上げるポジションな訳で………。
 柔らかな曲線美を描く両足。水飛沫を弾く程、きめ細かく張りの良い肌。それらも十分過ぎる程に危険な要因だ。だが、そんな事は些細な事の様にに思わせる程、もっと恐ろしい物がある。
 そう、シャナの足は言うならばショートケーキの土台部分。ホイップクリームでコーティングされた、純白のそれは単体でも十分に美しい。だが、彩りを加える事でその無垢な白さを一層、際立たせている。
 アレは、間違いなくそれと同じだ。もぎたて超新鮮。一見するとメインに見えるが、あくまでも引き立て役。適度な自己主張が全体のバランスを引き締めている。

 偶々、俺が下から見上げる形になってしまい、その上、影で死角になっていた………訳でもなく、強化しなくても元から俺の視力は良かった。そんな様々なファクターが一番望まれない形で結び付いた、そういう事だ。
 これは自己弁護ではなく、事実を述べただけである。言うならば不幸な事件、いや不慮の事故だ。
 俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!
 俺は悪くねえぞ、シャナがあんな場所で胡座をかいてるのが悪いんじゃねぇか。

 という事で、端的に事実を述べると布がね、見えそうなんですよ。というか、角度的に見えてるんですよ。パンツじゃないから恥ずかしくないもん! だってか? 生憎、俺はアレをズボンと形容する文化で育ってない。どう見てもパンツです。本当にありがとうございました。
 まぁ、唯一の救いって訳じゃないけど、白だったのは助かった。さっきのショートケーキの話じゃないがイチゴパンツだったら終わってたな。シャナの、あの見かけだけなら別に不思議じゃない。だが、色々とアウトだよ、主に俺が。

 せめてもの配慮という事で極力、目線を向けないようにして声を掛ける事にした。
「やっぱり、居たか」
 この上なく不機嫌そうなシャナは、その不機嫌さを全く、微塵も、これっぽっちも隠す気もなく言い返してきた。
「居て悪いの?」
 何かマズッたか? やっぱり、こんばんわー、位の方が良かったのか? あーっ、もう知らないぜ俺は。何でいちいち俺が気を回さないといけないんだ。
「別に悪いって事はないけどさ。声、雨が降ってるのに聞こえたぞ」
 開き直って偉そうに言ってみるが、実際のところは聴力強化のブーストがなかったら何を言ってたのかさっぱりだったんだが。
「ふん、お前の知った事じゃないわ」
 これも不機嫌な声色で返してくる。一体、何が不満なんだか。確かに普段からニコニコしてるような感じはしないけど、これは確実におかしいよな。俺には原因がさっぱり分からないし。
 パンツを見たのがバレたか? いや違うはずだ。一応、平静は装ったし、そもそもこの態度は、学校から帰ってる時からこうだった。
 帰り道に付いて来た割に、あっちからの会話は無し。こっちから話し掛けたら、睨み付けてくる。気不味い事この上なかったよ、全く。
 何かしたか、俺?
 延々と堂々巡りの思考に陥ってしまう。俺が悩んだって仕方がないんだが、こればかりは仕方がない。何せ体は剣でも心は硝子なんだし。
 だが悩んでいるよりも前に、今は大事な問題がある。とにかく当初の任務を完遂しなけらばならない。
「まぁ、良いか。それより、今のシャナは一応の所は平井ゆかりなんだろ? 家に帰らなくて良いのか?」
 本題ではないのだが、一応気になった事ではあるので聞く事にしておいた。交渉の下準備の軽い会話って奴だな。
 シャナは、ふんっ、と鼻を鳴らす。
「どうでもいいわね。コレは家族で喰われたみたいよ。両親もトーチだったし、なんとでも誤魔化せるわ」
「そう………か」
 失念していた。家族を丸々一つ喰われるって事もあるんだ。平井ゆかりの例とは逆に両親をいきなり失ってしまう、なんて事もきっとあるのだろう。
 そうなってしまったら、その後の顛末は想像するのは容易い事だ。あの火災の直後の俺も、そうなってしまってもおかしくなかった。切嗣に救われるまでは。
「用件はそれだけ? 私も忙しいんだから、用が済んだのならさっさと引っ込みなさいよね」
「本当は自分の身くらい、自分で守らないといけないんだよな。この雨の中、わざわざ悪い」
 少し、雨の中、を強めて言う。忘れてはいけない事だが、なんだかんだでシャナは俺の周囲を警戒してくれているんだ。
 そりゃ、文句の一つも垂れたくなるのかもしれない。帰り道はそれを考えていた上で、不機嫌だったのだろう。
「何か勘違いしてるみたいね。これは私がやらなければならない事なの。別にお前の為じゃないわ」
 ため息をつきながらシャナは答える。そりゃそうか。シャナは徒を狩りに来ただけであって、俺を護る事はイレギュラーに近い。仮に厄介な宝具だったら、それを得た徒を狩るのが面倒だからな。
 つまり俺はシャナにとって、特に用はないが相手には渡してはならない存在。俺にはどうする事も出来なかったとはいえ、嫌われたもんだ。
 だが、だからこそ今回のミッションはそんなシャナへの謝罪も含めている。だが悲しいかな、多分シャナは一晩中こんな調子だろう。なら交渉相手を変える―――って程でもないが、アラストールから切り崩す。
 こっちも短時間でカタをつけられるなんて、そんな甘い考えはしてないんだ。最終的にシャナを家の中に連れ込めればそれで良い。

「アラストールもだ。本当にすまない」
「我等の為すべき事が偶然にも、貴様の利害と一致しただけだ」
 アラストールの返事も実務的ではあったが、シャナの突き放すような物言いとは異なるものだった。
 今日一日を通じて分かったが『天壌の劫火』なんて物騒な名前の割に、アラストール自身は別に荒々しい気性ではないらしい。
 まぁ、こっちの世界のバランスが同胞に崩されかかっているのを憂いで戦ってる様な奴だしな。相当のお人好しなんだろう。
「それは、そうなんだろうけどさ。俺が言いたかっただけなんだ、アラストール。それにしても、こんな雨の中で警戒しなくても良いんじゃないか」
 言いながら屋根の上に登る。アラストールには悪いが、会話のワンクッション代わりにさせてもらった。無論、お礼は本心からだけどな。
 これで割りと自然な形で屋根に上がれた筈だ。さっさと引っ込めと言われたが、上がってしまえばこっちのもんだ。
 なんだよ濡れてて歩きづらいな、と愚痴を漏らしながらシャナの隣に行く。片手に持っている傘が、シャナの傘とぶつからない様に間隔を取りつつ座った。少々ズボンが濡れたが、別に構わない事にする。
 観念したのか、シャナは俺を追い出そうとはしなかった。実を言うと、屋根から蹴落とされるんじゃないか、と内心で警戒していた位だったからな。
 それどころか、シャナは足を閉じて座り直した程だ。まぁ、今更な事なんだが。
 不可抗力で見てしまっていた事がバレたらどうなるか……。背中に背負っていた、差し入れの入ったリュックを置く。ふと脳裏に、大太刀に両断される自分の姿が思い浮かんだ。
 ―――きっと有無を言わさずブッタ斬られるんだろうなぁ。
 想像の中だけでも五回程シャナに殺され、思わず身震いをしてしまう。落ち着け、落ち着くんだ士郎。これは想像だ、現実じゃない。
「貴様の気にする事ではない」
 アラストールの声で現実に引き戻される。自分を落ち着かせる意味も含めて、一息おいてから頷き返した。
「まぁ、そうだけどさ。そう言えば、もう少しだけ訊きたい事があるんだ」
 そう言いながら、リュックの中から魔法瓶を取り出す。貢ぎ物だよ、貢ぎ物。交渉の必須アイテムだからな。
「………?」
 シャナは無言で、こちらを睨んでくる。そう心配しなくても、毒なんて入れてないって。
 肩に傘をかけながらだったので、少し慎重に中身をカップに注ぎ込む。そのまま、雨水が入らないように傘で隠しながらシャナに差し出した。
「差し入れだ、コーヒーだけどな」
 先程までとはうって変わり、特に拒まれる事もなくシャナは素直に受け取ってくれた。少しは機嫌を直してくれたかな? 現金な奴め。
「で、何が訊きたいの? コレの代金程度なら答えてあげるわ」
 そう言いながら、シャナは傘で顔を隠す。前言撤回、やっぱり機嫌は悪いらしい。
「今現在の所で坂井悠二――、つまりこの身体の元の持ち主の事を認識できているのは、俺達だけだよな」
「そうね」
 素っ気ない! だが一々気にもしてられないな。この年で禿げたくないし。
「それは、衛宮士郎――つまりは俺って存在が、坂井悠二っていう、元々ここに居た筈の存在を塗り替えてしまったから……、なんだよな?」
「何度も言ってるじゃない。そうよ、その通りよ」
「それじゃあ、シャナ。それにアラストール。アンタ達は俺が消えてしまったとして、俺の身体が坂井悠二だったって事は忘れてしまうのか?」
「この期に及んで、まだ他人の事を言うのね……」
 傘をチョイと上げて、端から睨んでくるシャナ。これまでの質問と同様に、軽く返されると思っていた。だが、シャナは睨みつけてくるだけで口を濁していた。
 そんなシャナの代わりに、俺の問いにはアラストールが答えてくれた。
「いや、我らはこの世の流れからは外れた存在だ。我らは起こった事そのものを感じ取り、認識する」
 だが、アラストールの説明は小難しくて、わざわざ噛み砕かなくちゃならない。ええと……、つまり。
「つまり、フレイムヘイズは別って事か?」
 再び傘で顔を隠したシャナがその影から言う。
「でも結局、そんな事はこれからの出来事に埋もれるわ。昨日の晩御飯を忘れてしまう様にね」
 失礼な、まだまだそこまではボケてない。と言うか、それは自分で自らの墓穴を掘ってないか? シャナさんよ。
「彼が居た、という真実を知っている人がこの世に一人でも居てくれるなら、せめてもの弔いになるんじゃないかってさ。本当は俺がその責務を負うべきなんだけどな」
 俺は消えてしまうからそれも叶わない、と付け加える。シャナから返事はなかった。
 俺と同じ様に感慨に耽ってくれているのか、それとも本当にどうでもいいのか、俺には分からない。
 けど何も感じないなんて、少し寂しくないか? そんな感じの事を考えながら、シャナの隠れている傘を眺める。不意に、カップに口を付けたであろうシャナが叫びを上げた。
「砂糖ッ!」
 それを聞いて、少々驚く。確かにあの昼飯と間食を見ていて、シャナが甘党であろう事は容易に想像できる。だが、それでもだ。
 ―――まだ苦かったのか?
 確かに豆は既製品だけど、それでも砂糖を三本は入れた。これ以上甘かったら、別の飲み物になると思うんだが…。
「ちゃんと入れたぞ?」
 そう言いながら、リュックから予備のスティックシュガーをもう三本ほど取り出す。なんだかんだで、こういう展開を予想して準備していた自分を褒めたいね、俺は。
 スティックシュガーをシャナに差し出しながら、ついでに揺さぶりをかける。困っている相手に手を差しのべながら交渉……。汚い、流石士郎さん汚い。伊達に、英霊になる危険を持ってないぜ。
「ところで、一晩中そうしてるのか?」
 スティックシュガーをむしり取ったシャナは、あろう事かそれを全部入れた。あーあ、そんなに砂糖を入れたらコーヒーじゃないぞ。もう、コーヒー牛乳でも飲んでろよ。
「そうよ。座りながら寝るのは慣れてるし、なにかあればアラストールが起こしてくれる」
 というか、寝ずの番をしてくれるのかと思ってたんだが、ちゃっかり寝るんだな。あの戦闘の後だし休息は必要だし、仕方はないと思うけど。もっとも臨戦状態での睡眠だから、疲労自体は確実に蓄積してるし、気休め程度なんだが。
 おっと、そういえばスプーンを渡し忘れてたな。
 リュックに手を突っ込み、使い捨てのティースプーンを用意する。えーと、何処に入れたっけな。
 リュックの中をガサガサと探し初めて、数秒後。シャナから催促がきた。
「スプーンは無いの? かき混ぜる物がないんだけれど……」
「ちょっと待ってくれ、今探してる所だ」
 ここでもないか。入れ忘れたっけ俺? いやいや、遠坂じゃあるまいし。砂糖を入れてスプーンを忘れるなんて、そんなベタなうっかりはしてないはずだ。
 遠坂本人が聞いたらガンドの雨が降りそうだが、うっかりに関しては本人もある程度は自覚してるからな。もうネタの域だよ、単なるネタ。
 おっ、あったあった。朱に交わればなんとやらっていうから、少々不安だったけどまだまだ大丈夫だな、俺は。
 スプーンを手渡して、そこで良い案を思い付く。どうせ寝るんなら、疲労は一気に消化した方が良い。俺の経験からも、寝ると決めたならキチンとした所で寝た方が良いってのは立証済みだし。
「なら、わざわざ屋根の上にいる必要はないんじゃないか? 敵が襲撃がしてくるとして、時間の特定は出来てるんだし」
 封絶の都合上、襲撃は明け方が夕方の筈だ。明け方頃には俺も起きているから、別に一晩中見張る必要はない。
「―――中に入れって言うの?」
 シャナは傘を上げて睨んでくる。眼が怖いよ、眼が。日頃の訓練で慣れてる俺が、一瞬狼狽える様な殺気を飛ばすな、全く。だがな、ここでハイそうですか、なんて簡単に引き下がる衛宮士郎じゃないんだ………!
「一晩中、雨の中に女の子を置いておくってのは、ハッキリ言って安眠妨害だろ。一応、防衛対象である俺の意見位は、訊いてくれても良いと思うんだけどな。イザってときに俺が逃げ遅れたらどうしようもないだろ?」
 キチンと理にかなった内容で説得する。シャナの事だ、詭弁じゃ言いくるめれないだろうしな。
「別に、そんな事は私の知った事じゃないわ。―――アラストールはどうなの?」
 一人では決めかねているのか、アラストールの意見を仰ぐシャナ。なかなか良い感じじゃないんですかね?
「確かに、なにかを守る、というケースはこれまでなかったな」
 反対しない辺り、アラストールは分かってるよ本当。こうなってしまえば、主導権は俺のもんだな。
「それじゃ、決まりだ」
 俺は下に降りる準備を始める事にした。こういうのは動いてしまえばこっちのもんだしな。
「……それより、中に入るのは良いけど」
 シャナがギロリと、さっきよりキツく睨んでくる。なんだよ、まだ何かあるのか。
「良いけど――、なんだよ?」
「変な事をしたら、ぶっ飛ばすわよ」
 冗談じゃないであろう所がシャナクオリティーだし、ぶっ飛ぶで済む訳がないのもシャナ理論だろう。
「―――大丈夫だ、問題ない。あかいあくまは言っている、ここで死ぬさだめではない、ってな」
 誰よそれ、というシャナの言葉を軽く流してシャナからカップを回収。俺達は梯子を降りる事にした。


  ◇


 窓から部屋に入り、ドアノブに手を掛けた所でシャナが声をかけてきた。
「待ちなさい。お前、どこに行くつもり?」
 あぁ、この家の構造をシャナは知らないんだよな。もっとも、俺自身も坂井悠二の記憶がなかったら知る筈もないんだけどさ。
「俺は書斎で寝るから、この部屋は自由に使ってくれ」
 男女が一緒の部屋で寝るのは、流石によろしくないだろ?
 せっかく中に入って貰ったのに、シャナを別の部屋に追い出すわけにはいかないしな。気をつかってるんだ、後は察してほしい。第一、変な事をするなってシャナも言ってたしな。予防策みたいなもんさ。
「何を言ってるのよ? お前もこの部屋で寝るのよ」
 あ…、ありのままに今起こった事を話すぜ。男女で同じ部屋はマズイと思って現在使用されてない書斎に向かおうしたら、シャナに制止された。
 な… 何を言っているのか、分からねーと思うが、俺もなんで止められたのか分からなかった。
 頭がどうにかなってるのかと思った……。俺の妄想だとかイベント入っただとか、そんな棚ぼたラッキーだとかじゃあ断じてねえ。
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わっちまう事になるぜ……。
 難癖つけられて確殺じゃないか!
「いやいやいやいや、ちょっと待て!」
 たまらず声を上げる。っとこれもマズイ。
 思わず声が大きくなってしまった。千草さんに気付かれてなければ良いんだが……。
 夜中に同級生の女子を部屋に連れ込んでるなんてバレたら、こっちも確殺だろ!
 さっきより声を潜めてシャナに反論する。
「確かに中に入れとは言った。けどな、一緒の部屋で寝る訳にはいかないだろ!」
 シャナはベッドの上で跳ねながら答える。あぁ、もう跳ねるな。スプリングが駄目になるだろ!
「お前を守る為に部屋に入ったのよ。なのになんで別々の部屋になるのよ」
「そりゃあ、男女が一緒の部屋で寝るのは色々と問題があるからだ!」
 俺がそう言うとシャナが呆れた顔をする。全く、セイバーもそうだったけど、なんで剣を振り回す女子ってのは、男と一緒に寝たがるんだよ。
「お前が近くにいないなら、屋根の上と大して変わらないじゃない。お前が別の部屋に移るなら、屋根の上に戻るわよ」
 汚い、流石シャナさん汚い。そう言われたら、本末転倒じゃないか。
「諦めてここで寝ろ、異論は認めぬ」
 畳み掛けるように、アラストールが絶望的な命令を下す。ブルータス、お前もか!
 頼みの綱も敵ってのは酷い。もう何を言っても無駄だなんだろ? 俺はもう知らないぞ? こっちで寝ろって言ったのはお前らなんだ。難癖なんかつけてきたら、タダじゃおかないからな。
「分かったよ。寝れば良いんだろ、寝れば」
 諦めた俺を見て満足そうな顔をするシャナ。なんだよ、言い負かして満足か? お前はここで満足するしかないのか? 俺は……、こんなんじゃ満足……出来ねぇよ。
 観念した俺を見た後、シャナはおもむろに胸元のコキュートスを外して、枕の下に押し込んだ。
「何をしてるんだ?」
「見れば分かるでしょ? 着替えよ、着・替・え。アラストールには見えない所に行って貰ったの」
 分からねぇよ。なに唐突に着替えだそうとしてるんだよ、と文句の一つでも言おうとしたら、枕の下から籠もった声でアラストールが続けてきた。
「そういう決まりなのだ。分かったなら、貴様も早くどこかに潜り込め」
 主導権はこちらのもんだ、そんな事を考えていた時期が僕にもありました。
 わざとらしく、シャナに聞こえるようにため息をついて部屋の押し入れに向かう。せめてもの反撃である。
 全く、見えない所って言われても、ここ位しかないじゃないか……。
「先に言っておくけど、覗いたらぶっ飛ばすわよ」
 それは、屋根の上で聞いたもの同じ脅し文句であり、あの時と同様に冗談とは受け取れないものだった。
「あぁ、もう分かってるよ……。さっさとしてくれよ」
 押入れの襖を開けて、自分の準備の良さが悲しくなってくる。
 昨日、部屋の中を荒らした後、押入れの中も含めて部屋を掃除しておいたのだ。この部屋にはあまり私物は無かった。だがその分、押入れの中は悲惨だった。
 元来、自分はあまり私物を持たない質だ。しかし、元から部屋にあった物を処分するのは、坂井悠二の生きた証、を捨ててしまう様で気がひけてしまう。したがって、押入れの中に坂井悠二の私物を押し込んだんだが、元からキャパオーバー気味であった所を整理したとはいえ物を増やしてしまった為、完全に物が溢れている。
 人が一人入れるスペースはギリギリ有る……か? 必死に体を隙間に押し込んでいると、シャナが文句を言ってきた。
「なにやってるのよ、早く閉めなさいよ」
 全く、人の苦労も知らないでよく言うよな。
「そう急かすなよ。覗くつもりなんかサラサラないって」
 どうにか体を押し込む事に成功した俺は、中から襖を閉めた。
 のは良いんだが……。
「…………」
 ―――イカン。これは………、非常に……良くないな。
 部屋が妙な静寂に包まれているなか、襖一枚挟んだの向こうではシャナがゴソゴソと動いている気配がする。
 こうも静かだと、衣擦れの音がこれはもう良く聞こえるのだ。
 女性の裸を見た事がない訳ではない。ない訳ではないからって、決して見慣れている訳でもない。
 男としては流石にこういう状況は気まずいので、動揺を誤魔化す為にシャナに質問する。
「あのさ……。シャナは寝巻きとかは持ってるのか―――って、うわっ!?」
 襖に硬い物がぶつけられる。多分、目覚まし時計だろう。
「覗くなって言ったでしょ!」
「覗いてない! 襖を見れば分かるだろ!? それと、物をこっちに投げるんじゃない、襖が破れるだろ!」
 何も考えないで投げたんだろう。全く、襖に物を投げるなんて非常識な奴だよ。親の顔が見たいぜ。
 二次被害を想定してみたのか? 穴が空いたらどうしてくれるんだ。
「ただ、シャナが寝巻きを用意してるか聞きたかった、それだけだ。覗こうとした訳じゃない」
「どうかしらね。あぁ、それと着替えなんてないわよ。あるのは替えの下着だけ。体の汚れはアラストールが清めてくれるから、替えるのは気分だけど」
 まぁ、急に泊まってけって言った訳だし、着替えはなくて当たり前だよな。下着は用意できてるってのは不思議な話だけど。
「了解。なら、ベッドの横の引き出しにジャージがある筈だ。それを使ってくれ」
 まさか下着のままで寝ることはないだろうとは思っていたけど、念の為だしな。第一、制服だと寝心地が悪いだろうし、女の子に脱いだ服をもう一度着て寝ろって言える程、怖いもの知らずじゃないしな。
 返事は無いが、別に返事を期待していた訳じゃないし、別に良いか。
 要領が悪いって訳でも無さそうだし、ちゃんと着てくれるだろう。
「ところで、俺はいつまでここに居ないといけないんだ?」
 そう言って少し急かす。あまりゆっくりと着替えられるのは迷惑だしな。閉所恐怖症って訳じゃないけど、流石に押し入れの中は狭いし、暗いしな。広々と布団を敷いているなら、どこぞのネコ型ロボット同様に快適な空間だろうけど、これだけ物で溢れてる空間だと住めば都なんて悠長な事も言えない。
「夜中の間、ずっとに決まってるでしょ」
「――――ハイ?」
 何言ってんですか、シャナさん。夜中の間って一晩中って事ですか。間借りしている身とはいえ、一応この部屋の主は俺な訳なんだが、もう我が物顔ですか。
「………なんでさ」
 思わず脱力して後ろの壁寄りかかる。ついでに周囲にある物にぶつかった気がするが、今はそんな事は些細な事だ。
 別に三日三晩戦い明かした事もあるし、寝れない事自体はそれ程苦ではない。だが、この空間だとかなりキツいんだよ。何せ無理矢理な形で俺を押し込んでるんだぜ? ほら、現に周りの物はさっき俺がぶつかった衝撃で、今まさに崩れ始めたし。
「……え゛!?」
 今まさにって、マズ――ッ!
 い、とまでは言い切れなかった。寄りかかっていた壁に体重をかけた途端、壁が倒れてしまったからだ。
 俺はすっかり忘れていたのだ。今居る場所は押入れの中で、寄りかかっていた壁は襖。その上、かなり危険な状態で踏みとどまっていた収納品の山々に衝撃を加え、唯一の防波堤――ついでに言うなら既に瀕死だった襖にトドメをさしてしまった。
 結果、気付いた時には時既に遅し。俺は押し入れの外に頭から転がり落ちていた。
「うぅ……」
 押入れから転がり落ちる。惨めな事に逆さになった視界の中心には、当然の様にお着替え真っ最中のシャナ。ちょうど衣服を全て脱いだ所だったらしい、女性の最終防衛ラインたる布切れを手にして、立っている。
 これまた当然の話だがその姿は、一糸纏わぬ生まれたままの物だった。

「「………」」

 突然の事態に目を丸くしているシャナと目が合う。きっと俺も同じ顔をしているに違いない。彼女を相手に、ラッキー♪ なんて言える程、俺の器はでかくない。
「………ま、待て! 話せば分か―――、ぐぇッ!?」
 シークタイムはコンマ1秒。脊髄反射で謝罪をしたが、言い終える前に全身に強烈な衝撃が走る。
 すげぇ、床に張り付いた体勢の俺を一息で踏み込むと同時に浮かせて、顎に一撃。もとより動ける訳もないが、確実に行動不能にした上で全身を見境なくフルボッコ。
 この一連の動作をほぼ同時に行う技量。俺の痛覚が知覚した痛みの順番を追わないと何をされたのかサッパリ分からなかった。
 フレイムヘイズ――、侮り難し。
 薄れ行く意識の中で俺の眼に映ったシャナの顔は、空腹王やあかいあくま、腹黒後輩に年上の妹を彷彿とさせる。
 目力だけでライダーの石化魔眼『キュベレイ』と同等の効果を発動してるんじゃないかと、マジで疑うレベルだぜアレ。

 ―――、どの世界でも女の怨みは同様に恐ろしい。


 そこで俺は意識を失った………。


  ◇


 真夜中、俺は全身の痛みで目を覚ます。どうやら、奇跡的に命だけは助けてくれたらしい。
 痛む体に鞭を打ち気合いで起こして、ベッドを見る。そこには毛布に包まれた小さな膨らみがあった。
 あんな事があったってのに、スヤスヤと眠ッてるぜおい。アレだけを見ると一見平和な光景に見えるだろう。しかし同時に、先程の惨劇を物語る物が目に入った。
 ベッドの前の床に、抜き身の贄殿遮那が突き立っている。主人を護る忠義の刀ってか? さっきのは偶発事故って奴だ。故意じゃない。
 ――イカンイカン。太刀に八つ当たりをした所で何にもならないし、武器は悪くないんだ。問題はそれを扱う人間なんだし。
 けど、これ以上ないって位あからさまな意思表示だなぁ。
 まぁ、気持ちは分からなくもない。故意じゃないとはいえ、俺が悪いんだし。
 だが、許せない事もある。
「全く、床に刀を突き立てるなよ」
 襖の時もそうだったけど、シャナの常識ってのが心配になる。
 大太刀に手を掛ける。床から引き抜こうとして――、やっぱり辞めておいた。
 床から抜かれた贄殿遮那を見て、何をするか分からないしな。だが、良い機会だしこの大太刀を解析しておこう。それ位はさせてもらった所でバチは当たらないだろうし。
 恐らくこの大太刀は宝具だろう。あの時のフリアグネの物言いを考えても普通の刀剣とは考えられない。
 何より、この俺が、一目見ただけでただの刀とは思えなかった。身体を斬られた時に、固有結界が暴走したのも気になる。 
 何より彼女を『シャナ』と名付ける時に、刀の印象を強かった理由の一つでもあったしな。それ程までにこの太刀は、人を魅せる物を持っていた。
 この世界での宝具の在り方が分かるかもしれないし、もしかしたら複製も可能かもしれない。結界内に貯蔵している武器量がそのまま戦力を表す俺にとって、武器は一本でも多い方が良い。
 寝ているシャナを起こさないように小声で呟く。
「――同調開始」
 既に一度、解析の際に結界が暴走している。あの時は意識していなかったとはいえ、二度目がないとも限らない。いつもよりも慎重に時間をかけて解析をする。

 よし――――、解析終了。

 大太刀から手を離し、外れたままの襖を直す。ついでに押入れからタオルケットを引っ張り出し、そのまま、ベッドと反対側の壁際に寝転ぶ。
 タオルケットに身を包み、呟く。
「―――次は、死ぬかもな」
 もっとも、今回は完全に俺の不注意が原因だ。なら、俺が注意をしておけば次なんてある訳がないんだが。
「当然だな」
 どこからか、そんなアラストールがそう答えた気がした………。 
 

 
後書き
皆様お久しぶりです。
連休をいかがお過ごしでしょうか?

という訳で、最新話なんですがだんだん士郎くんの原型を失いつつありますね。
流石にこれはマズイだろ! 等と言った点も多いと思います。
そういった点のご指摘や、いつも通り誤字脱字、内容の不備がございましたらご一報よろしくお願いします。
それではまた次回でお会いしましょう。 
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