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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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物事は失敗に終わっても


物事は失敗に終わっても人は失敗に終わらない。
—ウィリアム・D・ブラウン—

 


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物事は失敗に終わっても










◆◇◆コン◆◇◆




守れたのかな

よく分からない

誰かが何かを言っていたような気がするけれど

熱で浮かされた頭には入って来ない記憶

ただ、守らないといけない

そう思ったから、咄嗟の行動だった

チャクラを込め過ぎて、それからどうなったんだろう

守れたかな










・・・目を開けば倒れた先生と、うめき声を上げるソラを介抱するシュロの姿が見える

目を逸らすとガイ先生の顔が見える

どうやら彼に俵抱きされ、オレの体は宙に浮いているようだ

随分視点が違うなと場違いに考えていると地面に下ろされた


「大丈夫、か?」


ゆっくり首を縦に動かそうとして血を吐いた

腹が熱くてたまらない

それなのに寒気が体を襲う

歯の根がかみ合わず、ガチガチと小刻みに音を立てる

目がかすみ、白い光がまばらに視界を覆い尽くす

吐くものも無くなれば、腹部以外をのこして体中が冷えつくす

血すら吐かなくなった

視界が歪む

ガイ先生の呼びかけもうっすらとしか聞こえなくなった

靄がかかったような、そんな周囲の音に耳をかたむける

誰かが、近づいて来る

ゆっくり足音が近づいて、シュロらしき叫び声が聞こえてくる

誰かがオレの腹に手を当てた

腹部から徐々に熱が治まり、その分体が温まっていく

手足の先まで温もっていく感覚、鼓動の音が鮮明に聞こえてくる

かすむ目を擦ろうと手を伸ばす

腹部に添えられたままの、誰かの手が、酷く温かく感じた


「・・・だれ・・・?」


どこかで、感じたことがあるのだけれど

近くにいたような、気がする

誰かの手を掴んだまま、もう片方の手で目を擦ってよく見てみれば


トビ、いや、うちはマダラ


仮面は壊れ、一部肌が露出している

暁の外套もボロボロだ


「———三本目だ」


目が、赤くない

金色に鈍く輝いているその目が、写輪眼が発動していないからなのか、はたまた別の要因か

低く囁かれた言葉を聞き返すことすら出来ず、オレは倒れたまま


「オレの中の尾は最後に
 他に回収しなければならない尾があるからな

 ———満たすのは、まだ先だ」


何の、話だ

そう言おうとして声が出ないことに気づいた

喉がカラカラだ

シュロがマダラの肩を掴み、勢いよく振り向かせた


「封印が完成したならとっとと消えな
 ・・・目的は、終わったんだろ」

「———驚いたな
 勝負でも挑まれるかと思っていたが・・・?」

「黙って消えろ
 コンに近寄るな」

「・・・分かった
 また暴走されても敵わん、ここらで退いておこう」


瞬身の術ですぐに消え去ったマダラ

シュロは何か悩みながら、水と共にオレの口に薬を押しこんできた 

容体が悪化した時用の、綱手秘伝の薬

のみ込んで、まだ声が出せないからずっとシュロを眺め続けた


「・・・あのな、暴走したんだよお前
 ・・・ナルトみたいに」


目に掛かる髪の毛を、優しく払いのけるシュロの手がとても冷たい

その冷たさが心地よくて、思わず目を細めた


「オレの蟲じゃとても抑えきれなくて
 炎がオレ達を逃がさないようにドーム状になって閉じ込めて
 ・・・トビなんか、仮面ごと頬が抉られて火傷を負って
 今はなぜか治ってしまっていたけど、先生たちが乱入してきても暴走止まんなくて」


・・・マダラって、すりぬけられなかったか?

攻撃は無駄だと思っていたんだけれど、違うのだろうか


「———あのまま、お前が戻らないんじゃないかと思うと
 
 怖かった」

「・・・ごめん」

「——暁が何を企んでいるかも分かってないんだ
 無茶するんじゃない
 ・・・いや、今回はオレが悪いな
 ソラの中に何が封印されているのか知ってたのに、お前を近くに置いてた

 ・・・ごめん、オレこそ、ごめん

 何も出来なくて、家族だとか言っておいて、正気にも戻せなくて、ごめん」


シュロの言葉が胸に染みた

別にシュロは悪くない

暴走するとは思わずチャクラを込めまくった結果がこのざまだ

何も考えずに突っ走ったのが悪いんだ

シュロが謝る必要なんてない、そう言いたいのに言葉が出てこない


「シュロ、ありがと」


マダラと戦いたいと常々言っていたのに、オレを庇ってくれて

呼びかけてくれてありがとう

声は、聞こえてた
 
シュロの声も、マダラの声も、先生たちに怒鳴っていた言葉も全部全部、聞こえていたんだ


所々しか聞こえていないけれど、思い出せる


誰がオレに呼びかけてくれたのか、ちゃんと聞こえていたから

シュロが少しだけ笑って、スカーフでオレの顔を隠した

それからオレの体を持ち上げて、先生のとこまで引きずっていく

先生の腹を枕にするように寝かされる

——オレのマスク、壊れてたんだ

マスクの存在をすっかり忘れていた

この場に他の人がいなくて良かった

ガイ先生は先生が何とかしてくれるだろうし、バレても仮にも上忍だ

黙秘してくれることだろう


「ところで、コン
 オレこれから地獄の業火云々の噂は否定しないわ
 むしろ肯定する」

「げほっ」


飛び起きようとして体が動かず、そのまま先生の腹に沈み込む

先生の腹は堅かった

鉄板でも入ってるんじゃないんだろうか

絶対六つに腹筋割れてるぞこの人


「・・・木の葉に帰ったら綱手様に診てもらうぞ
 生命維持そっちのけで暴れ続けたんだ、体調が悪化して当然、入院してもらうからな

 ・・・せっかく尾が三本になったけど、体調管理にしか使えないんじゃないか?」


・・・三本、目の尾・・・


「あとソラは無事だ
 人柱力でもないしな、尾が抜かれても平気だった
 ———大方、ソラを守ろうとしてオレ達の存在忘れてたんだろ?」


————シュロ、お前読心能力あったっけ?


「はぁ・・・今後暴走するときは敵味方識別機能つけとけ、この無差別MAP兵器!
 お前の目標はサイバスターだサイフラッシュだ!」

「サイ・・・何?」

「!
 ね、ネタが通じてない・・・!?」

衝撃のアルベルトは解かったじゃないか!


そう叫ばれても分からないものは分からない

あのおっさんは・・・色々衝撃だったから・・・

そう思いながら、眠気に身を任せて瞼を閉じた








◆◇◆シナイ◆◇◆









火ノ寺・本堂にて棺に納められた地陸の姿を確認する

地陸の傍に着いていたという修行僧の話では、金髪の青年によって殺害されたとのこと

デイダラか

命令が気に食わないからと適当に遊んできやがったが・・・

炎のドームを見た瞬間、顔色を変えて何処かに飛び去って行った

だからこそガイと2人でコン達の元へ行けたのだが

再び戻ってきて地陸をやったのか


「薄墨殿の協力のお陰で老人、幼子の退避はすぐ出来たのですが・・・
 寺を守ろうとした地陸さまは・・・」


項垂れる修行僧に声をかけれず、ただ地陸に手を合わせる

暁とジャシン教の繋がりを確かめるこの任務

地陸の死で、この任務は達成できたかと問われると、達成できていないだろう

自分の世界の記憶を持つ人間と会話するのは楽しかった

それなのにこんな結果になってしまった

・・・あいつらが近隣をうろうろしていたのは、記憶持ちを殺す為だったのだろうか




御意見番あたりからは小うるさく騒がれる

今後のことを考えれば頭が重くなった
























コンが暴走して半壊させた森の、瓦礫などの撤去作業を終え、寺にもあいさつをして木の葉へ帰る

ソラも木の葉へ来ることとなった

九尾のチャクラをその身に封印されていたとシュロが説明し、身体に異常がないか木の葉病院にて検査するためについてくる

検査が終わったあと、寺に戻るのか

そう尋ねてみると、やけに苦々しい顔で彼は言った


「元々地陸さま以外の奴らは、オレから距離を置いていた
 地陸さまが亡くなられた今、あの寺にオレの居場所はねえ

 ・・・世界でも、見に行くさ」


男が決めたことに口出しはしない

木の葉滞在中に気が変わるかもしれないし、別の道が見つかるかもしれない



まだ本調子ではないコンを背負うシュロと、同じ風の性質だというソラは話は弾んでいる

シュロのスカーフで顔を隠したままのコンは、斜め前を歩くサイに時折声をかけている

サイがシュロを見る目が今にも人を殺しそうに見えるのは気のせいだろうか

そう思ってガイを見ると、どうやらガイもそう見えたらしく冷や汗を流している

不安要素しかない彼らを見ていると酷く疲れた




木の葉まであともう少し





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マダラサイドをいれるところまで行かなかった

また次回に持ち越しです



寿命延長フラグは立たないどころか悪化した
 
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